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家族

家族1★

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 ★★★家族★★★

 私は数種のタレを用意しする。食材を裏庭にある、祖父のお気に入りのガーデンテーブルの上へと、所狭しと並べる。串に刺した牛肉やら、切り分けたピーマンや人参、とうもろこしに玉ねぎといった、まずはお野菜を準備する。

 ふと、ワインのおつまみにと買った、カマンベールの存在を思い出す。アルミホイルに乗せて上部をくり抜いたものも持ってくる。

 加熱してトロトロにすると、簡易のチーズフォンデュの様になるのだ。

 ちょっとワイン入れたくなるけれど、そこは見た目が子供な彼らもいるし我慢する…。

 食材を運ぶ手伝いをせつくんが頑張ってくれてるおかげで、スムーズに準備ができた。途中から起きてきた、詩紋しもんちゃんも手伝ってくれた。

 今日買ってきたばかりのトングで、少しずつ、野菜やお肉を、網へと乗せていく。

 食材の焼ける匂いに、お腹がすいてくる。

「ご飯楽しみだねぇ」

 そんなことを言いながら、焼き上がりを心待ちにしているせつくんや詩紋しもんちゃんは、焼き上がる前に手を出してしまいそうな勢いだ。

 少しずつ焼けていくお肉や野菜に、大人びた印象が強いせつくんまで、釘付けになっている。
 本当に食べ物には弱いみたい。

 2人とも可愛くて、そんな2人を見ているだけでも、お腹いっぱい幸せいっぱいになれる気がする。

 うーん。でも……、あの食材もあったら…。
 ふと、そんなことを思いついて、あやかしの木に食材追加をお願いする私。


 ★★★

 こぼれ落ちないように気遣ってくれたのか、食材は紙のような容れ物に入って出てきた。

 あれ?
 さっきまではそのまま枝になってたのに…。何やらあやかしの木さんの気遣いが、グレードアップしている気がする……?

「ありがとう、優しいですね。あやかしの木さんは…」 

 そう声かけると、そんな私に詩紋しもんちゃんがニコニコしながら、声をかけてきた。

「木も喜んでるよ!あと…それで何作るのかも、詩紋しもん早く知りたい~!」


 ★★★

 詩紋しもんちゃんにとって、その材料を使って、何を作る気なのか…、の方が重要らしい。ふと笑ってしまいそうになるけど、お腹をすかせた雛鳥のようになっている、2人の為に食材を取り出す。

 車海老と帆立貝。それらを鉄板に並べ、岩塩をミルで削りながらふりかけていく。帆立も焼いて開いた貝の上に、醤油をふりかけ火の通りを待つ。

 でも、あやかしの木さんは万能ですね。車海老は、殻付きで想像していたのに、殻や下処理がされた物が出てきてる……。

 有り難いけど、せっかく身につけた下処理などの方法を、忘れてしまいそうなので、程々にお願いしますね…と、思わず呟いてしまう。

 何やら、木がしゅんっと下を向いたように感じたから、「お願いした時だけ助けてくださいね」とだけ言葉にしてみる。その言葉を受け嬉しかったのか、サワサワと揺れるあやかしの木。

 木にも感情があるのか…。
 そんな事を感じつつ、ジュースを2人に渡す。
 

 ★★★

「追加したものも、どんどん焼くから食べようか!」

 そう言って、お箸と小皿を彼らの前に置いた。

「2人と私の同居を祝して乾杯!」

 私がそう言い、3人でグラスを軽くそえるように乾杯をしてから、みんなでジュースを飲んだ。

 飲みかけのグラスをテーブルに置くと、それにならうようにして、2人も置テーブルに置くと小皿とお箸を手にする。

「じゃあ焼けたとこから食べよう。好きなタレを使ってみてね?」

 魚介類は野菜やお肉より、火の通りが早い気がするので、2人に渡した小皿の上に、焼き上がったものを分けていく。

「好みで粗挽きコショウかけたり、オレンジを絞りかけてみてね。さっぱりとした味で食べられるから」

 そう伝えると、箸休めのフルーツでオレンジは食べると思ってたらしい。そんな2人は、目を丸くして恐る恐るオレンジを絞り、海老へとかけていた。
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