10 / 19
本編
8
しおりを挟む
旅の途中で料理を作り、街にいる時に買い出しに出て、またダンジョンに潜る。そんな日が続いた。
最初は一人での買い出しだったのに、「わたくしもお料理覚えたいですわ!」なんていうマジェスティと、「ついてってやらない事もないわ。あたしが食べたいものも買いなさいよ!」そんな事を言いながら、アテナも護衛も兼ねてと、ついてくるようになった。
『戦闘職だし…、護衛いらないんだけどなぁ』
そう思いながらも、好きなものを聞いて作る分、献立を考えなくて済むなぁと、ついてきてもらっている。
「あたし、この間作ってくれたお肉をミンチにして固めたの…、また食べたいわ!」とか「この野菜苦くて苦手」とかアテナは好き嫌いが多い。それらを工夫してどうしたら彼女に食べさせられるかが、目下の目標と化している。
肉の塊を買い、干し肉ほどではなくとも、全体に火が通る程度に木で燻し、燻製にし持ち歩くなどして、料理の幅を広げている。
保存食として、しっかりとつけた塩味と、香辛料特有の香りと旨味でスープに入れたり、卵と焼いたりするだけで味に深みが増す。
「どうしたら、こういう調理法学べるのかしら……」
マジェスティが不思議そうに首を傾げる。
「私は以前エルフの里の教会でクレリックとして生きていましたから。いつも充分な糧に、恵まれる訳ではないので、保存していたのですよ…」
「生活の知恵ですね……! わたくしにも教えて欲しいですわ!」
「私には、魔法より生きる術が大切だっただけですよ」
「でも、そんなに大事な日常なら、なんで冒険者になんかなったのよ」
戸惑いもなくアテナはそういった。
「私は里にいられなくなったのです…。居られるものなら骨を埋めるつもりでしたが……。許されませんでした…」
「なに? あんたを見初めたやつが闘いでも始めたの?」
「アテナ!」
からかう様にそういうアテナに、嗜めるようなマジェスティ。そんな彼女達に
隠し切れないやるせなさの籠もった、力ない笑みを浮かべると何かを察した様だった。
「そう…、見目が綺麗だと、あたしよりもずっと幸せなんだと思ってたわ…。ごめんなさい…」
「いいの。誤解はとけたのでしょう? 不幸ではないもの。両親たちに愛されて幸せだったもの…。ただ第三者の望んでいない想いに振り回されただけ…」
家族が懐かしくなって、淋しげに笑うと、アテナとマジェスティが腕を組んできた。
「あの……?」
「今回のダンジョン攻略はミリアムさんの好きな物を食事に選びましょう? わたくしも手伝いますわ!」
「あたし達がいるんだし、淋しがってる暇なんてないわよ! 覚悟してなさい!」
「偉そうだけど…、アテナなりに慰めているんですわ…」
残念そうにマジェスティが言うと「うるさいわねぇ!」とアテナが噛みつく。
少し温かい気持ちになりながら、買い物を続ける私達だった。
最初は一人での買い出しだったのに、「わたくしもお料理覚えたいですわ!」なんていうマジェスティと、「ついてってやらない事もないわ。あたしが食べたいものも買いなさいよ!」そんな事を言いながら、アテナも護衛も兼ねてと、ついてくるようになった。
『戦闘職だし…、護衛いらないんだけどなぁ』
そう思いながらも、好きなものを聞いて作る分、献立を考えなくて済むなぁと、ついてきてもらっている。
「あたし、この間作ってくれたお肉をミンチにして固めたの…、また食べたいわ!」とか「この野菜苦くて苦手」とかアテナは好き嫌いが多い。それらを工夫してどうしたら彼女に食べさせられるかが、目下の目標と化している。
肉の塊を買い、干し肉ほどではなくとも、全体に火が通る程度に木で燻し、燻製にし持ち歩くなどして、料理の幅を広げている。
保存食として、しっかりとつけた塩味と、香辛料特有の香りと旨味でスープに入れたり、卵と焼いたりするだけで味に深みが増す。
「どうしたら、こういう調理法学べるのかしら……」
マジェスティが不思議そうに首を傾げる。
「私は以前エルフの里の教会でクレリックとして生きていましたから。いつも充分な糧に、恵まれる訳ではないので、保存していたのですよ…」
「生活の知恵ですね……! わたくしにも教えて欲しいですわ!」
「私には、魔法より生きる術が大切だっただけですよ」
「でも、そんなに大事な日常なら、なんで冒険者になんかなったのよ」
戸惑いもなくアテナはそういった。
「私は里にいられなくなったのです…。居られるものなら骨を埋めるつもりでしたが……。許されませんでした…」
「なに? あんたを見初めたやつが闘いでも始めたの?」
「アテナ!」
からかう様にそういうアテナに、嗜めるようなマジェスティ。そんな彼女達に
隠し切れないやるせなさの籠もった、力ない笑みを浮かべると何かを察した様だった。
「そう…、見目が綺麗だと、あたしよりもずっと幸せなんだと思ってたわ…。ごめんなさい…」
「いいの。誤解はとけたのでしょう? 不幸ではないもの。両親たちに愛されて幸せだったもの…。ただ第三者の望んでいない想いに振り回されただけ…」
家族が懐かしくなって、淋しげに笑うと、アテナとマジェスティが腕を組んできた。
「あの……?」
「今回のダンジョン攻略はミリアムさんの好きな物を食事に選びましょう? わたくしも手伝いますわ!」
「あたし達がいるんだし、淋しがってる暇なんてないわよ! 覚悟してなさい!」
「偉そうだけど…、アテナなりに慰めているんですわ…」
残念そうにマジェスティが言うと「うるさいわねぇ!」とアテナが噛みつく。
少し温かい気持ちになりながら、買い物を続ける私達だった。
0
あなたにおすすめの小説
「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある
柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった
王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。
リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。
「わかりました。あなたには、がっかりです」
微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。
つまらない妃と呼ばれた日
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。
舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。
さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。
リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。
――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。
彼女の離縁とその波紋
豆狸
恋愛
夫にとって魅力的なのは、今も昔も恋人のあの女性なのでしょう。こうして私が悩んでいる間もふたりは楽しく笑い合っているのかと思うと、胸にぽっかりと穴が開いたような気持ちになりました。
※子どもに関するセンシティブな内容があります。
で、お前が彼女に嫌がらせをしている理由を聞かせてもらおうか?
Debby
恋愛
ヴェルトが友人からの手紙を手に辺境伯令嬢であるレィディアンスの元を訪れたのは、その手紙に「詳細は彼女に聞け」と書いてあったからだ。
簡単にいうと、手紙の内容は「学園で問題を起こした平民──エボニーを妻として引き取ってくれ」というものだった。
一方その話を聞いてしまった伯爵令嬢のオリーブは動揺していた。
ヴェルトとは静かに愛を育んできた。そんな自分を差し置いて、言われるがまま平民を妻に迎えてしまうのだろうか。
そんなオリーブの気持ちを知るはずもないエボニーは、辺境伯邸で行儀見習いをすることになる。
オリーブは何とかしてヴェルトを取り戻そうと画策し、そのことを咎められてしまう。もう後は無い。
オリーブが最後の望みをかけてヴェルトに自分を選んで欲しいと懇願する中、レィディアンスが静かに口を開いた。
「で、そろそろお前が彼女に嫌がらせをしている理由を聞かせてもらおうか」
「はい?」
ヴェルトは自分が何を言われたのか全く理解が出来なかった。
*--*--*
覗いてくださりありがとうございます。(* ᴗ ᴗ)⁾⁾
★全31話7時19時更新で、全話予約投稿済みです。
★★「このお話だけ読んでいただいてもOKです!」という前提のもと↓↓↓
このお話は独立した一つのお話ですが、「で。」シリーズのサイドストーリーでもあり、第一弾「で、私がその方に嫌がらせをする理由をお聞かせいただいても?」の「エボニーその後」でもあります(あるいは「最終話」のその後)。
第一弾「で、私がその方に嫌がらせをする理由をお聞かせいただいても?」
第二弾「で、あなたが私に嫌がらせをする理由を伺っても?」
第三弾「で、あなたが彼に嫌がらせをする理由をお話しいただいても?」
どれも女性向けHOTランキングに入り、特に第二弾はHOT一位になることが出来ました!(*´▽`人)アリガトウ
もしよかったら宜しくお願いしますね!
侯爵夫人のハズですが、完全に無視されています
猫枕
恋愛
伯爵令嬢のシンディーは学園を卒業と同時にキャッシュ侯爵家に嫁がされた。
しかし婚姻から4年、旦那様に会ったのは一度きり、大きなお屋敷の端っこにある離れに住むように言われ、勝手な外出も禁じられている。
本宅にはシンディーの偽物が奥様と呼ばれて暮らしているらしい。
盛大な結婚式が行われたというがシンディーは出席していないし、今年3才になる息子がいるというが、もちろん産んだ覚えもない。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
王命を忘れた恋
須木 水夏
恋愛
『君はあの子よりも強いから』
そう言って貴方は私を見ることなく、この関係性を終わらせた。
強くいなければ、貴方のそばにいれなかったのに?貴方のそばにいる為に強くいたのに?
そんな痛む心を隠し。ユリアーナはただ静かに微笑むと、承知を告げた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる