【完結】初めて好きになった貴方…

皇ひびき

文字の大きさ
11 / 19
本編

9

しおりを挟む
 もう私が合流してから、何度目のダンジョン攻略だろうか…。数人魅了にかかってしまったみたいだけど、普通に一エルフとして接してもらえるこのパーティの居心地はそれなりに良かった。

 魅了にかかってしまった二人の、信仰に近い好意は厄介ではあったけど……。

 パーティの居心地が良くて、あまりそんな事を気にもしなくなった。 


 いつもの様にヘルメスがマントの力で、ガーゴイルに変身し罠やモンスターの確認や偵察に行ってくれる。


 もうそんな頃には、『魅了にもかからない……。その上に、素っ気ない態度で、一人のエルフとして接してくる彼』を、気がつくと、つい見つめてしまう。今まで普通・・に接してもらえる相手が、周りにあまりいなかったから、余計に嬉しかったのかもしれない。

 普段の何気ないやり取りの上で、漠然と感じるのは、私自身というよりもエルフという種族に関して、自主的に関わらない様にしているみたいだという事。嫌いという訳ではない。警戒しているような印象だろうか…。本来あまり仲が良くないとされているドワーフのゴンとも、同種族の私と比べたなら、余程仲良しに見える。だからといって、私やエルフに対して素っ気ないだけだと気がついてしまった。

 ふとした瞬間に、本来彼が持ち合わせているであろう優しさを感じて、不意に温かい気持ちになる。


 ダンジョンの途中の森で木の上に寝そべり、真剣な表情で魔導書を読んでいる彼の姿。

 シーフも兼ねているからか、ものすごく身軽で木の上から、周囲を警戒して敵の有無を確認する姿や、冷めた表情で食事をしつつも、律儀に一声「美味しかった」と声をかけてくれる。そんな不器用な中に感じる優しさ…。

 さらりと難しい魔法を駆使している姿。真剣な顔で鍵開けやトラップ解除する姿も…。


 気がつくと私は、彼に気づかれない様にと、こっそりと、でもどうしようもないくらいに目で追ってしまっている。私自身、無意識に…、無自覚に…。

 そんな彼本人にとっての何気ない彼の仕草に、私の瞳は奪われ、胸はなぜだか高鳴った。

「ミリアムお姉ちゃん。本当に、ヘルメスが好きなんだなぁ~」

 たまにからかう様に、スパロウが言うから、「スパロウの事も好きよ」そう言って頭を撫でる。

「そう言うのと違うと思うんだけど……」

 納得しきれない様にそう言うスパロウは、撫でられるのは嬉しい様で、おとなしくなすがままになっている。


 気がつくと、少しの間彼は消えていて、十分もせずに再び姿を現す。

 私やエルフに対して、距離をおいている事となにか関係があるのかな…、いつか仲良くなれたら、理由なんかも明かしてくれたらいいのに、そんな事を暢気にも私は考えていた。


 そんな私を面白くなさそうに、オイジュスやネーレウス が遠巻きに見ていた事など気づきもせずに。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

地獄の業火に焚べるのは……

緑谷めい
恋愛
 伯爵家令嬢アネットは、17歳の時に2つ年上のボルテール侯爵家の長男ジェルマンに嫁いだ。親の決めた政略結婚ではあったが、小さい頃から婚約者だった二人は仲の良い幼馴染だった。表面上は何の問題もなく穏やかな結婚生活が始まる――けれど、ジェルマンには秘密の愛人がいた。学生時代からの平民の恋人サラとの関係が続いていたのである。  やがてアネットは男女の双子を出産した。「ディオン」と名付けられた男児はジェルマンそっくりで、「マドレーヌ」と名付けられた女児はアネットによく似ていた。  ※ 全5話完結予定  

幼馴染以上、婚約者未満の王子と侯爵令嬢の関係

紫月 由良
恋愛
第二王子エインの婚約者は、貴族には珍しい赤茶色の髪を持つ侯爵令嬢のディアドラ。だが彼女の冷たい瞳と無口な性格が気に入らず、エインは婚約者の義兄フィオンとともに彼女を疎んじていた。そんな中、ディアドラが学院内で留学してきた男子学生たちと親しくしているという噂が広まる。注意しに行ったエインは彼女の見知らぬ一面に心を乱された。しかし婚約者の異母兄妹たちの思惑が問題を引き起こして……。 顔と頭が良く性格が悪い男の失恋ストーリー。 ※流血シーンがあります。(各話の前書きに注意書き+次話前書きにあらすじがあるので、飛ばし読み可能です)

彼女の離縁とその波紋

豆狸
恋愛
夫にとって魅力的なのは、今も昔も恋人のあの女性なのでしょう。こうして私が悩んでいる間もふたりは楽しく笑い合っているのかと思うと、胸にぽっかりと穴が開いたような気持ちになりました。 ※子どもに関するセンシティブな内容があります。

乙女ゲームの正しい進め方

みおな
恋愛
 乙女ゲームの世界に転生しました。 目の前には、ヒロインや攻略対象たちがいます。  私はこの乙女ゲームが大好きでした。 心優しいヒロイン。そのヒロインが出会う王子様たち攻略対象。  だから、彼らが今流行りのザマァされるラノベ展開にならないように、キッチリと指導してあげるつもりです。  彼らには幸せになってもらいたいですから。

悪役令嬢まさかの『家出』

にとこん。
恋愛
王国の侯爵令嬢ルゥナ=フェリシェは、些細なすれ違いから突発的に家出をする。本人にとっては軽いお散歩のつもりだったが、方向音痴の彼女はそのまま隣国の帝国に迷い込み、なぜか牢獄に収監される羽目に。しかし無自覚な怪力と天然ぶりで脱獄してしまい、道に迷うたびに騒動を巻き起こす。 一方、婚約破棄を告げようとした王子レオニスは、当日にルゥナが失踪したことで騒然。王宮も侯爵家も大混乱となり、レオニス自身が捜索に出るが、恐らく最後まで彼女とは一度も出会えない。 ルゥナは道に迷っただけなのに、なぜか人助けを繰り返し、帝国の各地で英雄視されていく。そして気づけば彼女を慕う男たちが集まり始め、逆ハーレムの中心に。だが本人は一切自覚がなく、むしろ全員の好意に対して煙たがっている。 帰るつもりもなく、目的もなく、ただ好奇心のままに彷徨う“無害で最強な天然令嬢”による、帝国大騒動ギャグ恋愛コメディ、ここに開幕!

ドレスが似合わないと言われて婚約解消したら、いつの間にか殿下に囲われていた件

ぽぽよ
恋愛
似合わないドレスばかりを送りつけてくる婚約者に嫌気がさした令嬢シンシアは、婚約を解消し、ドレスを捨てて男装の道を選んだ。 スラックス姿で生きる彼女は、以前よりも自然体で、王宮でも次第に評価を上げていく。 しかしその裏で、爽やかな笑顔を張り付けた王太子が、密かにシンシアへの執着を深めていた。 一方のシンシアは極度の鈍感で、王太子の好意をすべて「親切」「仕事」と受け取ってしまう。 「一生お仕えします」という言葉の意味を、まったく違う方向で受け取った二人。 これは、男装令嬢と爽やか策士王太子による、勘違いから始まる婚約(包囲)物語。

冷たい王妃の生活

柴田はつみ
恋愛
大国セイラン王国と公爵領ファルネーゼ家の同盟のため、21歳の令嬢リディアは冷徹と噂される若き国王アレクシスと政略結婚する。 三年間、王妃として宮廷に仕えるも、愛されている実感は一度もなかった。 王の傍らには、いつも美貌の女魔導師ミレーネの姿があり、宮廷中では「王の愛妾」と囁かれていた。 孤独と誤解に耐え切れなくなったリディアは、ついに離縁を願い出る。 「わかった」――王は一言だけ告げ、三年の婚姻生活はあっけなく幕を閉じた。 自由の身となったリディアは、旅先で騎士や魔導師と交流し、少しずつ自分の世界を広げていくが、心の奥底で忘れられないのは初恋の相手であるアレクシス。 やがて王都で再会した二人は、宮廷の陰謀と誤解に再び翻弄される。 嫉妬、すれ違い、噂――三年越しの愛は果たして誓いとなるのか。

10年前に戻れたら…

かのん
恋愛
10年前にあなたから大切な人を奪った

処理中です...