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本編
14(ヘルメス視点)
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俺はダークエルフとして生を受けた。親の顔は知らない。自分達が生きて行くのがやっとで、多分捨てられたのだと思う。
生きる為に人の物を盗んで、最低限の食糧を手に入れ生きていた。
そんな時に、人を信じる事に疲れたマジックキャスターに出会った。
彼は面倒くさそうに、俺に肌の色を変える魔法や、魔物に襲われた時の対処法を教えてくれた。
人なんかに心を砕いて、信じるなって事も。彼は人族だったので、あっという間に、年老いていき、俺を置いて逝ってしまった。
それからだ。その日暮らしの食いものを盗みながら生きながらえる、盗賊のような真似はやめて、肌の色を変えて魔法を習い始めたのは。
そうして今のパーティに出会った。自由に過ごせる分居心地も良かった。
思いもよらぬ所でアリシアを喪い、仲間を募ることにしてミリアムというエルフの女性が仲間になった。
ふとした心配りや手料理に、惹かれてやまない。けれど俺がダークエルフだと知られた瞬間手のひらを返すように軽蔑の瞳を向けられると思った。だから距離を置いた。
彼女の向ける目に、異性に対する熱のようなものも感じなくはないが、正体がバレたら覚める程度のものだと思った。
お互いの為にも、近づくべきではないと。
オイジュスとネーレウスは、彼女の美しさに骨抜きのようになっているし、他のメンバーは料理の腕に惚れ込んているように感じられた。
俺もダークエルフという負い目が無ければ、惹かれていたのかもしれない。
生い立ちなど自分の力でどうする事も出来ないのに。
そう感じてしまうと、少し投げやりな気持ちになり、偵察を言い訳にしてパーティから一人離れた。
そろそろ帰らないと、心配をかけてしまうかもしれない。けれど今すぐに帰りたくなどなかった。
そして、それは起こった。
ボンヤリとした意識の中、仲間であるはずの彼らや、彼女に襲いかかる自分。
『やめろ…。やめてくれ……』
いくら懇願してもそれを嘲笑うかのように、空中を自在に飛びながら、仲間を爪でえぐり、傷つけていく自分を抑えられない…。
あぁ…、こうして敵として仲間に退治されるのか…。
ダークエルフらしい末路なのかもしれない…。これ以上あいつらを欺きたくなかった…。きっとこれが潮時だったに違いない。
ダークエルフという種族は、決まった者達からしか、新たな生を与えられることはない。
少しずつ、喪われていく意識の中、お前らに会えて良かった。少しだけ仲間の温かさを知ったよ。ありがとう。ミリアムも俺の負い目から傷つけてごめんな。
そんな持戒の念とともに、俺の意識は暗転した。
生きる為に人の物を盗んで、最低限の食糧を手に入れ生きていた。
そんな時に、人を信じる事に疲れたマジックキャスターに出会った。
彼は面倒くさそうに、俺に肌の色を変える魔法や、魔物に襲われた時の対処法を教えてくれた。
人なんかに心を砕いて、信じるなって事も。彼は人族だったので、あっという間に、年老いていき、俺を置いて逝ってしまった。
それからだ。その日暮らしの食いものを盗みながら生きながらえる、盗賊のような真似はやめて、肌の色を変えて魔法を習い始めたのは。
そうして今のパーティに出会った。自由に過ごせる分居心地も良かった。
思いもよらぬ所でアリシアを喪い、仲間を募ることにしてミリアムというエルフの女性が仲間になった。
ふとした心配りや手料理に、惹かれてやまない。けれど俺がダークエルフだと知られた瞬間手のひらを返すように軽蔑の瞳を向けられると思った。だから距離を置いた。
彼女の向ける目に、異性に対する熱のようなものも感じなくはないが、正体がバレたら覚める程度のものだと思った。
お互いの為にも、近づくべきではないと。
オイジュスとネーレウスは、彼女の美しさに骨抜きのようになっているし、他のメンバーは料理の腕に惚れ込んているように感じられた。
俺もダークエルフという負い目が無ければ、惹かれていたのかもしれない。
生い立ちなど自分の力でどうする事も出来ないのに。
そう感じてしまうと、少し投げやりな気持ちになり、偵察を言い訳にしてパーティから一人離れた。
そろそろ帰らないと、心配をかけてしまうかもしれない。けれど今すぐに帰りたくなどなかった。
そして、それは起こった。
ボンヤリとした意識の中、仲間であるはずの彼らや、彼女に襲いかかる自分。
『やめろ…。やめてくれ……』
いくら懇願してもそれを嘲笑うかのように、空中を自在に飛びながら、仲間を爪でえぐり、傷つけていく自分を抑えられない…。
あぁ…、こうして敵として仲間に退治されるのか…。
ダークエルフらしい末路なのかもしれない…。これ以上あいつらを欺きたくなかった…。きっとこれが潮時だったに違いない。
ダークエルフという種族は、決まった者達からしか、新たな生を与えられることはない。
少しずつ、喪われていく意識の中、お前らに会えて良かった。少しだけ仲間の温かさを知ったよ。ありがとう。ミリアムも俺の負い目から傷つけてごめんな。
そんな持戒の念とともに、俺の意識は暗転した。
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