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第4章 (元)魔王と勇者の憩場に
✨25話1Part Parallel①
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「......はあ......」
いかにも奇々怪々な森の中、小柄な少年を背負った1人の青年が淡緑と薄紫の草をかき分けながら必死で足を進めていた。
ガクッ
「っ!!............く、そ......ッ!」
途中、足が深い草の中に紛れていた蛇か蔦かにひっかかり、大きな音を立てて顔から地面に突っ伏した。
涙と血と泥と枯葉でぐちゃぐちゃになった体を払いもせずに、拳で地面を殴りつけて小さく文句をぼやいた。
「......ぁ、ぅ......」
「っもう少しで開けた場所に出るはずだ、耐えろよッ......!!」
そのぼやきがことのほか大きかったらしく、背負われていた少年が荒い息交じりな声にもならない声を上げて意識の覚醒を青年に伝えてくる。
その声に切羽詰まった表情で一言返しつつ、青年......望桜は、再び足を動かし始めた。
「瑠凪、お願いだから死なないでくれ......!」
「......、......」
だんだんと力なく垂れ始めた少年、こと瑠凪を後ろ手で抱える腕に力を込めて、絶対に落とさないようにがっちりと抱きかかえた。
......一体何故、この2人はこんな状況に陥っているのか。
それは、各々がいきなり閉じ込められたこの空間のルールに関わる話になってくる。
この世界の細かい説明や関係ない部分についての説明を省くと、この世界にはタイムリミットがあり、それがなくなると死に至る。
しかし、なくならなくとも"一定時間が経つと体の器官や機能を持っていかれる"というルールがあり、その"一定時間"が経った時に瑠凪が突然膝から崩れ落ちたのが事の発端......というより、事の発覚であった。
「だ、大丈夫か!?」
近くの木に手をつき肩でぜえはあと息をする瑠凪の元に、酷く動揺した望桜がすぐに駆け寄った。
「う、ん......たぶ、げふっ......」
少年は必死に口を動かして返事をしようとするも、込み上げてくる血液と胃液の入り交じった吐瀉物が喉で声を邪魔して我先にと出てくるせいで、まともな返事ができない。
その様子を見兼ねて、「早く楽にしてやろう」と必死で辺りを見回してぱっと一息着けそうな場所を発見し、
「っだ、大丈夫なわけあるか!!ちょ、近くで洞窟みてえなのは......あった!!いくぞ!!抱えるからな......いち、にっ、さんっ」
「っぷ、」
「っ!!......いいぞ、吐いても。早く楽になれ」
血反吐を吐くなど余程の事がない限りは起こりえない事だが、何か特別ダメージを受けるような出来事はなかったはずだ。
現に、さっきまで2人で"安全地帯を探そう"と決めて森の中を歩いていたのだから。
「っは、ぁ......ま、お......」
「気にすんな!!」
「け、ほっ......」
ベチャッ、
「っ......」
瑠凪が1つ咳き込んで血の塊を吐いた瞬間、望桜は身体中の血の気が引いていくのをありありと感じた。さーっ......音も聞こえてきそうな程に綺麗に引いていった血の気は、しばらくの間戻らなかった。
「ぁ、ぃッ......」
「......っあ、ここに寝ててくれ!!ちょっと、他に人がいないかサーチをかけてみるから」
瑠凪の苦痛の滲む声を皮切りに、望桜の元に今何をすべきか考えられる程度に意識と冷静さが帰ってくる。
「......わ、かった............っ、」
生きている人間のものとは思えないほど色の悪い顔を苦しげに歪ませながら、瑠凪は硬くて冷たい岩の上に体を横たえた。離れていく望桜の背を眺めながら、ぐっと歯を食いしばる。
「......っぐ、ぅ......」
......自分は、この感覚を知っている。
臓器ごと手でぐっと持ち上げられていると錯覚するほどの強烈な吐き気にくらくらする頭をもたげて、呼吸する事を許してくれない、圧迫された喉から微かな息をふっと吐き出して。
いつの日かの自分も、この体の中をこの世のありとあらゆる悪を詰めた有象無象が這いずり回るような吐き気と倦怠感、疲労感と闘っていた。
お腹が空いているはずなのに口に物を入れただけで何かが込み上げてくるし、常にお腹が締め付けられるような圧迫感を感じていた。
その非常に不愉快な感覚の奥には、ただ1つ"何かを飲み込んだ"からこの感覚に陥っているのだと特定の自身の行動を責め立てる、自分なのか他人なのかも分からない何者かが不気味な笑みを浮かべている。
気持ち悪い、苦しい、もう嫌だ......
口許から静かに線を引き垂れる血を拭う事もせず、瑠凪は岩の上で丸くなる猫のように背を曲げて自分の体を両手で抱き締めた。
「瑠凪、苦しいだろうがちょっと聞いてくれ」
「......、............」
い、いよ......口の動きだけでそう伝えると、望桜は何かを察したように首を1つこくりと縦に振って静かに瑠凪の頭を撫でつけた。
「神気媒体の奴が1人と、魔力媒体の奴が6、7人ほど居そうだ。仲間だといいがな、まだ分からん」
「......、......」
ぽかぽか、あったかい......そんな気持ちを、幼子を撫でるような柔らかな動きが促した。気のせいか、気持ち悪さも幾分かましな気がする。
「......」
「......俺は洞窟の周りをちょっと見て回ってくるから、そのまま眠っとけ。意識がない方が楽だろ」
「......、......」
素直に頷くと、目の前の茶双眸がどこか不安な色を浮かべたまますっと細まった。
安心感、ぽわぽわと胸の内が温まる感覚を逃さぬように自身の体をより強く抱き締めて、睡魔に意識的に肩を寄せる。
「......んふふ、ぅぷ......」
場と自身の体調に見合わぬ心からの安堵の笑みを浮かべながら、そっと眠りについた。
そして......
「......にか、あったの......?」
「ん?」
......今現在、望桜におんぶされた状態で、望桜は何故か"開けた場所"なる所に向かっているらしい。何かあったのかな......そうぼーっとする頭の中で考えたのが、無意識のうちに声に出たらしい。
「ああ、お前を寝かせて森の中探索してたら、聖火崎の奴からテレパシーが届いてな」
「......たかさき、から......?」
「そ、聖火崎は的李と或斗、あと......鐘音と帝亜羅ちゃん、梓ちゃんとも一緒にいるらしくてな。それで、帝亜羅ちゃんからここの主らしき人物の居場所情報を得たから、とりあえず行ってみることにしたとな」
「あ、るじ......?」
「そいつを倒したらこの空間から出られるらしい。んで、この空間から出れば体調不良とかも治るらしいからな」
「......」
「でも、こっちで死んだら現実でも死ぬらしいから、それだけは注意しないとだな」
望桜から聞かされたのはどれも瑠凪が知らなかった情報だが、今更驚きもしなかった。
とりあえず早めの合流を果たすために、望桜が必死で足を動かす事およそ15分。
「......あ」
「おっそいじゃない!!」
「いやこれでも急いできた方なんだが」
向こうの茂みに人の影がいくつか見えて、そのうちの1つがこちらの動く音に反応して茂みを掻き分けこちらに向かってきた。
その1つの影は、やがて黒紫色の髪に赤い頭巾を纏った1人の少女の姿に変わり、その少女はこちらを見るや否やすぐさま不満だらけの声を上げた。
「色々言いたいことがあるんだけどね、一先ずレヴィアタンの所に行くわよ。......って、瑠凪、どうしたのよ」
そして、少女......こと聖火崎は望桜の背に乗せられた瑠凪の姿を認識し、そう言った。おんぶされている瑠凪は、今やっと意識を保っている状態だ。
そんな瑠凪の状況を察した聖火崎は、直ぐに言葉を続けた。
「ああ、あれね」
「わかってくれたんなら何よりだ。そ、あの"一定時間経ったら体の器官や機能を抜かれる"やつだよ」
「私達は今でこそ聴力とか声帯とか生死に関わる所は抜かれてないけど、そっちはまずそうね......そういえば、あなたは?」
「ん?」
「だから、あなたは、体に不調とかはないわけ?」
「......へ?あっ」
聖火崎の"ごくごくあたりまえすぎる"、"むしろなんで今まで気にしてこなかったのか不思議"な事に関しての質問内容を望桜が理解するまでに、数秒を要した。......あ、そういや俺......
「全っっ全気にしてなかったわ!!不調は......ねえ、な。うん。痛い所も痒い所も、むかむかするとかむらむらするとかもないし、魔法が使えないとか補正が働かないとかも今んとこないしな」
「......あなた、本当に不調とかはないのね?」
「ああ、ない」
「そう。ならいい......くはないわね」
「くはないな」
この摩訶不思議(?)な現象に対して、(元)魔王と勇者は互いに顔を見合わせて疑問符を頭上に浮かべる。
「......あ!聖火崎!!状況の把握やら合流やらやっている間に、残り時間がどんどん減っていってしまっているぞ!!どうするんだ!!」
「え?あ!!」
その刹那、聖火崎の後ろにいた或斗の慌てた声が聞こえてき、望桜と聖火崎は急いで時計を確認すると、
「マジだ!!あと1時間半しかねえ!!」
「やばっ!!」
時計台の針は、残り1時間24分を指していた。......まずい!!これは非常~っにはまずい!!
「早く行って倒しましょう!!リミットがなくなる前に!!」
聖火崎の掛け声を皮切りに、
「おうよ!!さっさと帰ろうぜ!!」
『今思ったのだけれど、或斗の髪色と肌に関しては誰も触れないのだね』
「......」
「急がないとね!!」
望桜、的李、瑠凪、聖火崎、
「急ぐに越したことはないよ。目的地までは僕が案内するから」
「み、みんなで力を合わせて、頑張ろうね......!」
「急ぎましょう、そうこうしてるうちにNcdonald'sの新商品が出てしまうかもしれません」
鐘音、帝亜羅、或斗は足並み揃えて歩み始めたのだった。
─────────────To Be Continued──────────────
いかにも奇々怪々な森の中、小柄な少年を背負った1人の青年が淡緑と薄紫の草をかき分けながら必死で足を進めていた。
ガクッ
「っ!!............く、そ......ッ!」
途中、足が深い草の中に紛れていた蛇か蔦かにひっかかり、大きな音を立てて顔から地面に突っ伏した。
涙と血と泥と枯葉でぐちゃぐちゃになった体を払いもせずに、拳で地面を殴りつけて小さく文句をぼやいた。
「......ぁ、ぅ......」
「っもう少しで開けた場所に出るはずだ、耐えろよッ......!!」
そのぼやきがことのほか大きかったらしく、背負われていた少年が荒い息交じりな声にもならない声を上げて意識の覚醒を青年に伝えてくる。
その声に切羽詰まった表情で一言返しつつ、青年......望桜は、再び足を動かし始めた。
「瑠凪、お願いだから死なないでくれ......!」
「......、......」
だんだんと力なく垂れ始めた少年、こと瑠凪を後ろ手で抱える腕に力を込めて、絶対に落とさないようにがっちりと抱きかかえた。
......一体何故、この2人はこんな状況に陥っているのか。
それは、各々がいきなり閉じ込められたこの空間のルールに関わる話になってくる。
この世界の細かい説明や関係ない部分についての説明を省くと、この世界にはタイムリミットがあり、それがなくなると死に至る。
しかし、なくならなくとも"一定時間が経つと体の器官や機能を持っていかれる"というルールがあり、その"一定時間"が経った時に瑠凪が突然膝から崩れ落ちたのが事の発端......というより、事の発覚であった。
「だ、大丈夫か!?」
近くの木に手をつき肩でぜえはあと息をする瑠凪の元に、酷く動揺した望桜がすぐに駆け寄った。
「う、ん......たぶ、げふっ......」
少年は必死に口を動かして返事をしようとするも、込み上げてくる血液と胃液の入り交じった吐瀉物が喉で声を邪魔して我先にと出てくるせいで、まともな返事ができない。
その様子を見兼ねて、「早く楽にしてやろう」と必死で辺りを見回してぱっと一息着けそうな場所を発見し、
「っだ、大丈夫なわけあるか!!ちょ、近くで洞窟みてえなのは......あった!!いくぞ!!抱えるからな......いち、にっ、さんっ」
「っぷ、」
「っ!!......いいぞ、吐いても。早く楽になれ」
血反吐を吐くなど余程の事がない限りは起こりえない事だが、何か特別ダメージを受けるような出来事はなかったはずだ。
現に、さっきまで2人で"安全地帯を探そう"と決めて森の中を歩いていたのだから。
「っは、ぁ......ま、お......」
「気にすんな!!」
「け、ほっ......」
ベチャッ、
「っ......」
瑠凪が1つ咳き込んで血の塊を吐いた瞬間、望桜は身体中の血の気が引いていくのをありありと感じた。さーっ......音も聞こえてきそうな程に綺麗に引いていった血の気は、しばらくの間戻らなかった。
「ぁ、ぃッ......」
「......っあ、ここに寝ててくれ!!ちょっと、他に人がいないかサーチをかけてみるから」
瑠凪の苦痛の滲む声を皮切りに、望桜の元に今何をすべきか考えられる程度に意識と冷静さが帰ってくる。
「......わ、かった............っ、」
生きている人間のものとは思えないほど色の悪い顔を苦しげに歪ませながら、瑠凪は硬くて冷たい岩の上に体を横たえた。離れていく望桜の背を眺めながら、ぐっと歯を食いしばる。
「......っぐ、ぅ......」
......自分は、この感覚を知っている。
臓器ごと手でぐっと持ち上げられていると錯覚するほどの強烈な吐き気にくらくらする頭をもたげて、呼吸する事を許してくれない、圧迫された喉から微かな息をふっと吐き出して。
いつの日かの自分も、この体の中をこの世のありとあらゆる悪を詰めた有象無象が這いずり回るような吐き気と倦怠感、疲労感と闘っていた。
お腹が空いているはずなのに口に物を入れただけで何かが込み上げてくるし、常にお腹が締め付けられるような圧迫感を感じていた。
その非常に不愉快な感覚の奥には、ただ1つ"何かを飲み込んだ"からこの感覚に陥っているのだと特定の自身の行動を責め立てる、自分なのか他人なのかも分からない何者かが不気味な笑みを浮かべている。
気持ち悪い、苦しい、もう嫌だ......
口許から静かに線を引き垂れる血を拭う事もせず、瑠凪は岩の上で丸くなる猫のように背を曲げて自分の体を両手で抱き締めた。
「瑠凪、苦しいだろうがちょっと聞いてくれ」
「......、............」
い、いよ......口の動きだけでそう伝えると、望桜は何かを察したように首を1つこくりと縦に振って静かに瑠凪の頭を撫でつけた。
「神気媒体の奴が1人と、魔力媒体の奴が6、7人ほど居そうだ。仲間だといいがな、まだ分からん」
「......、......」
ぽかぽか、あったかい......そんな気持ちを、幼子を撫でるような柔らかな動きが促した。気のせいか、気持ち悪さも幾分かましな気がする。
「......」
「......俺は洞窟の周りをちょっと見て回ってくるから、そのまま眠っとけ。意識がない方が楽だろ」
「......、......」
素直に頷くと、目の前の茶双眸がどこか不安な色を浮かべたまますっと細まった。
安心感、ぽわぽわと胸の内が温まる感覚を逃さぬように自身の体をより強く抱き締めて、睡魔に意識的に肩を寄せる。
「......んふふ、ぅぷ......」
場と自身の体調に見合わぬ心からの安堵の笑みを浮かべながら、そっと眠りについた。
そして......
「......にか、あったの......?」
「ん?」
......今現在、望桜におんぶされた状態で、望桜は何故か"開けた場所"なる所に向かっているらしい。何かあったのかな......そうぼーっとする頭の中で考えたのが、無意識のうちに声に出たらしい。
「ああ、お前を寝かせて森の中探索してたら、聖火崎の奴からテレパシーが届いてな」
「......たかさき、から......?」
「そ、聖火崎は的李と或斗、あと......鐘音と帝亜羅ちゃん、梓ちゃんとも一緒にいるらしくてな。それで、帝亜羅ちゃんからここの主らしき人物の居場所情報を得たから、とりあえず行ってみることにしたとな」
「あ、るじ......?」
「そいつを倒したらこの空間から出られるらしい。んで、この空間から出れば体調不良とかも治るらしいからな」
「......」
「でも、こっちで死んだら現実でも死ぬらしいから、それだけは注意しないとだな」
望桜から聞かされたのはどれも瑠凪が知らなかった情報だが、今更驚きもしなかった。
とりあえず早めの合流を果たすために、望桜が必死で足を動かす事およそ15分。
「......あ」
「おっそいじゃない!!」
「いやこれでも急いできた方なんだが」
向こうの茂みに人の影がいくつか見えて、そのうちの1つがこちらの動く音に反応して茂みを掻き分けこちらに向かってきた。
その1つの影は、やがて黒紫色の髪に赤い頭巾を纏った1人の少女の姿に変わり、その少女はこちらを見るや否やすぐさま不満だらけの声を上げた。
「色々言いたいことがあるんだけどね、一先ずレヴィアタンの所に行くわよ。......って、瑠凪、どうしたのよ」
そして、少女......こと聖火崎は望桜の背に乗せられた瑠凪の姿を認識し、そう言った。おんぶされている瑠凪は、今やっと意識を保っている状態だ。
そんな瑠凪の状況を察した聖火崎は、直ぐに言葉を続けた。
「ああ、あれね」
「わかってくれたんなら何よりだ。そ、あの"一定時間経ったら体の器官や機能を抜かれる"やつだよ」
「私達は今でこそ聴力とか声帯とか生死に関わる所は抜かれてないけど、そっちはまずそうね......そういえば、あなたは?」
「ん?」
「だから、あなたは、体に不調とかはないわけ?」
「......へ?あっ」
聖火崎の"ごくごくあたりまえすぎる"、"むしろなんで今まで気にしてこなかったのか不思議"な事に関しての質問内容を望桜が理解するまでに、数秒を要した。......あ、そういや俺......
「全っっ全気にしてなかったわ!!不調は......ねえ、な。うん。痛い所も痒い所も、むかむかするとかむらむらするとかもないし、魔法が使えないとか補正が働かないとかも今んとこないしな」
「......あなた、本当に不調とかはないのね?」
「ああ、ない」
「そう。ならいい......くはないわね」
「くはないな」
この摩訶不思議(?)な現象に対して、(元)魔王と勇者は互いに顔を見合わせて疑問符を頭上に浮かべる。
「......あ!聖火崎!!状況の把握やら合流やらやっている間に、残り時間がどんどん減っていってしまっているぞ!!どうするんだ!!」
「え?あ!!」
その刹那、聖火崎の後ろにいた或斗の慌てた声が聞こえてき、望桜と聖火崎は急いで時計を確認すると、
「マジだ!!あと1時間半しかねえ!!」
「やばっ!!」
時計台の針は、残り1時間24分を指していた。......まずい!!これは非常~っにはまずい!!
「早く行って倒しましょう!!リミットがなくなる前に!!」
聖火崎の掛け声を皮切りに、
「おうよ!!さっさと帰ろうぜ!!」
『今思ったのだけれど、或斗の髪色と肌に関しては誰も触れないのだね』
「......」
「急がないとね!!」
望桜、的李、瑠凪、聖火崎、
「急ぐに越したことはないよ。目的地までは僕が案内するから」
「み、みんなで力を合わせて、頑張ろうね......!」
「急ぎましょう、そうこうしてるうちにNcdonald'sの新商品が出てしまうかもしれません」
鐘音、帝亜羅、或斗は足並み揃えて歩み始めたのだった。
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“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
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