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バズれ!
しおりを挟む「あーーー、なんだよぉ、これもこんだけしか再生数伸びないのかよぉ… ちっ!!!」
それは午後の講義も終わり部室へと向かおうとしていたわたしに突然降りかかった
誰に吐くともなくひとり言のように呟かれた愚痴のような声… その言葉が終わるか終わらないかの瞬間、なにかがわたしの鞄に衝撃を与えた
ポフッ
「えっ!?」
その衝撃の正体はどこからか飛んできた空き缶だった
「あっぶないなぁー 誰よー? 今空き缶蹴ったのぉー???」
わたしは周囲に聞こえるように大きな声で威嚇した
「あ、ごめんごめん… まさか、誰かにあたるとは考えもなかったんだ… ホントにすまんっ!!!」
両手の平を顔の前で合わせて ごめんごめんのポーズをつくった男子が植え込みの陰から出てくる
「鞄だったからよかったもんの、頭とか顔とかにあたったら怪我するんだからね! 大学生になってもそんくらいの想像力働かないの!?」
わたしの剣幕に驚いたのか空き缶を蹴った男子は平謝りするばかりだった
「ほんとにごめん! ちょっとむしゃくしゃしちまってさ 八つ当たりしてしまって…情けない…」
まぁさすがにあたったのも鞄だったし怪我もなかったわけだからこれ以上とやかく言うのも器の小さい女のような気がしてわたしは怒りを収めた
「ほんとに気をつけなさいよ? わたしだからよかったものの… 怪我させてからじゃ遅いんたからね…」
「はい、すんません!!!」
「で、なににイライラしてたの? こんな八つ当たりしちゃうくらいのこと?」
「あー、これよこれ、TikTak(ティックタック)の投稿なんだけどさ、こんだけ面白いのに全然再生数伸びないし、バズりもしないんよ? 世の中見る目なさすぎ!!」
「はぁぁあ!? 呆れた…そんだけのことでイライラしてたの? バカみたい ほんと怪我しなくてよかったわ…」
理由を聞いたわたしは呆れていた
一介の素人が撮った動画がそう簡単にバズるとか思ってる神経にだ…
男子が見せてる動画を観ていて少しもおもしろいと感じるとこなどなかった
「やっぱこういうのって男よりかわいい女子のが得なんかなぁ… かわいいってだけで再生数稼げてるしな」
漏れてるひとり言が『あさはかさ丸出し』って感じで男子の軽薄そうな雰囲気に拍車をかけていた
自分の動画を観ていた男子が画面とわたしを交互にチラチラと見ている
なにやおかしなことを考えてるわけじゃないだろうな…?
不穏な空気を感じてわたしはその場を離れようと歩を進めようとした時
「ねね、おねえさん何年生!? うちの大学生だよね? ちょっとオレと動画撮らない??」
こういう時のわたしの勘は当たるんよね…
「はぁ? なに言ってんの? わたしはそんなの興味ないからっ!!!」
男子の提案を一蹴するわたしになおも食い下がる
「おねえさんみたいにかわいい女子が一緒に出てくれたらバズること間違いなし!!」
……!?
「今なんて?」
「え? どこのこと??」
「わたしが、なんて?」
「あぁ~、そこね! おねえさんみたいにかわいい女子!! か・わ・い・い!!女子!!」
わかってても弱い言葉! ちょろい女子なんて言わないで? 素通りさせるにはもったいないわたしにむかってかけられた言葉だった
「そんなこと言っても無駄だから! もうちょっと現実見よ?」
わたしは『かわいい』だけを受け止めて冷静にお断りを述べた
「やっぱダメかぁー… 男一人よりも絶対にウケがいいと思うんだけどなぁ…」
残念がってみせてはいるがそれはわたしに向けてのパフォーマンスの様にも見える
時折チラチラと上目遣いでこちらを伺う仕草がわたしにそう思わせていた
「じゃあ、わたしはこれで! 急ぐんで!!」
「えっ!? どこ行くの? ねぇ、袖触れ合うも多少の縁って言うじゃん!!」
「サークル!! 急いでんのっ!!」
「なんてサークル??」
「ミステリーサークル!!!」
わたしはここぞとばかりにミステリーサークルをアピールする
なんと言ってもミステリーサークルは大学でわたしが立ち上げたサークルだったからだ
「えっ!? あのミステリーサークル??」
意外そうな声をあげた男子
ほんの少し目の奥が輝いたように見えた
その輝きに少しも関わりたくないわたしは男子の呼び止める声を振りほどいて部室へと向かった
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