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道中
しおりを挟む目的地の廃墟へと向かう道中も灰田くんはずっとライブ配信をしていた
わたしたちは今回の案件が灰田くんによって持ち込まれたものである以上灰田くんの条件に一応従ってた
まぁマスク着用と名前は伏せるって条件をつけての撮影ってことだけはことわっておいて…
目的地の廃墟は待ち合わせの場所から徒歩で20分ほどだった
その間も灰田くんは一人で列の前や後ろへ行ったり来たりしながらずっと話してた
ぜんぜんつまんない話しでも ずっと話していられるのはスゴイと思った
配信者目指してるとか本気なんかな?なんて思ったりもした
こんだけ打ち込めるなら もっと違ったことに打ち込めてもいいのに…とも思った
ま、そんなことは大きなお世話だろうけど
深鈴も美夜ちゃんも灰田くんを上手くあしらってた
あの二人はスルー能力が高いからなぁ…
その点わたしはそういうのが苦手なんよね…
灰田くんがいちいちわたしたちに求めてくる一言にも不覚にも応えてしまっていた…
ライブ配信ということもあっていちいち返ってくるコメントを灰田くんは口に出していた
「ほら、先輩!! かわいい!ってコメントきてますよ!!」
「え、あ、どうも…」
あ、また反応してしまった…
ー プッ…
深鈴のやつまた笑ってる…
自分は灰田くんが反応求めてもそっぽ向いてスルーできるからって…
美夜ちゃんも深鈴の後ろに隠れるように歩いて灰田くんの攻撃をかわしていた
わたしの的を得ない一言よりも深鈴のナイフのような一言の方がよほど気の利いたコメントになるだろうけど、深鈴にかぎってそんな一言をライブ配信なんかで言う訳ないんだよね
こんな時わたしは自分の性格がうらめしかった…
待ち合わせ場所から少し歩くとさっきまでの景色とはガラリと変わり人気《ひとけ》もなくなり寂しい景色になってくる
ポツンポツンとあった民家もいつの間にかなくなり 眼前には鬱蒼《うっそう》とした景色が広がっていた
ここらへんからは懐中電灯が必要になってくる
それぞれ用意していた懐中電灯を鬱蒼と木々が生い茂る方へと向けた
「後少し、ここからすでに雰囲気ありますよね?」
灰田くんはスマートフォンに向けてではなくわたしたちに向かって話しかけてくる
「この辺りに儀式に使われてるようなものとかってあるのかな?」
わたしは生贄の儀式が行われていたであろう廃墟の近くまで来ている
なにか痕跡のようなものがあるのか灰田くんに聞いてみた
「えっ? あぁ~… 建物の中なんじゃないすかね? わざわざ建物の外に目印みたいなの置かないでしょ?」
「それでも特別な儀式なんだから、なんか結界みたいなのあってもおかしくないんだけどなぁ」
辺りをキョロキョロ見回しながらわたしはなにかないか探してみる
「ほら、先輩そんなことしてないで! 見えてきましたよ!!」
配信的にわたしの行為はおもしろくないのか灰田くんは先を急がせる
追いかけた先には暗闇にポツンと佇む建物が見えた
「築4~50年ってとこかしら…?」
深鈴が建物を見ながら呟く
「1980年代ってこと? そんなに古くなくない? そんな時代に生贄とか儀式とかあったのかな?」
わたしはふと疑問を口にした…
その言葉を遮るように灰田くんは大きな声で話しだした
「なにがわかるんですかぁ!? 少なくとも戦前でしょ!! この佇まいは!! やだなぁ先輩、びびってるんですか??」
少し煽り気味に話す灰田くん
ライブ配信を盛り上げようと必死なようだった
「それより、ほら 入り口に張り巡らされてたかのようなテープの後!! きっとなんかあったんですよ!!」
確かに入り口付近にはテープが貼られてた形跡があり、またそれらが剥がされて辺りに散らばってる様子が見て取れた
「ほらほら、先輩たち…ちょっと怖くなってきたんじゃないですかぁ??」
「まぁね、なんか出そうな雰囲気はあるよね…」
と、灰田くんの質問に答えたわたしはハッとして後ろを振り返った…
深鈴と美夜ちゃんはわたしと目も合わせていないどころかこっちを見てすらいなかった
ー またノッてしまってた… ー
わたしは、まんまと灰田くんのいいように反応してる気がして情けなかった…
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