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大団円
しおりを挟む「えぇーーーーーーーーーーっっつ!!??」
「じゃあ あのビリビリも、水みたいなのも、棚からモノが落ちてきたりしたのも、全部全部ヤラセなんすかぁ!?!?」
エントランスに戻ったわたしは灰田くんに今回の廃墟内での出来事とその趣旨を説明した
ちからが抜けたのか灰田くんはその場にへたりこんでしまった
驚いた声は出してたけど、自分にだけ降りかかるアクシデントが呪いの類《たぐい》ではなかったことに関しては安心してた
軽い放心状態のあと、頭の中の整理がついたのかぽつりぽつりと話し始めた
「そっか、ここも恩田《おんだ》家の管理下だったんだな…そりゃオレの企みなんて最初からバレバレだよな… そうとも知らずオレは浮かれて…先輩たちを担いでバズる動画を撮ろうとしてたんだもんな… まんまと逆にハメられてたってことかぁ…」
「そういうことだ 悪事は必ず白日の下に晒されるもんだ」
かなり唐突な登場の割には存在感をアピールする衆《しゅう》
言ってる内容あってるのか??
灰田くんの目が『誰だこいつ?』を物語ってる
とは言え、こんなごつい男に食ってかかる気力はもうないみたいだけど
「楽しい配信はいいけど、誰かに迷惑かけたりするのはよくないと思うの」
美夜《みや》ちゃんは一貫して同じことを言ってる
それが灰田くんに通じることを信じて
「はいはい、って言いたいことだけど 現実やっぱこんな配信のが視聴者数も増えるんだよな… まぁ一番は女子が多かったってことだろうけどさ」
どうやら灰田くんの考えは最後は同じとこに行き着くみたいだ せっかく行動力はあるのにそんな考えもったいない…
「もうちょっとその行動力を他のところで活かせないのか?」
衆にしてはすごくまともなこと言ってる
ただの脳筋なだけじゃなかったんだ?
「んだよ… てか、あんた誰?」
「おれは二年の生瀬《いくせ》衆《しゅう》だ ミステリーサークルとはなんの関係もないが…」
「いくせ…しゅう…? えっ!? もしかしてあのラグビーの!? あの生瀬衆さんっ!?」
え?え?なに?灰田くんもしかして衆のこと知ってんの?
「灰田くん 衆のこと知ってるの?」
「知ってるもなにもオレたちの時代の高校ラグビー界隈じゃちょっとは知られた存在でしたよ! トライ数の県内記録を十何年ぶりかに更新したりと大活躍してましたから!」
すこし興奮気味に話す灰田くん
今はラグビーやってた見る影もないほど細いんだけど…
「あぁ、あの頃は一番ノッてた時期だったからな… まぁ過去のことだ」
「オレはちっちゃい頃からラグビーが大好きで ずっとラグビーやってきたけど身体が大きくなんなくて…
だから覚えてたんすよ、生瀬《いくせ》さんの名前」
「そっか、じゃあ今はラグビーやってないんだな?」
「はい 観戦行ったりネットで観たり雑誌読んだりですかね… ちょっと離れてるだけでも身体もちっちゃくなっちゃうし…」
「そんだけ好きなんだったらこれからラグビーの楽しさを伝える配信をしてみたらどうだ? 他にもそういった配信はあるだろうが おまえなりの観点から楽しさや楽しみ方を伝えてみるのはどうだ?」
「えっ… そんなことできるかな… オレなんかなに…」
「できるか?じゃなくて、やるんだろ? ラグビーやってたんなら教わらなかったのか?」
「うん、ですよね… ほんとその通りだ! 生瀬さん、オレやってみますっ!!!」
な、なんだこの展開…
これまでのこと全部無意味じゃん…
そんなこと知ってたら最初から衆に説教してもらうだけでよかったじゃん…
衆も良いこと言ってるようで見た目は白いワンピース姿だしさ、場所も廃墟のエントランスだよ…
完全にわたしら三人置いてけぼりだし…
急にしらけたのか深鈴《みすゞ》なんか記録と称した録画をやめてTikTak《ティックタック》見始めてた
ん?美夜ちゃんは…?
あ、いた… 茶番に耐えかねたのか遠くを見ながらブツブツ文句言ってるように見える
そりゃこの展開じゃ文句も言いたくなるよね
「そういうわけで いろいろ解決したんじゃないでしょーーーかっ!!!」
衆の大っきい声が建物内に響き渡る
自分が丸く収めたみたいになってる
別にわたしたちからすればどっちでもいいんですけどー…
「意味不だが当初の目的は果たせたし、よしとするか」
深鈴もこの場を早く収めたかったんだろう
気持ちが痛いほどわかる…
わたしは深鈴を見て軽く肩を上げて、頷く…
深鈴の表情もやれやれと言った風に見えた
「あの…」
ん?わたしたちの方へ近寄ってきた灰田くんは少しバツが悪そうに見えた
「なんか、いろいろご迷惑おかけしましたっ!! 佐倉さんたちミステリーサークルのみなさんのおかげで大切なことに気づけましたっ!!」
「そっか、なら良かった じゃあこんなとこ、とっとと帰ろっ!!」
わたしはみんなに声をかける
「深鈴に、美夜ちゃん、灰田くんに衆! みんないるね! じゃいこっか!!」
「おいおい、ちょっと待て! あの娘《こ》も一緒なんだろ? おーい! 帰るぞー! 早く来ーい!!」
えっ…………
ちょっと、なに言ってんの? 衆??
わたしはそーっと美夜ちゃんの方を見る…
美夜ちゃんは首を横に振りながら小声でわたしになにかを伝えてくる
〈 ダメです… 衆さん黙らせてください… 〉
美夜ちゃんの表情…これはやばいやつだ!!!
そう判断したわたしは深鈴の方を見た
わたしとのアイコンタクトを察した深鈴は
「黙れっ! 衆ーっ!!」
の声と共に衆に回し蹴りをくらわせてた!!
ー んぐぅ………
またまた綺麗に衆のお腹の辺りに深鈴の蹴りがヒットする
うずくまる衆と その様子を驚きと唖然とした表情で見ていた灰田くん
「ほら! 出るよっ!!!」
そんな二人を後にして わたしは出口へ向かって走り出す!
ついで美夜ちゃん、深鈴が着いてくる!
えっ?えっ!?と周りをキョロキョロ見回してから 灰田くんが追いかけてくる!!!
さらにその後を声の出ない衆がよたよたと着いてきてた…
先頭のわたしは入り口のドアノブに手を延ばす!
ー ガチャッ!!!
そのまま玄関から外へ出るとしばらくの間走り続けた… 草木が鬱蒼と生い茂ってた場所から抜け出て少し舗装された外灯のある道路まで出た
「ハァハァハァ… み、みんないる…?」
久しぶりの全力ダッシュで息が切れ横っ腹が痛かった
視界も霞む
苦しいながらもみんなに声をかけた
「はぁはぁ、いるぞ」
「ハァハァハァ、います」
深鈴と美夜ちゃんの返事はすぐに聞こえた
霞んだ視界越しにおぼろげながらに姿も確認できた
ん?衆と灰田くんは!? だんだん回復してくる視界のどこにも衆と灰田くんを確認できない
キョロキョロとわたしたち三人は辺りを見回す
「衆ぅ!? 灰田くーん!?」
ー ガサガサッ
茂みの中から大きな影が飛び出したかと思うと
その影は大きな声を出した
「いるぞ!」
そこには灰田くんをお姫さま抱っこして仁王立ちする衆の姿があった
「こいつが建物から出た瞬間に転んでたからめんどくさくなって担いできた」
衆の首に手を回しながらお姫さま抱っこされてる灰田くんの姿… めざとく深鈴《みすゞ》はカメラに収めていた
廃墟を後にしたわたしたちは帰路につく
少し住居も見え始め辺りの雰囲気も変わりだした頃、灰田くんがわたしに聞いてきた
「佐倉さん、どうして急に走りだしたんですか?」
「あー、どうやら衆が見ちゃいけないもん見えてたみたいでさ…」
よく考えたら わたしも事情は把握してなかった
「美夜ちゃん 説明できる? わたしも聞きたい」
美夜ちゃんはコクっと頷いて話し始めた
「おそらく浮遊霊があの場所に住み着いてたんだと思います 静かな場所だと思ってたのに騒がしくされたもんだから怒ってたのかな…?」
「えっ………… てか恩田ってそういうの見えんの? っていうか、生瀬《いくせ》さんにも見えてたの?」
美夜ちゃんはまた小さく頷く
衆も自分じゃ気づいてないだけで見える体質らしかった
「いや、おれにはそんなやつ見えんぞ?、 ただ普通に女の人が見えてただけだ」
だからその見えてた女性《ひと》が霊だって話ししてんのっ!!!
深鈴も美夜ちゃんも呆れた顔してた
いつものことだけど衆にはある意味感心させられる
どんだけ無神経なんだ!ってね
「じゃあ その人はもういないんですね! 生瀬さん!」
灰田くんがまたわけのわかんないこと聞いてる
どうしてわたしの周りの男子はこうも天然なんだ…
「えっ? いるだろ? だっておまえおぶってるじゃん??」
………え? そう言って灰田くんの背中を指さす衆…
全員が顔を見合わせる…
そぉーっと美夜ちゃんに背中を見せるように振り向く灰田くん…
その表情は真剣そのものだ…
わたしと深鈴は美夜ちゃんの顔を見ていた…
灰田くんの背中を見た美夜ちゃんの表情は一瞬目を大きく見開き、小さくコクリと頷いた…
キャャャアァァァァァアアアッッッ!!!ッ
夜遅く路上に悲鳴が轟くと同時にわたしたちは走り出していた!! 必死の形相で灰田くんも着いてくる!! その顔は目に涙を浮かべ今にも泣き出しそうだった
走り出したわたしたちの背中にワンテンポ遅れてかけられる声が…
「お、おいっ…待てって… 待ってくれよ!!」
その声が後ろから聞こえてきたのはわたしたちが走り出して少ししてからのことだった…
おしまい?
・・・ちなみにあの後灰田くんに霊は憑いてませんでした 美夜ちゃん曰く、浮遊霊自体はあの場所から離れたくはなかったんじゃないか?とのこと
わたしたちを追い出したことで浮遊霊さんにしても目的を達成できたと言うことでしょう
それぞれみんな目的を達成できて、めでたしめでたし!と言ったところでしょうか!!
あと、どうでもいいことですが 今回はずっとマスクをつけてたので深鈴に『鼻の穴ツッコミ』をくらうことはほぼありませんでした!
ほんとの おしまい
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