ペンダントの中の猫時間―失恋OL、時々猫。運命をくしゃみで変えてみせます。―

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第3にゃ‐3 「彼の秘密 ― 白猫ミオの記憶」

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ー[悠真のマンション・夕暮れ]ー

窓の外の光が、赤く傾いていた。
カーテンの端から差し込む光が、床を細く照らす。
空気の中に、夏の終わりの匂いが残っている。

みさとはソファの背から悠真を見下ろしていた。
パソコンを閉じた彼の横顔。
どこか遠くを見ているような、沈んだ目。

(……いつもより、静かだにゃ)

「悠真さん、どうしたにゃ?」
思わず声に出してしまう。

「ん?」
彼は小さく笑った。
「また“にゃ”って……不思議な口癖ですね」

「う……えっと、癖、かも」
(あぶない……猫のクセが抜けてない)

沈黙。
ふたりの間に、小さな光の粒が漂うような時間が流れる。

やがて悠真が、棚の上の古い写真立てを手に取った。

「これ、見たことあります?」

白黒の写真。
そこには、小さな女の子と、一匹の白猫が写っていた。

「……ミオ?」
みさとの唇が、勝手に動いた。

悠真が驚いたように顔を上げる。
「え……? 今、なんて?」

「えっ!? ち、ちが……!」
(しまったにゃ! 思わず口に出した!)

彼は写真を見つめ直す。
「ミオ……それが、この猫の名前です。
 妹がつけた名前でした」

彼の声が、少し掠れた。
窓の光が彼の頬を照らし、その影がわずかに震えた。

「妹は、病気で小さい頃に亡くなって。
 ミオも……その少し後に、いなくなりました。
 俺が守れなかった、たったふたつの存在です」

言葉が静かに落ちる。
みさとの胸の奥で、鈴が鳴った気がした。

(……守れなかった? 違うにゃ。
 あたし、あなたを守りたくて――)

その瞬間、ペンダントが強く光った。
悠真の手の中の写真が、淡く輝く。

二人の間に、過去の影が揺れる。
そこには、幼い悠真と妹、そして――
同じ白猫が寄り添っていた。

「……にゃんで、あたし……泣いてるの?」

気づけば、頬に涙が伝っていた。

悠真が手を伸ばし、ハンカチを差し出した。
「泣くような話じゃないのに……」

「ううん。……泣くにゃ。だって……」
言葉が詰まる。
彼にはまだ、みさとが“あの白猫”だとは伝わらない。

それでも、心が伝えた。
静かに、確かに。

悠真が微笑む。
「……ありがとう」

ー[余韻]ー

光がゆっくりと沈み、
窓の外で、風鈴が鳴った。
ペンダントが淡い金色を放ち、
部屋の空気が一瞬、過去と重なった。

みさとは目を閉じ、
ぽつりと口からもらした。

「……あたし、あなたをひとりにしないにゃ」

その言葉に応えるように、
鈴の音が、静かに夜へと溶けていった。
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