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俺一人で攻めるとか聞いてねぇよ!?
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「うおぉぉぉぉぉぉっ!!」
メイルード王国王都の戦い。
当然だけど、王都って高い壁に囲まれてんのね。んで、高い壁をどうにか攻略して、城門を開いて、どうにか侵入しなきゃいけないわけ。
破城槌でどうにか門を叩いて開くとか、壁の下から穴を掘って進むとか。
あとは、あれな。縄上りをして上から侵入して、中から扉を開けちゃうやつね。
で、当然ながら俺は縄上りをしているわけだ。
他の連中まで死にそうな目に遭わなくてもいいよ、と優しい俺は伝えてやった。『切り込み隊』隊長のドルガーからは、随分と感謝された。
ただね、俺は縄上りは俺がやるって言ったの。
城攻めはちゃんとやって、敵の気は引きつけておいてくれって意味だったの。
「矢を放て! 全軍だ! 敵はたった一人だ!」
「石を投げろ! 何でもいい! 奴を止めるために落とせ!!」
「いけぇっ!!」
決してな。
俺一人で全部やるって意味じゃねぇんだよ!!!
なんで俺が縄上りしてるの、ちょっと遠巻きで見てんだよ第五師団!?
「いけー」
「がんばれー」
「すげー」
「うおぉぉぉぉぉぉぉっ!!」
放たれてくる矢を躱し、投げられてくる石を弾き飛ばし、落とされてくる槍を掴んで投げ返し、かけられてくる油を避ける。
次第に、その数も種類もどんどん豊富になっていく。熱した油が入っていたはずの鍋が落ちてきたり、油を撒くための柄杓が落ちてきたり、挙げ句の果てには兵士が数人、並んで落ちてきた。当然ながら、避けて真っ逆さまに落ちてもらった。
確かに、アルードの関で、かなりの被害を出したよ。
トスカル平野で、ほとんど敵兵は壊滅したよ。
でもな、王都に敵兵がいねぇってわけじゃねぇんだよ。それなりに残ってんだよ。この感じだと多分二千人くらいいるんだよ。
だからさっさと動けよ第五師団!?
「だぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
何度も第五師団の方をチラ見するけれど、全く動く気配がない。
師団長ジュリアンは、無表情でこちらを見ているだけだ。その周辺の兵士たちは、談笑しているくらい平和な光景である。
俺、第五師団に派遣された援軍だったはずなんだけど。援軍ってどういう意味か分かってるよなアイツ。
もう、腹立つ。お前がジュリアと名前が似てるってのがもう腹立つ。もうあいつ、バカ師団長でいいや。
あ、『切り込み隊』のドルガーが、バカ師団長のところに行った。
何か話してる。多分、俺一人に任せるんじゃなくて、ちゃんと全軍で行こう、って提案してくれてるんだと思う。
バカ師団長、首振ってる。
ドルガーはさらに何か言ってるけど、バカ師団長が怒鳴りつけた様子だ。
んで、やっぱ動かねぇのかよ!?
何しに戦場来てんだ!?
「ぜぇっ、ぜぇっ……!」
そうこうしているうちに、どうにか俺、壁の上に到着。
普段の縄上りの、多分五倍くらいは物が落ちてきた気がする。マジで疲れた。なんで俺、こんなに命張ってんの?
「き、きたっ! 死神が来たぁっ!!」
「ひぃっ!!」
「逃げろっ! 殺されるっ!」
「こ、降伏! 降伏しますっ!!」
戦斧を構えた俺に対して、向かってくる敵兵はいなかった。
むしろ、完全に戦意は喪失した様子だ。とりあえず、降伏と言った敵兵に対しては無闇に手を出さないのが戦場でのルールである。
疲れたけど、もうこれ以上戦わなくても良さそうだ。
「お前、降伏するんだな?」
「は、はいっ! 降伏しますっ!」
「よし。それじゃ、門までどう行くか俺を案内しろ」
「わ、分かりましたっ!!」
既に戦意を失い、跪く数名の敵兵。
まぁ、彼らは降伏したことだし、第一師団や第二師団の『切り込み隊』に新しい要員として送ればいいだろう。一万五千のガーランド軍に対して、二千程度しかいない王都の守備兵、それに加えてこれから門が開くとなれば、降伏したい気持ちは分からないでもない。
あとは王族さえ逃がさなければ、この国は陥落だろう。
ちゃんと逃げ道を押さえるように、第六師団と第七師団は、それぞれ別の門の前で待機している。それぞれ、城門から出てくる者は全員捕縛するように指示を与えられているらしい。
「はー……やっと終わるか」
体感では長い戦いが、ようやく終わってくれる。
思えば、今回の戦も無茶苦茶だったなぁ。なんで俺、城攻めしてるのに部隊の協力が何一つないんだよ。
バカ師団長、完全に俺殺す気じゃん。
「こ、こちらの階段を降りると、地上に出ますっ!」
「おう、ありがとう。お前らから先に行け」
「は、はいっ!」
俺は後方を警戒しつつ、降伏兵たちを先に行かせる。
これは、俺だけが先に行って、正面の敵と合わせて挟み撃ちに遭うことを危惧してだ。さすがに俺も、全方位を確認できる目があるわけじゃない。
とりあえず降りるまで後方を警戒して、その後前方を警戒すれば、敵が視認できる範囲でおさまってくれる。
幸い、他の兵士たちも戦意を喪失しているためか、ほとんど抵抗する者はいなかった。
「よし、それじゃ門を開けろ」
「は、はいっ!!」
降伏兵の一人にそう命じ、何かの機構を動かし始める。恐らく、ぜんまい仕掛けで門の開閉を行っているのだろう。
ぎぃぃっ、と軋む音を立てて、ゆっくりと門が開いていく。それと共に、門から真正面にいる第五師団が動くのが見えた。
ったく。
労いの言葉くらい、掛けてもらわなきゃ困るっての。
この件、ちゃんとデュラン総将軍に報告するからな。この部隊でいじめ起こってます、俺に、って。
「……ん?」
だが、そこで俺は違和感を覚える。
第五師団の行軍速度――それが、妙に速いのだ。
騎馬兵を先頭に、まるで『切り込み隊』は置いてきたかのように。
ただ、入城するというだけのことで――。
「えっ……」
「うぉぉぉぉぉぉぉっ!!」
騎馬兵の雄叫び。
ここにいる敵兵は、全員俺に対して降伏してきた。そして門が開いた以上、この戦争はこちらの勝利だ。
あとは、兵を街の中に入れて、適宜制圧していくだけのこと。
だというのに――。
「皆殺しにしろぉっ!!」
そう、バカ師団長の叫ぶ声が聞こえると共に。
俺の近くにいた降伏兵――その首が、飛んだのが分かった。
メイルード王国王都の戦い。
当然だけど、王都って高い壁に囲まれてんのね。んで、高い壁をどうにか攻略して、城門を開いて、どうにか侵入しなきゃいけないわけ。
破城槌でどうにか門を叩いて開くとか、壁の下から穴を掘って進むとか。
あとは、あれな。縄上りをして上から侵入して、中から扉を開けちゃうやつね。
で、当然ながら俺は縄上りをしているわけだ。
他の連中まで死にそうな目に遭わなくてもいいよ、と優しい俺は伝えてやった。『切り込み隊』隊長のドルガーからは、随分と感謝された。
ただね、俺は縄上りは俺がやるって言ったの。
城攻めはちゃんとやって、敵の気は引きつけておいてくれって意味だったの。
「矢を放て! 全軍だ! 敵はたった一人だ!」
「石を投げろ! 何でもいい! 奴を止めるために落とせ!!」
「いけぇっ!!」
決してな。
俺一人で全部やるって意味じゃねぇんだよ!!!
なんで俺が縄上りしてるの、ちょっと遠巻きで見てんだよ第五師団!?
「いけー」
「がんばれー」
「すげー」
「うおぉぉぉぉぉぉぉっ!!」
放たれてくる矢を躱し、投げられてくる石を弾き飛ばし、落とされてくる槍を掴んで投げ返し、かけられてくる油を避ける。
次第に、その数も種類もどんどん豊富になっていく。熱した油が入っていたはずの鍋が落ちてきたり、油を撒くための柄杓が落ちてきたり、挙げ句の果てには兵士が数人、並んで落ちてきた。当然ながら、避けて真っ逆さまに落ちてもらった。
確かに、アルードの関で、かなりの被害を出したよ。
トスカル平野で、ほとんど敵兵は壊滅したよ。
でもな、王都に敵兵がいねぇってわけじゃねぇんだよ。それなりに残ってんだよ。この感じだと多分二千人くらいいるんだよ。
だからさっさと動けよ第五師団!?
「だぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
何度も第五師団の方をチラ見するけれど、全く動く気配がない。
師団長ジュリアンは、無表情でこちらを見ているだけだ。その周辺の兵士たちは、談笑しているくらい平和な光景である。
俺、第五師団に派遣された援軍だったはずなんだけど。援軍ってどういう意味か分かってるよなアイツ。
もう、腹立つ。お前がジュリアと名前が似てるってのがもう腹立つ。もうあいつ、バカ師団長でいいや。
あ、『切り込み隊』のドルガーが、バカ師団長のところに行った。
何か話してる。多分、俺一人に任せるんじゃなくて、ちゃんと全軍で行こう、って提案してくれてるんだと思う。
バカ師団長、首振ってる。
ドルガーはさらに何か言ってるけど、バカ師団長が怒鳴りつけた様子だ。
んで、やっぱ動かねぇのかよ!?
何しに戦場来てんだ!?
「ぜぇっ、ぜぇっ……!」
そうこうしているうちに、どうにか俺、壁の上に到着。
普段の縄上りの、多分五倍くらいは物が落ちてきた気がする。マジで疲れた。なんで俺、こんなに命張ってんの?
「き、きたっ! 死神が来たぁっ!!」
「ひぃっ!!」
「逃げろっ! 殺されるっ!」
「こ、降伏! 降伏しますっ!!」
戦斧を構えた俺に対して、向かってくる敵兵はいなかった。
むしろ、完全に戦意は喪失した様子だ。とりあえず、降伏と言った敵兵に対しては無闇に手を出さないのが戦場でのルールである。
疲れたけど、もうこれ以上戦わなくても良さそうだ。
「お前、降伏するんだな?」
「は、はいっ! 降伏しますっ!」
「よし。それじゃ、門までどう行くか俺を案内しろ」
「わ、分かりましたっ!!」
既に戦意を失い、跪く数名の敵兵。
まぁ、彼らは降伏したことだし、第一師団や第二師団の『切り込み隊』に新しい要員として送ればいいだろう。一万五千のガーランド軍に対して、二千程度しかいない王都の守備兵、それに加えてこれから門が開くとなれば、降伏したい気持ちは分からないでもない。
あとは王族さえ逃がさなければ、この国は陥落だろう。
ちゃんと逃げ道を押さえるように、第六師団と第七師団は、それぞれ別の門の前で待機している。それぞれ、城門から出てくる者は全員捕縛するように指示を与えられているらしい。
「はー……やっと終わるか」
体感では長い戦いが、ようやく終わってくれる。
思えば、今回の戦も無茶苦茶だったなぁ。なんで俺、城攻めしてるのに部隊の協力が何一つないんだよ。
バカ師団長、完全に俺殺す気じゃん。
「こ、こちらの階段を降りると、地上に出ますっ!」
「おう、ありがとう。お前らから先に行け」
「は、はいっ!」
俺は後方を警戒しつつ、降伏兵たちを先に行かせる。
これは、俺だけが先に行って、正面の敵と合わせて挟み撃ちに遭うことを危惧してだ。さすがに俺も、全方位を確認できる目があるわけじゃない。
とりあえず降りるまで後方を警戒して、その後前方を警戒すれば、敵が視認できる範囲でおさまってくれる。
幸い、他の兵士たちも戦意を喪失しているためか、ほとんど抵抗する者はいなかった。
「よし、それじゃ門を開けろ」
「は、はいっ!!」
降伏兵の一人にそう命じ、何かの機構を動かし始める。恐らく、ぜんまい仕掛けで門の開閉を行っているのだろう。
ぎぃぃっ、と軋む音を立てて、ゆっくりと門が開いていく。それと共に、門から真正面にいる第五師団が動くのが見えた。
ったく。
労いの言葉くらい、掛けてもらわなきゃ困るっての。
この件、ちゃんとデュラン総将軍に報告するからな。この部隊でいじめ起こってます、俺に、って。
「……ん?」
だが、そこで俺は違和感を覚える。
第五師団の行軍速度――それが、妙に速いのだ。
騎馬兵を先頭に、まるで『切り込み隊』は置いてきたかのように。
ただ、入城するというだけのことで――。
「えっ……」
「うぉぉぉぉぉぉぉっ!!」
騎馬兵の雄叫び。
ここにいる敵兵は、全員俺に対して降伏してきた。そして門が開いた以上、この戦争はこちらの勝利だ。
あとは、兵を街の中に入れて、適宜制圧していくだけのこと。
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