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2話 来客
翌朝目覚めた汐季は、覚醒するなり勢いよく飛び起きて周囲を見回した。昨夜の出来事が夢ではない事を確認するためだった。
しかし、そんな行為は杞憂に終わった。汐季が眠っていたのは、村長の家の薄い布団でも、冷たい土の上でもない。立派なお屋敷の、上等な布団の中だった。寝室の奥の閉じた障子越しに、まだか細い朝の光が差している。隣の布団では、昨日の少年が気持ち良さそうな寝息を立てていた。
その寝顔を見届けた汐季は、物音を立てないようにそっと布団を抜け出し、寝室を後にした。
*
「汐季……? 汐季、ここに居るのか?」
板の間の外から聞こえてきた不安げな声に驚いて、汐季は慌てて木戸に駆け寄った。
「旦那様? どうかなさいましたか」
閉め切っていた木戸を開いて顔を出した汐季を見た途端、戸の前に所在なく立っていた少年は、明らかにホッとした様子で息を吐いた。
「良かった。どこかに行ってしまったのかと思った」
そう言って、素足をぺたぺた言わせながら板の間に入ってくる彼の姿は、見た目以上に幼い子供のようだ。
「どこへも行ったりしませんよ」
他に行くところなんて無いんですから。という言葉は心の底に仕舞っておく。曖昧な表情で微笑む汐季を見上げて、少年は首を傾げた。
「料理をしていたのか」
「あ、はい……」
土間の方にちらりと目をやって、汐季は少し語尾を濁した。朝一番に火をくべた竈の上では、二人分の白米が炊かれている。
「ん、どうした? ここにある食べ物は何でも好きに使って良いぞ。取っておいても傷んでしまうだけだからな」
「……本当によろしいのですか?」
「なに?」
「いえ、その……何でもない日なのに、こんな贅沢をしてしまって良いのでしょうか」
少年が「好きに使っていい」と言った食材は、どれも汐季が住んでいた村では滅多に食べられない贅沢品ばかりだった。干した魚に、丸々とした大根。混ぜ物をしていない白米だって、祭りの日くらいしか食べられなかった。日々の食事は、麦飯に漬け物でも添えてあれば良い方だったのだ。
戸惑いを顕にする汐季を見て、少年は不思議そうな顔をする。
「何を指して“贅沢”と言っているのかよく分からないが、今日は何でもない日なんかじゃないぞ。僕と君が夫婦になった日じゃないか」
「……夫婦」
口の中で、少年の言葉を繰り返す。自分は彼に娶られたのだと、何度言われても実感が湧かない。だって、目の前に立っているのは、汐季よりずっと幼く見える少年であり、汐季は身も心も、産まれた時から男性だ。いくら沙恵の身代わりに育てられたと言っても、産まれ持った性質はそう簡単に変わらない。少年のことを「旦那様」と呼んでいるのだって、奉公先の主人に接するような感覚だった。
それに対して、子牛のようにくりくりとした瞳でこちらを見あげている少年の表情には、迷いも疑問もまるで感じない。男女の違いなんて些細なことだと彼は言っていたが、そんなふうに言いきれてしまうのは、やはり彼が人間ではないからなのか。
「汐季? 何を考えているんだ」
「あ、いえ……今までの暮らしとまるで違うので、どうしても戸惑ってしまって……すみません」
「汐季……」
少年が汐季の名を呼んで、こちらに一歩近づいてきたかと思うと、不意に温かな感触に包まれた。
「旦那様……?」
「そうだったな。君はここに来たばかりの、ごく普通の人間だ。僕らとは何もかも違う」
汐季を正面から抱き締めて、少年はそう言った。“僕ら”という事は、ここには彼以外にも人ではない者が暮らしているのだろうか。それを思うと怖くなる。住む家が変わったどころではない。自分は全くの別世界に来てしまったのだと、改めて思い知らされるからだ。
「汐季」微かな吐息が、胸元をくすぐる。「何があっても、僕がずっと一緒に居るから」
とくとくと伝わってくる鼓動は、汐季のそれと同じ間隔で脈打っている。彼が人でなかったとしても、この小さな体には、人と同じ血が流れているのだろう。
見知らぬ場所で、出会ったばかりの相手とこれからの人生を共にすること。どうやらここは、今まで暮らしていた世界とは外れた場所にあるらしいこと。不安を数え上げればキリがない。
けれど、ぬくもりを分け与えてくれるこの人の事は、少し好きになれる気がした。
それから、新しい家での汐季の暮らしが始まった。朝の食事の支度に始まり、屋敷の中や庭を隅々まで掃除して、また二人分の食事を用意して、洗濯をして……その繰り返しで日が暮れていく。けれど、朝から晩まで土に塗れて畑や家畜の世話をする事に比べれば、どれも遥かに楽な仕事だった。
そうして、汐季が少年の家で暮らし始めてから三日が過ぎた昼のこと。汐季は淹れたばかりの煎茶を盆に乗せて、少年がいる奥座敷へと向かっていた。どうやらこの家は山奥にぽつんと一軒だけで建っているようで、三日の間に来客もなく、こうして茶を淹れるのは、もっぱら少年だけのためだった。
「お茶をお持ちしました」
「……ああ、入っていい」
廊下に正座して返事を待ってから襖を開くと、座敷の中央で机に向かい、作業に勤しんでいる少年と目が合った。
「そこに置いておいてくれ」
「はい」
言われた通り、座卓の端の邪魔にならない場所に湯呑みを置くと、周りに散らばっている雑多な物が自然と目に入った。
「気になるか?」
少年に問われて、汐季は素直に頷いた。
「こんなに綺麗な細工物は、見たことがありませんから」
少年の手元で次々に生まれていく、真っ青なつまみ細工の花びらから目を離せないまま、汐季はそう答えた。
この三日間で、少年について分かった幾つかの事がある。その中のひとつが、彼は簪を作る職人であるという事だった。男にしては小さい手が器用に動き、ただの布切れから美しい花々を生み出していく様子は、まさしく人智を越えた力のように思えて、いつまで見ていても飽きない。少年の邪魔にならない程度に、その作業を見守ることが、汐季の小さな楽しみになりつつあった。
「そんなに気に入ったなら、ひとつ持って行くと良い」
「……えっ?」
少年の作業をじっと見つめていた汐季は、予想していなかった言葉に驚いて、手に持っていた盆を取り落としそうになった。
「君なら、あまり派手すぎない物の方が似合いそうだな。……これはどうだ? 蝶を模した物だが」
「そんな……そんなつもりで見ていた訳ではありません! それに、それは商品として卸す物でしょう? 私がいただく訳には……」
「そんなことは気にしなくて良い。僕が買い取ったという形にすれば、何の問題も無い」
「それなら尚更いただけません……!」
汐季が頑なに受け取ろうとしないせいか、少年は少し苛立ったように簪を掴んだ。
「僕が良いと言っているんだから、君は気にせず受け取れば良い! ほら!」
半ば無理やり簪を握らされ、汐季は気圧されるようにそれを受け取った。しかし、簪を手にしたまま困った顔をする汐季を見て、不機嫌顔だった少年は、ややバツが悪そうに目を逸らした。
「……きっと似合うと思う、から……受け取って欲しい」
「旦那様……」
そんなふうに叱られた子供のような顔をされてしまっては、無下に断ることも出来ない。
「……ありがとう、ございます。大切にします」
汐季がどうにか微笑んだのを見て、少年は少し安心したようだった。
「うん。あとで着けてみせて欲しい」
さっきまでとは打って変わった幼い口調で言って、少年も微笑んだ。時おり言葉尻がキツくなる時もあるが、根は悪い人ではないのだろうなと思う。
「それじゃあ、僕は作業に戻るから」
「はい。お邪魔しました」
少年が作りかけの簪を手に取ったので、汐季も頭を下げて座敷を出ようとした。しかし、その直前で少年に呼び止められる。
「汐季、ちょっと待ってくれ」
「はい? 何でしょうか」
「今日は夕方から来客があるから、その間君は寝室にこもって、外に出ないように」
またしても予想外の言葉を告げられ、汐季は瞳を瞬かせた。
この屋敷に客が来る。それは、汐季がここで暮らし始めて以来初めての事だ。どんな人物がやって来るのか。そのヒトは果たして人間なのか。興味は尽きないが、この屋敷の主である少年が「部屋から出るな」というなら仕方ない。
「わかりました」
小さく頷いて、汐季はもう一度頭を下げた。
*
座敷の隣に位置する寝室に戻った汐季は、部屋の隅にある鏡台に向かい、自分の顔と見つめ合っていた。以前、沙恵の身支度を手伝った時の事を思い出して、見よう見まねで髪を結って簪を挿してみたが、果たしてこれで良いのだろうか。男の自分がこんなふうに自らを飾り立てるのは、やはりおかしな事ではないだろうか。
ため息を吐きたい気持ちをぐっと堪えて、鏡の中の自分を見返す。背中にかかるほど長かった髪を、うなじの辺りで団子のように纏めただけだが、それでも普段の自分とは別人のように思えた。少年がくれた簪は、親指ほどの大きさをした空色の蝶があしらわれていて、控えめな美しさを抱いている。
本当なら、この美しい簪は沙恵の物になるはずだった。簪だけじゃない。大きな屋敷で暮らして、毎日のように湯船に浸かり、温かな食事を口にして、柔らかな布団で眠る。そんな贅沢な暮らしの全てが、彼女の物になるはずだった。それを思う度に、苦しくなる。
沙恵だって、今頃は嫁入り支度で忙しくしているはずなのだ。大きなお店の女将さんになって、すぐに今の汐季と同じくらい良い暮らしをするようになる。だから汐季が罪悪感を抱く必要なんてない。
どうせ自分は、向こうでは死んだ人間なのだ。沙恵とも、もう二度と関わる事は無い。あの人と自分は、何の関係もない赤の他人だ。
そうやって何度も何度も言い聞かせる度に、胸を裂かれるような気持ちになるのは、何故なのだろう。
鏡台に手をついて俯いていた汐季の耳に、ふと、遠くで誰かが話す声が微かに届いた。先程少年が言っていた客人が来たのだろうか。落ち込んでいた気持ちを誤魔化すように、汐季は会話を聞き取れないかと耳を澄ませてみた。けれど、部屋の中からでは声がくぐもってよく聞こえない。そのもどかしさに、更に好奇心が募っていく。
この世界には、少年の他にどんなヒトが暮らしているのだろう。彼とは違う明らかな異形かもしれないと考えると、怖いと思う気持ち以上に、より一層興味が掻き立てられる。
少年と二人きりの暮らしに、自分でも気づかないうちに寂しさを募らせていたのだろう。汐季は部屋の襖に手をかけて、少しだけ外を覗いてみた。
「ほう。あんたが螢花の伴侶か」
「……えっ」
その瞬間、背後から聞こえた耳慣れない声に驚いて、汐季はぎくりと体を強ばらせた。今の今まで室内には自分しかいなかったし、他の襖が開いた気配も無かったのに、なぜ部屋の中から声が聞こえるのか。
「へえ……なかなか別嬪さんじゃないか。あいつも隅に置けないな」
怖々と振り向いた汐季の顔を覗き込んで、その人物は面白そうに笑った。
その人は、とても美しい女性だった。ゆるく波打った艶やかな黒髪は腰まで届くほど長く、異国の人のようにくっきりとした目鼻立ちには意志の強さを感じた。唇に引いた真っ赤な紅と同じ色の着物には、金糸で刺繍された鳳凰が羽ばたいている。だが、そんな派手派手しい装いに比べても、彼女自身が放つ華やかさは全く見劣りしない。
「あ、あの……」
戸惑いを滲ませる汐季の声を遮るように、今度は廊下の方からドタバタと騒がしい足音が近づいてくる。
「鸛良! 勝手に居なくなるな! 勝手に寝室に入るな! 勝手に僕の伴侶に話しかけるな!!」
肩を怒らせながら駆け込んで来た少年が、座り込んだままの汐季を挟んで、謎の女性を怒鳴りつける。しかし、当の女性は涼しい顔だ。
「大きな声を出すなよ、螢花。お前の大事な伴侶が怯えてるぞ。それに、こんなに可愛い子を独り占めしようだなんて、狡いじゃないか。私にも挨拶くらいさせてくれよ」
そう言って、女性は汐季の元に一歩近づいて膝をついた。
「初めまして、私の名前は鸛良だ。螢花とは長い付き合いでね。こいつが作った簪は、全て私の店に置かせてもらってる。今日もその仕入れのために来たんだ」
「あ……お、お初にお目にかかります。汐季と申します」
慌てて姿勢を正して名乗ってから、汐季はおずおずと顔を上げた。
「あの……ケイカというのは……」
「ん? なんだ、螢花は伴侶に名前も教えていないのか」
鸛良の言葉に、汐季の背後から苦々しげなため息が聞こえてくる。確かに、汐季は未だに少年の名前を知らなかった。同じ家に暮らしているとは言え、神と呼ばれている者の名前を軽々しく呼ぶのは、なんとなく憚られたからだ。
しかし、そんな汐季の気も知らず、鸛良は気安い調子で彼の名前を口にする。
「こいつの名前は螢花だよ。螢の花と書いて“ケイカ”と読む」
「螢の、花……」
口の中で呟いて、背後を振り返る。
「とても美しいお名前ですね」
「ああ、私もそう思う」
鸛良の満足気な声が聞こえたが、螢花本人は苦虫を噛み潰したような表情のままだ。
「もう商品は渡したんだから用は済んだだろう。早く帰れ」
「おいおい、そう邪険にするなよ。それと、さっき受け取った分を確認したが、いつもよりひとつ少なかったぞ」
「それはさっき汐季に贈った分だ。その分の代金は引いておいてくれ」
「……へえ? なるほどね」
鸛良はちらりと汐季の髪に視線をやって、ニヤリと笑った。
「分かった、そういう事なら代金はそのままにしておこう。祝儀の代わりだ」
「ふん。安い祝儀だな」
「お前はいつまで経っても、自分が作る物の価値を理解しないな」
やれやれと肩をすくめて、鸛良はようやく立ち上がった。
「さて、それじゃあ仕方ないから今日のところは二人きりにしてやるよ。またな、汐季」
「汐季の名前を気安く呼ぶんじゃない!」
地団駄を踏む螢花を見て笑いながら、鸛良はヒラヒラと手を振って、廊下とは反対にある、庭に面している方の障子を開けた。
「邪魔したな」
その言葉と共に障子が閉められた直後、その向こうに映っていた彼女の影が、一瞬で消えた。
「え……っ」
驚いた汐季が慌てて障子を開けに行ったが、そこにはもう誰も居なかった。鸛良は草履すら履いていなかったはずなのに、この一瞬で一体どうやって、どこに消えたのか。
「汐季、風が冷たい」
「あ、すみません」
螢花が顔を顰めたので、汐季は首を捻りながら再び障子を閉めた。普通の人間に見えたが、やはり鸛良も人間ではないのだろうか。
「汐季」
「は、はい」
「そんなにあいつが気になるか?」
露骨に不機嫌そうな螢花の表情に、汐季は思わず口ごもった。
「その……ここへ来てから、螢花様以外の方に初めてお会いしたので、つい……」
汐季のその発言を聞いた瞬間、螢花は驚いたような顔をした。
「君、今僕の名前……」
螢花の指摘に、ハッとして口を噤む。
「申し訳ありません、勝手にお名前を……」
「いや」
汐季の言葉を遮って、螢花は視線をさまよわせる。
「別に、君の好きに呼んで構わない……ただ、あいつと、あいつの家族以外に、その名前を呼ばれたことが無かったから、少し不思議な気がしただけだ」
螢花はそう言ったきり、すっかり黙り込んでしまった。
「螢花様……?」
自らの足元に視線を落としたきり、何も言わない螢花にそっと近づいて、その頬に軽く触れてみる。想像よりも冷たいその感触に、なぜか寂しくなって、どうにか温められないかと、柔らかな頬を両手で包んだ。
「……くすぐったい」
「ふふ」
こんなふうに誰かと触れ合うのはいつぶりだろう。手のひらから伝わる人肌の感触に、自然と頬が緩んだ。
「……なあ、汐季」
「はい。なんでしょう」
「汐季……君はこれからずっと、僕と一緒に居てくれるか? ……何があっても」
つい先日、螢花は汐季に「何があっても一緒に居る」と約束してくれた。そして今度は、汐季自身の覚悟を問われているような気がして、思わず息を飲んだ。けれど、問いの答えは汐季の中でとうに決まっている。
「もちろん。私はいつまでだってここに……貴方のそばにおりますよ」
その返答に、螢花は心の底から安心したように笑った。
螢花は、汐季のことを家族だと言ってくれた。そんな人に、孤独を味わわせる様なことはしたくない。家族のいない寂しさは、誰よりも分かるつもりだから。
けれど、そう遠くないうちに、汐季はこの日の答えをひどく後悔する事になる。
“何があっても”。螢花がどんな思いで、その言葉を繰り返し口にしたのか、この時の汐季は理解していなかった。
人でない者と共に生きるという事の意味を、彼はまだ知らなかったのだ。
しかし、そんな行為は杞憂に終わった。汐季が眠っていたのは、村長の家の薄い布団でも、冷たい土の上でもない。立派なお屋敷の、上等な布団の中だった。寝室の奥の閉じた障子越しに、まだか細い朝の光が差している。隣の布団では、昨日の少年が気持ち良さそうな寝息を立てていた。
その寝顔を見届けた汐季は、物音を立てないようにそっと布団を抜け出し、寝室を後にした。
*
「汐季……? 汐季、ここに居るのか?」
板の間の外から聞こえてきた不安げな声に驚いて、汐季は慌てて木戸に駆け寄った。
「旦那様? どうかなさいましたか」
閉め切っていた木戸を開いて顔を出した汐季を見た途端、戸の前に所在なく立っていた少年は、明らかにホッとした様子で息を吐いた。
「良かった。どこかに行ってしまったのかと思った」
そう言って、素足をぺたぺた言わせながら板の間に入ってくる彼の姿は、見た目以上に幼い子供のようだ。
「どこへも行ったりしませんよ」
他に行くところなんて無いんですから。という言葉は心の底に仕舞っておく。曖昧な表情で微笑む汐季を見上げて、少年は首を傾げた。
「料理をしていたのか」
「あ、はい……」
土間の方にちらりと目をやって、汐季は少し語尾を濁した。朝一番に火をくべた竈の上では、二人分の白米が炊かれている。
「ん、どうした? ここにある食べ物は何でも好きに使って良いぞ。取っておいても傷んでしまうだけだからな」
「……本当によろしいのですか?」
「なに?」
「いえ、その……何でもない日なのに、こんな贅沢をしてしまって良いのでしょうか」
少年が「好きに使っていい」と言った食材は、どれも汐季が住んでいた村では滅多に食べられない贅沢品ばかりだった。干した魚に、丸々とした大根。混ぜ物をしていない白米だって、祭りの日くらいしか食べられなかった。日々の食事は、麦飯に漬け物でも添えてあれば良い方だったのだ。
戸惑いを顕にする汐季を見て、少年は不思議そうな顔をする。
「何を指して“贅沢”と言っているのかよく分からないが、今日は何でもない日なんかじゃないぞ。僕と君が夫婦になった日じゃないか」
「……夫婦」
口の中で、少年の言葉を繰り返す。自分は彼に娶られたのだと、何度言われても実感が湧かない。だって、目の前に立っているのは、汐季よりずっと幼く見える少年であり、汐季は身も心も、産まれた時から男性だ。いくら沙恵の身代わりに育てられたと言っても、産まれ持った性質はそう簡単に変わらない。少年のことを「旦那様」と呼んでいるのだって、奉公先の主人に接するような感覚だった。
それに対して、子牛のようにくりくりとした瞳でこちらを見あげている少年の表情には、迷いも疑問もまるで感じない。男女の違いなんて些細なことだと彼は言っていたが、そんなふうに言いきれてしまうのは、やはり彼が人間ではないからなのか。
「汐季? 何を考えているんだ」
「あ、いえ……今までの暮らしとまるで違うので、どうしても戸惑ってしまって……すみません」
「汐季……」
少年が汐季の名を呼んで、こちらに一歩近づいてきたかと思うと、不意に温かな感触に包まれた。
「旦那様……?」
「そうだったな。君はここに来たばかりの、ごく普通の人間だ。僕らとは何もかも違う」
汐季を正面から抱き締めて、少年はそう言った。“僕ら”という事は、ここには彼以外にも人ではない者が暮らしているのだろうか。それを思うと怖くなる。住む家が変わったどころではない。自分は全くの別世界に来てしまったのだと、改めて思い知らされるからだ。
「汐季」微かな吐息が、胸元をくすぐる。「何があっても、僕がずっと一緒に居るから」
とくとくと伝わってくる鼓動は、汐季のそれと同じ間隔で脈打っている。彼が人でなかったとしても、この小さな体には、人と同じ血が流れているのだろう。
見知らぬ場所で、出会ったばかりの相手とこれからの人生を共にすること。どうやらここは、今まで暮らしていた世界とは外れた場所にあるらしいこと。不安を数え上げればキリがない。
けれど、ぬくもりを分け与えてくれるこの人の事は、少し好きになれる気がした。
それから、新しい家での汐季の暮らしが始まった。朝の食事の支度に始まり、屋敷の中や庭を隅々まで掃除して、また二人分の食事を用意して、洗濯をして……その繰り返しで日が暮れていく。けれど、朝から晩まで土に塗れて畑や家畜の世話をする事に比べれば、どれも遥かに楽な仕事だった。
そうして、汐季が少年の家で暮らし始めてから三日が過ぎた昼のこと。汐季は淹れたばかりの煎茶を盆に乗せて、少年がいる奥座敷へと向かっていた。どうやらこの家は山奥にぽつんと一軒だけで建っているようで、三日の間に来客もなく、こうして茶を淹れるのは、もっぱら少年だけのためだった。
「お茶をお持ちしました」
「……ああ、入っていい」
廊下に正座して返事を待ってから襖を開くと、座敷の中央で机に向かい、作業に勤しんでいる少年と目が合った。
「そこに置いておいてくれ」
「はい」
言われた通り、座卓の端の邪魔にならない場所に湯呑みを置くと、周りに散らばっている雑多な物が自然と目に入った。
「気になるか?」
少年に問われて、汐季は素直に頷いた。
「こんなに綺麗な細工物は、見たことがありませんから」
少年の手元で次々に生まれていく、真っ青なつまみ細工の花びらから目を離せないまま、汐季はそう答えた。
この三日間で、少年について分かった幾つかの事がある。その中のひとつが、彼は簪を作る職人であるという事だった。男にしては小さい手が器用に動き、ただの布切れから美しい花々を生み出していく様子は、まさしく人智を越えた力のように思えて、いつまで見ていても飽きない。少年の邪魔にならない程度に、その作業を見守ることが、汐季の小さな楽しみになりつつあった。
「そんなに気に入ったなら、ひとつ持って行くと良い」
「……えっ?」
少年の作業をじっと見つめていた汐季は、予想していなかった言葉に驚いて、手に持っていた盆を取り落としそうになった。
「君なら、あまり派手すぎない物の方が似合いそうだな。……これはどうだ? 蝶を模した物だが」
「そんな……そんなつもりで見ていた訳ではありません! それに、それは商品として卸す物でしょう? 私がいただく訳には……」
「そんなことは気にしなくて良い。僕が買い取ったという形にすれば、何の問題も無い」
「それなら尚更いただけません……!」
汐季が頑なに受け取ろうとしないせいか、少年は少し苛立ったように簪を掴んだ。
「僕が良いと言っているんだから、君は気にせず受け取れば良い! ほら!」
半ば無理やり簪を握らされ、汐季は気圧されるようにそれを受け取った。しかし、簪を手にしたまま困った顔をする汐季を見て、不機嫌顔だった少年は、ややバツが悪そうに目を逸らした。
「……きっと似合うと思う、から……受け取って欲しい」
「旦那様……」
そんなふうに叱られた子供のような顔をされてしまっては、無下に断ることも出来ない。
「……ありがとう、ございます。大切にします」
汐季がどうにか微笑んだのを見て、少年は少し安心したようだった。
「うん。あとで着けてみせて欲しい」
さっきまでとは打って変わった幼い口調で言って、少年も微笑んだ。時おり言葉尻がキツくなる時もあるが、根は悪い人ではないのだろうなと思う。
「それじゃあ、僕は作業に戻るから」
「はい。お邪魔しました」
少年が作りかけの簪を手に取ったので、汐季も頭を下げて座敷を出ようとした。しかし、その直前で少年に呼び止められる。
「汐季、ちょっと待ってくれ」
「はい? 何でしょうか」
「今日は夕方から来客があるから、その間君は寝室にこもって、外に出ないように」
またしても予想外の言葉を告げられ、汐季は瞳を瞬かせた。
この屋敷に客が来る。それは、汐季がここで暮らし始めて以来初めての事だ。どんな人物がやって来るのか。そのヒトは果たして人間なのか。興味は尽きないが、この屋敷の主である少年が「部屋から出るな」というなら仕方ない。
「わかりました」
小さく頷いて、汐季はもう一度頭を下げた。
*
座敷の隣に位置する寝室に戻った汐季は、部屋の隅にある鏡台に向かい、自分の顔と見つめ合っていた。以前、沙恵の身支度を手伝った時の事を思い出して、見よう見まねで髪を結って簪を挿してみたが、果たしてこれで良いのだろうか。男の自分がこんなふうに自らを飾り立てるのは、やはりおかしな事ではないだろうか。
ため息を吐きたい気持ちをぐっと堪えて、鏡の中の自分を見返す。背中にかかるほど長かった髪を、うなじの辺りで団子のように纏めただけだが、それでも普段の自分とは別人のように思えた。少年がくれた簪は、親指ほどの大きさをした空色の蝶があしらわれていて、控えめな美しさを抱いている。
本当なら、この美しい簪は沙恵の物になるはずだった。簪だけじゃない。大きな屋敷で暮らして、毎日のように湯船に浸かり、温かな食事を口にして、柔らかな布団で眠る。そんな贅沢な暮らしの全てが、彼女の物になるはずだった。それを思う度に、苦しくなる。
沙恵だって、今頃は嫁入り支度で忙しくしているはずなのだ。大きなお店の女将さんになって、すぐに今の汐季と同じくらい良い暮らしをするようになる。だから汐季が罪悪感を抱く必要なんてない。
どうせ自分は、向こうでは死んだ人間なのだ。沙恵とも、もう二度と関わる事は無い。あの人と自分は、何の関係もない赤の他人だ。
そうやって何度も何度も言い聞かせる度に、胸を裂かれるような気持ちになるのは、何故なのだろう。
鏡台に手をついて俯いていた汐季の耳に、ふと、遠くで誰かが話す声が微かに届いた。先程少年が言っていた客人が来たのだろうか。落ち込んでいた気持ちを誤魔化すように、汐季は会話を聞き取れないかと耳を澄ませてみた。けれど、部屋の中からでは声がくぐもってよく聞こえない。そのもどかしさに、更に好奇心が募っていく。
この世界には、少年の他にどんなヒトが暮らしているのだろう。彼とは違う明らかな異形かもしれないと考えると、怖いと思う気持ち以上に、より一層興味が掻き立てられる。
少年と二人きりの暮らしに、自分でも気づかないうちに寂しさを募らせていたのだろう。汐季は部屋の襖に手をかけて、少しだけ外を覗いてみた。
「ほう。あんたが螢花の伴侶か」
「……えっ」
その瞬間、背後から聞こえた耳慣れない声に驚いて、汐季はぎくりと体を強ばらせた。今の今まで室内には自分しかいなかったし、他の襖が開いた気配も無かったのに、なぜ部屋の中から声が聞こえるのか。
「へえ……なかなか別嬪さんじゃないか。あいつも隅に置けないな」
怖々と振り向いた汐季の顔を覗き込んで、その人物は面白そうに笑った。
その人は、とても美しい女性だった。ゆるく波打った艶やかな黒髪は腰まで届くほど長く、異国の人のようにくっきりとした目鼻立ちには意志の強さを感じた。唇に引いた真っ赤な紅と同じ色の着物には、金糸で刺繍された鳳凰が羽ばたいている。だが、そんな派手派手しい装いに比べても、彼女自身が放つ華やかさは全く見劣りしない。
「あ、あの……」
戸惑いを滲ませる汐季の声を遮るように、今度は廊下の方からドタバタと騒がしい足音が近づいてくる。
「鸛良! 勝手に居なくなるな! 勝手に寝室に入るな! 勝手に僕の伴侶に話しかけるな!!」
肩を怒らせながら駆け込んで来た少年が、座り込んだままの汐季を挟んで、謎の女性を怒鳴りつける。しかし、当の女性は涼しい顔だ。
「大きな声を出すなよ、螢花。お前の大事な伴侶が怯えてるぞ。それに、こんなに可愛い子を独り占めしようだなんて、狡いじゃないか。私にも挨拶くらいさせてくれよ」
そう言って、女性は汐季の元に一歩近づいて膝をついた。
「初めまして、私の名前は鸛良だ。螢花とは長い付き合いでね。こいつが作った簪は、全て私の店に置かせてもらってる。今日もその仕入れのために来たんだ」
「あ……お、お初にお目にかかります。汐季と申します」
慌てて姿勢を正して名乗ってから、汐季はおずおずと顔を上げた。
「あの……ケイカというのは……」
「ん? なんだ、螢花は伴侶に名前も教えていないのか」
鸛良の言葉に、汐季の背後から苦々しげなため息が聞こえてくる。確かに、汐季は未だに少年の名前を知らなかった。同じ家に暮らしているとは言え、神と呼ばれている者の名前を軽々しく呼ぶのは、なんとなく憚られたからだ。
しかし、そんな汐季の気も知らず、鸛良は気安い調子で彼の名前を口にする。
「こいつの名前は螢花だよ。螢の花と書いて“ケイカ”と読む」
「螢の、花……」
口の中で呟いて、背後を振り返る。
「とても美しいお名前ですね」
「ああ、私もそう思う」
鸛良の満足気な声が聞こえたが、螢花本人は苦虫を噛み潰したような表情のままだ。
「もう商品は渡したんだから用は済んだだろう。早く帰れ」
「おいおい、そう邪険にするなよ。それと、さっき受け取った分を確認したが、いつもよりひとつ少なかったぞ」
「それはさっき汐季に贈った分だ。その分の代金は引いておいてくれ」
「……へえ? なるほどね」
鸛良はちらりと汐季の髪に視線をやって、ニヤリと笑った。
「分かった、そういう事なら代金はそのままにしておこう。祝儀の代わりだ」
「ふん。安い祝儀だな」
「お前はいつまで経っても、自分が作る物の価値を理解しないな」
やれやれと肩をすくめて、鸛良はようやく立ち上がった。
「さて、それじゃあ仕方ないから今日のところは二人きりにしてやるよ。またな、汐季」
「汐季の名前を気安く呼ぶんじゃない!」
地団駄を踏む螢花を見て笑いながら、鸛良はヒラヒラと手を振って、廊下とは反対にある、庭に面している方の障子を開けた。
「邪魔したな」
その言葉と共に障子が閉められた直後、その向こうに映っていた彼女の影が、一瞬で消えた。
「え……っ」
驚いた汐季が慌てて障子を開けに行ったが、そこにはもう誰も居なかった。鸛良は草履すら履いていなかったはずなのに、この一瞬で一体どうやって、どこに消えたのか。
「汐季、風が冷たい」
「あ、すみません」
螢花が顔を顰めたので、汐季は首を捻りながら再び障子を閉めた。普通の人間に見えたが、やはり鸛良も人間ではないのだろうか。
「汐季」
「は、はい」
「そんなにあいつが気になるか?」
露骨に不機嫌そうな螢花の表情に、汐季は思わず口ごもった。
「その……ここへ来てから、螢花様以外の方に初めてお会いしたので、つい……」
汐季のその発言を聞いた瞬間、螢花は驚いたような顔をした。
「君、今僕の名前……」
螢花の指摘に、ハッとして口を噤む。
「申し訳ありません、勝手にお名前を……」
「いや」
汐季の言葉を遮って、螢花は視線をさまよわせる。
「別に、君の好きに呼んで構わない……ただ、あいつと、あいつの家族以外に、その名前を呼ばれたことが無かったから、少し不思議な気がしただけだ」
螢花はそう言ったきり、すっかり黙り込んでしまった。
「螢花様……?」
自らの足元に視線を落としたきり、何も言わない螢花にそっと近づいて、その頬に軽く触れてみる。想像よりも冷たいその感触に、なぜか寂しくなって、どうにか温められないかと、柔らかな頬を両手で包んだ。
「……くすぐったい」
「ふふ」
こんなふうに誰かと触れ合うのはいつぶりだろう。手のひらから伝わる人肌の感触に、自然と頬が緩んだ。
「……なあ、汐季」
「はい。なんでしょう」
「汐季……君はこれからずっと、僕と一緒に居てくれるか? ……何があっても」
つい先日、螢花は汐季に「何があっても一緒に居る」と約束してくれた。そして今度は、汐季自身の覚悟を問われているような気がして、思わず息を飲んだ。けれど、問いの答えは汐季の中でとうに決まっている。
「もちろん。私はいつまでだってここに……貴方のそばにおりますよ」
その返答に、螢花は心の底から安心したように笑った。
螢花は、汐季のことを家族だと言ってくれた。そんな人に、孤独を味わわせる様なことはしたくない。家族のいない寂しさは、誰よりも分かるつもりだから。
けれど、そう遠くないうちに、汐季はこの日の答えをひどく後悔する事になる。
“何があっても”。螢花がどんな思いで、その言葉を繰り返し口にしたのか、この時の汐季は理解していなかった。
人でない者と共に生きるという事の意味を、彼はまだ知らなかったのだ。
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