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その後の話
2.家族団欒
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そうして慌ただしく過ごすうちに、あっという間に時間は過ぎ去り、気づいた時には新しい一年が始まっていた。
正月なんて人間が勝手に決めた暦でしかないし、ただいつもと同じように日が暮れて朝が来るだけだろう。学生の頃はそんなふうに思っていたが、大人になると何となく分かる。
忙しく過ぎていく日々の中に、こうした明確な区切りがあるからこそ、自分がこれまでに生きてきた歳月を実感出来るのだと。
そんな事を取り留めもなく考えながら、俺は陽太と二人、郊外にある自分の実家を訪れていた。と言っても俺が住んでいるマンションとは同じ路線の電車で五駅ほどなので、あまり里帰りという気分はしない。
「ど、どうしよう和威さん……なんかおれ緊張してきた……」
俺のコートの袖を摘んで、陽太が情けない声をあげる。その様子がおかしくて、俺は笑いを堪えるのに必死だった。
「今さら何を緊張するんだよ。高校ん時はしょっちゅう遊びに来てたんだろ?」
「そ、そうだけど……」
実家の玄関前で立ち尽くしながら、俺達はそんな会話を交わしていた。
とはいえ、陽太がそう言う気持ちも分からなくはない。俺達の関係が変わってから、陽太がうちの両親に会うのはこれが初めてだ。しかも俺達が付き合っているということを、両親にはまだ伝えていない。
「ほら、こんなとこで突っ立ってても仕方ないだろ?もう入ろうぜ」
「うう……」
躊躇う陽太の手を引いて、俺は勢い良くドアを開けた。
「ただいま!」
俺の声を聞きつけて居間から顔を出したのは、俺と裕翔の母親である沢山博子だった。直接会うのは去年の正月以来だが、相変わらず還暦手前には見えないほど若々しい。好きな物を素直に好きって言うのが老け込まないコツよ、とは本人の談だ。
「あらあらあら!陽太くん久しぶりねえ~、あらまあ益々イケメンになって……おばちゃんドキドキしちゃうわあ」
少女のように頬を染めた母さんは、俺をガン無視して陽太の元へと駆け寄った。
「あ、あの、お久しぶりです。今日はお招きいただいて……」
「やだもう、そんな堅苦しい挨拶なんて要らないわよぉ。ほらあがってあがって、寒かったでしょ。そうだわ、ちょっと良いお茶を用意してるのよ。陽太くんが来てくれるって聞いて、おばちゃん奮発しちゃったの」
「……母さん!」
陽太が完全に固まってしまったのを見かねて俺が声をかけると、母さんはつまらなそうに唇を尖らせて、俺に視線を移した。
「あら和威。あんたいたの?小さいから気が付かなかったわ」
そこまで言われるほど小さくねえよと思ったが、俺は何も言わなかった。男ばかりのこの家で、母さんに逆らえるやつはいない。
「さあ陽太くん、こっちこっち」
母さんに手を取られて引っ張りこまれる陽太を追って、俺も久々の実家に足を踏み入れた。
覗き込んだ居間のコタツには、父親である沢山勝馬と弟の裕翔が既に並んで収まっている。
「おー。兄ちゃん、陽太、こないだぶり~」
だらけきった体勢の裕翔の横で、眼鏡の奥の目を細めて、父さんがにこにこと笑う。
「おかえり和威。陽太くんも」
その言葉に、陽太がハッと立ち止まる。
「あ、えっと……た、ただいまです」
躊躇いがちに陽太が言ったのを聞いて、母さんは嬉しそうに微笑んだのだった。
*
「しかし裕翔が結婚か……感慨深いね」
全員でコタツを取り囲んで、並べられた料理に箸を伸ばす。音量を絞った正月番組をBGMに、俺達は各々の近況を報告し合っていた。
そんな流れで裕翔の結婚報告を聞いた父さんは、箸を持って雑煮を啜りながらウンウンと頷いている。
「遥香さんも連れてきたらよかったのに。改めてご挨拶したかったわ」
その横では母さんが頬に手を当ててため息を吐いた。遥香というのは裕翔の彼女で、今は婚約者になった人のことだ。
「まあ遥香にも都合とかあるしさ。式の前にはまた連れてくるよ」
「式っていつくらいだ?休み合わせないとな」
「んー……まだ相談中だけど、少なくとももっと暖かくなってからかな。向こうの家族とも話しないとだし」
裕翔と会話を交わしながら、俺はコタツの真ん中に並んだおせちに箸を伸ばした。コンビニで予約してきた物らしいが、十分豪勢だし美味い。
「まあでも、これでちょっとは安心ね。和威がいつまで経ってもふらふらしてるから、もう孫の顔なんて一生見られないと思ってたもの」
母さんが何気なく言った言葉に、一瞬陽太が食事をする手が止まった。それに気づいてか、裕翔が少し肩をすくめる。
「まあオレだって、いきなり孫とか期待されても困るけどね。子供はお互いの仕事が落ち着いてからって遥香も言ってるし」
「それはそうでしょうけど……それでも期待しちゃうのが親ってものよ。ねえお父さん」
「はは、そうだね」
父さんが穏やかに笑って頷く。けれど陽太の表情は曇ったままだ。
やっぱり、二人には伝えておくべきだっただろうか。俺達の関係について。
いや、今からだって言えばいいだけの話だ。俺にも大切な人がいるんだって。
「あのさ、母さん」
「そうだわ陽太くん。今日はうちに泊まっていくのよね?」
「え、あ、いいんですか?」
「もちろんよ。そのつもりで準備してるんだから。……ふふ、なんだかあなた達が学生だった時みたいね」
楽しそうに笑う母さんの声に流されて、俺のちょっとした決意は容易く流されてしまった。
「あら、そういえば和威、何か言った?」
「……あー、いや。別に」
首を傾げる母さんから目を逸らして、俺は言葉を濁した。
男でも関係ない、俺は陽太自身を愛してるんだ、なんて偉そうに言ったくせに、こうして親の前では言い淀む自分が、ひどく卑怯な人間に思えた。
結局、先日の夜に陽太が零した言葉の意味を、俺は本当の意味では何ひとつ、理解出来ていなかったのだろう。
*
「母さん、風呂上がったけど」
「はいはい。これだけ見たら入るから」
風呂上がりの俺には目もくれず、母さんはコタツに入ったまま夢中でテレビに見入っていた。画面の向こうでは、母さんのお気に入りのアイドルが、煌びやかな衣装を着て踊っている。
こうなると彼らの出番が終わるまで母さんが動かないのは分かっているので、俺は無言で居間から出た。そうして薄暗い階段をあがり、二階にある俺の部屋へと向かう。正確には俺が大学を出て一人暮らしを始めて以来、裕翔が占領していたのでもう俺の部屋ではないのだが、こうしてたまに帰ってきた時は、俺が寝る場所として使っている。
「……ん、あれ、どうしたんだ陽太」
部屋の扉を開けると、所在なさげに座っている陽太と目が合った。若干物置と化しつつある部屋の真ん中に、二人分の布団がきっちり並べて敷いてある。
「お前裕翔の部屋で寝るんじゃなかったのか」
裕翔の部屋はここのすぐ隣だ。友達同士積もる話もあるだろうから、今夜は俺ひとりで我慢しようと思っていたのに。
「ん……おれもそのつもりだったけど、さっきヒロに布団ごと追い出された」
花柄の毛布を抱き締めて、陽太がぼそぼそと言う。なるほど、これは裕翔なりに気を使ったつもりなのだろうか。
俺は陽太の隣に腰を下ろして、風呂上がりの少し湿った髪を撫でた。
「俺は嬉しいよ。お前と二人でいられて」
「和威さん……」
温かな声音で俺を呼ぶ陽太に、愛しさと、それと同じくらいの罪悪感が募る。
俺は陽太の腰を軽く引き寄せて、その胸に頭を預けた。
「陽太、ごめんな」
「え、な、なにが……?」
「お前と付き合ってること、父さんと母さんに言えなかった」
陽太が少し息を呑む気配があって、その後、優しい手が俺の背中に触れた。
「そんなの、全然謝ってもらうことじゃないよ。お母さんたちがああ言うのは普通の事だし、だけど期待されるとしんどくなっちゃうのも、おれは分かるし……」
それに、と陽太が小さく笑う。
「ずっとヒロの友達としてここに来てたのに、和威さんと付き合ってます、なんて突然言ったら、きっとお母さんたちびっくりしちゃうよ」
冗談めかした調子で、陽太はそう言った。
ああ、まただ。また俺は、陽太の優しさに甘えている。
「陽太……っ」
俺が顔をあげると同時に、その言葉は唇ごと塞がれた。
一瞬だけ触れた唇が離れると、愛おしそうに俺を見つめている陽太の視線に射抜かれる。
「和威さん、だいすき。だから、和威さんと、和威さんの大事な人たちが笑っててくれたら、おれはなんだっていいよ」
そう言って陽太が俺を抱き締める。
その瞬間、敵わない、と悟った。
年上らしく俺が支えてやらないと、なんて土台無理な話だったのだ。
ずっとずっと、たぶん初めて出会った時から、俺の方が陽太に支えられて、甘やかされている。
その事に気づいた俺は、胸の内にひとつの決意を固めて、今度はこっちから陽太の唇にキスをした。
柔らかく触れた場所が溶け合って、ひとつになっていくような気がして、たったそれだけの事で、恐れも不安も嘘のように消えていく。
「ん、ぅ……和威さん、だめ……」
少しずつ深くなっていく口付けに、陽太が焦って離れようとする。
「こら、逃げるな」
「だ、だって、これ以上したらおれ……っ」
体を引いた陽太が、バランスを崩して布団の上に倒れ込む。俺はその隙を見逃さず、引き締まった腰の上に跨って、その体を押さえつけた。といっても、陽太が本気で拒絶の意思を示せば、この程度の拘束は簡単に逃れられてしまうのだが。
「だめだよ和威さん、隣でヒロが寝てるんだよ」
「わかってるよそんなの。……だから」
俺は少し意地悪な気持ちで、指先で陽太の薄い唇をなぞった。
「声出すの、我慢な」
それを聞いた陽太は、少しの間きょとんとして……それから、言葉の意味が染み込むにつれて、じわじわと顔を赤くしていった。
「あ、う……そんなこと言われても、おれ……」
そんな陽太があまりにも可愛くて、俺はつい笑ってしまう。
「そんな死にそうな顔しなくても、今日はちゃんと優しくするって。……この間はごめんな、初めてだったのに乱暴して。痛かっただろ」
腰の辺りをそっと撫でると、陽太が慌てた様子で首を振った。
「あ、あれは、おれがして欲しいって言ったから……それに、その」
躊躇うように言葉を切って、陽太は俺から目を逸らした。そして、
「ちゃんと、気持ちよかったから……大丈夫だよ」
顔を真っ赤にしながら、聞き取れるかどうかの声でそう言った。
「……やっぱり可愛いな、お前。めちゃくちゃ可愛いわ」
囁いて口付けると、今度は陽太も抵抗しなかった。俺はそのまま陽太の襟元に手を伸ばし、パジャマのボタンをひとつずつ外していく。そうしてはだけさせた胸に触れて軽く揉んでやると、陽太が小さく肩を震わせた。
「か、和威さん」
「ここ柔らかいな、お前。女の子みたいだ」
軽口を叩いて、手で触れている部分に顔を近づけた。そしてその先の小さな突起を、舌先で包むようにして舐めあげる。
「ぁ……っ、やだ、和威さん、くすぐったい……」
「ん。こら、あんま声出すなって言ったろ」
俺の言葉に、陽太がハッとして自分の口を両手で覆う。その間にも、俺は反対の尖りに手を伸ばして、指の先で容赦なく弄んだ。
「んぅ、う……」
声を殺している分、感覚がより鋭敏になるのだろう。俺の舌と指が敏感な部分を責め立てる度に、陽太がくぐもった声を洩らしながら体を震わせる。
「あぁ……っ」
唾液でたっぷりと濡れたそこを強く吸い上げると、抑えられなかった切ない声が、陽太の喉から零れ落ちた。
少し顔を離してみれば、執拗に弄られた乳首はどちらも赤く膨らみ、白い肌との淫猥なコントラストを描いている。
「なあ、見えるか?……お前のここ、すげぇいやらしくなってんの」
耳元で揶揄うように言うと、
「か、和威さんが、そこばっかり弄るから……!」
陽太が怒って、俺のほっぺたをむにっと摘んできた。と言っても、完全に力が抜けきっているので全然痛くない。
「そうかよ。じゃあここ以外のとこも舐めてやるよ」
調子に乗った俺は、体の位置を少し変えて陽太のズボンに手をかけた。そしてそれを下着ごとずらすと、既に形を持ち始めていたモノが顔を出す。
陽太が反射的に身を捩って隠そうとするのを制して、俺はそこに唇を寄せた。そして、
「え、あ、うそ……っ」
陽太の昂った部分を、喉の奥深くにまで咥え込む。
「や、やめて和威さん、お願い、汚いから……っ」
陽太が必死な様子で俺の頭をどかそうとするが、それで引くくらいなら初めからこんなマネはしていない。それに俺は、汚いだなんてこれっぽっちも思っちゃいなかった。可愛い恋人の体の一部だと思えば、こんな行為にさえ愛おしさが溢れてくるだけだ。
「う、ぁ……やだ、和威さん……」
弱い部分を狙って舌を這わせていくと、陽太が上ずった声をあげて背中を仰け反らせた。嫌だという言葉とは裏腹に、口の中のそれは一層嵩を増していく。
俺のモノよりデカい陽太のそれは、さすがに全てを口内に収めることは出来ない。根元の部分を指の腹で扱きながら、同時に先の括れた箇所に舌を絡めると、溢れ出した液体が俺の唾液と混じって流れ落ちた。
陽太の呼吸がどんどん乱れていくのが分かる。
同じ男同士、どこをどう責められるのが気持ちいいかは大体想像がつく。その後も俺が丁寧に愛撫を続けていくと、再び陽太が俺の頭を押し退けようとしてきた。
「う……かずいさん、お願い、離して……でないと、おれもう……っ」
その言葉を聞いた俺は、陽太の手を退けさせて、さらに限界まで深く屹立を呑み込んだ。
「やぁ……っ」
泣き声のような吐息を洩らして、陽太が体を捩る。それと同時に、咥えていた部分がビクビクと激しく脈打って、白く濁ったモノを吐き出した。
「ん……」
口の中に吐き出されたそれを残さず受け止めて、俺はようやく陽太の昂りから口を離す。そして、その辺りに転がっていた箱から手探りでティッシュを数枚抜き取り、受け止めていたモノをそこへ出して、口の中を軽く拭った。自分でも不思議なくらいに、嫌悪はまるで感じない。
「和威さんの、ばかぁ……」
弱々しい声に視線を移すと、布団の上に力なく横たわった陽太が、涙目で俺を睨みつけていた。
「誰がバカだこら」
「だ、だって……いやだって、言ったのに」
「ほんとは嫌じゃなかっただろ?今だって、イったばっかなのに全然萎えてない」
再び熱を持ち始めているそこを軽く指でつついてやると、陽太が「やだぁ」と泣き声をあげた。
「和威さん、いじわるだ……優しくするって言ったのに」
「してるって。痛いことは何もしてないだろ」
「そう、だけど……」
釈然としない様子で、陽太が唇を尖らせる。俺は少し笑って、その首筋に口付けた。
「お前がいちいち可愛い反応するから、ついイジめたくなるんだよ」
「それって、おれのせいなの?」
「そうだよ。お前が可愛いのが悪い」
しれっと責任転嫁して、俺は陽太から体を離した。そして部屋の隅に置いていた泊まり用の鞄の底から、先日使ったローションの残りを引っ張り出して陽太に訊ねる。
「最後まで、していいか?」
「それは、いいけど……和威さん、それ用意してたの?」
「そうだよ、念の為な……おい、なに笑ってんだ」
くすくす笑っている陽太の鼻を、きゅっと摘んでやる。
「んむ、だって……そういうの、おればっかり期待しちゃってたらどうしようって思ってたから、嬉しくて」
「……バカ、お前だけの訳ないだろ」
そうだとしたら、俺だってこんなに昂るはずが無い。ズボンの下の俺自身も既に硬く張り詰め、今すぐ陽太の深い部分に繋がりたいと全身で訴えかけている。
けれど、ダメだ。今日こそは、陽太には快感だけを与えてやると決めたのだから。
「脱がすぞ」
そう声をかけて、陽太の足に絡んでいたパジャマの下を下着ごとまとめて剥ぎ取る。……けして意図した訳では無いが、前ボタンを全て外した上着と黒い靴下だけを残した姿は、普通に全て脱がせるよりも、数段いかがわしく感じた。
「和威さん、どうしたの? 」
そんな事にはまるで気づいていない陽太が、無垢な瞳で俺を見上げてくる。
「……なんでもない。今から慣らすから、キツいと思ったら言うんだぞ」
誤魔化すように言ってローションを手に取り、陽太の足を俺の太ももに乗せて広げさせる。
「……ん」
そうして奥深くの部分へ指先で触れると、陽太の体がぴくりと反応した。
以前よりは抵抗なく俺を受け入れたそこへ、慎重に指を埋めていく。
「ん……ふ」
俺の動きに反応して陽太が甘い吐息を洩らす度に、長い睫毛が切なげに震える。その様子に、俺はごくりと喉を鳴らして呟いた。
「こうやって、顔見ながらすんのもいいな」
「……え?」
「お前の感じてる顔、めちゃくちゃエロくて可愛い」
その言葉に、陽太の顔がカッと赤くなる。
「な、何言ってるの。ばか」
「ん。またバカつったな」
反対の手で軽く太ももを抓ってやると、奥の方がゆるく締めつけられる。
「うぅ……ばか……ばかぁ……」
「そんなとろとろの顔で言ったって、逆効果だぞ」
俺は小さく笑って、陽太の中に沈めている指をもう一本増やした。
「あ……っ」
乱れきった陽太の息遣いと、ぐちゅぐちゅという卑猥な音が混じりあって、静かな部屋の中に響く。その状況が、さらに陽太の快感を掻き立てるようだった。
「かずい、さん……」
「指、もう一本いけるか?」
「うん……ぁ……っ」
人差し指から薬指までを呑み込みきったそこは、奥に触れる度に強くうねって、もっと欲しいと訴えかけているようだ。
「かずいさん……かずいさん……っ」
「ん。わかってる」
俺自身の声も上擦っているのを感じながら、陽太の中がもはや容易く俺の指を受け入れるのを確認して、一気に全てを引き抜いた。
「ぅあ……っ」
そんな動作にすら反応して、陽太が小さく声をあげる。俺は昂る鼓動を押し隠しながら自分自身の前を寛げて、敢えてゆっくりゴムを装着した。そして陽太の腰を抱えて、熟れきった部分に己の昂りを押し当てる。
「……挿れるぞ。いいな?」
「うん……」
熱に浮かされたように陽太が頷くのを見て、俺は少しずつ、自分自身を沈めていく。
「う……」
「痛くないか?」
「だい、じょうぶ……」
熱っぽい声で、陽太が答える。
「かずいさんので、いっぱいになっていくの……うれしいから、へいき……」
呂律の回っていない舌でそう言われ、半分ほど押し込んでいたモノが反応してしまう。
「あ、や……っかずいさんの、おっきく、なった……」
「お、前が……煽るようなこと言うからだろうが……っ」
こっちは必死で我慢してるっていうのに、こいつは。
油断するとまた欲望に負けてしまいそうになる理性を無理矢理押さえ込んで、俺はどうにか残る部分も収めきった。
「はぁ……っ」
深く息を吐いて、俺は呼吸を整える。このまま乱暴に突き上げてしまいたくなる本能を黙らせて、陽太の姿を見下ろした。俺よりずっと男らしく整った体が、俺の愛撫で蕩けきって乱れている様は、なによりも俺を興奮させる。
「陽太……」
囁くように名前を呼ぶと、伏せられた睫毛がぴくりと反応した。
「陽太、ちょっとずつ動くからな」
そう言って引き締まった太ももを手で支え、ゆっくりと腰を動かしていく。
「…………っ」
また自分の口を手で押さえて、陽太が必死な様子で声を押し殺す。そのせいで中がより過敏に反応して、俺の理性を剥ぎ取ろうとしてくる。
「は……っ」
どうにか呼吸を抑えようとするが、それもそろそろ限界だった。徐々に抗いきれなくなってきた欲望によって、奥を穿つペースが少しずつ早くなっていく。
「う、ぁ……」
切れ切れの陽太の吐息も、もう抑えきれなくなってきたらしい。中を深く貫かれた陽太が小さく悲鳴をあげて、俺の方に手を伸ばしてきた。
「か、ずいさん……かずいさん、お願い……っ口、ふさいで……」
涙の滲む目で懇願され、俺は咄嗟に左の手で陽太の口を塞いだ。それによって少し前のめりになったせいで、より深く穿つような姿勢になってしまう。
「んぅ……っ」
俺が押さえつけた喉の奥から、くぐもった悲鳴が洩れる。それと共に、閉じた瞼から涙が一筋零れ落ちた。
これは……この状況は、まるで、力尽くで無理矢理犯しているような。
「あー……なんか、やばいな、これ」
このまま続けていたら、おかしな趣味に目覚めてしまいそうだ。
俺は陽太の顔からわざと目を逸らし、俺の動きに合わせて切なく揺れている屹立に、空いている手を伸ばした。
「…………!」
その直接的な刺激に反応して、白い喉が大きく仰け反る。俺は構わず、屹立に触れている手を動かしていく。体を震わせる陽太の反応から、限界が近いことは分かっていた。
「んん……っ」
涙に濡れた瞳で、陽太が訴えかけてくる。俺は小さく頷いて、一際強く陽太の中を穿った。
その瞬間、俺の手の中の屹立が大きく震えて、中が搾り取るような動きで激しくうねった。
「う……」
その動きで、堪らず俺も限界に達した。激しく脈打つ心臓の音を感じながら、陽太の中で全ての快感を吐き出す。
「は、ぁ……っようた……」
口を押さえていた手を離して名前を呼ぶと、ぐったりとした様子で横たわっていた陽太も、その声に少し顔をあげて「かずいさん」と俺の名前を呼んだ。
俺は繋がった部分を引き抜いて、陽太の体を優しく抱きしめ、その唇にキスをした。もうこれ以上は無いと思っていたのに、こうして触れ合うほどに、より一層愛しさが増していく。
「かずいさん……」
俺の背中に手を回して、陽太がもう一度俺の名前を呼ぶ。その度に心の奥底が満たされて、泣きたいくらいの幸せを感じた。
「陽太、陽太愛してる」
そう囁いて、愛する人の体をもっと強く抱き締めた。
もう、大丈夫。明日の俺は、きっともう迷わないだろう。
正月なんて人間が勝手に決めた暦でしかないし、ただいつもと同じように日が暮れて朝が来るだけだろう。学生の頃はそんなふうに思っていたが、大人になると何となく分かる。
忙しく過ぎていく日々の中に、こうした明確な区切りがあるからこそ、自分がこれまでに生きてきた歳月を実感出来るのだと。
そんな事を取り留めもなく考えながら、俺は陽太と二人、郊外にある自分の実家を訪れていた。と言っても俺が住んでいるマンションとは同じ路線の電車で五駅ほどなので、あまり里帰りという気分はしない。
「ど、どうしよう和威さん……なんかおれ緊張してきた……」
俺のコートの袖を摘んで、陽太が情けない声をあげる。その様子がおかしくて、俺は笑いを堪えるのに必死だった。
「今さら何を緊張するんだよ。高校ん時はしょっちゅう遊びに来てたんだろ?」
「そ、そうだけど……」
実家の玄関前で立ち尽くしながら、俺達はそんな会話を交わしていた。
とはいえ、陽太がそう言う気持ちも分からなくはない。俺達の関係が変わってから、陽太がうちの両親に会うのはこれが初めてだ。しかも俺達が付き合っているということを、両親にはまだ伝えていない。
「ほら、こんなとこで突っ立ってても仕方ないだろ?もう入ろうぜ」
「うう……」
躊躇う陽太の手を引いて、俺は勢い良くドアを開けた。
「ただいま!」
俺の声を聞きつけて居間から顔を出したのは、俺と裕翔の母親である沢山博子だった。直接会うのは去年の正月以来だが、相変わらず還暦手前には見えないほど若々しい。好きな物を素直に好きって言うのが老け込まないコツよ、とは本人の談だ。
「あらあらあら!陽太くん久しぶりねえ~、あらまあ益々イケメンになって……おばちゃんドキドキしちゃうわあ」
少女のように頬を染めた母さんは、俺をガン無視して陽太の元へと駆け寄った。
「あ、あの、お久しぶりです。今日はお招きいただいて……」
「やだもう、そんな堅苦しい挨拶なんて要らないわよぉ。ほらあがってあがって、寒かったでしょ。そうだわ、ちょっと良いお茶を用意してるのよ。陽太くんが来てくれるって聞いて、おばちゃん奮発しちゃったの」
「……母さん!」
陽太が完全に固まってしまったのを見かねて俺が声をかけると、母さんはつまらなそうに唇を尖らせて、俺に視線を移した。
「あら和威。あんたいたの?小さいから気が付かなかったわ」
そこまで言われるほど小さくねえよと思ったが、俺は何も言わなかった。男ばかりのこの家で、母さんに逆らえるやつはいない。
「さあ陽太くん、こっちこっち」
母さんに手を取られて引っ張りこまれる陽太を追って、俺も久々の実家に足を踏み入れた。
覗き込んだ居間のコタツには、父親である沢山勝馬と弟の裕翔が既に並んで収まっている。
「おー。兄ちゃん、陽太、こないだぶり~」
だらけきった体勢の裕翔の横で、眼鏡の奥の目を細めて、父さんがにこにこと笑う。
「おかえり和威。陽太くんも」
その言葉に、陽太がハッと立ち止まる。
「あ、えっと……た、ただいまです」
躊躇いがちに陽太が言ったのを聞いて、母さんは嬉しそうに微笑んだのだった。
*
「しかし裕翔が結婚か……感慨深いね」
全員でコタツを取り囲んで、並べられた料理に箸を伸ばす。音量を絞った正月番組をBGMに、俺達は各々の近況を報告し合っていた。
そんな流れで裕翔の結婚報告を聞いた父さんは、箸を持って雑煮を啜りながらウンウンと頷いている。
「遥香さんも連れてきたらよかったのに。改めてご挨拶したかったわ」
その横では母さんが頬に手を当ててため息を吐いた。遥香というのは裕翔の彼女で、今は婚約者になった人のことだ。
「まあ遥香にも都合とかあるしさ。式の前にはまた連れてくるよ」
「式っていつくらいだ?休み合わせないとな」
「んー……まだ相談中だけど、少なくとももっと暖かくなってからかな。向こうの家族とも話しないとだし」
裕翔と会話を交わしながら、俺はコタツの真ん中に並んだおせちに箸を伸ばした。コンビニで予約してきた物らしいが、十分豪勢だし美味い。
「まあでも、これでちょっとは安心ね。和威がいつまで経ってもふらふらしてるから、もう孫の顔なんて一生見られないと思ってたもの」
母さんが何気なく言った言葉に、一瞬陽太が食事をする手が止まった。それに気づいてか、裕翔が少し肩をすくめる。
「まあオレだって、いきなり孫とか期待されても困るけどね。子供はお互いの仕事が落ち着いてからって遥香も言ってるし」
「それはそうでしょうけど……それでも期待しちゃうのが親ってものよ。ねえお父さん」
「はは、そうだね」
父さんが穏やかに笑って頷く。けれど陽太の表情は曇ったままだ。
やっぱり、二人には伝えておくべきだっただろうか。俺達の関係について。
いや、今からだって言えばいいだけの話だ。俺にも大切な人がいるんだって。
「あのさ、母さん」
「そうだわ陽太くん。今日はうちに泊まっていくのよね?」
「え、あ、いいんですか?」
「もちろんよ。そのつもりで準備してるんだから。……ふふ、なんだかあなた達が学生だった時みたいね」
楽しそうに笑う母さんの声に流されて、俺のちょっとした決意は容易く流されてしまった。
「あら、そういえば和威、何か言った?」
「……あー、いや。別に」
首を傾げる母さんから目を逸らして、俺は言葉を濁した。
男でも関係ない、俺は陽太自身を愛してるんだ、なんて偉そうに言ったくせに、こうして親の前では言い淀む自分が、ひどく卑怯な人間に思えた。
結局、先日の夜に陽太が零した言葉の意味を、俺は本当の意味では何ひとつ、理解出来ていなかったのだろう。
*
「母さん、風呂上がったけど」
「はいはい。これだけ見たら入るから」
風呂上がりの俺には目もくれず、母さんはコタツに入ったまま夢中でテレビに見入っていた。画面の向こうでは、母さんのお気に入りのアイドルが、煌びやかな衣装を着て踊っている。
こうなると彼らの出番が終わるまで母さんが動かないのは分かっているので、俺は無言で居間から出た。そうして薄暗い階段をあがり、二階にある俺の部屋へと向かう。正確には俺が大学を出て一人暮らしを始めて以来、裕翔が占領していたのでもう俺の部屋ではないのだが、こうしてたまに帰ってきた時は、俺が寝る場所として使っている。
「……ん、あれ、どうしたんだ陽太」
部屋の扉を開けると、所在なさげに座っている陽太と目が合った。若干物置と化しつつある部屋の真ん中に、二人分の布団がきっちり並べて敷いてある。
「お前裕翔の部屋で寝るんじゃなかったのか」
裕翔の部屋はここのすぐ隣だ。友達同士積もる話もあるだろうから、今夜は俺ひとりで我慢しようと思っていたのに。
「ん……おれもそのつもりだったけど、さっきヒロに布団ごと追い出された」
花柄の毛布を抱き締めて、陽太がぼそぼそと言う。なるほど、これは裕翔なりに気を使ったつもりなのだろうか。
俺は陽太の隣に腰を下ろして、風呂上がりの少し湿った髪を撫でた。
「俺は嬉しいよ。お前と二人でいられて」
「和威さん……」
温かな声音で俺を呼ぶ陽太に、愛しさと、それと同じくらいの罪悪感が募る。
俺は陽太の腰を軽く引き寄せて、その胸に頭を預けた。
「陽太、ごめんな」
「え、な、なにが……?」
「お前と付き合ってること、父さんと母さんに言えなかった」
陽太が少し息を呑む気配があって、その後、優しい手が俺の背中に触れた。
「そんなの、全然謝ってもらうことじゃないよ。お母さんたちがああ言うのは普通の事だし、だけど期待されるとしんどくなっちゃうのも、おれは分かるし……」
それに、と陽太が小さく笑う。
「ずっとヒロの友達としてここに来てたのに、和威さんと付き合ってます、なんて突然言ったら、きっとお母さんたちびっくりしちゃうよ」
冗談めかした調子で、陽太はそう言った。
ああ、まただ。また俺は、陽太の優しさに甘えている。
「陽太……っ」
俺が顔をあげると同時に、その言葉は唇ごと塞がれた。
一瞬だけ触れた唇が離れると、愛おしそうに俺を見つめている陽太の視線に射抜かれる。
「和威さん、だいすき。だから、和威さんと、和威さんの大事な人たちが笑っててくれたら、おれはなんだっていいよ」
そう言って陽太が俺を抱き締める。
その瞬間、敵わない、と悟った。
年上らしく俺が支えてやらないと、なんて土台無理な話だったのだ。
ずっとずっと、たぶん初めて出会った時から、俺の方が陽太に支えられて、甘やかされている。
その事に気づいた俺は、胸の内にひとつの決意を固めて、今度はこっちから陽太の唇にキスをした。
柔らかく触れた場所が溶け合って、ひとつになっていくような気がして、たったそれだけの事で、恐れも不安も嘘のように消えていく。
「ん、ぅ……和威さん、だめ……」
少しずつ深くなっていく口付けに、陽太が焦って離れようとする。
「こら、逃げるな」
「だ、だって、これ以上したらおれ……っ」
体を引いた陽太が、バランスを崩して布団の上に倒れ込む。俺はその隙を見逃さず、引き締まった腰の上に跨って、その体を押さえつけた。といっても、陽太が本気で拒絶の意思を示せば、この程度の拘束は簡単に逃れられてしまうのだが。
「だめだよ和威さん、隣でヒロが寝てるんだよ」
「わかってるよそんなの。……だから」
俺は少し意地悪な気持ちで、指先で陽太の薄い唇をなぞった。
「声出すの、我慢な」
それを聞いた陽太は、少しの間きょとんとして……それから、言葉の意味が染み込むにつれて、じわじわと顔を赤くしていった。
「あ、う……そんなこと言われても、おれ……」
そんな陽太があまりにも可愛くて、俺はつい笑ってしまう。
「そんな死にそうな顔しなくても、今日はちゃんと優しくするって。……この間はごめんな、初めてだったのに乱暴して。痛かっただろ」
腰の辺りをそっと撫でると、陽太が慌てた様子で首を振った。
「あ、あれは、おれがして欲しいって言ったから……それに、その」
躊躇うように言葉を切って、陽太は俺から目を逸らした。そして、
「ちゃんと、気持ちよかったから……大丈夫だよ」
顔を真っ赤にしながら、聞き取れるかどうかの声でそう言った。
「……やっぱり可愛いな、お前。めちゃくちゃ可愛いわ」
囁いて口付けると、今度は陽太も抵抗しなかった。俺はそのまま陽太の襟元に手を伸ばし、パジャマのボタンをひとつずつ外していく。そうしてはだけさせた胸に触れて軽く揉んでやると、陽太が小さく肩を震わせた。
「か、和威さん」
「ここ柔らかいな、お前。女の子みたいだ」
軽口を叩いて、手で触れている部分に顔を近づけた。そしてその先の小さな突起を、舌先で包むようにして舐めあげる。
「ぁ……っ、やだ、和威さん、くすぐったい……」
「ん。こら、あんま声出すなって言ったろ」
俺の言葉に、陽太がハッとして自分の口を両手で覆う。その間にも、俺は反対の尖りに手を伸ばして、指の先で容赦なく弄んだ。
「んぅ、う……」
声を殺している分、感覚がより鋭敏になるのだろう。俺の舌と指が敏感な部分を責め立てる度に、陽太がくぐもった声を洩らしながら体を震わせる。
「あぁ……っ」
唾液でたっぷりと濡れたそこを強く吸い上げると、抑えられなかった切ない声が、陽太の喉から零れ落ちた。
少し顔を離してみれば、執拗に弄られた乳首はどちらも赤く膨らみ、白い肌との淫猥なコントラストを描いている。
「なあ、見えるか?……お前のここ、すげぇいやらしくなってんの」
耳元で揶揄うように言うと、
「か、和威さんが、そこばっかり弄るから……!」
陽太が怒って、俺のほっぺたをむにっと摘んできた。と言っても、完全に力が抜けきっているので全然痛くない。
「そうかよ。じゃあここ以外のとこも舐めてやるよ」
調子に乗った俺は、体の位置を少し変えて陽太のズボンに手をかけた。そしてそれを下着ごとずらすと、既に形を持ち始めていたモノが顔を出す。
陽太が反射的に身を捩って隠そうとするのを制して、俺はそこに唇を寄せた。そして、
「え、あ、うそ……っ」
陽太の昂った部分を、喉の奥深くにまで咥え込む。
「や、やめて和威さん、お願い、汚いから……っ」
陽太が必死な様子で俺の頭をどかそうとするが、それで引くくらいなら初めからこんなマネはしていない。それに俺は、汚いだなんてこれっぽっちも思っちゃいなかった。可愛い恋人の体の一部だと思えば、こんな行為にさえ愛おしさが溢れてくるだけだ。
「う、ぁ……やだ、和威さん……」
弱い部分を狙って舌を這わせていくと、陽太が上ずった声をあげて背中を仰け反らせた。嫌だという言葉とは裏腹に、口の中のそれは一層嵩を増していく。
俺のモノよりデカい陽太のそれは、さすがに全てを口内に収めることは出来ない。根元の部分を指の腹で扱きながら、同時に先の括れた箇所に舌を絡めると、溢れ出した液体が俺の唾液と混じって流れ落ちた。
陽太の呼吸がどんどん乱れていくのが分かる。
同じ男同士、どこをどう責められるのが気持ちいいかは大体想像がつく。その後も俺が丁寧に愛撫を続けていくと、再び陽太が俺の頭を押し退けようとしてきた。
「う……かずいさん、お願い、離して……でないと、おれもう……っ」
その言葉を聞いた俺は、陽太の手を退けさせて、さらに限界まで深く屹立を呑み込んだ。
「やぁ……っ」
泣き声のような吐息を洩らして、陽太が体を捩る。それと同時に、咥えていた部分がビクビクと激しく脈打って、白く濁ったモノを吐き出した。
「ん……」
口の中に吐き出されたそれを残さず受け止めて、俺はようやく陽太の昂りから口を離す。そして、その辺りに転がっていた箱から手探りでティッシュを数枚抜き取り、受け止めていたモノをそこへ出して、口の中を軽く拭った。自分でも不思議なくらいに、嫌悪はまるで感じない。
「和威さんの、ばかぁ……」
弱々しい声に視線を移すと、布団の上に力なく横たわった陽太が、涙目で俺を睨みつけていた。
「誰がバカだこら」
「だ、だって……いやだって、言ったのに」
「ほんとは嫌じゃなかっただろ?今だって、イったばっかなのに全然萎えてない」
再び熱を持ち始めているそこを軽く指でつついてやると、陽太が「やだぁ」と泣き声をあげた。
「和威さん、いじわるだ……優しくするって言ったのに」
「してるって。痛いことは何もしてないだろ」
「そう、だけど……」
釈然としない様子で、陽太が唇を尖らせる。俺は少し笑って、その首筋に口付けた。
「お前がいちいち可愛い反応するから、ついイジめたくなるんだよ」
「それって、おれのせいなの?」
「そうだよ。お前が可愛いのが悪い」
しれっと責任転嫁して、俺は陽太から体を離した。そして部屋の隅に置いていた泊まり用の鞄の底から、先日使ったローションの残りを引っ張り出して陽太に訊ねる。
「最後まで、していいか?」
「それは、いいけど……和威さん、それ用意してたの?」
「そうだよ、念の為な……おい、なに笑ってんだ」
くすくす笑っている陽太の鼻を、きゅっと摘んでやる。
「んむ、だって……そういうの、おればっかり期待しちゃってたらどうしようって思ってたから、嬉しくて」
「……バカ、お前だけの訳ないだろ」
そうだとしたら、俺だってこんなに昂るはずが無い。ズボンの下の俺自身も既に硬く張り詰め、今すぐ陽太の深い部分に繋がりたいと全身で訴えかけている。
けれど、ダメだ。今日こそは、陽太には快感だけを与えてやると決めたのだから。
「脱がすぞ」
そう声をかけて、陽太の足に絡んでいたパジャマの下を下着ごとまとめて剥ぎ取る。……けして意図した訳では無いが、前ボタンを全て外した上着と黒い靴下だけを残した姿は、普通に全て脱がせるよりも、数段いかがわしく感じた。
「和威さん、どうしたの? 」
そんな事にはまるで気づいていない陽太が、無垢な瞳で俺を見上げてくる。
「……なんでもない。今から慣らすから、キツいと思ったら言うんだぞ」
誤魔化すように言ってローションを手に取り、陽太の足を俺の太ももに乗せて広げさせる。
「……ん」
そうして奥深くの部分へ指先で触れると、陽太の体がぴくりと反応した。
以前よりは抵抗なく俺を受け入れたそこへ、慎重に指を埋めていく。
「ん……ふ」
俺の動きに反応して陽太が甘い吐息を洩らす度に、長い睫毛が切なげに震える。その様子に、俺はごくりと喉を鳴らして呟いた。
「こうやって、顔見ながらすんのもいいな」
「……え?」
「お前の感じてる顔、めちゃくちゃエロくて可愛い」
その言葉に、陽太の顔がカッと赤くなる。
「な、何言ってるの。ばか」
「ん。またバカつったな」
反対の手で軽く太ももを抓ってやると、奥の方がゆるく締めつけられる。
「うぅ……ばか……ばかぁ……」
「そんなとろとろの顔で言ったって、逆効果だぞ」
俺は小さく笑って、陽太の中に沈めている指をもう一本増やした。
「あ……っ」
乱れきった陽太の息遣いと、ぐちゅぐちゅという卑猥な音が混じりあって、静かな部屋の中に響く。その状況が、さらに陽太の快感を掻き立てるようだった。
「かずい、さん……」
「指、もう一本いけるか?」
「うん……ぁ……っ」
人差し指から薬指までを呑み込みきったそこは、奥に触れる度に強くうねって、もっと欲しいと訴えかけているようだ。
「かずいさん……かずいさん……っ」
「ん。わかってる」
俺自身の声も上擦っているのを感じながら、陽太の中がもはや容易く俺の指を受け入れるのを確認して、一気に全てを引き抜いた。
「ぅあ……っ」
そんな動作にすら反応して、陽太が小さく声をあげる。俺は昂る鼓動を押し隠しながら自分自身の前を寛げて、敢えてゆっくりゴムを装着した。そして陽太の腰を抱えて、熟れきった部分に己の昂りを押し当てる。
「……挿れるぞ。いいな?」
「うん……」
熱に浮かされたように陽太が頷くのを見て、俺は少しずつ、自分自身を沈めていく。
「う……」
「痛くないか?」
「だい、じょうぶ……」
熱っぽい声で、陽太が答える。
「かずいさんので、いっぱいになっていくの……うれしいから、へいき……」
呂律の回っていない舌でそう言われ、半分ほど押し込んでいたモノが反応してしまう。
「あ、や……っかずいさんの、おっきく、なった……」
「お、前が……煽るようなこと言うからだろうが……っ」
こっちは必死で我慢してるっていうのに、こいつは。
油断するとまた欲望に負けてしまいそうになる理性を無理矢理押さえ込んで、俺はどうにか残る部分も収めきった。
「はぁ……っ」
深く息を吐いて、俺は呼吸を整える。このまま乱暴に突き上げてしまいたくなる本能を黙らせて、陽太の姿を見下ろした。俺よりずっと男らしく整った体が、俺の愛撫で蕩けきって乱れている様は、なによりも俺を興奮させる。
「陽太……」
囁くように名前を呼ぶと、伏せられた睫毛がぴくりと反応した。
「陽太、ちょっとずつ動くからな」
そう言って引き締まった太ももを手で支え、ゆっくりと腰を動かしていく。
「…………っ」
また自分の口を手で押さえて、陽太が必死な様子で声を押し殺す。そのせいで中がより過敏に反応して、俺の理性を剥ぎ取ろうとしてくる。
「は……っ」
どうにか呼吸を抑えようとするが、それもそろそろ限界だった。徐々に抗いきれなくなってきた欲望によって、奥を穿つペースが少しずつ早くなっていく。
「う、ぁ……」
切れ切れの陽太の吐息も、もう抑えきれなくなってきたらしい。中を深く貫かれた陽太が小さく悲鳴をあげて、俺の方に手を伸ばしてきた。
「か、ずいさん……かずいさん、お願い……っ口、ふさいで……」
涙の滲む目で懇願され、俺は咄嗟に左の手で陽太の口を塞いだ。それによって少し前のめりになったせいで、より深く穿つような姿勢になってしまう。
「んぅ……っ」
俺が押さえつけた喉の奥から、くぐもった悲鳴が洩れる。それと共に、閉じた瞼から涙が一筋零れ落ちた。
これは……この状況は、まるで、力尽くで無理矢理犯しているような。
「あー……なんか、やばいな、これ」
このまま続けていたら、おかしな趣味に目覚めてしまいそうだ。
俺は陽太の顔からわざと目を逸らし、俺の動きに合わせて切なく揺れている屹立に、空いている手を伸ばした。
「…………!」
その直接的な刺激に反応して、白い喉が大きく仰け反る。俺は構わず、屹立に触れている手を動かしていく。体を震わせる陽太の反応から、限界が近いことは分かっていた。
「んん……っ」
涙に濡れた瞳で、陽太が訴えかけてくる。俺は小さく頷いて、一際強く陽太の中を穿った。
その瞬間、俺の手の中の屹立が大きく震えて、中が搾り取るような動きで激しくうねった。
「う……」
その動きで、堪らず俺も限界に達した。激しく脈打つ心臓の音を感じながら、陽太の中で全ての快感を吐き出す。
「は、ぁ……っようた……」
口を押さえていた手を離して名前を呼ぶと、ぐったりとした様子で横たわっていた陽太も、その声に少し顔をあげて「かずいさん」と俺の名前を呼んだ。
俺は繋がった部分を引き抜いて、陽太の体を優しく抱きしめ、その唇にキスをした。もうこれ以上は無いと思っていたのに、こうして触れ合うほどに、より一層愛しさが増していく。
「かずいさん……」
俺の背中に手を回して、陽太がもう一度俺の名前を呼ぶ。その度に心の奥底が満たされて、泣きたいくらいの幸せを感じた。
「陽太、陽太愛してる」
そう囁いて、愛する人の体をもっと強く抱き締めた。
もう、大丈夫。明日の俺は、きっともう迷わないだろう。
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