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海辺の結婚式
1.夕暮れの海で
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水平線の彼方に沈む夕陽が赤く滲んで、暮れゆく空との鮮やかなコントラストを描く。
海に来るのは何年ぶりだろう。ましてやこうして、ただ夕暮れのビーチを眺めるなんて、初めての経験かもしれない。
「兄ちゃん。こんなベランダの端っこで何してんの」
のんびり間延びした声に振り向くと、カジュアルな服装に着替えた裕翔が立っていた。俺はベランダの手すりにもたれて裕翔に答える。
「俺はちょっと休憩。お前こそ、せっかくの二次会なのに主役がこんなとこに居ていいのかよ」
「もう式は終わったんだから、主役って程でもないよ。みんな好きなように過ごしてるしさ」
裕翔はそう言いながら俺の隣に来て、「夕陽キレイだなー」と呑気な声をあげた。
裕翔が恋人だった女性にプロポーズをしたのは、去年のクリスマスの事。そうしてそこから少し月日は流れ、今日、七月二十五日に二人は結婚式を挙げたのだ。
「俺もいい歳だし同級生の結婚式とか散々出席したけど、ビーチウエディングってのは初めてだったよ。こういう雰囲気もいいな」
そう、今俺達がいるのは地元の浜辺にあるホテル。できるだけカジュアルな挙式にしたいという希望から、主役の二人はこの場所を選んだらしい。二人の家族とごく親しい友人達に囲まれて海辺で執り行われた式は、こじんまりとして、けれどとても綺麗だった。
「屋外での式だから心配だったんだけど、晴れて良かったよ。ほらオレ、こういう大事なイベントの時って大抵ヒドい目に遭うじゃん? 急に大雨が降るとか季節外れの台風が来るとか」
そう言って裕翔が軽く笑う。冗談めかしてはいるが、本人がそれで随分苦労してきた事は知っているので、あまり茶化す気にはならない。
俺が黙っていると、裕翔が少し真面目な顔になって言った。
「……最初はさ、やっぱり普通にどっかの式場でやった方がいいんじゃないかって言ったんだ。いつもの調子で台無しになったら困るからって。けどさ、そしたら遥香が言ったんだよ。『私は最強の晴れ女だから、あんたの悪運なんて丸ごと吹っ飛ばしてあげる』って。そしたら今日本当にめちゃくちゃ晴れた。すげーよな」
夕陽の眩しさに目を細めながら、裕翔がまた笑う。けれどその笑顔はさっきとは全然違う。その表情の全てから、幸せが溢れてくるみたいな笑顔だった。
「いい嫁さんだな」
「だろ」
緩みきった顔で言って、ふと何かを思い出したように、裕翔が俺に視線を向けた。
「あ、そういや向こうの方で陽太が遥香の友達にめっちゃナンパされてたから、そろそろ止めに行った方がいいかも」
しれっとした口調でとんでもない事を言う。
「お前……見てたんなら助けてやれよ」
「いやあ、それは彼氏の仕事かなって」
へらっと笑う裕翔に、思わずため息をつく。
「お前は? 戻らないのか」
「うん。遥香も友達と喋ってたし、今度は俺が休憩~。じゃあね兄ちゃん」
ひらひらと手を振る裕翔に片手を上げて、俺は室内へと足を向けた。
ベランダを仕切っていたガラス戸を開けると、エアコンの冷気に頬を撫でられ、室内のざわめきが一気に溢れてくる。挙式と披露宴が終わった後、海辺の近くのホテルに移動して、参加者のみんなで簡単な立食パーティーを行っているのだった。
さて陽太はどこに行ったのかと視線を巡らせてみると、その姿は探すまでもなくすぐに見つかった。オレンジのメッシュを入れた明るい色の髪が、隅っこの壁際に追い詰められている。
「宮藤さん、プロのアーティストってホントですか? さっき式で歌ってましたよね」
「CDとか出してるんですか? 聞きたーい」
少し離れた場所にいても、女の子の声はよく通る。自分よりも遥かに小柄な女子二人に挟まれて、陽太は完全に腰が引けているようだった。
「いや、あの、そんな大したものじゃ……」
「大したことありますよぉ。めちゃくちゃカッコよかったですもん」
「え、ていうかよく見たら宮藤さん胸板やばくないですか? 触りたい……」
「やだ、アイリ直球すぎ!」
けらけらと陽気な笑い声があがる。傍で見ている分には楽しげな光景だが、女の子達のノリがこれ以上悪い方向に行く前に、止めに入った方がよさそうだ。
「陽太……」
俺が壁際の三人に声をかけようとした時、
「アイリ、ユウナ。あんた達もあっちで写真撮ろうよ。みんな集まってるから」
スラリとした人影が近づいてきて、陽太を囲んでいる女の子達にそう言った。
「遥香! わかった、すぐ行くー!」
写真なら宮藤さんも、と言って陽太の袖を引っ張る女子をやんわりと引き離して、遥香……裕翔の奥さんが「先に行ってて」と女の子達を促す。
「すみません、陽太さん。悪い子達じゃないんですけど、二人ともちょっと浮かれてるみたい」
二人が去って行ったのを確認して、遥香さんが小声で陽太に詫びる。
「あ、いえ……おれの方こそ、女の人ばっかりだと緊張しちゃって」
そう言いつつも安堵した様子の陽太を見て、遥香さんは少し笑った。
「なんかギャップだなあ、陽太さん。見た目は派手に見えるし、一緒に活動されてる方も女性だから、結構慣れてるのかと思いました……なんて言ったら失礼かな」
「いえ、よく言われるので……あ、でもきいちゃん……キサラギさんはあんまり女の人っぽくないから平気なのかも」
「お前、怒られるぞそれ」
思わず口を挟んだ俺の方に、二人の視線が集まる。
「和威さん!」
俺の顔を見た陽太が、途端にパッと表情を明るくする。こいつに尻尾が生えていたら、今頃ちぎれんばかりに振っている事だろう。
俺が二人の方に近寄ると、遥香さんがこちらに向き直った。
「お義兄さん。今日はありがとうございました」
「こちらこそ。すげぇ良い式だったよ」
小さく頭を下げる遥香さんに、俺も会釈で返す。真っ黒なベリーショートとはっきりした目鼻立ちが印象的な彼女は、おっとりした裕翔とは正反対のしっかり者だ。
「あ、そうだ。陽太さんにもお礼を言おうと思ってたんです。さっきはありがとうございました」
「えっと……?」
心当たりが無いらしく、首を傾げる陽太に遥香さんが笑って言う。
「式の時、私の好きな歌をサプライズで歌ってもらえるように頼んだって、裕翔に聞いたんです。それがすごく嬉しかったので」
その言葉に陽太は目を瞬かせて、それからその目を少し細めて微笑んだ。
「良かった……喜んでもらえたなら、おれも嬉しいです」
そんな陽太に微笑み返した遥香さんは、「楽しんでくださいね」と言い残して、友人達の元へと去って行った。
「……遥香さん、カッコいい感じの人だよね」
「だな。裕翔にはもったいないくらいだよ」
小声で呟いた陽太に、軽く肩をすくめて返す。
窓辺の方では遥香さんが友人達と一緒に、濃紺に染まりつつある空をバックに写真を撮っている。二次会には参加せず帰宅した面々もいるので、今室内に残っているのは十数人程度。みんなそれぞれに歓談したり食事をしたり、思い思いに楽しい時間を過ごしているようだ。
俺は傍らに立つ陽太を見上げて、耳元に唇を寄せて囁いた。
「なあ、二人でちょっと抜け出さないか」
「え?」
陽太が少し首を傾げる。
「遥香さんにも挨拶できたしさ。せっかくだから夜の浜辺で散歩しようぜ」
そう言って、陽太の背中に軽く触れた。今日はここのホテルに部屋をとっているからゆっくりできる。地元とは言えせっかく海辺まで来たのだ、二人で夜のデートというのも悪くないだろう。
「ほら早く」
そっと手を取ると、陽太が少し頬を赤らめた。
「……うん。行こ」
俺の手を握り返してくる体温に、自然と頬が緩む。
陽太との関係が『恋人』に変わった日から、もう一年以上が経つ。あの頃は手を繋ぐ事にも戸惑ってばかりだった二人の距離は、気づけばこんなにも近くなった。
隣にいることが当たり前で、触れ合う度に愛しさが溢れて。裕翔にとっての彼女もそんな人ならいいなんて、そんなお節介な事をふと考えてしまうのは、きっと俺自身がこのうえなく幸せで満たされているからなのだろう。
海に来るのは何年ぶりだろう。ましてやこうして、ただ夕暮れのビーチを眺めるなんて、初めての経験かもしれない。
「兄ちゃん。こんなベランダの端っこで何してんの」
のんびり間延びした声に振り向くと、カジュアルな服装に着替えた裕翔が立っていた。俺はベランダの手すりにもたれて裕翔に答える。
「俺はちょっと休憩。お前こそ、せっかくの二次会なのに主役がこんなとこに居ていいのかよ」
「もう式は終わったんだから、主役って程でもないよ。みんな好きなように過ごしてるしさ」
裕翔はそう言いながら俺の隣に来て、「夕陽キレイだなー」と呑気な声をあげた。
裕翔が恋人だった女性にプロポーズをしたのは、去年のクリスマスの事。そうしてそこから少し月日は流れ、今日、七月二十五日に二人は結婚式を挙げたのだ。
「俺もいい歳だし同級生の結婚式とか散々出席したけど、ビーチウエディングってのは初めてだったよ。こういう雰囲気もいいな」
そう、今俺達がいるのは地元の浜辺にあるホテル。できるだけカジュアルな挙式にしたいという希望から、主役の二人はこの場所を選んだらしい。二人の家族とごく親しい友人達に囲まれて海辺で執り行われた式は、こじんまりとして、けれどとても綺麗だった。
「屋外での式だから心配だったんだけど、晴れて良かったよ。ほらオレ、こういう大事なイベントの時って大抵ヒドい目に遭うじゃん? 急に大雨が降るとか季節外れの台風が来るとか」
そう言って裕翔が軽く笑う。冗談めかしてはいるが、本人がそれで随分苦労してきた事は知っているので、あまり茶化す気にはならない。
俺が黙っていると、裕翔が少し真面目な顔になって言った。
「……最初はさ、やっぱり普通にどっかの式場でやった方がいいんじゃないかって言ったんだ。いつもの調子で台無しになったら困るからって。けどさ、そしたら遥香が言ったんだよ。『私は最強の晴れ女だから、あんたの悪運なんて丸ごと吹っ飛ばしてあげる』って。そしたら今日本当にめちゃくちゃ晴れた。すげーよな」
夕陽の眩しさに目を細めながら、裕翔がまた笑う。けれどその笑顔はさっきとは全然違う。その表情の全てから、幸せが溢れてくるみたいな笑顔だった。
「いい嫁さんだな」
「だろ」
緩みきった顔で言って、ふと何かを思い出したように、裕翔が俺に視線を向けた。
「あ、そういや向こうの方で陽太が遥香の友達にめっちゃナンパされてたから、そろそろ止めに行った方がいいかも」
しれっとした口調でとんでもない事を言う。
「お前……見てたんなら助けてやれよ」
「いやあ、それは彼氏の仕事かなって」
へらっと笑う裕翔に、思わずため息をつく。
「お前は? 戻らないのか」
「うん。遥香も友達と喋ってたし、今度は俺が休憩~。じゃあね兄ちゃん」
ひらひらと手を振る裕翔に片手を上げて、俺は室内へと足を向けた。
ベランダを仕切っていたガラス戸を開けると、エアコンの冷気に頬を撫でられ、室内のざわめきが一気に溢れてくる。挙式と披露宴が終わった後、海辺の近くのホテルに移動して、参加者のみんなで簡単な立食パーティーを行っているのだった。
さて陽太はどこに行ったのかと視線を巡らせてみると、その姿は探すまでもなくすぐに見つかった。オレンジのメッシュを入れた明るい色の髪が、隅っこの壁際に追い詰められている。
「宮藤さん、プロのアーティストってホントですか? さっき式で歌ってましたよね」
「CDとか出してるんですか? 聞きたーい」
少し離れた場所にいても、女の子の声はよく通る。自分よりも遥かに小柄な女子二人に挟まれて、陽太は完全に腰が引けているようだった。
「いや、あの、そんな大したものじゃ……」
「大したことありますよぉ。めちゃくちゃカッコよかったですもん」
「え、ていうかよく見たら宮藤さん胸板やばくないですか? 触りたい……」
「やだ、アイリ直球すぎ!」
けらけらと陽気な笑い声があがる。傍で見ている分には楽しげな光景だが、女の子達のノリがこれ以上悪い方向に行く前に、止めに入った方がよさそうだ。
「陽太……」
俺が壁際の三人に声をかけようとした時、
「アイリ、ユウナ。あんた達もあっちで写真撮ろうよ。みんな集まってるから」
スラリとした人影が近づいてきて、陽太を囲んでいる女の子達にそう言った。
「遥香! わかった、すぐ行くー!」
写真なら宮藤さんも、と言って陽太の袖を引っ張る女子をやんわりと引き離して、遥香……裕翔の奥さんが「先に行ってて」と女の子達を促す。
「すみません、陽太さん。悪い子達じゃないんですけど、二人ともちょっと浮かれてるみたい」
二人が去って行ったのを確認して、遥香さんが小声で陽太に詫びる。
「あ、いえ……おれの方こそ、女の人ばっかりだと緊張しちゃって」
そう言いつつも安堵した様子の陽太を見て、遥香さんは少し笑った。
「なんかギャップだなあ、陽太さん。見た目は派手に見えるし、一緒に活動されてる方も女性だから、結構慣れてるのかと思いました……なんて言ったら失礼かな」
「いえ、よく言われるので……あ、でもきいちゃん……キサラギさんはあんまり女の人っぽくないから平気なのかも」
「お前、怒られるぞそれ」
思わず口を挟んだ俺の方に、二人の視線が集まる。
「和威さん!」
俺の顔を見た陽太が、途端にパッと表情を明るくする。こいつに尻尾が生えていたら、今頃ちぎれんばかりに振っている事だろう。
俺が二人の方に近寄ると、遥香さんがこちらに向き直った。
「お義兄さん。今日はありがとうございました」
「こちらこそ。すげぇ良い式だったよ」
小さく頭を下げる遥香さんに、俺も会釈で返す。真っ黒なベリーショートとはっきりした目鼻立ちが印象的な彼女は、おっとりした裕翔とは正反対のしっかり者だ。
「あ、そうだ。陽太さんにもお礼を言おうと思ってたんです。さっきはありがとうございました」
「えっと……?」
心当たりが無いらしく、首を傾げる陽太に遥香さんが笑って言う。
「式の時、私の好きな歌をサプライズで歌ってもらえるように頼んだって、裕翔に聞いたんです。それがすごく嬉しかったので」
その言葉に陽太は目を瞬かせて、それからその目を少し細めて微笑んだ。
「良かった……喜んでもらえたなら、おれも嬉しいです」
そんな陽太に微笑み返した遥香さんは、「楽しんでくださいね」と言い残して、友人達の元へと去って行った。
「……遥香さん、カッコいい感じの人だよね」
「だな。裕翔にはもったいないくらいだよ」
小声で呟いた陽太に、軽く肩をすくめて返す。
窓辺の方では遥香さんが友人達と一緒に、濃紺に染まりつつある空をバックに写真を撮っている。二次会には参加せず帰宅した面々もいるので、今室内に残っているのは十数人程度。みんなそれぞれに歓談したり食事をしたり、思い思いに楽しい時間を過ごしているようだ。
俺は傍らに立つ陽太を見上げて、耳元に唇を寄せて囁いた。
「なあ、二人でちょっと抜け出さないか」
「え?」
陽太が少し首を傾げる。
「遥香さんにも挨拶できたしさ。せっかくだから夜の浜辺で散歩しようぜ」
そう言って、陽太の背中に軽く触れた。今日はここのホテルに部屋をとっているからゆっくりできる。地元とは言えせっかく海辺まで来たのだ、二人で夜のデートというのも悪くないだろう。
「ほら早く」
そっと手を取ると、陽太が少し頬を赤らめた。
「……うん。行こ」
俺の手を握り返してくる体温に、自然と頬が緩む。
陽太との関係が『恋人』に変わった日から、もう一年以上が経つ。あの頃は手を繋ぐ事にも戸惑ってばかりだった二人の距離は、気づけばこんなにも近くなった。
隣にいることが当たり前で、触れ合う度に愛しさが溢れて。裕翔にとっての彼女もそんな人ならいいなんて、そんなお節介な事をふと考えてしまうのは、きっと俺自身がこのうえなく幸せで満たされているからなのだろう。
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