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最終章 輝く花にくちづけを
2話 家族になれたら
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夏らしい眩しい日差しと、噎せ返るほどの草いきれの中で、ユリナはそわそわと辺りを見渡していた。
ここはクロムウェル邸の庭にある温室の中。壁も天井も、全てが硝子で出来た部屋の中から眺めていると、見慣れた屋敷の庭も、なんだか少し違って見える。
そんな真夏の鮮やかな緑が映える外の庭も美しいが、雨が降らないこの温室の中には、繊細で艶やかな花々が競い合うように咲いていた。これならきっと、これから迎え入れる客人達も喜んでくれるに違いない。
温室の中の木陰に置かれたテーブルの位置を確認していると、後ろからパタパタと駆け寄ってくる足音があった。
「奥様! こちらにいらしたのですね、お探ししましたよ」
可愛らしい声に振り向くと、植栽の影から長い三つ編みがぴょこりと覗いた。
「ラスタ……ごめんなさい、なんだか落ち着かなくて」
「ふふ、無理もありませんよ。ご家族とはいえ、ずいぶん久しぶりに会われるのでしょう?」
そう言ってラスタが微笑む。
彼女の言う通り、今日これから迎え入れる客人とは、ユリナの家族……両親と弟の事だった。
この家に嫁いでからも手紙のやり取りはしていたけれど、直接顔を合わせるのは結婚式の日以来だ。だからアランとも相談して、この家で一番美しい花々が見られるこの場所に、家族を迎えようと決めたのだった。
「今日は晴れてよかったわね。温室だから雨でも関係ないけれど、やっぱり花はお日様の下が一番綺麗に見えるもの」
ユリナの母は花が好きな人だったから、きっと喜んでくれるに違いない。せっかく足を運んでくれるのだから、この家にも、そしてなによりユリナの夫になった人にも、できるだけ良い印象を持って欲しい。
というのも、ユリナの母であるシエラ・リーズレットは、争い事を好まないおっとりした性格の人で、それゆえに、アランや彼の父の事を野蛮で怖い人なのだと思っているようなところがあった。父が決めたこの結婚にも、最後まで反対していたのが彼女だ。
「……アラン様は、お部屋にいらっしゃるのかしら」
「ええ、そのはずですよ。旦那様も、なんだか落ち着かないご様子でした」
そう言って、ラスタが少しおかしそうに笑う。
アランもきっと緊張しているのだろう。あれで案外繊細な人だから。
「私も、一度部屋に戻ろうかしら」
「そうですね。お約束の時間までまだありますから、それがよろしいと思います」
そう言って微笑むラスタと共に、温室を後にした。
透明な扉を開いた途端、乾いた風が吹き抜けて、爽やかな緑の匂いに全身を包まれる。温室の中に溢れていた、濃い土の匂いとはまた違う空気に、胸が少し高鳴るのを感じた。
*
それから数時間後、太陽が空の一番高い所に昇った頃に、待ち人はやって来た。
「姉上!」
客人の到着を聞いたユリナがアランと共に庭に出て待っていると、敷地内に入って来た馬車が止まるのとほぼ同時に扉が開き、そこから飛び出してきた人影がこちらへ一直線に駆け寄って来た。
「エリック! よく来てくれたわね!」
弟であるエリックが、勢いのまま抱きついてくるのを、思いきり手を広げて受け止める。
ついつい子供の頃の感覚で接してしまうが、もう十七になるエリックの力はそれなりに強くなっていて、勢い余ってよろけそうになったのを、後ろにいたアランが二人まとめて支えてくれた。
「危ないですよ、二人とも」
ユリナの両肩にそっと手を置いて、アランが言う。その言葉を聞いた途端、エリックは慌てて姿勢を正した。
「す、すみません、義兄上」
いつも元気なエリックにしては珍しく緊張した様子に、つい笑ってしまいそうになる。父と同じ伯爵とはいえ、実質的にはアランの方がかなりの権力者なのだから、それも当然かもしれない。それを笠に着て偉ぶる人ではないとユリナは知ってるけれど、エリックと彼は結婚式の前後に会ったきりなのだから、無理もない。
「ねえ、エリック。あなた前よりも背が伸びたんじゃないかしら」
どうにか弟の緊張を解けないかと、ユリナはエリックのふわふわした猫っ毛を、ぽんぽんと撫でながらそう訊ねてみた。
以前はユリナと同じくらいの目線だったのに、ほんの数ヶ月会わなかっただけで追い抜かされてしまったようだ。
「ええ、そうですよ! まだまだ伸びてる途中ですから」
なんだか自慢げなエリックが言う通り、これからもっともっと背が伸びて、ユリナはあっという間に置いていかれるのだろう。それを思うと、喜ばしいような、寂しいような、少し複雑な気分だ。
「こらエリック! まったく、お前は落ち着きのない……もう子供ではないのだから、少しは自覚を持ちなさい」
そう言って肩を怒らせながらこちらへやって来るのは、ユリナ達の父、カーティスだった。今年でちょうど五十になる父の撫で付けた前髪の生え際が、ずいぶん後退している事に気がついて、なんとも言えない気持ちになる。
「父上……だって、久しぶりに姉上にお会いできたので、嬉しくて」
「紳士は場をわきまえるものだ。クロムウェル卿を見習いなさい。いついかなる時も落ち着いておられる」
鼻息荒く父が発した言葉に、アランが小さく苦笑するのが分かった。
「私も常に冷静でいるわけではありませんよ。感情が表に現れにくい性分だというだけです。……本当は、私も今日という日を心待ちにしていました。こうしてまたお会いできて光栄です、リーズレット卿」
そう言ってアランが差し出した手を、父が少し照れた様子で握り返す。
そんな二人を、やや離れたところから見守っている母の表情が、どこか晴れないことに気づいていたのは、ユリナだけのようだった。
「おお! これはまた、見事なものですなあ」
家族を連れて、ユリナ達がさっそく温室へ案内すると、中に入るなり父が感嘆の声をあげた。どこか緊張した面持ちだったエリックと母も、目を輝かせながら周囲を見回していて、なんだか嬉しくなってしまう。
「すごいでしょう? お母様のお好きな薔薇に、東の国から買い入れて来た珍しい花もたくさんあるのよ。ねえ、アラン様」
隣を歩くアランにそう声をかけて、その横顔を見上げた。ここも元々は、彼の父グランツが妻のために作った花園なのだと聞いている。その場所をアランもとても大切にしてきたと知っているから、ついつい自慢したくもなる。
「本当にすごいですね! 王宮の花園にだって負けてないですよ」
通路の脇に作られた池に浮かぶ、小さな蓮の花を興味深げに眺めながら、エリックが言う。多少背が伸びたとはいえ、そうして何かに夢中になる姿は子供の頃と全然変わっていない。先日会ったネストとは、背丈も年齢もほぼ同じはずなのに、エリックの方がやや幼いように感じてしまうのは、やはり経験の差だろうか。ネストはあの歳で既に役割を持って働いているのだから、しっかりしているのも当然かもしれない。
「姉上? どうかしましたか」
少し首を傾げて、エリックがこちらを振り返る。
「なんでもないわ。……あなたは、そのままでいてね」
戸惑ったように目を瞬かせるエリックの肩に軽く触れる。いずれはエリックだって、家を継がなくてはいけない日が来る。だったら今の間くらいは、何にも縛られることなく自由でいて欲しいと思ってしまう。だって、いくつになったって、エリックは可愛い弟なのだから。
「どうぞ、こちらへ」
そんなやり取りを交わすユリナ達の方を少し振り向いて、アランが通路の先を手で示す。
やや開けたその場所には、白い薔薇の生け垣に囲まれた中に、五人が座れるだけのテーブルセットが用意されていた。先程ユリナが一人でそわそわと確認していた場所だ。
マロニエの木陰に置かれた席へ父達を案内して、その向かいにアランと並んで腰を下ろすと、既に温室の中で待っていたラスタが、手際良く人数分の紅茶を淹れてくれた。
ここまでは何もかも予定通り。全て上手くいっている。
父はユリナと違ってお喋りな性格だが、寡黙なアランとは案外相性が良かったのかもしれない。機嫌よく話す父カーティスの言葉を、アランはひとつひとつ頷きながら聞いている。少なくとも、傍目には良い雰囲気に見えた。
その事にユリナが内心で安堵の息を吐いた時、ふと父がこんな言葉をこぼした。
「やはりクロムウェル卿は、お父上と同じく大層な剣豪であらせられるそうですな。剣の一振で、あの炎の魔術師を切り伏せてみせたとか」
「…………は、いや、それは……」
それまで穏やかな表情で父の話を聞いていたアランの横顔が、若干引き攣るのが隣で見ていても分かった。どうやら例の夜会での一件は、噂ばかりが独り歩きしてしまっているようだ。 実際はラヴェイルが勝手に自滅したに等しい結末だったし、そもそも本当に相手を切り伏せていたら大事件である。
「お父様……」
アランもあまりこの話はされたくないだろうし、どうにか話を逸らそうと会話に割り込もうとしたが、上機嫌な父はまるで聞いていない。
「実の所、我が息子も騎士団に入れていただけないかと考えておりましてなあ……いや、やはり男に産まれたからには、強くなければならぬと」
「やめてください! そんな恐ろしいこと……!」
突然あがった悲鳴のような声に、その場にいたほぼ全員が、一様に驚いた顔を見せた。
だがたった一人、その声を発した本人である母だけが、隣に座るカーティスを青ざめた顔で睨みつけている。
「な、なんだね、シエラ……そんな言い方はクロムウェル卿に失礼だろう」
それまで一言も発さなかった妻の突然の大声に動揺しながらも、カーティスは彼女を叱りつけた。しかしシエラは、気まずそうに目を逸らしたものの、発言を改めようとはしない。
その場に重い沈黙が落ちる。
ほとんど表情を変えないアランの瞳が、少し悲しげに揺れた。その些細な変化に気づけたのは、この場ではユリナだけだ。
「ねえ、お母様。二人で少しお散歩しませんか」
わざと場違いなほど明るい声を出して、母にそう言った。戸惑った様子の母が疑問を口にする前に、笑顔でアランの方へ視線を向ける。
「構いませんか? アラン様」
「え、ええ……それは、もちろん」
ユリナの勢いに若干押された様子のアランが頷くのを見て、ユリナは早々に席を立った。
「行きましょう、お母様」
「あ、あなた突然なにを」
「いいから、ほら」
躊躇う母の手を取って、男性陣をその場に残して温室を後にする。この温室ももちろん素敵なところだが、他にも案内したい場所はたくさんあった。
「ちょっと、ユリナ。あなたどこへ行くつもりなの」
「そうね……どこにしましょうか。温室にも薔薇が咲いていたけれど、外のお庭にも薔薇園があるのよ。と言っても、ここのお庭は広いから、見て回るだけでも一苦労なのだけど……」
「……そんな話はしていません」
強引に引いていた手を振り払われ、ユリナはその場で足を止めて振り向いた。視界の端には、先程までユリナ達がいたガラス張りの建物と、どこまでも続く濃い緑の生け垣が映っている。
シエラは俯いたまま何も言わない。ユリナと同じで、女性にしては背の高い人だと思っていたけれど、こうして向かい合うと、その体はなんだか少し小さく見えた。
「……お母様は、一体何がそんなに心配なんですか? エリックの事なら、きっと大丈夫ですよ。お父様は、ああおっしゃっていたけれど、エリックだってもう子供ではないのですから、自分の生き方くらいは自分で決められるはずです」
もしもエリック自身が騎士団に入ると決めたのなら、心配だけどそれを止める事はできない。自由に生きて欲しいと、そう願ったのはユリナ自身なのだから。
けれど、そんなユリナの言葉に、シエラは俯いたままで首を左右に振った。
「あの子の事だけじゃないわ。……私が心配なのは、あなたのことよ」
「私?」
「ええ、そうよ。……あなたのお父様は、あなたを地位のある殿方に嫁がせるのが、なによりあなたの幸せになると信じて疑っていなかった。だけど私はそうは思いません。お金が無くても、身分が低くても、あなたを誰よりも大切にしてくれる人でなくては意味が無い。……それなのに、ろくに交流も無い方の誘いに乗って、勝手に話を進めてしまって……慣れない土地と、顔も知らない人の家で、あなたが辛い思いをしているんじゃないかと、思って……」
「お母様……」
絞り出すように次々と言葉を紡ぎ出して、それっきり、母はまた黙り込んでしまった。
ユリナは、父であるカーティスの考えも間違いだとは思わない。リーズレット家の領地はごく小さくて、畑ばかりの牧歌的なところで、穏やかだけど何も無い。元々は王都の方で暮らしていたシエラをそんな田舎町に連れて来てしまったと、父が引け目に思っていた事を、ユリナは知っている。だからせめて、自分の娘にはお金のことで苦労させないようにと、熱心に相手を選んでくれた事も。
「……本当に、私は幸せ者ですね」
口をついて溢れ出た言葉に、母が怪訝な表情を浮かべる。ユリナはそんな母に微笑みを返して、身につけていた髪飾りを外して見せた。
「見てください、お母様。これはアラン様にいただいたんですよ。ご両親の大切な形見なのに、私のために仕立て直してくださったんです」
「これを、あの人が……?」
少し躊躇いながら、母が小鳥の尾羽の部分に触れる。誓いの証の、青い宝石に。
「私を大切にしてくれる人でなくてはならないというのなら、やっぱりアラン様以上の方はいません。……優しい人なんです。本当に」
その優しさを、息苦しく感じてしまう時もあった。けれど、ほんの少しだけ、あの人の心に触れることができたから。だから今なら、前よりも真っ直ぐに思いを受け取る事ができる。
「……あなたは今、幸せなのね」
「ええ、とても」
「そう……それなら、良かったわ。……本当に、良かった」
そう言って、シエラは小さく息を吐いた。
「あなたの旦那様に、謝らなくてはいけないわね」
「あんな事で怒るような人ではありませんから、きっと大丈夫ですよ。時間はたくさんあるのですから、ゆっくりお話してみれば、きっとお母様もアラン様の事を好きになります」
シエラ達は今日から数日の間、クロムウェル邸の近くにあるゲストハウスへ宿泊する事になっていた。せっかくだから、まもなく開かれる夜光祭に参加していってもらおうと思っての事だ。
「そうだわ。お母様も、お父様とお二人で夜光祭に参加されるといいですよ。夫婦や恋人同士で見て回るという方が多いそうですから」
「……そうね。エリックだって、ずっと親と一緒では息が詰まるでしょうし、そうしようかしら。……あなたも、旦那様と参加するの?」
「ええ、そのつもりです。お忙しい方だから、ずっと一緒とはいかないでしょうけど……」
今年初めて夫婦になった二人にとっては、とても特別で大切なお祭りなのだとラスタが言っていた。それなら、ほんの少しの間だけでも、一緒にいたい。
あの人も、同じ気持ちでいてくれたらいいと思う。
「戻る前に、本当にお散歩して行きましょう、お母様。女だけで話したい事もたくさんありますから」
「そうね」
口元に手を当てて、シエラがくすくすと笑う。
誤解しても、すれ違っても、こうしてまた手を取り合える。アランとも、そんな家族になれたらいいだなんて。
そんな甘い考えを持っていた自分を、すぐに恥じる事になるなんて、ユリナはまだ、想像すらしていなかった。
*
「アラン様!」
傾きかけた陽が落ちる廊下を小走りに進んで、ユリナはアランの元へ駆け寄った。つい先程、家族をゲストハウスの方に送り出して、今はアランと二人きりだ。
「アラン様。今日は本当にありがとうございました」
そう言って小さく頭を下げると、アランは目を細めて微笑んでくれた。
「お礼を言うのはこちらの方です。貴女のご家族とお話できてよかった」
「私の家族は、アラン様にとっても家族ですよ」
その言葉を聞いた途端、アランはとても優しい表情で目を細めた。
「そうなれていたら、いいのですが」
「大丈夫ですよ。母だって、少し心配性なだけですもの」
「……貴女のお母上が、ああいうふうに仰るのも当然です。危険な事の多い役目ですし、見世物のように剣を振るう事もありますから」
そう言って、アランは少し困ったように笑った。
夜光祭の日に、アランとウォルターの二人で剣技を披露するのだと聞いている。アランにとっては、きっと気の進まない事だろう。
「それでも、誰かがやらなくてはいけない大切なお役目です。夜光祭のことだって、街にとっては必要なことなのでしょう? アラン様や騎士団の皆さんがいてくださるから、私達が安心して暮らせるのです」
「……貴女にそう言って貰えるのなら、いくらでも力を出せそうです」
そう言ってくれた温かな声音に、こちらの方まで嬉しくなってしまう。……そうだ、今なら誘えるかもしれない。
「ねえ、アラン様。私と一緒に、夜光祭に行ってくださいますか?」
当然、アランはいつもと同じように、笑って頷いてくれるのだと思った。けれど、
「……すみません、それは……約束できません」
申し訳なさそうに、それでもきっぱりと言い放たれた言葉に、一瞬頭が真っ白になった。
「……そ、そうですか。……そうですよね。ごめんなさい、お忙しいのに」
どうにかそれだけを返して、再び小さく頭を下げる。アランが何か言おうとした気配を察して、「失礼します」とだけ告げて踵を返した。
足早に自室へと向かいながら、みるみるうちに自分の顔が真っ赤になっていくのを感じる。
恥ずかしくて、消えてしまいたい。断られた事が、ではない。断られるはずがないと、心のどこかでそう思い込んでいた自分の傲慢さが、たまらなく恥ずかしかった。
心に触れることができた、なんて。そんなのただの思い込みだった。たったあれだけのやり取りで、あの人の何を理解した気になっていたのだろう。
最初から、分かっていたことのはずだ。
知らない人間同士が家族になるなんて、簡単な事じゃないんだって。
ここはクロムウェル邸の庭にある温室の中。壁も天井も、全てが硝子で出来た部屋の中から眺めていると、見慣れた屋敷の庭も、なんだか少し違って見える。
そんな真夏の鮮やかな緑が映える外の庭も美しいが、雨が降らないこの温室の中には、繊細で艶やかな花々が競い合うように咲いていた。これならきっと、これから迎え入れる客人達も喜んでくれるに違いない。
温室の中の木陰に置かれたテーブルの位置を確認していると、後ろからパタパタと駆け寄ってくる足音があった。
「奥様! こちらにいらしたのですね、お探ししましたよ」
可愛らしい声に振り向くと、植栽の影から長い三つ編みがぴょこりと覗いた。
「ラスタ……ごめんなさい、なんだか落ち着かなくて」
「ふふ、無理もありませんよ。ご家族とはいえ、ずいぶん久しぶりに会われるのでしょう?」
そう言ってラスタが微笑む。
彼女の言う通り、今日これから迎え入れる客人とは、ユリナの家族……両親と弟の事だった。
この家に嫁いでからも手紙のやり取りはしていたけれど、直接顔を合わせるのは結婚式の日以来だ。だからアランとも相談して、この家で一番美しい花々が見られるこの場所に、家族を迎えようと決めたのだった。
「今日は晴れてよかったわね。温室だから雨でも関係ないけれど、やっぱり花はお日様の下が一番綺麗に見えるもの」
ユリナの母は花が好きな人だったから、きっと喜んでくれるに違いない。せっかく足を運んでくれるのだから、この家にも、そしてなによりユリナの夫になった人にも、できるだけ良い印象を持って欲しい。
というのも、ユリナの母であるシエラ・リーズレットは、争い事を好まないおっとりした性格の人で、それゆえに、アランや彼の父の事を野蛮で怖い人なのだと思っているようなところがあった。父が決めたこの結婚にも、最後まで反対していたのが彼女だ。
「……アラン様は、お部屋にいらっしゃるのかしら」
「ええ、そのはずですよ。旦那様も、なんだか落ち着かないご様子でした」
そう言って、ラスタが少しおかしそうに笑う。
アランもきっと緊張しているのだろう。あれで案外繊細な人だから。
「私も、一度部屋に戻ろうかしら」
「そうですね。お約束の時間までまだありますから、それがよろしいと思います」
そう言って微笑むラスタと共に、温室を後にした。
透明な扉を開いた途端、乾いた風が吹き抜けて、爽やかな緑の匂いに全身を包まれる。温室の中に溢れていた、濃い土の匂いとはまた違う空気に、胸が少し高鳴るのを感じた。
*
それから数時間後、太陽が空の一番高い所に昇った頃に、待ち人はやって来た。
「姉上!」
客人の到着を聞いたユリナがアランと共に庭に出て待っていると、敷地内に入って来た馬車が止まるのとほぼ同時に扉が開き、そこから飛び出してきた人影がこちらへ一直線に駆け寄って来た。
「エリック! よく来てくれたわね!」
弟であるエリックが、勢いのまま抱きついてくるのを、思いきり手を広げて受け止める。
ついつい子供の頃の感覚で接してしまうが、もう十七になるエリックの力はそれなりに強くなっていて、勢い余ってよろけそうになったのを、後ろにいたアランが二人まとめて支えてくれた。
「危ないですよ、二人とも」
ユリナの両肩にそっと手を置いて、アランが言う。その言葉を聞いた途端、エリックは慌てて姿勢を正した。
「す、すみません、義兄上」
いつも元気なエリックにしては珍しく緊張した様子に、つい笑ってしまいそうになる。父と同じ伯爵とはいえ、実質的にはアランの方がかなりの権力者なのだから、それも当然かもしれない。それを笠に着て偉ぶる人ではないとユリナは知ってるけれど、エリックと彼は結婚式の前後に会ったきりなのだから、無理もない。
「ねえ、エリック。あなた前よりも背が伸びたんじゃないかしら」
どうにか弟の緊張を解けないかと、ユリナはエリックのふわふわした猫っ毛を、ぽんぽんと撫でながらそう訊ねてみた。
以前はユリナと同じくらいの目線だったのに、ほんの数ヶ月会わなかっただけで追い抜かされてしまったようだ。
「ええ、そうですよ! まだまだ伸びてる途中ですから」
なんだか自慢げなエリックが言う通り、これからもっともっと背が伸びて、ユリナはあっという間に置いていかれるのだろう。それを思うと、喜ばしいような、寂しいような、少し複雑な気分だ。
「こらエリック! まったく、お前は落ち着きのない……もう子供ではないのだから、少しは自覚を持ちなさい」
そう言って肩を怒らせながらこちらへやって来るのは、ユリナ達の父、カーティスだった。今年でちょうど五十になる父の撫で付けた前髪の生え際が、ずいぶん後退している事に気がついて、なんとも言えない気持ちになる。
「父上……だって、久しぶりに姉上にお会いできたので、嬉しくて」
「紳士は場をわきまえるものだ。クロムウェル卿を見習いなさい。いついかなる時も落ち着いておられる」
鼻息荒く父が発した言葉に、アランが小さく苦笑するのが分かった。
「私も常に冷静でいるわけではありませんよ。感情が表に現れにくい性分だというだけです。……本当は、私も今日という日を心待ちにしていました。こうしてまたお会いできて光栄です、リーズレット卿」
そう言ってアランが差し出した手を、父が少し照れた様子で握り返す。
そんな二人を、やや離れたところから見守っている母の表情が、どこか晴れないことに気づいていたのは、ユリナだけのようだった。
「おお! これはまた、見事なものですなあ」
家族を連れて、ユリナ達がさっそく温室へ案内すると、中に入るなり父が感嘆の声をあげた。どこか緊張した面持ちだったエリックと母も、目を輝かせながら周囲を見回していて、なんだか嬉しくなってしまう。
「すごいでしょう? お母様のお好きな薔薇に、東の国から買い入れて来た珍しい花もたくさんあるのよ。ねえ、アラン様」
隣を歩くアランにそう声をかけて、その横顔を見上げた。ここも元々は、彼の父グランツが妻のために作った花園なのだと聞いている。その場所をアランもとても大切にしてきたと知っているから、ついつい自慢したくもなる。
「本当にすごいですね! 王宮の花園にだって負けてないですよ」
通路の脇に作られた池に浮かぶ、小さな蓮の花を興味深げに眺めながら、エリックが言う。多少背が伸びたとはいえ、そうして何かに夢中になる姿は子供の頃と全然変わっていない。先日会ったネストとは、背丈も年齢もほぼ同じはずなのに、エリックの方がやや幼いように感じてしまうのは、やはり経験の差だろうか。ネストはあの歳で既に役割を持って働いているのだから、しっかりしているのも当然かもしれない。
「姉上? どうかしましたか」
少し首を傾げて、エリックがこちらを振り返る。
「なんでもないわ。……あなたは、そのままでいてね」
戸惑ったように目を瞬かせるエリックの肩に軽く触れる。いずれはエリックだって、家を継がなくてはいけない日が来る。だったら今の間くらいは、何にも縛られることなく自由でいて欲しいと思ってしまう。だって、いくつになったって、エリックは可愛い弟なのだから。
「どうぞ、こちらへ」
そんなやり取りを交わすユリナ達の方を少し振り向いて、アランが通路の先を手で示す。
やや開けたその場所には、白い薔薇の生け垣に囲まれた中に、五人が座れるだけのテーブルセットが用意されていた。先程ユリナが一人でそわそわと確認していた場所だ。
マロニエの木陰に置かれた席へ父達を案内して、その向かいにアランと並んで腰を下ろすと、既に温室の中で待っていたラスタが、手際良く人数分の紅茶を淹れてくれた。
ここまでは何もかも予定通り。全て上手くいっている。
父はユリナと違ってお喋りな性格だが、寡黙なアランとは案外相性が良かったのかもしれない。機嫌よく話す父カーティスの言葉を、アランはひとつひとつ頷きながら聞いている。少なくとも、傍目には良い雰囲気に見えた。
その事にユリナが内心で安堵の息を吐いた時、ふと父がこんな言葉をこぼした。
「やはりクロムウェル卿は、お父上と同じく大層な剣豪であらせられるそうですな。剣の一振で、あの炎の魔術師を切り伏せてみせたとか」
「…………は、いや、それは……」
それまで穏やかな表情で父の話を聞いていたアランの横顔が、若干引き攣るのが隣で見ていても分かった。どうやら例の夜会での一件は、噂ばかりが独り歩きしてしまっているようだ。 実際はラヴェイルが勝手に自滅したに等しい結末だったし、そもそも本当に相手を切り伏せていたら大事件である。
「お父様……」
アランもあまりこの話はされたくないだろうし、どうにか話を逸らそうと会話に割り込もうとしたが、上機嫌な父はまるで聞いていない。
「実の所、我が息子も騎士団に入れていただけないかと考えておりましてなあ……いや、やはり男に産まれたからには、強くなければならぬと」
「やめてください! そんな恐ろしいこと……!」
突然あがった悲鳴のような声に、その場にいたほぼ全員が、一様に驚いた顔を見せた。
だがたった一人、その声を発した本人である母だけが、隣に座るカーティスを青ざめた顔で睨みつけている。
「な、なんだね、シエラ……そんな言い方はクロムウェル卿に失礼だろう」
それまで一言も発さなかった妻の突然の大声に動揺しながらも、カーティスは彼女を叱りつけた。しかしシエラは、気まずそうに目を逸らしたものの、発言を改めようとはしない。
その場に重い沈黙が落ちる。
ほとんど表情を変えないアランの瞳が、少し悲しげに揺れた。その些細な変化に気づけたのは、この場ではユリナだけだ。
「ねえ、お母様。二人で少しお散歩しませんか」
わざと場違いなほど明るい声を出して、母にそう言った。戸惑った様子の母が疑問を口にする前に、笑顔でアランの方へ視線を向ける。
「構いませんか? アラン様」
「え、ええ……それは、もちろん」
ユリナの勢いに若干押された様子のアランが頷くのを見て、ユリナは早々に席を立った。
「行きましょう、お母様」
「あ、あなた突然なにを」
「いいから、ほら」
躊躇う母の手を取って、男性陣をその場に残して温室を後にする。この温室ももちろん素敵なところだが、他にも案内したい場所はたくさんあった。
「ちょっと、ユリナ。あなたどこへ行くつもりなの」
「そうね……どこにしましょうか。温室にも薔薇が咲いていたけれど、外のお庭にも薔薇園があるのよ。と言っても、ここのお庭は広いから、見て回るだけでも一苦労なのだけど……」
「……そんな話はしていません」
強引に引いていた手を振り払われ、ユリナはその場で足を止めて振り向いた。視界の端には、先程までユリナ達がいたガラス張りの建物と、どこまでも続く濃い緑の生け垣が映っている。
シエラは俯いたまま何も言わない。ユリナと同じで、女性にしては背の高い人だと思っていたけれど、こうして向かい合うと、その体はなんだか少し小さく見えた。
「……お母様は、一体何がそんなに心配なんですか? エリックの事なら、きっと大丈夫ですよ。お父様は、ああおっしゃっていたけれど、エリックだってもう子供ではないのですから、自分の生き方くらいは自分で決められるはずです」
もしもエリック自身が騎士団に入ると決めたのなら、心配だけどそれを止める事はできない。自由に生きて欲しいと、そう願ったのはユリナ自身なのだから。
けれど、そんなユリナの言葉に、シエラは俯いたままで首を左右に振った。
「あの子の事だけじゃないわ。……私が心配なのは、あなたのことよ」
「私?」
「ええ、そうよ。……あなたのお父様は、あなたを地位のある殿方に嫁がせるのが、なによりあなたの幸せになると信じて疑っていなかった。だけど私はそうは思いません。お金が無くても、身分が低くても、あなたを誰よりも大切にしてくれる人でなくては意味が無い。……それなのに、ろくに交流も無い方の誘いに乗って、勝手に話を進めてしまって……慣れない土地と、顔も知らない人の家で、あなたが辛い思いをしているんじゃないかと、思って……」
「お母様……」
絞り出すように次々と言葉を紡ぎ出して、それっきり、母はまた黙り込んでしまった。
ユリナは、父であるカーティスの考えも間違いだとは思わない。リーズレット家の領地はごく小さくて、畑ばかりの牧歌的なところで、穏やかだけど何も無い。元々は王都の方で暮らしていたシエラをそんな田舎町に連れて来てしまったと、父が引け目に思っていた事を、ユリナは知っている。だからせめて、自分の娘にはお金のことで苦労させないようにと、熱心に相手を選んでくれた事も。
「……本当に、私は幸せ者ですね」
口をついて溢れ出た言葉に、母が怪訝な表情を浮かべる。ユリナはそんな母に微笑みを返して、身につけていた髪飾りを外して見せた。
「見てください、お母様。これはアラン様にいただいたんですよ。ご両親の大切な形見なのに、私のために仕立て直してくださったんです」
「これを、あの人が……?」
少し躊躇いながら、母が小鳥の尾羽の部分に触れる。誓いの証の、青い宝石に。
「私を大切にしてくれる人でなくてはならないというのなら、やっぱりアラン様以上の方はいません。……優しい人なんです。本当に」
その優しさを、息苦しく感じてしまう時もあった。けれど、ほんの少しだけ、あの人の心に触れることができたから。だから今なら、前よりも真っ直ぐに思いを受け取る事ができる。
「……あなたは今、幸せなのね」
「ええ、とても」
「そう……それなら、良かったわ。……本当に、良かった」
そう言って、シエラは小さく息を吐いた。
「あなたの旦那様に、謝らなくてはいけないわね」
「あんな事で怒るような人ではありませんから、きっと大丈夫ですよ。時間はたくさんあるのですから、ゆっくりお話してみれば、きっとお母様もアラン様の事を好きになります」
シエラ達は今日から数日の間、クロムウェル邸の近くにあるゲストハウスへ宿泊する事になっていた。せっかくだから、まもなく開かれる夜光祭に参加していってもらおうと思っての事だ。
「そうだわ。お母様も、お父様とお二人で夜光祭に参加されるといいですよ。夫婦や恋人同士で見て回るという方が多いそうですから」
「……そうね。エリックだって、ずっと親と一緒では息が詰まるでしょうし、そうしようかしら。……あなたも、旦那様と参加するの?」
「ええ、そのつもりです。お忙しい方だから、ずっと一緒とはいかないでしょうけど……」
今年初めて夫婦になった二人にとっては、とても特別で大切なお祭りなのだとラスタが言っていた。それなら、ほんの少しの間だけでも、一緒にいたい。
あの人も、同じ気持ちでいてくれたらいいと思う。
「戻る前に、本当にお散歩して行きましょう、お母様。女だけで話したい事もたくさんありますから」
「そうね」
口元に手を当てて、シエラがくすくすと笑う。
誤解しても、すれ違っても、こうしてまた手を取り合える。アランとも、そんな家族になれたらいいだなんて。
そんな甘い考えを持っていた自分を、すぐに恥じる事になるなんて、ユリナはまだ、想像すらしていなかった。
*
「アラン様!」
傾きかけた陽が落ちる廊下を小走りに進んで、ユリナはアランの元へ駆け寄った。つい先程、家族をゲストハウスの方に送り出して、今はアランと二人きりだ。
「アラン様。今日は本当にありがとうございました」
そう言って小さく頭を下げると、アランは目を細めて微笑んでくれた。
「お礼を言うのはこちらの方です。貴女のご家族とお話できてよかった」
「私の家族は、アラン様にとっても家族ですよ」
その言葉を聞いた途端、アランはとても優しい表情で目を細めた。
「そうなれていたら、いいのですが」
「大丈夫ですよ。母だって、少し心配性なだけですもの」
「……貴女のお母上が、ああいうふうに仰るのも当然です。危険な事の多い役目ですし、見世物のように剣を振るう事もありますから」
そう言って、アランは少し困ったように笑った。
夜光祭の日に、アランとウォルターの二人で剣技を披露するのだと聞いている。アランにとっては、きっと気の進まない事だろう。
「それでも、誰かがやらなくてはいけない大切なお役目です。夜光祭のことだって、街にとっては必要なことなのでしょう? アラン様や騎士団の皆さんがいてくださるから、私達が安心して暮らせるのです」
「……貴女にそう言って貰えるのなら、いくらでも力を出せそうです」
そう言ってくれた温かな声音に、こちらの方まで嬉しくなってしまう。……そうだ、今なら誘えるかもしれない。
「ねえ、アラン様。私と一緒に、夜光祭に行ってくださいますか?」
当然、アランはいつもと同じように、笑って頷いてくれるのだと思った。けれど、
「……すみません、それは……約束できません」
申し訳なさそうに、それでもきっぱりと言い放たれた言葉に、一瞬頭が真っ白になった。
「……そ、そうですか。……そうですよね。ごめんなさい、お忙しいのに」
どうにかそれだけを返して、再び小さく頭を下げる。アランが何か言おうとした気配を察して、「失礼します」とだけ告げて踵を返した。
足早に自室へと向かいながら、みるみるうちに自分の顔が真っ赤になっていくのを感じる。
恥ずかしくて、消えてしまいたい。断られた事が、ではない。断られるはずがないと、心のどこかでそう思い込んでいた自分の傲慢さが、たまらなく恥ずかしかった。
心に触れることができた、なんて。そんなのただの思い込みだった。たったあれだけのやり取りで、あの人の何を理解した気になっていたのだろう。
最初から、分かっていたことのはずだ。
知らない人間同士が家族になるなんて、簡単な事じゃないんだって。
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