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チャプター2 千本木しほり
14項 しほり、そしてこれから ~エピローグ
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「ホントに何してるんですか、みなさんはッッ!!」
あれから数日後──
事務所で性行為をしていた社長としほりさんと俺は、出勤して来たさくらさんに見咎められ、またも説教を受けていた。
しかし、俺はまたしても社長に突然縛り上げられ、目隠しまでされた状態で襲われた被害者だ。
なのに俺まで「みなさん」とひとくくりにされ、こうして加害者と一緒に正座させられている現状にはどうしても納得がいかない。
「いやぁ、またしたくなっちゃってさぁ。てへッ⭐︎」
俺は目隠しされたままで見えていないが、どうやら社長はペロッと舌を出して悪びれもせずごまかしているのだろう。
「てへッ、じゃありません! 上には小さな子供たちだっているのに、年がら年中盛りのついたネコみたいにジャレ合って……。少しはTPOをわきまえてください!!」
「子供たちはこの時間、学校に行ってて留守だからさ、まあイイかな~? なんて」
「イイわけないでしょッッ!!」
さくらくんの一喝が事務所内にビリビリと反響する。
「プロデューサーさんも、どうして止めなかったんですか? どうせ鼻の下伸ばして一緒に悦んでたんでしょ? サイテーですッ!!」
「ちょ、ちょっと待ってくださいよ!」
またも誤解と怒りの矛先を向けられたオレは、
「俺はいきなり縛り上げられた上に目隠しまでされたんですよ!? 完全なる被害者ですッ!!」
俺は心外だとばかりに叫ぶ。
「プロデューサーさん、どこ見て言ってるんですか? ちゃんとワタシの方を見て言ってください!」
「だから目隠しされたままで見えないんですってばッ!!」
先ほどから理不尽な口撃を受けてばかりだ。
俺は何かさくらさんを怒らせるようなことでもしたのだろうか?
♢
そもそも今日は、しほりさんの新曲MVが完成したので、それを鑑賞するために事務所に集まってもらったのだ。
児童養護施設である「ひだまりの家」はこのSGIビルの5、6階に移設され、夕方になってそこの子供たちも帰宅した。
「ねーねー、しほりおねえちゃんのおうた、まだー?」
ソファーに座って足をバタバタとさせながら、最年少のナツミさんが訊ねる。
「今準備してるところだからもう少し待ってろって」
その隣で、最年長のソウタさんが彼女の頭を撫でながら言う。
そういえば以前、俺は彼に「詐欺師」呼ばわりされたことがあったが、しほりさんを救出してすぐに彼は俺のところへ駆け寄り、礼と謝罪をきちんと述べてくれた。
なかなか見どころのある少年だと思うが、この前そんな彼が俺に「弟子にしてくれ」と頼みこんできた。
しほりさんを守れるくらい強くなりたいそうだが、俺は断った。
その代わり彼には社長を推薦してやった。
何しろ彼女は強い。
徒手空拳であれば、俺などとても歯が立たないだろう。
「それでは再生します」
プロジェクターの準備を終えた俺は部屋の照明を落とし、しほりさんの新曲である『明日への祈り ~My Sweet Home Again~』の完全MVが収録された動画データを再生する。
動画はモニターに投影され、イメージ映像が流れ出す。
そこに映し出されたのは、どことなく不安を感じさせる薄曇りの世界。
そして、一軒の廃屋の中を彷徨う女性の姿。
「あっ、しほりおねえちゃん!」
ナツミさんがそう言ってモニターを指差す。
その女性──しほりさんは哀愁を帯びた瞳で廃屋を巡り、そしてひとつの部屋に入る。
そこにはペンギンのぬいぐるみを抱いたまま泣きじゃくっているひとりの少女の姿があった。
それは紛れもなく過去のしほりさんであった。
少女に近づくが、かける言葉が見つからないしほりさん。
すると、開け放たれた部屋の外からまばゆいばかりの光が注ぎこむ。
泣きじゃくっていた少女は勇気を出して歩き出した。
それを見守るしほりさん。
そして少女が部屋を後にしたところから曲が始まる。
♪
夢から醒めた そこは鈍色の世界
すべてが自由の中で 孤独を感じた……
私のココロはもう壊れてしまいそうなの
疲れ果てた笑顔をアナタに差し向ける
過去から続く想い それは切なくて
すべてを受け止めるには あまりに幼く……
時の針は無情にも進んでしまうけれども
私はまだあの夜にひとりで彷徨っている
あふれる涙の数 ひとつひとつ数えてたの
あの日 失った光を いつまでも探して……
私を呼び醒ませる声が遠くから聞こえる
そっと空を見上げた その先はきっと
輝きに続いてく
♪
それは、しほりさん自身をイメージして作られたバラード曲。
過去の悲しみからの脱却と再生──
かつて悲哀に暮れていた少女が、輝きを求めて前を見すえ、力強く生きてゆく物語だ。
「すっげぇイイじゃん! カッコ良かったぜ、しほり姉ちゃん!」
再生が終了して部屋の照明を戻すと、ソウタさんが興奮を隠せない様子で言った。
「ありがとう、ソウタ」
うれしそうに微笑むしほりさん。
他の子供たちも陽崎さんも、みんな喜んでくれているようで何よりだ。
「あの、しほりセンパイ。ひとつ聞いてもいいですか?」
その時、さくらさんがおずおずと声をかける。
「なあに、さくらちゃん?」
「しほりセンパイはこれまで『ひだまりの家』のためにこの仕事を続けてたんですよね? でも、もうその必要が無くなった今、しほりセンパイはこれからどうするんですか?」
さくらさんのその問いは、俺自身も気になっていたことだ。
「もちろん、続けるわよ。私、この仕事が好きだし、前も言ったように誇りを持ってるから」
しほりさんはオレたちの心配を払拭するように、晴れやかな表情で続けた。
「それにね、新しい目標ができたの。私ね、将来児童養護施設を経営したいと思ってるの。憧れの陽崎さんと同じように、不幸な目に遭って孤独に苦しんでいる子供たちの安らぎとなれるように。その子にとっての輝きになれるように……」
「しほりちゃん……」
朗々と語るその姿に、陽崎さんは感涙する。
俺もさくらさんも、とりあえずしほりさんが辞めるつもりがないのを知ってホッとしている。
かつて絶望の淵で涙していた少女が陽崎さんという光に救われ、今度はその少女が陽崎さんと同じように光となって誰かの涙をぬぐう。
それはとても素晴らしいことだと思った。
『ファニーズエージェンシー』──
『羽村組』──
そして、猿山──
我々『SGIプロダクション』と彼女たちを取り巻く環境は、彼らの存在によっておそらく厳しいものとなってゆくだろう。
──絶対に守らなければならない。どんなことをしてでも……。
俺はおもむろに懐に仕舞い込んでいる拳銃を握り締め、心の中でそう強く誓うのだった。
♢
『ファニーズエージェンシー』──
夜9:00を回り人気の無い広い事務所内で、ただひとつ稼働しているデスクがある。
そこのプロデューサーである猿山のものだ。
『ほう、マサオミが……あの男が《SGIプロダクション》にいたとはな。《灯台下暗し》とはまさにこのことだな』
PCモニターに映し出された中年の男が、含みのある笑みを浮かべて言った。
「ええ、オレも驚きましたよ」
イスに背をもたれながら、猿山がモニターに向けてニヤリと嗤う。
彼はかなりの低身長なので、まるで子供が腰掛けているように傍目からは見えることだろう。
「ウチが事業拡大している先で偶然の再会。これはもう運命なんじゃないですかねぇ?」
『なるほど、運命か。ならばいずれ、《SGIプロダクション》共々キッチリと片をつけなければならないな』
「なら、すぐやりますか?」
『いや、今はまず事業拡大の方が先決だ。奴らはそれまで泳がせておくとしよう』
「おいしいところは最後にいただく主義ですかい? なら、マサオミとの落とし前はオレに任せてもらいますぜ、組長?」
『ふっ、まあいいだろう。それまではせいぜい商売に励んでくれよ?』
組長と呼ばれた男はモニター越しで笑い、そしてオンライン回線を落とす。
通常のデスクトップ画面に戻ったモニターを見つめながら、
「せいぜい励ませてもらいますぜ」
ニヤリとほくそ笑む。
彼の足下で、ぴちゃぴちゃという淫靡な音が聞こえる。
「おい、もっと気合入れてしゃぶれや。全然気持ちよくなんねぇぞ!」
猿山はデスクの下に向けて──そこで彼のペニスを口に咥えてフェラチオをしている少女に向けて怒鳴り散らす。
左右で髪をお団子状に結わいたその少女は恐怖にびくりと体を震わせ、
「ご、ごめんなひゃい! ちゃんとナメます。許してくだサイ!!」
たどたどしい日本語で懇願する。
「ちっ。こんなんじゃロクに客も取れやしねぇ。まだまだ教育してやんねぇとダメだな、こりゃ」
男はそう言うと少女のトレードマークであるお団子頭を鷲掴み、
自身のペニスを無理矢理少女の口内奥深くまで押しこむ。
「んむうぅぅぅぅぅぅぅッッ!? んんんんんんッッッ!!!!」
少女は苦しそうにもがくが、男は構うことなく少女の頭を前後に動かしてこの一方的な行為を強行する。
「あ、あの、猿山様……」
刹那、彼の背後から紳士然としたひとりの壮年男性がおずおずと声をかける。
「おう、なんだ社長か。何だ? アンタも一緒にコイツを犯したいんか?」
「い、いいえ……。少しやりすぎではないかと……」
「ああん?」
猿山は苛立たしげに男を──『ファニーズエージェンシー』の社長を睨み上げる。
「その子は苦しそうにしてます。今日はもうそれくらいにして──」
ダアァァァンッッ!!
社長の言葉を遮断するように猿山は自分のデスクを思い切り蹴り上げ、
「雇われ社長の分際でオレ様に指図すんじゃねぇよ!!」
唾を思いきり飛ばして怒鳴り散らす。
「一体誰の支援を受けてこの仕事やれてると思ってんだ? テメェの代わりなんざいくらでもいんだ。安定した生活がしたけりゃつべこべ言わずにオレたちの言うこと聞いてりゃイイんだよッッ!!」
「……失礼いたしました」
脅しとも取れるその言葉に屈して、社長は弱々しい足取りで部屋を後にした。
「ったく、ようやく盛り上がってきたってのに興ざめだな」
男は立ち上がり、ピストン運動をさらに早める。
「ンンッ! ンンッ! ンンンッッ!!」
少女の発する声は喘ぎではなく、もはや悲鳴であった。
「よおし、そろそろイキそうだ。オレ様の濃厚ザーメンをくれてやるからよぉ、ありがたく全部飲み干せよ!?」
男はそう言ってラストスパートをかけ、
ドクッ! ドクッ! ドピュピュッッッ!!!!
「ンンーーーーーーーーッッッ!!!!、」
ペニスから射精された大量の白濁液は少女の口内から喉奥まで容赦なく汚してゆく。
ひとしきり射精し終えた男がようやくペニスを引き抜くと、
「ゲホッ! ゲホゲホッッ!!」
少女はむせ返るほどの嫌悪感に耐えきれず白濁液を床へと吐き出した。
「おいおい、全部飲み干せって言ったよなぁ?」
蛇のような鋭い眼光が少女に突き刺さる。
「ひいィィィィィッ! ご、ごめんなサイ! ごめんなサイッ!!」
少女は土下座をしながらひたすら懇願の言葉を発する。
「……ちっ、ホントに興ざめだぜ」
男はそう言ってズボンを履くと、
「オマエらの生殺与奪権はオレ様にあるんだからよ。せいぜい楽しませてくれや」
そう言って悠然と部屋を後にする。
ひとりその場に残されたお団子頭の少女は、堰が決壊したように泣きじゃくるのだった。
あれから数日後──
事務所で性行為をしていた社長としほりさんと俺は、出勤して来たさくらさんに見咎められ、またも説教を受けていた。
しかし、俺はまたしても社長に突然縛り上げられ、目隠しまでされた状態で襲われた被害者だ。
なのに俺まで「みなさん」とひとくくりにされ、こうして加害者と一緒に正座させられている現状にはどうしても納得がいかない。
「いやぁ、またしたくなっちゃってさぁ。てへッ⭐︎」
俺は目隠しされたままで見えていないが、どうやら社長はペロッと舌を出して悪びれもせずごまかしているのだろう。
「てへッ、じゃありません! 上には小さな子供たちだっているのに、年がら年中盛りのついたネコみたいにジャレ合って……。少しはTPOをわきまえてください!!」
「子供たちはこの時間、学校に行ってて留守だからさ、まあイイかな~? なんて」
「イイわけないでしょッッ!!」
さくらくんの一喝が事務所内にビリビリと反響する。
「プロデューサーさんも、どうして止めなかったんですか? どうせ鼻の下伸ばして一緒に悦んでたんでしょ? サイテーですッ!!」
「ちょ、ちょっと待ってくださいよ!」
またも誤解と怒りの矛先を向けられたオレは、
「俺はいきなり縛り上げられた上に目隠しまでされたんですよ!? 完全なる被害者ですッ!!」
俺は心外だとばかりに叫ぶ。
「プロデューサーさん、どこ見て言ってるんですか? ちゃんとワタシの方を見て言ってください!」
「だから目隠しされたままで見えないんですってばッ!!」
先ほどから理不尽な口撃を受けてばかりだ。
俺は何かさくらさんを怒らせるようなことでもしたのだろうか?
♢
そもそも今日は、しほりさんの新曲MVが完成したので、それを鑑賞するために事務所に集まってもらったのだ。
児童養護施設である「ひだまりの家」はこのSGIビルの5、6階に移設され、夕方になってそこの子供たちも帰宅した。
「ねーねー、しほりおねえちゃんのおうた、まだー?」
ソファーに座って足をバタバタとさせながら、最年少のナツミさんが訊ねる。
「今準備してるところだからもう少し待ってろって」
その隣で、最年長のソウタさんが彼女の頭を撫でながら言う。
そういえば以前、俺は彼に「詐欺師」呼ばわりされたことがあったが、しほりさんを救出してすぐに彼は俺のところへ駆け寄り、礼と謝罪をきちんと述べてくれた。
なかなか見どころのある少年だと思うが、この前そんな彼が俺に「弟子にしてくれ」と頼みこんできた。
しほりさんを守れるくらい強くなりたいそうだが、俺は断った。
その代わり彼には社長を推薦してやった。
何しろ彼女は強い。
徒手空拳であれば、俺などとても歯が立たないだろう。
「それでは再生します」
プロジェクターの準備を終えた俺は部屋の照明を落とし、しほりさんの新曲である『明日への祈り ~My Sweet Home Again~』の完全MVが収録された動画データを再生する。
動画はモニターに投影され、イメージ映像が流れ出す。
そこに映し出されたのは、どことなく不安を感じさせる薄曇りの世界。
そして、一軒の廃屋の中を彷徨う女性の姿。
「あっ、しほりおねえちゃん!」
ナツミさんがそう言ってモニターを指差す。
その女性──しほりさんは哀愁を帯びた瞳で廃屋を巡り、そしてひとつの部屋に入る。
そこにはペンギンのぬいぐるみを抱いたまま泣きじゃくっているひとりの少女の姿があった。
それは紛れもなく過去のしほりさんであった。
少女に近づくが、かける言葉が見つからないしほりさん。
すると、開け放たれた部屋の外からまばゆいばかりの光が注ぎこむ。
泣きじゃくっていた少女は勇気を出して歩き出した。
それを見守るしほりさん。
そして少女が部屋を後にしたところから曲が始まる。
♪
夢から醒めた そこは鈍色の世界
すべてが自由の中で 孤独を感じた……
私のココロはもう壊れてしまいそうなの
疲れ果てた笑顔をアナタに差し向ける
過去から続く想い それは切なくて
すべてを受け止めるには あまりに幼く……
時の針は無情にも進んでしまうけれども
私はまだあの夜にひとりで彷徨っている
あふれる涙の数 ひとつひとつ数えてたの
あの日 失った光を いつまでも探して……
私を呼び醒ませる声が遠くから聞こえる
そっと空を見上げた その先はきっと
輝きに続いてく
♪
それは、しほりさん自身をイメージして作られたバラード曲。
過去の悲しみからの脱却と再生──
かつて悲哀に暮れていた少女が、輝きを求めて前を見すえ、力強く生きてゆく物語だ。
「すっげぇイイじゃん! カッコ良かったぜ、しほり姉ちゃん!」
再生が終了して部屋の照明を戻すと、ソウタさんが興奮を隠せない様子で言った。
「ありがとう、ソウタ」
うれしそうに微笑むしほりさん。
他の子供たちも陽崎さんも、みんな喜んでくれているようで何よりだ。
「あの、しほりセンパイ。ひとつ聞いてもいいですか?」
その時、さくらさんがおずおずと声をかける。
「なあに、さくらちゃん?」
「しほりセンパイはこれまで『ひだまりの家』のためにこの仕事を続けてたんですよね? でも、もうその必要が無くなった今、しほりセンパイはこれからどうするんですか?」
さくらさんのその問いは、俺自身も気になっていたことだ。
「もちろん、続けるわよ。私、この仕事が好きだし、前も言ったように誇りを持ってるから」
しほりさんはオレたちの心配を払拭するように、晴れやかな表情で続けた。
「それにね、新しい目標ができたの。私ね、将来児童養護施設を経営したいと思ってるの。憧れの陽崎さんと同じように、不幸な目に遭って孤独に苦しんでいる子供たちの安らぎとなれるように。その子にとっての輝きになれるように……」
「しほりちゃん……」
朗々と語るその姿に、陽崎さんは感涙する。
俺もさくらさんも、とりあえずしほりさんが辞めるつもりがないのを知ってホッとしている。
かつて絶望の淵で涙していた少女が陽崎さんという光に救われ、今度はその少女が陽崎さんと同じように光となって誰かの涙をぬぐう。
それはとても素晴らしいことだと思った。
『ファニーズエージェンシー』──
『羽村組』──
そして、猿山──
我々『SGIプロダクション』と彼女たちを取り巻く環境は、彼らの存在によっておそらく厳しいものとなってゆくだろう。
──絶対に守らなければならない。どんなことをしてでも……。
俺はおもむろに懐に仕舞い込んでいる拳銃を握り締め、心の中でそう強く誓うのだった。
♢
『ファニーズエージェンシー』──
夜9:00を回り人気の無い広い事務所内で、ただひとつ稼働しているデスクがある。
そこのプロデューサーである猿山のものだ。
『ほう、マサオミが……あの男が《SGIプロダクション》にいたとはな。《灯台下暗し》とはまさにこのことだな』
PCモニターに映し出された中年の男が、含みのある笑みを浮かべて言った。
「ええ、オレも驚きましたよ」
イスに背をもたれながら、猿山がモニターに向けてニヤリと嗤う。
彼はかなりの低身長なので、まるで子供が腰掛けているように傍目からは見えることだろう。
「ウチが事業拡大している先で偶然の再会。これはもう運命なんじゃないですかねぇ?」
『なるほど、運命か。ならばいずれ、《SGIプロダクション》共々キッチリと片をつけなければならないな』
「なら、すぐやりますか?」
『いや、今はまず事業拡大の方が先決だ。奴らはそれまで泳がせておくとしよう』
「おいしいところは最後にいただく主義ですかい? なら、マサオミとの落とし前はオレに任せてもらいますぜ、組長?」
『ふっ、まあいいだろう。それまではせいぜい商売に励んでくれよ?』
組長と呼ばれた男はモニター越しで笑い、そしてオンライン回線を落とす。
通常のデスクトップ画面に戻ったモニターを見つめながら、
「せいぜい励ませてもらいますぜ」
ニヤリとほくそ笑む。
彼の足下で、ぴちゃぴちゃという淫靡な音が聞こえる。
「おい、もっと気合入れてしゃぶれや。全然気持ちよくなんねぇぞ!」
猿山はデスクの下に向けて──そこで彼のペニスを口に咥えてフェラチオをしている少女に向けて怒鳴り散らす。
左右で髪をお団子状に結わいたその少女は恐怖にびくりと体を震わせ、
「ご、ごめんなひゃい! ちゃんとナメます。許してくだサイ!!」
たどたどしい日本語で懇願する。
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自身のペニスを無理矢理少女の口内奥深くまで押しこむ。
「んむうぅぅぅぅぅぅぅッッ!? んんんんんんッッッ!!!!」
少女は苦しそうにもがくが、男は構うことなく少女の頭を前後に動かしてこの一方的な行為を強行する。
「あ、あの、猿山様……」
刹那、彼の背後から紳士然としたひとりの壮年男性がおずおずと声をかける。
「おう、なんだ社長か。何だ? アンタも一緒にコイツを犯したいんか?」
「い、いいえ……。少しやりすぎではないかと……」
「ああん?」
猿山は苛立たしげに男を──『ファニーズエージェンシー』の社長を睨み上げる。
「その子は苦しそうにしてます。今日はもうそれくらいにして──」
ダアァァァンッッ!!
社長の言葉を遮断するように猿山は自分のデスクを思い切り蹴り上げ、
「雇われ社長の分際でオレ様に指図すんじゃねぇよ!!」
唾を思いきり飛ばして怒鳴り散らす。
「一体誰の支援を受けてこの仕事やれてると思ってんだ? テメェの代わりなんざいくらでもいんだ。安定した生活がしたけりゃつべこべ言わずにオレたちの言うこと聞いてりゃイイんだよッッ!!」
「……失礼いたしました」
脅しとも取れるその言葉に屈して、社長は弱々しい足取りで部屋を後にした。
「ったく、ようやく盛り上がってきたってのに興ざめだな」
男は立ち上がり、ピストン運動をさらに早める。
「ンンッ! ンンッ! ンンンッッ!!」
少女の発する声は喘ぎではなく、もはや悲鳴であった。
「よおし、そろそろイキそうだ。オレ様の濃厚ザーメンをくれてやるからよぉ、ありがたく全部飲み干せよ!?」
男はそう言ってラストスパートをかけ、
ドクッ! ドクッ! ドピュピュッッッ!!!!
「ンンーーーーーーーーッッッ!!!!、」
ペニスから射精された大量の白濁液は少女の口内から喉奥まで容赦なく汚してゆく。
ひとしきり射精し終えた男がようやくペニスを引き抜くと、
「ゲホッ! ゲホゲホッッ!!」
少女はむせ返るほどの嫌悪感に耐えきれず白濁液を床へと吐き出した。
「おいおい、全部飲み干せって言ったよなぁ?」
蛇のような鋭い眼光が少女に突き刺さる。
「ひいィィィィィッ! ご、ごめんなサイ! ごめんなサイッ!!」
少女は土下座をしながらひたすら懇願の言葉を発する。
「……ちっ、ホントに興ざめだぜ」
男はそう言ってズボンを履くと、
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