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家族って何ですか
お姉ちゃん?
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独りはいい。
何も気遣いしなくていいし、何も考えなくていいし、何もしなくていい。
なんて気楽なのだろう。
独りは素晴らしい。
ずっとこのままでいれたら...
目覚めると、頭が痛くなるほどの光を浴びた。
「あら、希幸。起こしちゃったのね。ほら、早く支度しないと遅れちゃうわよ?昨日もご飯だって、起こしたのに全然起きないし...ねぇ、聞いてる?」
「...お母さ...ん」
涙ってやつはめんどくさい。いつも勝手に溢れる。
私はお母さんに昨日の事全てを話した。
「...辛かった...ね。
よく昨日、1人で耐えたね。
偉いわ。もう大丈夫よ...」
「...お母さん...」
暖かい。お母さんの胸ってこんなに暖かいんだ。心が落ち着く。
ずっとここにいたいな。
「お母さんから、しばらく学校はお休みしますって言っておくね。ゆっくり休みなさい。何かあったらすぐに言うのよ。」
あぁ、まただ。また涙だ。
でもこれは違う。暖かい涙だ。
こんなに、幸せ者だと感じたのは人生で初めてかもしれない。
ありがとうお母さん...
目覚めたら、夕方の6時。
なにか揉め事をしているのだろうか。隣の部屋から大きい話し声?叫び声?この声は多分、お母さんとお姉ちゃん...だろうか?壁に耳をつけて集中する。
「何で分かってくれないの!?
お腹痛いって言ってるじゃん!
私が嘘ついてるって言うの?」
「千夏...いい加減にして。
そういって三週間も休んでるじゃない。なんで、そんなに塾休みたいの?理由があるの?」
「理由とかない!行きたくないから行きたくないの!何で分かんないの!」
「千夏...」
またこの喧嘩か。
そんなに塾が嫌なら辞めればいいのに。お母さん困ってるじゃない。
しばらくの沈黙があった。
そして沈黙を破った言葉は私に刺さった。
「...アイツはいいよね。泣いて、休むだけでいいんだから。」
「...!いい加減にしなさい!千夏!」
...あぁ。私って、皆から嫌われてるんだな。生きてる意味あるのかな。
とりあえず寝よう。
明日起きたら別人とかになってないかな...。もう嫌だな。こんな世界...
「...きて、起きて!希幸!」
「...?な、何?お姉ちゃん」
「今日駅前で小さいお祭りがあるんだって。お母さん抜きで私たちだけで行こうよ!」
「え...、でも...」
「支度出来たら言ってね!」
...?おかしい。昨日、あんなに私の事悪く言ってたのに...
とりあえず服を着替えて、アイツらにバレない様に深く帽子を被った。
「出来たね、じゃあ行こっか!」
「...うん」
私の車椅子を優しく押してくれるお姉ちゃん。でも、何だかすごく力が入っているような感じがする...
「...あ!ほら、クッキーとか売ってるよ!希幸は何味が好きなんだっけ?」
「...プレーンとか」
「プレーンね!お姉ちゃんだから買ってあげる。」
お姉ちゃんは純粋にお祭りを楽しんでいるように見えた。怪しんでいたのが少し申し訳なかった、けど昨日のあの言いよう。やっぱり忘れられない。
どうしても素っ気ない態度をとってしまう。
「あ、15時かぁ...。お姉ちゃん、もう塾に行かなきゃ!」
「...?で、でも」
「ごめんね、お祭りはここまで。
はやく、家に帰ろ!」
実は、お祭りが私にとって意外と楽しかったらしく、お姉ちゃんが帰ると言った時は少し寂しさを思えてしまった。
お姉ちゃん...。また行こうね、とは言ってくれなかったな...。
「ただいまぁ。って、誰もいないか。」
お姉ちゃんは私の靴を丁寧に脱がしてくれて、しかも私と車椅子を運ぶために階段を何回も往復してくれた。
「よし、運び終わった!
で、車椅子をこうして...うん、出来た!はい、乗って!」
好奇心なのか、私が車椅子に頑張って乗るのを物珍しそうに見ている。
...でも、その目は少し暗かった。
「うんうん、よく乗れたね。
あ、そうそう。いきなりなんだけどさ...。私ね、希幸の事大事に思ってる。」
「...!急に、何。」
「今休んでる理由、お母さんに聞いたよ。辛かったよね。」
「...別に。今はそんなにない。」
「...我慢しなくていいんだよ。
泣きたい時に泣けばいい。人は感情を我慢出来ないんだよ。」
涙までは出なかったが、お姉ちゃんのその言葉に少し感動した。
「...ありがと、お姉ちゃん。」
「うん!でもね、お姉ちゃんも我慢出来ないのは同じ。」
ガシッ
車椅子の取っ手を力強く掴まれた。
「...お姉ちゃん...?」
すると、階段の方向に車椅子を向け、
ドンッ
「...!?おねぇ、ちゃっ!!」
「...フフ。あはははっ。
ずっと思ってた。お前なんか死ねばいいって。お前が休んでからずっと、お母さんはお前にばっかり付いてさ。まともに相手もしてくれない。話しかけてもさ、希幸が...ってずっと言ってんだよ?全部お前のせいだよ。
ごめんね?感情って、我慢出来なくてさぁ...?」
あの時、事故が起きた時と似ている。また目の前が真っ赤だ...
「お前さぁ、何で生まれて来たの?」
何も気遣いしなくていいし、何も考えなくていいし、何もしなくていい。
なんて気楽なのだろう。
独りは素晴らしい。
ずっとこのままでいれたら...
目覚めると、頭が痛くなるほどの光を浴びた。
「あら、希幸。起こしちゃったのね。ほら、早く支度しないと遅れちゃうわよ?昨日もご飯だって、起こしたのに全然起きないし...ねぇ、聞いてる?」
「...お母さ...ん」
涙ってやつはめんどくさい。いつも勝手に溢れる。
私はお母さんに昨日の事全てを話した。
「...辛かった...ね。
よく昨日、1人で耐えたね。
偉いわ。もう大丈夫よ...」
「...お母さん...」
暖かい。お母さんの胸ってこんなに暖かいんだ。心が落ち着く。
ずっとここにいたいな。
「お母さんから、しばらく学校はお休みしますって言っておくね。ゆっくり休みなさい。何かあったらすぐに言うのよ。」
あぁ、まただ。また涙だ。
でもこれは違う。暖かい涙だ。
こんなに、幸せ者だと感じたのは人生で初めてかもしれない。
ありがとうお母さん...
目覚めたら、夕方の6時。
なにか揉め事をしているのだろうか。隣の部屋から大きい話し声?叫び声?この声は多分、お母さんとお姉ちゃん...だろうか?壁に耳をつけて集中する。
「何で分かってくれないの!?
お腹痛いって言ってるじゃん!
私が嘘ついてるって言うの?」
「千夏...いい加減にして。
そういって三週間も休んでるじゃない。なんで、そんなに塾休みたいの?理由があるの?」
「理由とかない!行きたくないから行きたくないの!何で分かんないの!」
「千夏...」
またこの喧嘩か。
そんなに塾が嫌なら辞めればいいのに。お母さん困ってるじゃない。
しばらくの沈黙があった。
そして沈黙を破った言葉は私に刺さった。
「...アイツはいいよね。泣いて、休むだけでいいんだから。」
「...!いい加減にしなさい!千夏!」
...あぁ。私って、皆から嫌われてるんだな。生きてる意味あるのかな。
とりあえず寝よう。
明日起きたら別人とかになってないかな...。もう嫌だな。こんな世界...
「...きて、起きて!希幸!」
「...?な、何?お姉ちゃん」
「今日駅前で小さいお祭りがあるんだって。お母さん抜きで私たちだけで行こうよ!」
「え...、でも...」
「支度出来たら言ってね!」
...?おかしい。昨日、あんなに私の事悪く言ってたのに...
とりあえず服を着替えて、アイツらにバレない様に深く帽子を被った。
「出来たね、じゃあ行こっか!」
「...うん」
私の車椅子を優しく押してくれるお姉ちゃん。でも、何だかすごく力が入っているような感じがする...
「...あ!ほら、クッキーとか売ってるよ!希幸は何味が好きなんだっけ?」
「...プレーンとか」
「プレーンね!お姉ちゃんだから買ってあげる。」
お姉ちゃんは純粋にお祭りを楽しんでいるように見えた。怪しんでいたのが少し申し訳なかった、けど昨日のあの言いよう。やっぱり忘れられない。
どうしても素っ気ない態度をとってしまう。
「あ、15時かぁ...。お姉ちゃん、もう塾に行かなきゃ!」
「...?で、でも」
「ごめんね、お祭りはここまで。
はやく、家に帰ろ!」
実は、お祭りが私にとって意外と楽しかったらしく、お姉ちゃんが帰ると言った時は少し寂しさを思えてしまった。
お姉ちゃん...。また行こうね、とは言ってくれなかったな...。
「ただいまぁ。って、誰もいないか。」
お姉ちゃんは私の靴を丁寧に脱がしてくれて、しかも私と車椅子を運ぶために階段を何回も往復してくれた。
「よし、運び終わった!
で、車椅子をこうして...うん、出来た!はい、乗って!」
好奇心なのか、私が車椅子に頑張って乗るのを物珍しそうに見ている。
...でも、その目は少し暗かった。
「うんうん、よく乗れたね。
あ、そうそう。いきなりなんだけどさ...。私ね、希幸の事大事に思ってる。」
「...!急に、何。」
「今休んでる理由、お母さんに聞いたよ。辛かったよね。」
「...別に。今はそんなにない。」
「...我慢しなくていいんだよ。
泣きたい時に泣けばいい。人は感情を我慢出来ないんだよ。」
涙までは出なかったが、お姉ちゃんのその言葉に少し感動した。
「...ありがと、お姉ちゃん。」
「うん!でもね、お姉ちゃんも我慢出来ないのは同じ。」
ガシッ
車椅子の取っ手を力強く掴まれた。
「...お姉ちゃん...?」
すると、階段の方向に車椅子を向け、
ドンッ
「...!?おねぇ、ちゃっ!!」
「...フフ。あはははっ。
ずっと思ってた。お前なんか死ねばいいって。お前が休んでからずっと、お母さんはお前にばっかり付いてさ。まともに相手もしてくれない。話しかけてもさ、希幸が...ってずっと言ってんだよ?全部お前のせいだよ。
ごめんね?感情って、我慢出来なくてさぁ...?」
あの時、事故が起きた時と似ている。また目の前が真っ赤だ...
「お前さぁ、何で生まれて来たの?」
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