あの娘はきっとヒロインじゃない

ゴン

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第一章 異世界召喚と旅立ち

014 深夜の脱出劇5 メイド緊縛のすゝめ

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 さて、どうやって説明しようかと思い田仲君を見てみると、見事に鼻の下を伸ばしたウサ耳幼女がそこにはいた。

 だめだな、やっぱりこいつを当てにしてはいかん。

「えっと……エマさん?」
「いやっ!」

 声を掛けられたエマさんは、両手で自分の体を掻き抱いて俺から距離を取ろうとするが、通路の幅はそこまで広くは無いのだ。
 すぐに壁にぶつかる。

「うぅう……」

 今にも泣きだしそうだ、さっきまでの勇ましい姿はそこにはない。
 それを見て、俺は少し離れた位置に膝をついて座り込む。

「エマさん、こちらにあなたを害するつもりはありません。どうか信じてください」

 そう言って杖を地面に置き、両手を上げて無害をアピールする。
 その様子をチラリと見たエマさんは恐る恐る尋ねてくる。

「ほんとうですか? 本当に私に酷い事しないですか?」
「えぇ、本当です。元々俺は強姦魔じゃないですからね……勘違いされてるだけで」
「そうなんですか?」

 ほっと安心した様子のエマさん、そこに田仲君が余計なことを言う。

「そういえば、先輩はお姫様のスカートの中に頭を突っ込んだだけですからね。強姦はしてないです」
「スカートに頭を! ひ、ひいぃ!!」

 エマさんは必死になってスカートの裾を掴んで足の下に隠そうとしている。
 両手でグイグイ生地を押さえ込んでいるのだが、どうやってもスカートなので安心できないようだ。

「ちょっと田仲君、話の合間に余計なこというのやめてくれないかな? 話が進まないからさ」

 再度田仲君を黙らせる。
 むむぅ~っと、不満そうにしているウサ耳幼女。かわいい。



 それから、俺は無理やり召喚されて、そのときに偶然にスカートの中に呼び出されたこと、そのことを説明せずに王女様がどこかへ行ったせいで、とりあえず確認が取れるまで牢屋に入れられることになったこと、騎士団長が俺を断頭台に送り込もうとしていたので脱出しようとしたことを順を追って説明していった。

「はぁ、それは……なんというか、大変でしたね」
「先輩、そんなことになってたんですか!」

 なんとか理解してもらえたようだ。さて、これからどうしようかな。
 なんとかこの城から脱出してどこかへ逃げないといけないんだけど、お金もないし地理にも詳しくない。
 それに……チラリと目の前の二人を見る。

 このメイドさんも、目の前で牢屋から逃げ出す人間を、無視するわけにもいかんだろうしなぁ。
 それに、田仲君の身の振り方も考えないといけない。
 魔法で隠れて逃げ出すだけ、というわけにはいかなくなってきた。

「じゃあ先輩、早く逃げ出さないといけないんじゃないですか?」
「まぁ、そうなんだけど……田仲君はどうする?」
「どうするってなんですか? まさかここに置いていくつもりですか?」

 どうやら田仲君は付いてくる気満々だったようだ。

「いや、ここを出ていくとしても、行く当てもないしお金もないからさ、元の世界に戻るにしてもここにいたほうが可能性はあるんじゃない?」

 むむっと口元に手を当てて考える田仲君。

「いや、多分この国には召喚する方法はあっても、送り返す方法は残ってないと思いますよ? 偶然召喚に成功したみたいなことを言っていましたし、昔の召喚者の存在すら信じられていなかったみたいですからね。この国であの儀式事態の研究が全然なされていないであろう現状、ここに残ってもあまり結果は出なさそうですよね~」

 おぉ? 田仲君からまともな発言が! どうやら情報収集もやっていたようだ。
 そういえば宰相もそんな感じのことを言っていたな。

「建国の祖となった召喚された勇者だってこの国で召喚されたとは限りませんし、外に出てみるのはいいんじゃないですか?」

 そうか、そこまで考えているのなら、まぁ連れて行ってもいいのかな?
 異文化の世界を一人で行動するのは怖いし、心細い。
 一緒に来てくれるというのなら助かる。

「それに…せっかく異世界に来たのに、城の中に籠ってるだけっていうのはナシでしょ! エロフや獣耳やロリドワーフに会わないままで、元の世界に帰れますよとか言われても絶対に拒否しますよ!」

 まぁ、田仲君はそういう奴だよね。
 でも、その意見には俺も賛成だ。

「じゃあ、一緒に逃げますか」
「そうですね。めざせ性奴隷100人! ですね?」

"キィンッ!" エマさんが地面に刺さっていた青い宝石が埋め込まれた短刀"アーヴェ"を引き抜いている。
 両手に刃物を持って立っているメガネメイド。
 なんか怖い。

「あはは、ラヴィちゃん、そういう冗談を言うのは感心しないなぁ」
「でもでも、僕みたいな小さな女の子はお安いそうですよ! 奴隷なら先輩のアレな癖(へき)だって受け止めてくれますよ♪」

 いったい俺にどんなアブノーマルな癖があるというのだろうか? 自分では普通だと思っていても他人から見たらそうではないのだろうか? っていうかもし俺にそういうモノがあったとしても、コイツが知ってるはずないだろうに! 適当なこと言いやがって!

「俺はノーマルだよ。あんまり適当なこと言わないでくれない?」

 そう言うと、田仲君はハッとした表情をしてから、焦ったように謝ってきた。

「そ、そうでしたね! 先輩はノーマルでした。すいません!」

 エマさんがそそくさと凄く離れた位置に移動している。
 なんだかあのメイドさん、とても反応が良いな。
 調子に乗ってボケる田仲君の気持ちもわかるが、話が進まないからやめて欲しい。

「さて、じゃあ脱出の準備をしましょう!」
「ああ、そうだね。バフの魔法と認識阻害の魔法をかけようか」

 そう言って冒険の書を取り出す俺に向かって田仲君はまったをかける

「いえいえ、そうじゃなくて、エマさんをいまから縛り上げようということですよ」
「は?」



向こうの方で両手の短剣を取り落として、真っ青な顔をしたエマさんの顔がゆっくりとこちらを向くのが見えた。
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