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第一章 異世界召喚と旅立ち
028 ウサギの耳はただの飾りなんです
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さっきまで100m程離れた場所の音を聴こうと、頑張っていた田仲君に俺は成果を尋ねた。
「それで、どうだったの? 何か聴こえた?」
「いえ、さすがにこの距離は無理じゃないですかね? ゲームの中では獣人(セリアンスロープ)って何かそういう補正が入っていたんですか?」
"ソード&ウィザードリィ"でセリアンスロープは魔力低めで身体能力高めの種族だった。
聴力というパラメーターは存在しなかったし、聴力を活かした種族特有のスキルのようなモノも無かった。
RPGなんだし力や素早さ、魔力などの能力以外は必要ないのだからしょうがない。
元はゲームキャラのラヴィちゃんだが、現実になったのならもしかしたらと思ったのだが……
「ゲーム内では獣人のキャラクターの耳が良くなるっていうのはなかったかな。中身は普通の人間なわけだから、音の情報が増えたところであまりメリットはないしね」
「なるほど、まぁ僕としてもあまり耳がよくなったという実感はないですね。もし耳が良くなっていたら、そのうち自然とわかるんじゃないですか?」
まあそうだな、ウサミミが生えたからといって無茶振りが過ぎたかもしれない。
「じゃあ、そのへんはおいおい調べるとして、そろそろ馬車を追いかけよう」
俺は再度田仲君を背負い、もう見えなくなっている馬車を追いかけて道を走っていく。
今度はアイドルの曲ばかりではなく俺の好みの曲を流してもらおう。
その後、3時間ほど走り少し空が暗くなり始めた頃に駅馬車は宿場町に到着した。
王都に比べるとかなり小さな町だが、小さいながらに石積みのしっかりとした作りの塀に囲まれた町のようだ。
塀の周りには見渡す限り遠くまで続く小麦畑と、ぽつりぽつりと立っている風車小屋の風景が遠くまで広がっている。
あの風車で収穫した小麦を挽いているのだろうか? もう日が暮れるので外で働いている人はいないが、明るい時間には沢山の人が農作業に出てくるのだろう。
日本では5月の末だったが、こちらの世界ではどうなのだろうか? 体感的には同じくらいだと思う。
日本と同じようなの気候なら秋播きの小麦はもうすぐ収穫するのかもしれないな。
町の入り口には両脇に兵士が一人ずつ立って、駅馬車を一台ずつ門の中に通している。
乗客全員のチェックはしていないようだが、御者が何か板のようなものを見せてから、馬車を町に乗り入れている。
通行証みたいなものかな? 馬車に乗っていれば中に入れるようだが、徒歩の人間にはチェックが入りそうだ、どうしたものか。
「門は人を通す度に閉めるわけじゃないみたいですし、魔法でなんとか素通り出来ないんですか?」
「身体を透明にして敵から見つかりにくくする魔法はあるよ。夜には使えないんだけど、今はまだ明るいからその魔法を使えばなんとかなりそうかな」
「じゃあ、とりあえず中に入ってみましょうよ。そとで考えていてもしょうがないですし、ヤバくなったら先輩がまた僕を抱えて逃げてくださいよ」
田仲君は相変わらず楽観的だ。
でも、確かに彼の言い分にも一理ある。
どうせこちらの世界の常識は全くわからないのだから、飛び込んでみなくては何も始まらないだろう。
「わかった。じゃあ俺が体を透明にする魔法を使うから、田仲君は魔法が掛かったら俺におぶさって。俺も自分に透明化の魔法を掛けたら、そのまま門の中に侵入するから」
「はい! お願いします!」
俺は田仲君と自分に身体を透明にする白魔導士の魔法"インビジブル"をかける。
魔法が発動すると俺の体も田仲君の体もまったく見えなくなってしまった。
これはすごいな、背負ってなかったら田仲君とはぐれてしまっただろう。
「先輩、コレすごいですね! これで覗きとかやったら絶対にバレませんよ!」
「あ……うん。そうだね」
「これって、どれくらいのLvで覚えられるんですか? 僕が選んだ灰魔導士でも覚えられますかね?」
覗く気満々じゃないか……まったく、けしからんな。
「灰魔導士はLv24で覚えるんじゃなかったかな? 白魔導士ならもうちょっと早いけどね」
「24か~Lv24……ちょっと遠いなぁ。白魔導士にしておけばよかったかなぁ~」
ニジュウヨンか~と繰り返し呟く田仲君。
覗きは犯罪だからね? ダメだよ?
「もう門につくから、そろそろ静かにしてね。入ったらとりあえず人気(ひとけ)がない場所まで移動しよう」
「はい、じゃあ今からしゃべりません。よろしくお願いします!」
静かになった田仲君を背中におぶったまま、俺は町の入り口の門へと近づく。
ゆっくりと物音を立てないように門番の横をすり抜ける。
よし、全くこちらに気付いてない、このまま無事に通り抜けられそうだ。
そう思ってホッとしていると、首筋に田仲君の変な息遣いが当たっている。
「ふぁ…ふぁあ……」
ちょ、嘘だろ……そんなベタな!
「ゔぇ~っくしょ~~い!」
ゴツンッ!
くしゃみと同時に俺の後頭部に田仲君の頭突きが炸裂する。
"ヒュンッ"
魔法解除の音がして、足元から俺の体がどんどん見えてくる。
田仲君の頭突きが俺への攻撃となってしまったようだ。魔法が解ける。
あっという間に俺と田仲君の全身が透明化から戻ってしまう。
あぁ……コレはマズイ。
「な、なんだお前たちは!」
「いつの間に後ろに……」
二人の門番がこちらを振り向いて、持っていた槍を両手でぎゅっと握って睨んできている。
まだ槍先をこちらに向けてはいないが臨戦態勢一歩手前だ。
どうする、逃げるか? また煙玉の出番か!?
そんなことを俺が考えていたら、田仲君が俺の背中から飛び降りた。
ちょっと、下りちゃったらすぐに逃げられないじゃないか。どうするつもりなんだ田仲君!?
「それで、どうだったの? 何か聴こえた?」
「いえ、さすがにこの距離は無理じゃないですかね? ゲームの中では獣人(セリアンスロープ)って何かそういう補正が入っていたんですか?」
"ソード&ウィザードリィ"でセリアンスロープは魔力低めで身体能力高めの種族だった。
聴力というパラメーターは存在しなかったし、聴力を活かした種族特有のスキルのようなモノも無かった。
RPGなんだし力や素早さ、魔力などの能力以外は必要ないのだからしょうがない。
元はゲームキャラのラヴィちゃんだが、現実になったのならもしかしたらと思ったのだが……
「ゲーム内では獣人のキャラクターの耳が良くなるっていうのはなかったかな。中身は普通の人間なわけだから、音の情報が増えたところであまりメリットはないしね」
「なるほど、まぁ僕としてもあまり耳がよくなったという実感はないですね。もし耳が良くなっていたら、そのうち自然とわかるんじゃないですか?」
まあそうだな、ウサミミが生えたからといって無茶振りが過ぎたかもしれない。
「じゃあ、そのへんはおいおい調べるとして、そろそろ馬車を追いかけよう」
俺は再度田仲君を背負い、もう見えなくなっている馬車を追いかけて道を走っていく。
今度はアイドルの曲ばかりではなく俺の好みの曲を流してもらおう。
その後、3時間ほど走り少し空が暗くなり始めた頃に駅馬車は宿場町に到着した。
王都に比べるとかなり小さな町だが、小さいながらに石積みのしっかりとした作りの塀に囲まれた町のようだ。
塀の周りには見渡す限り遠くまで続く小麦畑と、ぽつりぽつりと立っている風車小屋の風景が遠くまで広がっている。
あの風車で収穫した小麦を挽いているのだろうか? もう日が暮れるので外で働いている人はいないが、明るい時間には沢山の人が農作業に出てくるのだろう。
日本では5月の末だったが、こちらの世界ではどうなのだろうか? 体感的には同じくらいだと思う。
日本と同じようなの気候なら秋播きの小麦はもうすぐ収穫するのかもしれないな。
町の入り口には両脇に兵士が一人ずつ立って、駅馬車を一台ずつ門の中に通している。
乗客全員のチェックはしていないようだが、御者が何か板のようなものを見せてから、馬車を町に乗り入れている。
通行証みたいなものかな? 馬車に乗っていれば中に入れるようだが、徒歩の人間にはチェックが入りそうだ、どうしたものか。
「門は人を通す度に閉めるわけじゃないみたいですし、魔法でなんとか素通り出来ないんですか?」
「身体を透明にして敵から見つかりにくくする魔法はあるよ。夜には使えないんだけど、今はまだ明るいからその魔法を使えばなんとかなりそうかな」
「じゃあ、とりあえず中に入ってみましょうよ。そとで考えていてもしょうがないですし、ヤバくなったら先輩がまた僕を抱えて逃げてくださいよ」
田仲君は相変わらず楽観的だ。
でも、確かに彼の言い分にも一理ある。
どうせこちらの世界の常識は全くわからないのだから、飛び込んでみなくては何も始まらないだろう。
「わかった。じゃあ俺が体を透明にする魔法を使うから、田仲君は魔法が掛かったら俺におぶさって。俺も自分に透明化の魔法を掛けたら、そのまま門の中に侵入するから」
「はい! お願いします!」
俺は田仲君と自分に身体を透明にする白魔導士の魔法"インビジブル"をかける。
魔法が発動すると俺の体も田仲君の体もまったく見えなくなってしまった。
これはすごいな、背負ってなかったら田仲君とはぐれてしまっただろう。
「先輩、コレすごいですね! これで覗きとかやったら絶対にバレませんよ!」
「あ……うん。そうだね」
「これって、どれくらいのLvで覚えられるんですか? 僕が選んだ灰魔導士でも覚えられますかね?」
覗く気満々じゃないか……まったく、けしからんな。
「灰魔導士はLv24で覚えるんじゃなかったかな? 白魔導士ならもうちょっと早いけどね」
「24か~Lv24……ちょっと遠いなぁ。白魔導士にしておけばよかったかなぁ~」
ニジュウヨンか~と繰り返し呟く田仲君。
覗きは犯罪だからね? ダメだよ?
「もう門につくから、そろそろ静かにしてね。入ったらとりあえず人気(ひとけ)がない場所まで移動しよう」
「はい、じゃあ今からしゃべりません。よろしくお願いします!」
静かになった田仲君を背中におぶったまま、俺は町の入り口の門へと近づく。
ゆっくりと物音を立てないように門番の横をすり抜ける。
よし、全くこちらに気付いてない、このまま無事に通り抜けられそうだ。
そう思ってホッとしていると、首筋に田仲君の変な息遣いが当たっている。
「ふぁ…ふぁあ……」
ちょ、嘘だろ……そんなベタな!
「ゔぇ~っくしょ~~い!」
ゴツンッ!
くしゃみと同時に俺の後頭部に田仲君の頭突きが炸裂する。
"ヒュンッ"
魔法解除の音がして、足元から俺の体がどんどん見えてくる。
田仲君の頭突きが俺への攻撃となってしまったようだ。魔法が解ける。
あっという間に俺と田仲君の全身が透明化から戻ってしまう。
あぁ……コレはマズイ。
「な、なんだお前たちは!」
「いつの間に後ろに……」
二人の門番がこちらを振り向いて、持っていた槍を両手でぎゅっと握って睨んできている。
まだ槍先をこちらに向けてはいないが臨戦態勢一歩手前だ。
どうする、逃げるか? また煙玉の出番か!?
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ちょっと、下りちゃったらすぐに逃げられないじゃないか。どうするつもりなんだ田仲君!?
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