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第一章 異世界召喚と旅立ち
029 お兄ちゃんといっしょ
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どうする、逃げるか? また煙玉の出番か!?
そんなことを俺が考えていたら、田仲君が俺の背中から飛び降りた。
「こんばんは、おじさん。私のおにいちゃんにお願いして、今から町の外に連れてってもらおうとしてたの」
おお? なんだなんだ、どうしたタナカ?
「なんだいおじょうちゃん。いまから外に出ようとしてたのかい?」
お~、一気に門番の警戒心が下がった。
魔法が解ける瞬間はどうやら見られてなかったようだ。
振り向いたら俺たちがいたから驚いただけなのかもしれない。
「そうなの。お父さんとお母さんに内緒で、あの風車の中でお兄ちゃんと遊ぶの」
そういって遠くに見える風車の一つを指さす。
それを見た門番が警戒を解いて槍を持つ手に入っていた力を緩める。
そして困った顔をしながらこちらに近寄ってくる。
「そっか~、でもアルストとロベリアを結ぶ街道が安全とは言っても、夜はもしかしたらゴブリンが出るかもしれないからね。お嬢ちゃんみたいに可愛い子が夜に外をウロウロしてたら危ないんだよ」
門番さんはウチの子に言い含めるようにして、夜の塀の外が危ないという事を説明してくれている。
「えぇ~そうなの? でも、それじゃあおじさんたちも門のところにいたら危ないんじゃないの?」
「あははは、おじさんたちはここからモンスターや悪い人が町の中に入らないようにするのが仕事だからね。ちゃんと鍛えてるから大丈夫なんだよ。ほらっ!」
そう言ってに力こぶを作って見せてくれる。
すいません、その悪い人って多分俺たちの事です。
「すごーい! おじさんたちはとっても強いんだね! じゃあゴブリンが来たって安心だね♪」
すごいすごいとはしゃぐウチの子の様子に、気を良くした門番さん達はとても良い笑顔だ。
「そうだよ、ゴブリンが来たっておじさんたちがちゃんと守ってあげるからね」
「うん、ありがとう。でも、お兄ちゃんもすっごく強いから、私はお兄ちゃんに守ってもらうの♪」
ラヴィちゃんは俺の元に駆け寄ってきて、背中に飛び乗ってくる。
「あ、あははは、どうもすいません」
俺は苦笑いしながら門番さんに頭を下げる。
やばい、笑顔が引きつる。
「いいかいお兄ちゃん、可愛い妹さんから頼まれたからといって、夜に門の外に出てはだめだよ」
「はい、本当にすいません。ちょっと外を見せてあげたら満足するかと思ってここまできたんですけど……妹に説明していただいて助かりました」
「いやいや、外の危険を中の人間に知らせるのも我々の仕事だからね、今後気を付けてくれたらいいんだよ」
なんていい人たちなんだろう……胸が痛い。
そして俺の背中につかまって、小声で「うまく騙せましたね、コイツらちょろいですよ」とか言っている幼女は、なんて悪い子なんだろう。
門番さんに二人で挨拶をした後、俺たちは素知らぬ顔で町の中へと歩いていく。
結局なんとか上手く町の中に入れてしまった。
アルストに比べれば小さいとは言っても、家の数は数えられないくらいにある町だ。
奥の方にさっさと移動してしまえば門番からはわからなくなるだろう。
とにかく今は、早くあのニコニコ顔でこちらを見送ってくれている門番さんたちから見えない場所に行きたい。
俺がそんな事を考えているというのに、背中の子はバイバーイと最後まで手を振っていた。
人通りが多い場所まで来たので、ひとまず田仲君を背中から降ろす。
やっと一息ついた、先の方に見える大きな通りでは、仕事帰りで酒を飲んでいる男達や、買い物にいそしむ主婦らしき女性たち、それに連れられた騒がしい子供たちでにぎわっている。
「いや~、一瞬もうダメかと思ったんですけど、僕のアドリブのおかげでなんとかなりましたね」
田仲君がドヤ顔でこちらを見上げている。
そうだね、でも田仲君がクシャミをしなければ、そのアドリブも必要なかったんだけどね。
「この手は使えますね! もっと演技に磨きをかければ、もっと自然な感じで……」
このウサミミ幼女は、いったいどこを目指しているんだろうか。
「とりあえず駅馬車が止まっている場所を探そう。入り口からそう遠くない場所にあるとおもうんだけど」
「それならアレじゃないですか?」
田仲君はそう言って、人通りが多い道へ合流する少し手前から、脇に逸れていった道の先をゆびさす。
そこには馬が外された駅馬車が三台止まっており、アルストの駅馬車屋で会った、あの愛想の無いおじさんがいた。
彼はせっせと止めてある馬車を拭き掃除している。
「あれ、アルストの駅馬車乗り場でタオルを貸してくれたおじさんだよね? 見つかったらちょっと面倒かもしれないな」
「そうですね。とりあえず場所は確認できたし、駅馬車のやつらも今日はもうあそこで休むみたいですから、僕たちも何処か泊めてくれそうな宿を探しましょうよ。明日、あの駅馬車が出発したら追いかければいいですよ」
駅馬車の客が宿泊する場所を確認した俺たちは、とりあえずそこから少し先の沢山の人が行き来している通りをブラブラしながら宿を探すことにした。
「やっぱり異世界の宿屋と言うと、一階が食堂とか飲み屋だったりするんですかね? それで僕たちに絡んでくるような、ろくでなしの酔っ払いとかが、たむろしてるんですよきっと」
「テンプレだとそういう感じかな?」
「きっと、こんなかんじですよ」
田仲君は声色を変えて、ろくでなしの酔っ払いを演じ始めた。
「おい、子供が酒場になんの用だ! ガキは家に帰って母ちゃんのおっぱいでも飲んでな!」
田仲君はこちらを見て、寸劇に乗って来てほしそうだ。そんな急に振られても無理だよ。
「てめぇ、この俺様が気を使って忠告してやっているのに生意気な奴だ、ぶっ殺してやる!」
そう言って腰のあたりから剣を抜くような仕草をしたウサミミ幼女は、中腰で構えてチンピラ感を出している。
ちょっと黙ってただけで切り付けてくるのかよ、かなり雑な展開だな。
「しねぇ~」
右手に構えているエアナイフを振りかぶって俺に切りつけるフリをしようとした田仲君だったが……
「きゃっ!」
振り上げた右手が後ろを歩いていた女の子に当たってしまう。
あぁ、調子に乗ってるから。
「あ、すいません! 大丈夫ですか?」
すぐに振り返って、手が当たってしまった女の子に謝る田仲君。
「あはは、大丈夫だよ。ちょっとビックリしただけだから」
そう言って笑顔で許してくれた女の子は、ラヴィちゃんより結構年上に見える。
中学生くらいかな? いや、ラヴィちゃんは12歳だったから、そこまでは違わないのか。
「そんなにはしゃいでどうしたの? お兄さんとお出かけかな?」
その女の子は小さな子に話しかけるように、腰を曲げて目線を田仲君に合わせて話しかけている。
はらりと垂れた短めの茶色い髪の毛は、すこしクセが入っており毛先が刎ねている。
手に持っているバスケットを見たところ、お使いの途中なのかもしれない。
とても元気がよさそうな印象の女の子だ。
「えぇ~っと……そ、そうなの。お兄ちゃんと今夜は宿屋さんに泊まるの」
「そっか、宿屋さんにお泊り、とっても楽しそうだね」
楽しそうにお話しをしている二人の女の子。
ラヴィちゃんの笑顔が多少ぎこちないのは仕方ないだろう。
すると、女の子がこちらに向き直って話しかけてくる。
「宿屋に泊まるってことは、妹さんとふたりで旅行中ですか? 大変ですね~」
「う、うん、そうだね。実はまだ宿屋も決まってないので探しているところなんだけど……」
「え! もうすぐ日が暮れちゃいますよ。こんなところで遊んでて大丈夫なんですか?」
とても驚かれている、きっと異世界の夜は日本の感覚でいるとダメなのだろう。
宿屋も決めずに、大通りをブラブラして遊んでいる俺たちはかなり異質に見えたんだろうなぁ。
そんなことを俺が考えていたら、田仲君が俺の背中から飛び降りた。
「こんばんは、おじさん。私のおにいちゃんにお願いして、今から町の外に連れてってもらおうとしてたの」
おお? なんだなんだ、どうしたタナカ?
「なんだいおじょうちゃん。いまから外に出ようとしてたのかい?」
お~、一気に門番の警戒心が下がった。
魔法が解ける瞬間はどうやら見られてなかったようだ。
振り向いたら俺たちがいたから驚いただけなのかもしれない。
「そうなの。お父さんとお母さんに内緒で、あの風車の中でお兄ちゃんと遊ぶの」
そういって遠くに見える風車の一つを指さす。
それを見た門番が警戒を解いて槍を持つ手に入っていた力を緩める。
そして困った顔をしながらこちらに近寄ってくる。
「そっか~、でもアルストとロベリアを結ぶ街道が安全とは言っても、夜はもしかしたらゴブリンが出るかもしれないからね。お嬢ちゃんみたいに可愛い子が夜に外をウロウロしてたら危ないんだよ」
門番さんはウチの子に言い含めるようにして、夜の塀の外が危ないという事を説明してくれている。
「えぇ~そうなの? でも、それじゃあおじさんたちも門のところにいたら危ないんじゃないの?」
「あははは、おじさんたちはここからモンスターや悪い人が町の中に入らないようにするのが仕事だからね。ちゃんと鍛えてるから大丈夫なんだよ。ほらっ!」
そう言ってに力こぶを作って見せてくれる。
すいません、その悪い人って多分俺たちの事です。
「すごーい! おじさんたちはとっても強いんだね! じゃあゴブリンが来たって安心だね♪」
すごいすごいとはしゃぐウチの子の様子に、気を良くした門番さん達はとても良い笑顔だ。
「そうだよ、ゴブリンが来たっておじさんたちがちゃんと守ってあげるからね」
「うん、ありがとう。でも、お兄ちゃんもすっごく強いから、私はお兄ちゃんに守ってもらうの♪」
ラヴィちゃんは俺の元に駆け寄ってきて、背中に飛び乗ってくる。
「あ、あははは、どうもすいません」
俺は苦笑いしながら門番さんに頭を下げる。
やばい、笑顔が引きつる。
「いいかいお兄ちゃん、可愛い妹さんから頼まれたからといって、夜に門の外に出てはだめだよ」
「はい、本当にすいません。ちょっと外を見せてあげたら満足するかと思ってここまできたんですけど……妹に説明していただいて助かりました」
「いやいや、外の危険を中の人間に知らせるのも我々の仕事だからね、今後気を付けてくれたらいいんだよ」
なんていい人たちなんだろう……胸が痛い。
そして俺の背中につかまって、小声で「うまく騙せましたね、コイツらちょろいですよ」とか言っている幼女は、なんて悪い子なんだろう。
門番さんに二人で挨拶をした後、俺たちは素知らぬ顔で町の中へと歩いていく。
結局なんとか上手く町の中に入れてしまった。
アルストに比べれば小さいとは言っても、家の数は数えられないくらいにある町だ。
奥の方にさっさと移動してしまえば門番からはわからなくなるだろう。
とにかく今は、早くあのニコニコ顔でこちらを見送ってくれている門番さんたちから見えない場所に行きたい。
俺がそんな事を考えているというのに、背中の子はバイバーイと最後まで手を振っていた。
人通りが多い場所まで来たので、ひとまず田仲君を背中から降ろす。
やっと一息ついた、先の方に見える大きな通りでは、仕事帰りで酒を飲んでいる男達や、買い物にいそしむ主婦らしき女性たち、それに連れられた騒がしい子供たちでにぎわっている。
「いや~、一瞬もうダメかと思ったんですけど、僕のアドリブのおかげでなんとかなりましたね」
田仲君がドヤ顔でこちらを見上げている。
そうだね、でも田仲君がクシャミをしなければ、そのアドリブも必要なかったんだけどね。
「この手は使えますね! もっと演技に磨きをかければ、もっと自然な感じで……」
このウサミミ幼女は、いったいどこを目指しているんだろうか。
「とりあえず駅馬車が止まっている場所を探そう。入り口からそう遠くない場所にあるとおもうんだけど」
「それならアレじゃないですか?」
田仲君はそう言って、人通りが多い道へ合流する少し手前から、脇に逸れていった道の先をゆびさす。
そこには馬が外された駅馬車が三台止まっており、アルストの駅馬車屋で会った、あの愛想の無いおじさんがいた。
彼はせっせと止めてある馬車を拭き掃除している。
「あれ、アルストの駅馬車乗り場でタオルを貸してくれたおじさんだよね? 見つかったらちょっと面倒かもしれないな」
「そうですね。とりあえず場所は確認できたし、駅馬車のやつらも今日はもうあそこで休むみたいですから、僕たちも何処か泊めてくれそうな宿を探しましょうよ。明日、あの駅馬車が出発したら追いかければいいですよ」
駅馬車の客が宿泊する場所を確認した俺たちは、とりあえずそこから少し先の沢山の人が行き来している通りをブラブラしながら宿を探すことにした。
「やっぱり異世界の宿屋と言うと、一階が食堂とか飲み屋だったりするんですかね? それで僕たちに絡んでくるような、ろくでなしの酔っ払いとかが、たむろしてるんですよきっと」
「テンプレだとそういう感じかな?」
「きっと、こんなかんじですよ」
田仲君は声色を変えて、ろくでなしの酔っ払いを演じ始めた。
「おい、子供が酒場になんの用だ! ガキは家に帰って母ちゃんのおっぱいでも飲んでな!」
田仲君はこちらを見て、寸劇に乗って来てほしそうだ。そんな急に振られても無理だよ。
「てめぇ、この俺様が気を使って忠告してやっているのに生意気な奴だ、ぶっ殺してやる!」
そう言って腰のあたりから剣を抜くような仕草をしたウサミミ幼女は、中腰で構えてチンピラ感を出している。
ちょっと黙ってただけで切り付けてくるのかよ、かなり雑な展開だな。
「しねぇ~」
右手に構えているエアナイフを振りかぶって俺に切りつけるフリをしようとした田仲君だったが……
「きゃっ!」
振り上げた右手が後ろを歩いていた女の子に当たってしまう。
あぁ、調子に乗ってるから。
「あ、すいません! 大丈夫ですか?」
すぐに振り返って、手が当たってしまった女の子に謝る田仲君。
「あはは、大丈夫だよ。ちょっとビックリしただけだから」
そう言って笑顔で許してくれた女の子は、ラヴィちゃんより結構年上に見える。
中学生くらいかな? いや、ラヴィちゃんは12歳だったから、そこまでは違わないのか。
「そんなにはしゃいでどうしたの? お兄さんとお出かけかな?」
その女の子は小さな子に話しかけるように、腰を曲げて目線を田仲君に合わせて話しかけている。
はらりと垂れた短めの茶色い髪の毛は、すこしクセが入っており毛先が刎ねている。
手に持っているバスケットを見たところ、お使いの途中なのかもしれない。
とても元気がよさそうな印象の女の子だ。
「えぇ~っと……そ、そうなの。お兄ちゃんと今夜は宿屋さんに泊まるの」
「そっか、宿屋さんにお泊り、とっても楽しそうだね」
楽しそうにお話しをしている二人の女の子。
ラヴィちゃんの笑顔が多少ぎこちないのは仕方ないだろう。
すると、女の子がこちらに向き直って話しかけてくる。
「宿屋に泊まるってことは、妹さんとふたりで旅行中ですか? 大変ですね~」
「う、うん、そうだね。実はまだ宿屋も決まってないので探しているところなんだけど……」
「え! もうすぐ日が暮れちゃいますよ。こんなところで遊んでて大丈夫なんですか?」
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