あの娘はきっとヒロインじゃない

ゴン

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第二章 迷宮都市ロベリア

052 ロベリアへの道のりと魔法の検証

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 嵐の夜、ロベリアで赤髪の少女と出会った日の朝

■椎名誠人 Side

 セッサの町を出た後の俺たちは、途中で何度も魔法の検証をしつつ駅馬車が走る道を走っていた。

 その検証結果によると、攻撃無効化のシールド系の魔法と、インビジブルとシャドウクロス等の隠蔽系の魔法は、対象に発動してからだいたい10分で効果が切れたが、防御力強化魔法のプロテクションは30分以上は切れなかった。


「思ったよりもすぐに魔法の効果は切れちゃうんですね」
「そうだね、ゲーム中の時間とあまり変わらないかんじかなぁ。プロテクションは効果が弱めだけど長持ちするんだよね……長時間連戦しない限りはあまり効果が感じられないかもしれない」
「へぇ、シールド系の魔法は強力だから効果時間が短いんですかね?」
「そうだね……まぁ、一発食らったら消えちゃうんだけど。でも、どっちの魔法も、実際に戦闘で使うと考えると、ちょっと不安な効果時間だね」
「そうですね……戦闘の度に魔法は掛けなおすくらいしないと、効果を維持できないかもしれないですね」
「低Lvの間は、ストーンスキンとミラージュボディも重ね掛けしておいたほうが良いかなぁ……」

 ソード&ウィザードリィでは、同じ効果の魔法と反対の効果の魔法以外は、重ね掛けすることができた。
 なので、一定量のダメージを肩代わりしてくれる土属性のバリアを体に纏うストーンスキンと、3回の攻撃の間だけ、物理攻撃の回避率が跳ね上がるミラージュボディは一緒に付与することができるのだ。

「そのへんもゲーム準拠なんですか、やっぱりRPGのゲームの魔法って、チートみたいな効果はないんですね」
「そうだね、あんまり強い魔法はゲームバランスが壊れちゃうからね……でも、魔法を使えない人から見たら、とんでもなく役に立つ魔法なんだろうけど……」
「それもそうですね、魔法が使えるってだけですごく助かってるのに、あんまり欲張ってもバチがあたっちゃいますね」

 そんな感じで魔法を使って、その効果の検証をし、注意点を話し合ったりしていた。



 移動の途中で、強化魔法が切れるまでの待ち時間を使って、他の魔法の検証をしようという話になった。
 今は、休憩時間に見つけた虫を実験台に、回復魔法と蘇生魔法の検証を行っている。

「この異世界バッタの"太郎君"には、これから地獄を見てもらいましょう」

 田仲君は、どこかから捕まえてきたバッタを手にもってそんなことを言っている。

「虫、平気なんだ。すごいね……俺、大人になってから触れなくなっちゃったよ」
「そうですね、一時期爬虫類をペットにしてたんで、虫は触りなれてますよ。ゴキブリとかコウロギとか生きたまま食べさせると、飼ってるトカゲのトカちゃんが一生懸命に食いついてくるんですよ! それが可愛いくて、ついつい沢山あげちゃったりしたりして♪」
「そ……そっか、田仲君がいてくれて助かったよ、俺一人じゃこの実験は出来なかったかなぁ」

 田仲君は「そうですか? 照れますねぇ///」と言いながら、バッタの太郎君? の足を一本いだ。
 うぉぅ……めっちゃ暴れてるよ~太郎君。

「ほら先輩、早く回復魔法かけちゃってくださいよ。 虫はそんなに簡単には死なないとは思いますけど」
「う、うん、わかった。ちょっとまってね、魔法詠唱:エリアヒール」

 バッタに触りたくなかった俺は、とりあえず範囲回復魔法エリアヒールを唱えた。
 魔法の発動後、バッタの太郎君はふわりと光った後に暴れなくなったが、足は捥げたままだった。

「エリアヒールって、ヒールと同じくらいの回復量なんですか?」
「そうだね、ヒールじゃ部位欠損は回復しないみたいだね」
「なるほど~、それじゃあ、一段階上の魔法をお願いします」
「う、うん。魔法詠唱:エリアミドルヒール」

 エリアミドルヒールによって、さっきよりも強い光に包まれた太郎君。だが、光が消えた後には、変わらず足が足りていない太郎君がいた。

「次、お願いします」
「魔法詠唱:エリアハイヒール」

 エリアハイヒールの光が消えたあと、見事に太郎君の足は生えそろっていた。

「おぉ! やった、成功しましたね」
「うん、ハイヒールなら欠損まで治るみたいだね」
「そうですね、じゃあ次は足を全部捥ぎますねぇ」
「っちょ! え?」
「はい、じゃあこれにハイヒールをお願いします」

 うわぁ~、太郎君が虫の息だ……虫だけに。

「ほら、先輩!」
「あ、ああ、魔法詠唱:エリアハイヒール!」



 そんな感じで回復魔法の検証をしていった。
 ハイヒールは、手足程度なら生えてくるのだが、上半身と下半身が泣き別れしたような状態だと、さすがに生えてこないようだった。
 エクストラヒールだと、その状況でも生きてさえいれば再生して元気な状態まで回復した。
 エクストラヒール、ぱないな!

 次に、蘇生魔法を試したのだが……蘇生魔法はヒールみたいにエリア発動はできないので、虫に触らないとダメかと覚悟を決めたのだが、冒険の書に"太郎"と名前が表示されていたおかげで、ネームリストからの魔法の発動が出来た。
 田仲君が気まぐれに、名前を付けてくれたおかげだ。
 ありがとう田仲君。

 蘇生魔法を色々なパターンの死骸に発動させてみたのだが、身体の半分以上が残っていないと生き返らないようだった。
 これは、ゲーム中に部位欠損等の表現が無かったので、知らなかった部分だな。
 あとは、蘇生のタイムリミットだが、1時間以上経過した死体には、蘇生魔法をかけても生き返らないというのは、ゲームと同じみたいだ。
 試しに、魔法の鞄に死体を入れてみたのだが、結果は同じだったので、死体は食べ物みたいに時間経過が止まったりはしないようだ。

 蘇生魔法か……使うような事態にはならないようにしたいが、いざという時に条件を満たせないことがないように気を付けなければいけないな。



 そこまで試したところで、雨がぽつぽつと降り始めてきた。

「あ、雨が降ってきましたよ! この続きは明日やりましょう。この赤いバッタの吾郎ちゃんは僕の鞄に入れておきますから」

 田仲君はそう言って、手に持っていた頭がないバッタの死骸を、魔法の鞄に突っ込んだ。

「そうだね、とりあえずは回復魔法と蘇生魔法だけ検証できてたら十分だよ。ほら、背中に乗って、急いで次の街を目指そう」

「はい、お願いします」

 田仲君は、虫を持っていた手をローブで拭いてから、俺の背中によじ登ってきた。
 そのローブ俺のローブなんだけど……いま拭いたのって虫の汁?

「ほら、先輩! 急がないと雨宿りなんてできる場所、このへんにないですよ。なんとかロベリアまでたどり着かないと」
「あ、うん、じゃあ飛ばすからしっかり捕まって!」

 今はそんなこと言ってる場合じゃないな、急がないと!
 俺は、斥候のスキル"とんずら"も使いながら、迷宮都市を全力で目指した。
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