蒼誓(そうせい)の騎士は転生者を離さない ― 異世界転生BL/騎士×転生者 ―

遊羽(ゆう)

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第4話

同じ部屋、同じ夜

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治療院の回廊かいろうが静まり返る頃、レオは寝台しんだいに腰掛けたまま、落ち着かない気持ちで天井を見上げていた。
夜になると、昼間よりも刻印の熱がはっきりと分かる。胸の奥で、蒼い鼓動が脈打つたび、意識が引き寄せられるようだった。

「……眠れない?」

低い声が、すぐ近くからする。

振り向くと、カイルが部屋の隅に立っていた。
よろいは外しているが、けんだけは壁に立てかけられている。どう見ても、警護けいごの体勢だ。

「ここ、同室なんですか?」

「今夜はな。」

当然のように言われ、言葉に詰まる。

「刻印が不安定だ。夜間は特に…」

それは分かる。
分かるけれど――心臓の落ち着かなさは、刻印のせいだけじゃない。

「……じゃあ、寝ますね。」

そう言って横になると、カイルは迷うことなく、寝台のすぐ横の椅子に腰を下ろした。
距離は、手を伸ばせば届くほど。

近すぎる。
昼間より、さらに。

灯りが落とされ、部屋は薄闇うすやみに包まれる。
静寂の中、聞こえるのは互いの呼吸だけだった。

しばらくして、夢を見た。

事故の瞬間。
白い光。
引き裂かれる感覚。

「……っ」

息が詰まり、思わず身を起こす。

次の瞬間、腕を掴まれた。

「大丈夫だ。」

すぐそばで、カイルの声がする。
いつの間にか、椅子から立ち上がり、寝台の縁に膝をついていた。

「悪夢か?」

うなずくと、彼の指先が、ためらいがちに背に触れる。
その温度に、張り詰めていたものがほどけた。

「ここにいる。」

ささやくような声。

「お前が落ち着くまで、離れない」

刻印が、応えるように熱を帯びる。
蒼い光が、布越しに淡く滲んだ。

「……本当に、逃がさないんですね…」

小さく言うと、カイルは一瞬、言葉に詰まったようだった。

「怖いか?」

「……少し。」

正直に答える。

だが、それ以上に。

「でも、安心もします。」

沈黙。
そして、低く、確かな声。

「それでいい。」

カイルは、そっとひたいに手を当てた。
触れるか触れないかの距離。だが、逃げ場はない。

「俺は騎士だ。だが……お前に対しては、それ以上でありたいと思っている。」

心臓がねる。
言葉の意味を、問い返す勇気はなかった。

この人のそばにいると、境界が曖昧あいまいになる。
使命と感情。守護と欲。

それでも、拒む気になれない自分がいる。

やがて、刻印の熱がゆっくりと引いていく。
カイルの手が離れ、再び椅子に戻る気配がした。

「眠れ。」

「……はい。」

目を閉じると、今度は不思議と、悪夢は来なかった。

同じ部屋、同じ夜。
レオは知らないうちに、彼の存在を“当たり前”として受け入れ始めていた。

それがどんな意味を持つのか――
まだ、考えないふりをしたまま。
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