蒼誓(そうせい)の騎士は転生者を離さない ― 異世界転生BL/騎士×転生者 ―

遊羽(ゆう)

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第6話

触れられない距離で、縛る

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王城おうじょう回廊かいろうは、治療院とは比べものにならないほど冷たかった。
白い石壁に反響する足音。視線。視線。視線。

レオは無意識に、隣を歩くカイルへと距離を寄せる。
それを察したのか、彼は何も言わず、歩幅を落とした。

「……見られてますね…」

小声で言うと、返事はなかった。
代わりに、腰に回された手が、はっきりと存在を主張する。

「っ……」

驚いて顔を上げると、蒼い瞳が一瞬だけこちらを見下ろした。

「離れるな。」

命令に近い声音。
だが、その手つきは乱暴ではない。むしろ、逃げ道を塞ぐように確かだった。

「ここでは、お前は“物珍しい存在”だ。」

「……刻印のせいですか?」

「それだけじゃない。」

低くささやかれ、耳元が熱を帯びる。

「俺の側にいるという事実も、な?」

胸が跳ねる。
意味を問い返す前に、重い扉が開き、私室ししつへ通された。

扉が閉まった瞬間、空気が変わった。
外界の視線が断たれ、張り詰めていた緊張が一気にゆるむ。

「……はあ」

息を吐くと、すぐに背後から抱き寄せられた。

「カ、イル……?」

返事はなく、ひたいひたいが触れる距離。
呼吸が重なり、鎧を外した体温が、はっきりと伝わってくる。

「触れるなと言われるほど、触れたくなる。」

静かな声。
それは独り言のようでいて、確実にレオに向けられていた。

王城おうじょうでは、お前に触れられない者が多い。」

「……それ、ほこってます?」

問いかけると、カイルはわずかに口角を上げた。

ほこりではない。」

腰に回る腕に、力がこもる。

「確認だ。」

「何の……」

「お前が、俺のものだという。」

心臓が、うるさい。
刻印が熱を帯び、胸元がじんわりと疼く。

「……まだ、何も約束してません…」

そう言うと、カイルは一瞬、動きを止めた。

「分かっている。」

それでも、離れない。

「だから今は、縛るだけだ…」

指先が、背中をなぞる。
触れ方は抑えられているのに、意識だけが過剰に反応する。

「逃げるな。」

「……逃げません…」

ささやくように返すと、深く息を吸う音がした。

「良い子だ」

その一言が、甘く、危険だった。

しばらくして、腕がかれる。
だが視線は、変わらずからみついたまま。

「今夜は、ここで休め。」

「同じ部屋……?」

「ああ。」

当然のように。

「扉の外には、俺以外入れさせない。」

それは守護であり、同時に宣言だった。

王城おうじょうの夜。
レオは初めて、はっきりと自覚する。

この騎士は――
自分を、手に入れる気でいる。

そして、その事実を。
こばめない自分がいることも。
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