42 / 51
第41話
失うという現実
しおりを挟む
異変は、北境から戻った3日後に起きた。
「単独で十分だ。」
そう言って、カイルは王都近郊の魔物討伐へ向かった。
本来なら問題のない任務。
だが。
「……嫌な感じがする…」
レオは、胸の刻印を押さえた。
共鳴が、妙に静かすぎる。
その直後だった。
――ぶつり。
何かが、切れた。
「……っ!」
呼吸が止まる。
刻印が、激しく乱れる。
「カイル……?」
足が、勝手に動いた。
騎士団の詰所へ駆け込む。
そこには、慌ただしい空気。
血の匂い。
「どいて!」
レオは、人を押し分ける。
担架の上。
カイルが、横たわっていた。
鎧は裂け、胸元が深く抉られている。
「致命傷だ。」
誰かが、低く言う。
「魔族の残滓……予想外の出現だった。」
レオの耳には、ほとんど入らない。
刻印が、狂ったように脈打っている。
(……繋がってる)
だが、弱い。
今にも、途切れそうだ。
「医療魔術を!」
「既に限界だ!」
血が、止まらない。
「……レオ…」
かすれた声。
蒼い瞳が、僅かに開く。
「無事か?」
その一言で、胸が裂ける。
「馬鹿……」
震える手で、頬に触れる。
「俺は、ここにいる…」
カイルの呼吸が、浅い。
刻印が、不安定に揺れる。
(……このままじゃ、消える)
頭の奥で、アルヴェインの言葉が蘇る。
――構造を再編できる。
――固定できる。
禁じ手。
誓約を、構造として扱う方法。
「……やめろ…」
カイルが、弱く言う。
「考えるな。」
「でも!」
「誓約を、式にするな…」
その声は、掠れているのに強い。
だが。
レオは、決断した。
「ごめん。」
刻印に、意識を集中する。
境界との支点。
循環構造。
3点。
それを――
強制的に固定する。
「レオ!」
周囲が、ざわめく。
光が、溢れる。
刻印が、これまでにない輝きを放つ。
「誓約を、固定化するな!」
カイルの叫び。
だが、止まらない。
循環が、急速に安定化する。
出血が、止まる。
傷が、ゆっくりと閉じていく。
代わりに。
レオの視界が、白く染まる。
(……重い)
誓約が、硬くなる。
揺らぎが、消えていく。
「……成功、だと…?」
誰かが呟く。
カイルの呼吸が、戻る。
安定している。
助かった。
だが。
刻印が、冷たい。
穏やかではない。
「……レオ。」
カイルが、震える手で触れる。
「何を、した?」
レオは、かすかに笑った。
「選びました。」
だが。
その笑みは、わずかに硬い。
誓約は、守られた。
命も、守った。
しかし。
何かが、変わった。
揺らぎが、消えた。
選び続ける余白が、薄れた。
遠くで。
アルヴェインは、記録を見て呟く。
「……固定化成功。やはり、恐怖が引き金になる。」
誓約は、救った。
だが。
それは、もはや“純粋な選択”ではない。
次に試されるのは――
固定された誓約は、本当に幸福か。
「単独で十分だ。」
そう言って、カイルは王都近郊の魔物討伐へ向かった。
本来なら問題のない任務。
だが。
「……嫌な感じがする…」
レオは、胸の刻印を押さえた。
共鳴が、妙に静かすぎる。
その直後だった。
――ぶつり。
何かが、切れた。
「……っ!」
呼吸が止まる。
刻印が、激しく乱れる。
「カイル……?」
足が、勝手に動いた。
騎士団の詰所へ駆け込む。
そこには、慌ただしい空気。
血の匂い。
「どいて!」
レオは、人を押し分ける。
担架の上。
カイルが、横たわっていた。
鎧は裂け、胸元が深く抉られている。
「致命傷だ。」
誰かが、低く言う。
「魔族の残滓……予想外の出現だった。」
レオの耳には、ほとんど入らない。
刻印が、狂ったように脈打っている。
(……繋がってる)
だが、弱い。
今にも、途切れそうだ。
「医療魔術を!」
「既に限界だ!」
血が、止まらない。
「……レオ…」
かすれた声。
蒼い瞳が、僅かに開く。
「無事か?」
その一言で、胸が裂ける。
「馬鹿……」
震える手で、頬に触れる。
「俺は、ここにいる…」
カイルの呼吸が、浅い。
刻印が、不安定に揺れる。
(……このままじゃ、消える)
頭の奥で、アルヴェインの言葉が蘇る。
――構造を再編できる。
――固定できる。
禁じ手。
誓約を、構造として扱う方法。
「……やめろ…」
カイルが、弱く言う。
「考えるな。」
「でも!」
「誓約を、式にするな…」
その声は、掠れているのに強い。
だが。
レオは、決断した。
「ごめん。」
刻印に、意識を集中する。
境界との支点。
循環構造。
3点。
それを――
強制的に固定する。
「レオ!」
周囲が、ざわめく。
光が、溢れる。
刻印が、これまでにない輝きを放つ。
「誓約を、固定化するな!」
カイルの叫び。
だが、止まらない。
循環が、急速に安定化する。
出血が、止まる。
傷が、ゆっくりと閉じていく。
代わりに。
レオの視界が、白く染まる。
(……重い)
誓約が、硬くなる。
揺らぎが、消えていく。
「……成功、だと…?」
誰かが呟く。
カイルの呼吸が、戻る。
安定している。
助かった。
だが。
刻印が、冷たい。
穏やかではない。
「……レオ。」
カイルが、震える手で触れる。
「何を、した?」
レオは、かすかに笑った。
「選びました。」
だが。
その笑みは、わずかに硬い。
誓約は、守られた。
命も、守った。
しかし。
何かが、変わった。
揺らぎが、消えた。
選び続ける余白が、薄れた。
遠くで。
アルヴェインは、記録を見て呟く。
「……固定化成功。やはり、恐怖が引き金になる。」
誓約は、救った。
だが。
それは、もはや“純粋な選択”ではない。
次に試されるのは――
固定された誓約は、本当に幸福か。
0
あなたにおすすめの小説
大学一軍イケメンにいちご狩りに誘われた陰キャの俺、なぜかいちごじゃなくて俺が喰われたんだが(?)
子犬一 はぁて
BL
大学一軍イケメン×大学九軍陰キャ
喰われるなんて聞いてないんだが(?)
俺はただ、
いちご狩りに誘われただけだが。
なのに──
誘ってきた大学一軍イケメンの海皇(21)に
なぜか俺が捕まって食われる展開に?
ちょっと待てい。
意味がわからないんだが!
いちご狩りから始まる
ケンカップルいちゃらぶBL
※大人描写のある話はタイトルに『※』あり
氷の檻に閉じ込められた月~兄上のすべては、私のもの~
春野ふぶき
BL
『兄上は私のものだ。魂も、肉体も。永遠に―—』
アーヴェント侯爵家の長男ライカは、妾腹として正妻に虐げられ続けてきた。
唯一の救いは、次期当主を目される異母弟カイエンの存在。
美しく聡明で、氷の騎士と呼ばれる彼だけは、常にライカの味方だった。
だが、その愛情は兄を守るものではなく、深く歪んだ執着だった。
母を排除し、兄を囲い込み、逃げれば鎖で捕らえる。
そしてついに、ライカの心身は限界に追い詰められていく。
——カイエンが下す「最後の選択」とは。
ふたりが辿る結末は、幸福か、それとも狂気の果てか。
異世界転移して美形になったら危険な男とハジメテしちゃいました
ノルジャン
BL
俺はおっさん神に異世界に転移させてもらった。異世界で「イケメンでモテて勝ち組の人生」が送りたい!という願いを叶えてもらったはずなのだけれど……。これってちゃんと叶えて貰えてるのか?美形になったけど男にしかモテないし、勝ち組人生って結局どんなん?めちゃくちゃ危険な香りのする男にバーでナンパされて、ついていっちゃってころっと惚れちゃう俺の話。危険な男×美形(元平凡)※ムーンライトノベルズにも掲載
みなしご白虎が獣人異世界でしあわせになるまで
キザキ ケイ
BL
親を亡くしたアルビノの小さなトラは、異世界へ渡った────……
気がつくと知らない場所にいた真っ白な子トラのタビトは、子ライオンのレグルスと出会い、彼が「獣人」であることを知る。
獣人はケモノとヒト両方の姿を持っていて、でも獣人は恐ろしい人間とは違うらしい。
故郷に帰りたいけれど、方法が分からず途方に暮れるタビトは、レグルスとふれあい、傷ついた心を癒やされながら共に成長していく。
しかし、珍しい見た目のタビトを狙うものが現れて────?
イケメンダブルセンターとアンチ>ファンな平凡な俺
スノウマン(ユッキー)
BL
アイドルグループ【オーバーウェルミング】は圧倒的な歌唱力の深山影月、圧倒的なパフォーマンス力の漣陽太、そして圧倒的な平凡力な俺間桐真緒の3人で結成されている。
大人気の二人と違いアンチしかいない俺だが、メンバーからもファンからも愛される日が果たしてくるのか!?
異世界転移してΩになった俺(アラフォーリーマン)、庇護欲高めα騎士に身も心も溶かされる
ヨドミ
BL
もし生まれ変わったら、俺は思う存分甘やかされたい――。
アラフォーリーマン(社畜)である福沢裕介は、通勤途中、事故により異世界へ転移してしまう。
異世界ローリア王国皇太子の花嫁として召喚されたが、転移して早々、【災厄のΩ】と告げられ殺されそうになる。
【災厄のΩ】、それは複数のαを番にすることができるΩのことだった――。
αがハーレムを築くのが常識とされる異世界では、【災厄のΩ】は忌むべき存在。
負の烙印を押された裕介は、間一髪、銀髪のα騎士ジェイドに助けられ、彼の庇護のもと、騎士団施設で居候することに。
「αがΩを守るのは当然だ」とジェイドは裕介の世話を焼くようになって――。
庇護欲高め騎士(α)と甘やかされたいけどプライドが邪魔をして素直になれない中年リーマン(Ω)のすれ違いラブファンタジー。
※Rシーンには♡マークをつけます。
平凡高校生の俺にイケメンアイドルが365回告白してくる理由
スノウマン(ユッキー)
BL
高校三年生の橘颯真はイケメンアイドル星宮光に毎日欠かさず告白されている。男同士とのこともあり、毎回断る颯真だが、一年という時間が彼らの関係を少しずつ変えていく。
どうして星宮は颯真に毎日告白するのか、そして彼らの恋の行方は?
転移先で辺境伯の跡継ぎとなる予定の第四王子様に愛される
Hazuki
BL
五歳で父親が無くなり、七歳の時新しい父親が出来た。
中1の雨の日熱を出した。
義父は大工なので雨の日はほぼ休み、パートに行く母の代わりに俺の看病をしてくれた。
それだけなら良かったのだが、義父は俺を犯した、何日も。
晴れた日にやっと解放された俺は散歩に出掛けた。
連日の性交で身体は疲れていたようで道を渡っているときにふらつき、車に轢かれて、、、。
目覚めたら豪華な部屋!?
異世界転移して森に倒れていた俺を助けてくれた次期辺境伯の第四王子に愛される、そんな話、にする予定。
⚠️最初から義父に犯されます。
嫌な方はお戻りくださいませ。
久しぶりに書きました。
続きはぼちぼち書いていきます。
不定期更新で、すみません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる