蒼誓(そうせい)の騎士は転生者を離さない ― 異世界転生BL/騎士×転生者 ―

遊羽(ゆう)

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第47話

最後の選択

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崩壊は、静かに始まった。

北境の空が、音もなく裂ける。

細い線だった裂け目が、今は空を横断している。

「……止めきれない。」

監視騎士の声が、掠れる。

境界の向こうから、圧が押し寄せている。

誓約を否定する“意思”。

分断を是とする存在。

レオの刻印が、激しく揺れた。

不安。
恐怖。
怒り。

すべてが混ざり合う。

だが、今はそれが力になる。

「来る…」

カイルが、剣を構える。

裂け目の奥から、巨大な影が姿を現す。

明確な輪郭。

人型に近いが、歪んでいる。

――不完全な者たち。

直接、声が響く。

――繋がるから、弱い。

――揺らぐから、壊れる。

地面が震える。

境界が、内側から引き裂かれる。

レオは、膝をつきかけた。

「……っ!」

刻印が、限界まで出力を上げる。

だが、循環が追いつかない。

揺らぎが、暴走寸前。

「レオ!」

カイルが、肩を支える。

「固定はしない。」

レオは、息を荒げながら言う。

「でも、このままじゃ……」

裂け目が、王都へ向けて広がる。

時間がない。

アルヴェインの言葉が、よぎる。

永久固定。

境界書き換え。

完全安定。

「……今なら…」

誰も言っていないのに、頭に浮かぶ。

固定すれば、止まる。

犠牲はない。

揺らぎも消える。

「考えるな。」

カイルの声が、強く響く。

「選べ。」

蒼い瞳が、真っ直ぐに向く。

「誓約か、世界か、ではない。どう在りたいか、だ。」

その言葉が、胸に刺さる。

影が、さらに迫る。

境界が、悲鳴を上げる。

レオは、目を閉じた。

怖い。

失うのが、怖い。

世界も。

カイルも。

どちらも。

(……どっちも選ぶ)

刻印に、意識を集中する。

出力ではない。

構造でもない。

ただ、意志。

「俺は…」

目を開く。

「揺れながら、守る。」

刻印が、強く波打つ。

暴走寸前の揺らぎが、1本の流れに収束する。

固定ではない。

崩壊でもない。

共鳴の拡張。

カイルの刻印と、完全に重なる。

2人の鼓動が、1つの波になる。

影が、止まる。

――不安定。

――理解不能。

「不完全でいい。」

カイルが叫ぶ。

「選び続ける限り、壊れない!」

揺らぎが、境界全体へ広がる。

裂け目が、震える。

押し返すのではない。

包み込む。

歪みを、拒絶せず、飲み込む。

影が、歪みながら後退する。

――未完成。

最後の声が、薄れる。

裂け目が、ゆっくりと閉じ始める。

だが、刻印に深いひびが入る。

限界。

レオの視界が、白く染まる。

「……レオ!」

カイルの声が遠い。

共鳴が、途切れかける。

最後の選択が、迫っていた。

誓約を守るか。

手を離すか。

揺らぎは、限界を迎える。
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