【R18】会社の御曹司に捨てられて風俗堕ちしたはずが、推しに指名されました【完結】

月狂 紫乃/月狂 四郎

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 しっかりと寝まくったわたしは、夜の勝負に向かって木村さんの運転するバンに揺られているところだった。

「ティアちゃん、今日って例の太い客のところに行くの?」

 金髪ツインテールのパインちゃんがふいに口を開く。油断していたので「うわ」ってビックリした。

「知ってたの?」
「そりゃあね。ティアちゃんのスケジュールだけすごく長いし、車の行き先も前に行ったタワマンの方向だから分かるよ」
「さすがだね。パインちゃん鋭い」
「別に。だって、普段からどっちかと言えばケチな貧乏人ばっかり相手にしてるんだからさ、あんなすごい家を見たらそりゃ憶えているよ」

 パインちゃんは笑いながら続ける。

「それで、その人ってどうなの? やっぱりお金持ってて彼女がいないってことは結構キモい人?」
「いや、そんなことないよ」

 キモいも何も、その人ってあなたも大好きなBBSのレイジ君ですけど、なんて言いたいけど言えるはずがない。

「そうなの。いいな~ティアちゃんは。太くてまともな客を捕まえて。あたしもカッコよくて性格も良くて、ついでにお金も持っていて家のことも全部やってくれるスパダリに拾ってもらえないかな~」
「なにそれ、婚活じゃないんだから」

 わたしは思わず笑った。

 東京とかは事情が違うみたいだけど、お客さんと本当に付き合いはじめて、そのままゴールインした水商売の人がいるっていう話は結構聞いたことがある。

 この世界は急にいなくなるなんて話もザラにあるから、いなくなった仲間たちもどこかで幸せにしているのかな? そうだといいな。少ししか付き合いが無くても、それでも心から彼女たちには幸せになってほしいって思っている。

 車はレイジ君が別荘として使っているタワーマンションに近付いていく。まだ彼に再会できるって言われても実感が無いけど、今日も彼にとって最高の夜になるように頑張るぞっと。

   ◆

「久しぶりだね。会いたかったよ」

 ドアの隙間から顔を見せるレイジ君。美術品みたいに整った顔に、見たもののハートを漏れなく撃ち抜く切れ長の目。

 間違いない。前に会ったのは幻なんかじゃなかった。レイジ君は、わたしのことをしっかりと認識してくれていた。

「わたしも会いたかった」

 思わず本音が漏れる。疑似恋愛はどこへやら。ガチ恋そのものでしかない。

 部屋に入ると、どうぞって席を勧められて対面でテーブルに着く。「何か飲む?」って訊かれたから紅茶をもらった。実はそこまでお酒は好きじゃない。

 やっぱりいい紅茶なのか、バカ舌でもすぐに高いやつっていうのが分かった。レイジ君はわたしの顔をずっと観察している。オッサンからやられると嫌なのに、レイジ君から同じことをされると恥ずかしくなる。

「すっごく、会いたかったよ」

 割と本音が出る。レイジ君の目を見て言えない。よく顔が見れないけど、前よりも格段にカッコいいのは間違いない。というか、やっぱり色気が増したのだろうか。昨日の歌番組でも思ったけど。

「俺もすごく会いたかった」

 たった一言で、わたしは逝きそうになる。ダメだ、攻撃力が違い過ぎる。本当はわたしの方が彼を手玉に取らないといけないのに、今のわたしはガチ恋モードでその最強ビジュを誇る顔を直視できない。

 わたしが勝手に照れていると、レイジ君が口を開く。

「元気にしてた?」
「うん」
「あれからは君のことばかり考えていたよ」
「本当に?」
「本当さ。まともに誰かを好きになるヒマなんて無かったからね。気付けば君を抱きしめた時の感覚を思い出していた」

 嬉し過ぎ、思わず座ったまま足踏みをしまくる。わたしの顔をじっと見つめるレイジ君の顔。このまま何時間でもいられそう。

「そう言えば、前よりも色っぽくなったよね?」
「そうかな? 周りからも言われるけど、そんなに自覚が無いんだよね」

 下目遣いで言うその表情に、わたしの心臓が跳ねる。元々カッコ良かったのは間違いないけど、ここ最近で一気に色気が増したのは間違いない。それはSNSやネットでも話題になっていた。

「もしかして、初めて会った夜から結構遊んでた?」

 わたしとの初体験を終えて、童貞の呪縛から解放された神ビジュアルの王子様だったら十分に考えられる話だ。なにせ女の子の方からおしりを差し出してくるような人なんだから。

「まさか。だって、それって浮気じゃないか」
「へ?」
「たしか言っただろ。この先はずっと君ばっかりを指名し続けるって」

 わたしはその言葉の意味が分からず、しばらく壊れたオモチャみたいにポカーンとしていた。

「いや、浮気って……」

 ちょ……この人ガチで言ってるんですか?

 だってわたしなんて、ちょっとつまみ食いしてはポイっと捨てられても文句すら言える資格のない存在だというのに。

 待って。そうなると、本気でこの人はわたしのことばっかりを考えていたってこと?

 そして、他の女で遊ぶこともなくずっとこの日を待っていたってこと?

 わたしの中には人生最大級の驚愕が舞い降りている。そんなことって、本当にあるの……?

「あの、別にわたし以外の女の子に手を出したっていいんだからね?」

 我ながら意味不明な忠告を推しにする。だってそうでしょう。わたしは連日連夜、色んな人とあんなことやこんなことをしているんだよ? そんなに大事に扱われたら困っちゃうよ。

 水面下のパニックも知らずに、最強の推しは答える。

「まあ、たしかにそれは言う通りなんだけどね。やっぱり事務所が厳しいっていうか。遊ぶにしても変な地雷は踏みたくないからね。君の時は運が良かったけど、言われてみればたしかに危険なことをしていた。相手によっては週刊誌に売られたり住所をバラされたりしていたかもしれない。なにより……」

 レイジ君はちょっと遠くを見てから言う。

「他の誰かっていうより、俺はやっぱり君のことが好きなんだろうなって。不器用なんだ、俺は。誰かを好きになっている間は、他の人と遊んでいてもつまらなくなってしまうから」

 わたしは鼻血をブーっと出して、そのままフローリングに倒れてしまいそうな気分になった。いや、実際にはそんなわけにはいかないんだけど。

 こんなことってあるの。わたし、前世で世界でも救ったのかな?

 でも、それだと前の会社であった花形さん事件(通称)の説明がつかない。あの時はこの世の終わりみたいに感じていたけど、やっぱり人生って何があるのか分からないよね。

 はっ……しまった。嬉し過ぎて意識が遠くに行ったままだった。これだけわたしのことを思っていてくれたんだ。今日がレイジ君にとって人生最高の夜になるぐらいの勢いで頑張らなくちゃ。

「それじゃあ、そろそろ……する?」
「そうだね、しようか」

 レイジ君に連れられてバスルームまで行く。ただ手を取られただけなのに、心臓が一気に跳ねた。

 わたし、これから推しとセックスするんだ……。

 前にもしているのに、あらためてそう考えるとすごくドキドキした。中学生にでも戻った気分。

 レイジ君も、もしかしたらわたしにガチ恋してくれているのかな?

 違ったら傷付くだけなのに、そんな妄想をしてしまう。でも、別に片思いでもいい。都合のいい女でもいい。たとえ捨てられる未来が待っていたとしても、わたしは誰かに愛されたい。……いや、違う。わたしはレイジ君に愛してほしいんだ。

 思わずバスルームへ向かう足取りが軽くなる。幸せを噛み締めるみたいに、どうしても足取りがスキップになってしまう。レイジ君はそんな足取りに気付いて、おかしそうにわたしの体を抱き寄せた。

 ああ、やっぱりわたしはこの人が好きだ。

 この世界がひっくり返っても、きっとレイジ君はわたしにとって特別な存在なんだ……!
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