アスタリク・オンライン

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プレイヤー召喚

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「お前がレイン?」
目の前に座っているアスタリク内での俺の剣を名乗る少女に問いかけた。
「はい、マスター。ですが正確には短魔剣であるレインと精神がリンクしているということです」
「精神がリンクしている、か。それなら店主さんのことも知っているのか?」
「はい。あの人は私にかなりの維持費いじひが掛かりながらも捨てずに所有者が出来るまで残してくれました。あの人はすごくいい人です」
「お前がレインだということは分かった。話は変わるけどレイン、お前なんで勝手に人の家入り込んでんの?」
「それは私とマスターが」
そこまで言いかけて、下から母の声がした。
「ちょっと来て!話したいことがあるの!」
何か急用なのだろうか、いつもより大声だ。
「レイン、その話は後でしよう。ちょっと待っててくれ」
部屋の扉を開け、階段を下り、母のいるリビングに行く。
「母さん、どうしたんだ?何か急用?」
しゅんの部屋に女の子がいたでしょ。あの子、瞬の従妹いとこなの。あの子の両親、離婚しちゃったんだけどどっちも引き取らなくてね、それでこの家に住むことになったの」
「レインが俺の従妹?本当に?ドッキリじゃないよね」
それなら家にいたことに納得できる。
「レイン?みおちゃんの事を言ってるの?とりあえずこれから一緒に暮らすんだから仲良くしてね」
「ってことで、これからよろしくね、お兄ちゃん」
いつの間にか後ろに立っていた澪にそう言われた―――。

翌日、中学校にて。
昨日の疲れで俺はずっと椅子に座っていた。
「どうしたの、瞬?元気ないね」
りんが話しかけてきた。
「お前、昨日あんなに蒼眼そうがんオーク探しまくって疲れなかったのか?」
「まあ疲れたけど、瞬の前だし元気にならないとなーって思って」
というか、こいつは澪などに関する事を全く知らないのか。
「ど、どうしたの?なんでそんなに私の事を見てるの?」
鈴がなぜか慌てている。
「いや、何も知らないっていいなと思ってさ」
そんなやり取りをしていると廊下にいる男子が何やら騒いでいる。
「おい、一年生に可愛い子が転入してきたらしいぜ!」
「まじ!?見に行こうぜ!」
そう言って一年生の教室のある棟に走って行った。
「可愛い一年生か、どんな子だろうね?」
「気になるんなら俺たちも見に行こう」
「え、まあ私としても後輩の姿を見たいけど」

まあそういう訳でやってきました。
「おお、かなり人がいるな。これ全部、その子の観客か?」
「うん、そうみたいだね。さっきから所々で澪っていう子の話をしているし」
「へー、澪って子の事をみんな話しているのか。鈴、やっぱり教室に帰ろう」
「あ、ちょっと待って。澪ちゃんが教室から出てくるみたい!」
出来るだけ会いたくないんだが!
教室の扉が開き、制服に身を包んだ澪が出てきた。
「わー、本当に可愛いねー」
鈴が感想をこぼしていると、澪はこちらに気づき走り寄ってきた。
そしてそのまま澪は俺の体に抱き着いた。
「えっ!」
その声は誰が発したのだろう、それほどに周りは硬直していた。
「どうしたの、お兄ちゃん?」
澪が顔を覗き込んでくる。
「いや、どうしたの?じゃないよ!なんで抱き着いてきたの!?」
「好きな人に抱き着くのは当然だよ?」
俺も固まった。
頭が真っ白になる。
「ちょっと!何してるの!」
鈴が抱き着いた澪を引きはがす。
「瞬に抱き着いたら駄目!分かった?」
「チョト、ナニオイテルノカワカラナイ」
訳;ちょっと、何を言っているのか解らない。
澪ってもしかして結構ふざけたりするのかな。
「あー、もういいわ。済んだことだし。それよりも澪ちゃんが言ってた『お兄ちゃん』って何?瞬って一人っ子でしょ?」
「ちょっと話が長くなるぞ。実は……」
今までのことを鈴に話した。
鈴がログアウトした後のこと。
澪が俺の従妹で、これから一緒に住んでいくこと。
話し終わるとほぼ同時に予鈴が鳴り響いた―――。

学校は終わり、今はベッドで寝転がっている。
澪があることがしたいと言うので、アスタリクを起動しているところだ。
エリアを頭に装着し、電源を入れる。
そしてゲームを起動させる言葉を唱える。
「『リンク開始』」
視覚機能を停止させたため視界がが真っ暗になる。
その暗闇の中に青い光が射す。
そこにかなりのスピードで近づいていく。
《『アスタリク・オンライン』を起動します》
青い光に到達すると機械音声が聞こえてきた。
そのまま光を抜けるとそこには昨日見た光景。
アスタリクの町が広がっていた。
「えーと確か、こうすればよかったはず」
レイン(剣)を引き抜き、前に構える。
するとレイン(剣)の下にあった地面に魔方陣が描かれた。
そのままレイン(剣)を魔方陣に放り込む。
魔方陣はレイン(剣)を取り込むと、青い粒子を放出しそれが集まり人型になっていく。
人型を包んでいた青い粒子が弾け飛び、中からレインが姿を現した。
…これ、どうなってんだ?
起こった現象は召喚魔法を使った時と同じだけど、今回は魔力じゃなく剣を使って召喚した。
しかもプレイヤーを。
システム的にプレイヤーを召喚することなんて出来ないはずなんだが。
バグかな?
まあ、運営には報告しないけど。
こんな面白そうな現象を報告するほうが馬鹿だ。
「お兄ちゃん、早くクエストしに行こうよ!」
「レイン、お前ってなんで出会ったときは『マスター』って呼んでいたのに、今は『お兄ちゃん』って呼んでるんだ?」
「ん?それは驚かせようと思ったからだよ。『マスター』の方が雰囲気でるでしょ?」
「そんなもんか。よし、割のいいクエスト探しに行くか」
「おー!」
そういえばシェイはどこにいるんだろう。
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