見た目幼女は精神年齢20歳

またたび

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41話

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私の名前は佐藤真彩

高校卒業後にすぐに就職した社会人1年生だ

平凡な名前と平凡な容姿…まあ女手一つで私をここまで育ててくれた母に感謝しないとね。

あの日はいつもと変わらず会社に行って

疲れきって少しおぼつかない足取りで歩いていると近くの人とぶつかってしまった。 

反射的にすみませんと謝ったその時、足元が急に光ったんだ。


そう…異世界召喚されたんだ


周りにいたのは現代ではアニメの世界などでしか見ることの無い服装をした人達

疲れきった人もいればそんなの忘れて喜んでいる人もいた。

そういえば前にテレビで見た事があるな

異世界召喚された人が選ばれし人で世界を救えとかなんちゃら……って感じのストーリーだったな


「ついにやった…!聖女様の召喚に成功したぞ!」


なるほど…聖女召喚の義をやってるのか

こういうのって本当にあるんだな…そして私が聖女になるのか?


「さぁ…ゆっくりとは出来ませんがこちらで説明をするのでお手をどうぞ!」


かなりテンプレ的展開だ…拍子抜けしてしまうぞ

目の前に差し出された手を取り部屋を出ていくその時後ろから声が聞こえた。

振り返ってみるとそこには黒い長髪と黒く潤んだ瞳の女の子が一人


あの子は誰なんだろうか…?



「あの…あそこにいる黒髪の子は?」

「見てはいけません…あれは悪魔族ですから」



悪魔族ね…

悪魔族は黒髪と黒目の人間に化けていると言われておりこの国では問答無用で退治されるのだ。



今思えばあの時見た少女はもうこの世にいないのかもしれない

私の知らぬうちに簡単に消えてしまった一人の存在はとても重く感じた。

そんな残酷な国で私はどうして平然といられるのか…最低だな



そんなんだから私は聖女の力を手にすることができなかったんだ。

彼ら…宗教国家トーマス帝国の者たちの目的は召喚した聖女から力を借りること


私が持っていたのは強い光の力であり聖女の持つ聖なる力ではなかったのだ。


そこで彼らはどんな行動をとったのか

聖女の力はなくても私を国のために働かせ、国民を騙すという神が知ったら怒り狂うことをしたのだ。

私は罪悪感と真実を知るものからの陰口による精神的ストレスで心が潰れそうになった


そんなある日とある情報を手に入れたんだ

それは罪人達を収容するためだけに手に入れた土地「プリズンランド」の領主が報告してきたことだった


私の他に異世界召喚された人間が何故か収容所にいたらしく伝説のドラゴン暗黒竜オプスキュリテドラゴンと共にプリズンランドを去っていったという情報

その情報が本当なら…

私はひとつの希望を持ったのだ

もしもう一人の異世界召喚者が見つかったら私はその子を利用して逃げることが可能かもしれない

偽りの聖女としてこんな所にいなくてもいいのだ

私はその時初めて自由に対する憧れを抱いてしまったのかもしれない


だから山下加奈を見つけた瞬間あんなにニヤけが止まらなかったんだろうな


なのに彼女は絶望したような顔を見せてきた

何故…?私の本性がバレたとでも言うのか?

だから私はあの場から逃げ出した

あれ以上彼女といたら私はもっと最低なことを考えていたかもしれないから

だからまた部屋に引き篭って現実から逃げようとしたんだ。



私は…この鳥かごから逃げることを諦めた弱い鳥なのかもしれない












「これが…私の全てです

加奈さんにもこのことは伝えるのですよね?

だったら言って貰えませんか?



ごめんなさい…私はあなたの事を利用してしまうところでした。

私はこのまま偽りの聖女として国民を騙し続けます」


今の私は上手く笑えているのかよくわからない

だけどツキカゲと彼女から呼ばれていたこの男の目はまるでとても冷たく、興味の無いものを無理やり見せられているような顔をしていた。

恐ろしいはずなのにそれを緩和するのは彼の顔立ちの良さなのだろう




「……話はそれだけか?」






………は?




「………は?」


こいつはなにを言っているのだろう

心の中で呟いたはずのリアクションがいつの間にか表に出ていた。

なんでそんなに常人とはかけ離れた思考を持つことができるのか私には到底理解できない


「確かにカナなら求めるだろうな…

だが

俺様が求めていたのはそんなお涙頂戴話なんかじゃない


この国…いや、あの神を神として扱わない野郎の目的を知りたいんだよ」


なにを言っているんだ…

神を神として扱わない人物が誰なのかも分からない

それなのに私の脳内ではその人物を予想して想像しているのだ。

神を神として扱わない人物…そんな恐ろしいことをこの国がする訳ない


「神は…私達生きる者達の為に力を与えてくれる存在でもあり、試練を与えてくださる存在でもあります

そのような神をかっ…神として扱わない人物なんて…ひぃっ!?」


すると彼は私に詰め寄り睨みを強くしてきた

無意識に後退りをして迫られてを繰り返しているうちにいつの間にか壁に背が着いた。

強く壁を壊す勢いで手をつけてきて逃がさないようにするともう片方の手で私の首を締めてきた。


「特別に…お前に教えてやる

この世界にはお前達の言うがなぜいると思う?」


そんなの私が知るわけない…そう言いたいのに首を締められ恐怖で涙を流して言いたいことも言えない。

するとクククと笑った彼は締めていた首を少しだけ緩めて言葉を訂正すると言った。




「何故この世界に送られた存在が悪魔族と呼ばれたかわかるか?」



この世界に送られた存在…?

それが悪魔族と呼ばれる理由と原因?


必死に頭を回転させて答えを求めようとしても何も分からない


「わからねぇよな…そりゃあそうだ

俺様もわからねぇからな」


壁に着けた手を話して私の首からも手を離す彼は影のできた場所まで歩いて姿を消した。

何故自分でもわからないことを聞いてくるのだろうか…理解不明な人物だ


「あぁ、でもこれだけは言えるぜ」


しかし影に溶け込む直前に言ったこと…それは私の頭によーく焼き付いている










「悪魔族ってのは元々神がこの世界に送り出した存在なんだよ」
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