中年はチートなしでもなんとかなる -異世界に来たので欲望のまま生きてみる-

ながれ

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8章 中年は平和を望んでみる

第73話 迷うな!動け!って話

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作者の励みになります。
これからもご愛顧のほどよろしくお願いいたします。

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ニテとの優しい朝を迎えたとき、私は聖痕を見て少し固まってしまった。

しかしニテは私のぬくもりを確かめるように、しばらく二人でそのまま抱き合っていた。

私の頭の中で昨日の言葉がよみがえる。

<だったら難しく考えず全部救えばいい。あなたならできる。>

そう、間に合う。
今から王都に行って『特級』の聖痕の写しを見なくても、
もうここにあるのだから。

ニテのぬくもりと優しさを感じた後、ニテに聞いてみた。

「昨日は酔っぱらってしまってごめん。でもうれしいよ。」

「うん。私も、シュウさんが街を出た。って聞いた時に気づいてた。
私はシュウさんが好きなんだなって。」

「こんな中年でいいの?」

「こんな子持ちのおばさんでもいいの?」

二人でそういって見つめ合った後、なんだか自然に笑えた。
昨日まで悩んでいたのが、バカらしくなるくらい自然に。

それからもう一度愛し合った。ちゃんとゆっくり。
終わった後で、ニテの『洗礼』を紙に書き留めたいとお願いして
持っていた炭で手持ちの紙にそれを模写した。

お昼より少し早い時間。二人で冒険者ギルドの食堂に居た。
お酒に酔っていない状態でもう一度ニテに聞いてみた。

自分はまもなくブランディング伯の令嬢と結婚し、チェスターからはるか遠い場所の領主になること。
そして、自分もニテのことを好きになれること。

「シュウさんって相変わらずだよね。私は大丈夫。カリテもウリテもいるし、
二人とももう立派にこの町で頑張ってる。シュウさんさえよければ傍にいたい。
家の壁をコツコツ作っているときも、籠って服を作ろうとしているときも
そして魔法を練習するときも、いつも真っすぐで、バカみたいに没頭する。
だから私はシュウさんをほっとけない。子供たちの為じゃなく私自身がシュウさんと一緒に居たい。」

なんだかすごく照れ臭かった。
もともとお互いに最初にあったころは原始人みたいな恰好をしていた。
それがいつの間にか綺麗に洋服を着て、テーブルの横で椅子に座り、
愛を語り合っている。

お昼ご飯?を食べた後、ニテは一度教会に行くという事だったので、夕方にまた会う約束をした。
一度フェダの所に向かう。昨日頼んだ道具がどうなったのかを聞きに行こうと思ったからだ。

「おうシュウ。こんなんでいいのか?」

フェダは不思議そうに何に使うかいまいちわからない道具を見せてくる。
注文通り針の部分はすごく細いのに強い。最初は6本の針の依頼だったが倍の12本で組んである。
精密な道具なのにこれは僅か半日程度で作り上げてしまうフェダはやはり鍛冶師として素晴らしい腕を持っている。

私は満面の笑みでOKを出して道具を受け取った。この前作ってくれた刀でお礼は済んでるからと、
この道具に私は金貨1枚を払った。なかなか受け取らなかったフェダだが、私に根負けし受け取ってくれた。

家に戻り、ニテから模写した『特級』の聖痕を眺める。
そして、自分の左手にそれを炭で書き写す。

王都の図書館で見た本の中に聖痕の場所についても記載があった。
過去の人たちはその大きさや刻む位置などもいろいろと研究してくれていた。
結果から言うと『自分がどれくらいの等級の魔法が使えるか?』を隠す目的で
左胸に刻むのが主流になったようだ。
防具などでも心臓を保護する意味で左胸をほぼガードするから、
結果的に自分の魔法の等級がバレない。

実は見えてもいいのなら体のどこに刻んでも効果は変わらない。
魔力を通す経路が少し変わるので、聖痕に魔力を流し込むことができれば
どこでも構わない。大きさについても検証が行われ、
過去に背中に大きな聖痕を刻んだ魔導士がいたらしいが、
魔法の威力や魔力量は特に差はなかったようだ。
ただ、あまりにも小さいとため込まれる魔力量に限界ができてしまうため
推奨はしないという感じであった。

私は右利きなので左手の甲に刻むことを決めた。
別にみられてもいい。右手で自分で刻むので、刻みやすい位置を選んだ。

私はウカンデ神殿長からもらったインクにフェダの筆を付ける。
針先にインクが乗ったことを確認してそれを左手に炭線に突き刺していく。
インクが皮膚の中に残るように、少しづつ少しづつ。
痛いのだがポーションや回復魔法は使えない。
身体の回復と同時にインクが消えてしまうからだ。
自然治癒でしかインクは残らない。
だからひたすら自分の左手にインクを載せた針を刺す。

夕方になる頃、全体の20%ほどを刺し終えた。
赤く腫れあがり、血がにじんでいる。

ニテを迎えに行く。

私の左手も見てすぐに回復魔法をかけようとするもんだから必死に止めた。
それから、清潔な布で左手に巻いて一緒に晩御飯を食べた。
晩御飯のあと、ニテと一緒にカリテとウリテを訪ねた。

『お父さんになるかも。』と伝えたら二人とも歓迎してくれた。
カリテに関しては、まだ村だった時代から、私のことを父のように思ってくれていたようだ。
二人が小さいころに二人の父親はなくなってしまっているため、
『お父さんがいたらこんな感じなんだろうな~。』と私に付き合ってくれていたらしい。

一番笑顔になってくれたのはニテだった。

そのまま二人で家に帰り、お互いの体を拭き合ってからまた一緒に眠った。
ニテは腕枕が好きらしい。

ニテの前では針を刺さない。
なぜなら私がケガをしているのを見るとすぐに治そうとしてくるから。
翌朝もご飯を食べた後ニテを教会に送り、家に戻り図案を彫り進めた。
その日の夕方までに80%程度は彫り進めた。左手はしっかり腫れている。
自然治癒を高めるために弱い薬草を少しだけ塗って、冷やして熱を飛ばした。

またニテを迎えに行って、今日来た冒険者の話などを聞いてその日は家でご飯を食べた。
火や水はニテが用意してくれる。私は買ってきた食材を一緒に用意して一緒に料理する。
二人でゆっくりと眠った。二人で1枚の布をかけて抱き合って寝ると暖かい。

翌朝もニテとご飯を食べて送ってから残りを彫り上げた。
腫れる前に書いた炭線に沿って刻んだのでそれほど歪んではいないと思うが、
早速魔力を流そうとするとかなり痛んだので、腫れが引くまでは弱い薬草を塗って冷やした。

腫れが引いたのはそれから2日後、私がもう一度この世界に来てから3週間程度たっている。
もう一人の私は今頃、未踏破の上級ダンジョンに潜っている頃だ。
神殿に寄って、ニテに『今日から出かけるから明後日まで戻らないこと』を伝えた。

その際に風魔法を使って少し浮かび上がると。ニテはびっくりしていた。
今の私のレベルはようやく30といった具合。MP総量は100を少し切るくらい。

自分ひとりで風魔法を使いながら王都に行くには少し足りないといったところだ。
あまりスピードも出せない。その日はイタシーの宿屋に一泊した。

翌朝、早い時間から飛んで王都に着いた。さぁ自分の家を見に行こう!
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