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8章 中年は平和を望んでみる
第91話 この世界は夢物語じゃなかったって話
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これからもご愛顧のほどよろしくお願いいたします。
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私が王都から戻り、リースやソシアを通じて連絡をしてもらっていた。
キジュも同席してくれていたのだが、その際。
『私が元居た世界ではこれが元で戦争が起きたことがある。』
と言ってしまったが為に、キジュが早馬でルマンへと向かっていった。
庶民の生活が豊かになるのは治める側にとってもいい事なのだが、
『麻薬取締法』などがないこの世界ではもう既に『安息香(阿片)』が蔓延している。
取れる対策は限られるのだ。
私が無理やり行ったようにいきなりその商品を止めると多分本気で暴動がおこる。
キジュの考えでは税をかけるなどして何とか流通を減らす方向で考えているようだ。
まぁ領主が『禁止だ!』と言ってしまえば禁止にできるのだろうが、
税をかけて徐々に流通量を減らすのはいい案だと思う。
まさか『転生したら麻薬が蔓延する世界だった。』とかラノベ大好きな私としても勘弁してもらいたい。
確かに人間は快楽を求めがちではあるが、現世でも取り締まりが大変なものを『どうやって異世界でなくすのか?』なんて
私にも分からない。
「セシアが今日も朝から暴れていたわ。」
ソシアは自分自身、知らなかったとは言え、自分の身内や町の人を蝕む商品を卸していたことに落胆していた。
それに、セシアの看病も大変なのだろう。はっきりと疲れているのが分かる。
「うちの冒険者も何人か暴れたので地下牢で幽閉している。」
リースはそもそも『魔物に使うものを常用する』こと自体を禁止したほうがいいと思っているようだ。
薬草や魔物除けのお香などは普通に雑貨屋でも買えるのであるが、安息香を冒険者ギルドで管理すべきではないかと本気で考えているようだった。
リースの性格上『儲けたい』とか『独占したい』といった意味でなく単純に『暴れる奴を取り押さえる』という使命感なのだろうと思う。
しかし、桜花クラスの冒険者が麻薬の禁断症状で暴れるとか、はっきり言って想像したくない。
何となく『ファンタジーの世界』的にどこか他人事のような私だったが、リースやソシアにしてみればここが現実世界な訳であり、
これからも生活していく世界。『ファンタジーに麻薬なんて登場しない。』とどこか思い込みがあったのかもしれない。
奴隷や、身分制度が平気で存在する世界。人間の欲望もより素直に反映される。
酒で溺れる人もギャンブルに溺れる人もいる。戦闘狂で血を見るのが好きという人もいる。
そんな世界で、なぜか麻薬だけは別の次元のように感じていた。
この世界は夢物語じゃなく、みんなが生きている世界なんだと実感した。
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キジュが早馬で飛び出してから3日。キジュがチェスターに戻ってきた。
『安息香』などの趣向品には税が適用できるという事になり、安息香の値段は以前の4倍ほどになるようだ。
これで少しは蔓延するスピードもゆっくりになってくれればいいのだが。
もう一つ朗報がもたらされた。桜花のメンバーが帰還したのである。
町は約27日にもおよぶ探索を終了してきた桜花メンバーを英雄のように称えた。
結果的に言うと今回の探索では最深部には到達しなかった。
最終到達階層は143階。そこでかなり苦戦したため一旦街に戻ることにしたようだ。
ヒュドラの石化対策以外では、麻痺対策や精神耐性など、かなりの準備をしていたにも関わらず苦戦したようだ。
伊達に50年物のダンジョンではないという事だ。
最終到達階層143階は今までの記録を大幅に更新しているものであり、
この国でも有数の深度のダンジョンであることは間違いない。
キジュはみんなの帰還を喜び、阿片騒ぎはとりあえず置いておいて、街はお祭り騒ぎとなった。
『120階層以上でエール無料!』と掲げていたお店はある意味繁盛している。
140階層オーバーという数字にある意味、開き直ったように『店にあるエールを全部出せ~!』と
ほぼヤケクソ状態である。
町の人々だけではなく、最近安息香の件でギスギスしていた人々も、
『桜花の帰還』だけは別物という事で、みんな肩を組み合いながら、桜花の噂話に花を咲かせている。
今回の探索でもたらされた報告はもう一つあった。それはチェスターのダンジョンが思いのほか高レベルであること。
長年、上層だけを狩っていた事も要因なのかは分からないが、
桜花のメンバー的には『他のダンジョンより10階層分くらいレベルが高い。』という評価だった。
それはその分、魔素濃度が高いことを意味しており、最深部がどれほどのレベルになるか想像できないという状況のようだ。
桜花としてもしばらくの休養をとって再度リベンジするようだ。
流石のSSランクパーティ、沢山の貴重なアイテムを持っているらしく、次回は141階層に転移してからのスタートとなるようだ。
『次回の探索はシュウさんも同行してくれ!』とほぼ強引に連れていかれそうになったが私は頑なに断った。
断ったのには訳はがある。
私の戦い方がハッキリ言って未熟な力押しであることも理由の一つではあるが、今朝もう一つ大きな理由ができてしまったからだ。
フランシスからチェスターのギルドに連絡が来た。
『本日、王宮よりシュウイチ様宛の招聘状が届きました。』
水晶通信によってもたらされたその連絡は、多分金貨数枚の費用をかけたのかその日のうちにもたらされた。
それは、私の決戦の日が近いことを示していた。
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