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8章 中年は平和を望んでみる
第92話 ちょっと先のことを考えるって話
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これからもご愛顧のほどよろしくお願いいたします。
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フランシスから連絡が来た。シュレームがちゃんと指示通り連絡をしてくれたのだ。
当然、もう一人の私もいる訳で、彼女にとっては『何故?』という感覚もあるかもしれないが、
忠実に依頼を実行してくれたことになる。
今日、『招聘状が来た。』という事なので、もう一人の私がリリスと会うのはちょうど1週間後。
桜花のメンバーが次にチェスターダンジョンの捜索を行うのが5日後という事だったので、
私はどうしても同行することはできなかった。
今から1週間の時間はあるが、はっきり言って私の準備は万端である。
隠密も熟練度を上げ、今では下級冒険者の前を素通りしても気づかれることはない。
先日のリーデンス爺さんとの会談の時に見た認識阻害魔法が再現できればかなり都合がいいのだが、
見ただけではその魔法の解析までは行えなかった。
キジュの屋敷で桜花のメンバーと別れ、今は教会に向かっている。
生産者ギルドのソシア達は相変わらず阿片の対応を行ってくれているが、
ヴェーダ商会自体が売ることをやめようとしないので、今はどうしようもない。
キジュがルドルに行ってくれた増税対策でルマン領での被害拡大は多少減るだろう。
お金が無くなって犯罪を犯す者や身売りをする者もちらほら出てきた。
ヴェーダ商会は本当にどうやって責任を取るつもりなのだろう?
まぁ『安息香の所為ではない!』と言い張ってシラを切る以外に逃げ道はないだろうが、
これから徐々に『安息香を買うお金欲しさの犯罪』が多発するだろうから、
ヴェーダ商会の崩壊は時間の問題である。
一番厄介なのが貴族なのだが、自分の身内が無気力になったり暴れたりする姿を見れば、
いずれ安息香の危険性には気づくだろう。
教会では『桜花が143階から戻ってきた。』という情報もあり、
沢山の冒険者がその功績に追いつけと奮起しているようで怪我人の治療依頼が絶えない。
ニテもまだ妊娠初期という事もあり、見た目は変わらないが、
1日に1回以上は魔力枯渇でぐったりとしているようだ。
ニテ本人が『ギリギリまで働きたい!』と強く要望するので、私はあえて止めない。
金銭的な問題であれば、この前のダンジョン素材の収入で十分に贅沢な暮らしができる。
しかし、それ以上の『使命感』のようなものがニテをやる気にさせているのだろう。
私が教会に行くのはそんなニテの様子を見に行くことと、セシアの治療の為だ。
セシアは自分に襲ってくる禁断症状と戦っている。
家以外では教会にいることになっている。
生産者ギルドのサブマスターは休職中である。
身体的な痛みはほぼないが、乾きや疼きを抑えるには教会にいる方が落ち着くという事らしい。
教会の神聖な雰囲気に包まれるだけでも多少の精神的効果があるのだろう。
ウカンデ神殿長の毒魔法は医療としても利用できるため非常に有効である。
もしかしたら、セシアの症状緩和などもできるようだ。
「こんにちは~。」
「おぉシュウさんかい。」
ウカンデ神殿長が珍しく回復作業を行っている。
最近ではシズンデさんもニテも闇魔法を覚えたのでほとんどの神殿業務を二人に任せていたはず。
「あれ?神殿長、自らが回復奉仕とは何かあったんですか?」
「ちょうど二人とも休憩が必要になったのでな。」
私もウカンデ神殿長を手伝う形で回復魔法を次々とかけていく。
なるべく重症な人を優先してこなしていく。
程なくして、回復依頼がひと段落したので奥の住居スペースでお茶をいただく。
「あら貴方、手伝いに来てくれたの?」
「ああ。体調は大丈夫か?」
「はい。少し休憩させていただきましたので大丈夫です。」
3人でお茶を飲んでいるとシズンデさんも合流した。
「ニテさんには本当に感謝しております。」
「いえいえ、私なんてまだまだですよ。いつも足を引っ張ってばかりで・・・」
「ほっほっほ。まぁうちのシズンデも来年には神官職の講習を受けられるじゃろうて。」
二人とも順調に魔力総量が上がってきている。
闇魔法も覚えたため、一応神官が行う業務的な部分はクリアできる。
あとは、エリス教としての教義理解や説法などの講習は受けなければいけないだろうとのこと。
<いっぺん爺さんに頼んでエリスさんを教会に連れてきたらどうなるのだろう?>
信仰心というのはある意味大事なので、あえて王女ファンクラブの延長であってもそこは尊重する。
何より、自分の妻の勤務先なのだから、あまり阻害するようなことはしたくない。
リリスのような自己中な偽善者には制裁を下すけど・・・
夕方までニテと教会の業務をお手伝いして一緒に家に帰る。
今ではこの暮らしも私の大切な暮らしだ。
しかし、サーシャ達を見捨てることもできない。
夕食を食べてニテと一緒にお風呂に入り、就寝に就く。
私がブランディング領に行くときには、ニテはついてきてもらうようにお願いしている。
慣れない環境での出産は大変だろうから、なるべくフランシスとチェスターを行き来しやすいようにしなければいけない。
本当ならリリスへの復讐など辞めてこのまま暮らすことも考えたが、
その場合、ブランディング領の民たちはサーシャが引っ張っていかなければいけない。
お飾りでも、居たほうが周りのけん制になることは事実だ。
一応正妻はサーシャ、ニテは側室扱いになるのだが。私たちが誓い合った約束は絶対に果たしたいと思っている。
まだサーシャには何も確認を取っていないので、正直不安しかない。
これから生まれてくる子供の為にも、できる限り平和で誇れる暮らしをしていきたいと思い、
ニテを抱きしめながら眠った。
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