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第2章 タカギ争乱
第44話 (閑話)シズネの長い2日間(1日目)~シズネ視点~
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これからもご愛顧のほどよろしくお願いいたします。
今回は少し短いですが、閑話をお送りします。2話構成です。
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ヤストを送り出して3日。
わしたちは一路タカチに向け移動していた。
ヤストのおかげで素材は潤沢にあるものの、
人間何もしないというのもよくなかろうという事で、
今まで通り、昼は狩猟・斥候を行い。
夕食はみんなで食べるという生活を行っていた。
「いよいよ明日の夜か・・・」
明日は街のみなに休暇を与え、夜の襲撃に備えるように言付けてある。
執務室の机の下、足元には、この3日にわしが飲み干した
上級マナポーションの瓶が無造作に転がっている。
わしのスキルは予知。
魔力を消費し、対象となる人物の少し先の未来を見ることができる。
しかし、自分の未来を見ることはできない。
自分の未来が見えないことはもうずーっと前から分かっていた。
ただ、ブライアントやマイコなど、比較的自分に近しい人間の未来を予知することで、
間接的に自分の未来も理解できる。
手元にはタドコロで購入した"吸呪の結晶"が一つだけ木箱に収められている。
「これも運命というものなのかの~。」
木箱に入っている結晶は1つ。
ブライアントやマイコの状況から分かっていることは、
襲撃者の中に、呪いの付いた魔剣の使い手がいること、
襲撃者の数などはわかっておる。
「知ってはいても回避できないものもあるもんじゃて。」
わしは静かにその木箱を机の上に置く。
タドコロに到着する4日ほど前、
ユリがおもしろいリカントを拾ってきてくれた。
わしが昔見たブライアントの未来。
その最後の1ピースとなる人物だとは、その時は気づかなかった。
その若者は名をヤストと言うた。
わしがこの世界に紛れ込んで、最初に産んだ子に付けた名と同じじゃった。
しかし、この世界の衛生環境は悪く、医療がない代わりに魔法に頼りすぎておった。
程なくしてわしの子はその小さな命を散らしてしまう。
わしが王城でかくまわれて居る間、多くの物の未来を予知した。
ある者は落ちぶれ、またある者は過去の贖罪を行う。
今の世界では笑顔で死ねる物ほど稀なものはない。
魔物に食われ、仲間に刺され、子に毒を盛られる。
そんな世界で出会ったのがブライアントじゃった。
王国騎士団団長という戦いに身を置く身分ながら、
そのものの最後は多くの人々に囲まれ、皆に花を手向けられ、
それはそれは幸せそうな笑顔じゃった。
そんな未来を見てしもうたからなのか、
はたまた偶然なのか、わしはブライアントと恋に落ちた。
しかしそこは王国。王城。並みの者なら忍び込むことも、
忍び出ることもかなわん。
そんな王城での暮らしに辟易としてきたころ、
わしの元に一報が舞い込んだ。
ブライアントが魔物との戦いで負傷して戻ってきたというのだ。
わしは急いでブライアントを訪ねた。
そこには左足を失って、ベッドで寝かされるブライアントの姿があった。
たくましい胸板と太い腕、ベッドの傍らには血が固まって黒い模様のついた
聖騎士の鎧と盾が置かれていた。
傷は魔法で癒えても足は戻らない。ましてや心の傷はいやせない。
それから数か月、ブライアントは戦いの日々を捨て去るため、
酒におぼれ、女に溺れ、暴食に溺れた。
それでもわしはブライアントの傍におろうと決めた。
ケガをしてから半年、ブライアントは王国騎士団を退団することを決め、
奴の気持ちの整理がついたころ、わしからアプローチして
新造の移動都市タカギへと誘いこむことに成功した。
あれから20年。わしはそのブライアントと一緒にタカギという街を作った。
多くの若者たちがこの町に集った。
いつしかブライアントの夢は、
「この町を移動都市で初めての千人都市にする!」
という目標に代わっていた。
全てわしの狙い通り、というか見てきた予知のとおりじゃった。
まぁいつも、女の子に泣かされていたカザンが、
今では立派な斥候部隊隊長をやっておるとは、
未来が予知できるわしでも笑みがこぼれてしまう。
しかし、わしに明後日は来ない。まぁもう十分に生きた。
悔いがあるとすれば、後に残る家族ともいえるタカギの面々が悲しむことじゃ。
ある者は暴れ、ある者はふさぎ込む。
わしにできることはそんな家族たちに手紙を残してやることだけじゃ。
それぞれに対して、次に何を考え、何を思い、何を行うのか。
わしが言うた通りにする必要など本当はない。
仮にそれをせんでもあまり状況は変わらん。
それでもせめて、悲しみが和らぐよう、苦しみが軽くなるようにしか
わしは言葉をかけることしかできない。
ユキマサの将来を魔力が持つ限り先まで見通す。
そして、わしなりの言葉をあやつに残す。
同じようにこの10日間。毎日、誰かに手紙を書き続けておる。
タドコロでみた"吸呪の結晶"が1つだけだった時に、
わしは自分の未来を理解した。
ブライアントと共に攻撃を受けて、呪いを解除できずに死ぬ。
この"吸呪の結晶"はブライアントに使われるべくそこに存在している。
わしもまた、このタカギにおる多くの者の為におったのだと。
今ならハッキリわかる。
食べて寝て過ごす、長い人生で多くの日々を無駄にして過ごしてきた。
この世界に来て、他人の未来を腐るほど見た。
その中で愛した人。愛する家族たち。
その者たちの為におれること、おれたことを幸せに思える分。
わしも年を取ったというものであろう。
この町におる86の人。
小さな子供もおれば、ブライアントのようなじじいもおる。
皆にわしは言葉を残したい。
そして、わしがわしであったことを残したいと思う、
最後の悪あがきなのかもしれない。
また一人、未来を予知して、手紙をしたためる。
MPも残りわずかじゃし、少し眠ろう。
もう自分の部屋は片付けてある。
明日目覚めれば、わしの最後の1日となる。
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