現実だと思っていたら、異世界だった件

ながれ

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第2章 タカギ争乱

第45話 (閑話)シズネの長い2日間(最後の日)~シズネ視点~

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これからもご愛顧のほどよろしくお願いいたします。

閑話の2話目です。お楽しみいただければ幸いです。

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朝、執務室で目覚める。
この年になると朝には体中がバキバキと固まっておる。
まぁとは言っても、3時間ほどしか寝ておらん。
まだまだ外は暗い。

人の体とは不思議なもんじゃ、僅か3時間でも、睡眠を必要とし、
このしわ枯れた体にも、少しづつ温かみが増す。

わしが持っておったお金のすべてをつぎ込み用意した上級マナポーション
なんとか全員分の予知を行うのには足りそうじゃ。

あと残り数名分の予知を朝食までに行うとしよう。

・・・・・

全員分の手紙と、わしの死後数日間のやるべきことは全てまとめて書き終えた。
わしにとってこの朝日が、最後に見る朝日となる。

わしは4階の屋上に上がり、朝日を感じる。
少し冷たい風は老体にはこたえる。しかし心地よい。
頭の中がすっきりして、今までにないほどに体調がいい。
まだ日本人として過ごしていた20代に戻ったかのような清々しさ。

今日はちょいとばかりサルサに無理をいって朝食のメニューをいつもと変えておる。
まぁわしの分だけじゃが、ちょっとわがままが過ぎたやもしれん。

まぁタドコロで何とか金にものを言わせて買うた材料じゃから、
サルサなら何とかしてくれるじゃろう。

ゆっくりと食堂に向かう。
給仕のマリオネットが朝食を運んでくれる。
わしが数十年、機会が訪れず食べたいけど食べれなかった、
焼き魚と納豆、みそ汁、卵焼きとご飯。
子供の頃、家で食べた朝ご飯をそのまま映したかのような朝食がそこにあった。

『おはようシズネ先生、注文通り作ってみたがどうだい?』

「サルサよ、ありがとうのぉ~お主は最高の料理人じゃの~。
 本当にありがとうの~。」

『おっおう!そんだけ喜んでもらえたんならこっちも作り甲斐があるってもんよ。
 しっかり食べて今日の泥棒猫どもをしっかり退治しような!』

サルサが厨房に戻っていく。
子供の頃は食べる専門であったあ奴が、今では作る方に回っておる。
何とも刻が経つのは早いものだと感じる。

懐かしい母の味。この上なくおいしく感じる。
とはいっても、急いでは食べれない。少しづつ、少しづつ食べ進める。
朝食にいつもの3倍ほど時間がかかってしもうた。

斥候部隊の子らや、狩猟部隊の子たちが、各々おはようの挨拶をしていく。

「はい。おはようさん!」
わしが皆にかける言葉はいつものと変わらない。

ゆっくりと風呂に浸かる。膝や足腰が軽くなって本当に気持ちいい。
体の芯からあったまり、しわ枯れた肌に僅かばかりの潤いを与えてくれる。

風呂から上がり、物資保管庫に行ったがブライアントはおらんかった。
何やらカザンとまた悪だくみでもしておるのじゃろう。
本当にあの人は出会った頃から変わらず、お茶目さんじゃ。

時間もあることじゃし、色々と見て回る。
1階の魔道部隊の部屋を見た時にはこの前ヤストがアダマンチウムスライムを倒しまくって
金属光沢のする部屋が1つ出来上がっておる。ほんに人騒がせな奴じゃ。

しばらく子供たちが遊びまわる様子を眺めていると昼になったが、
あまり腹も減ってないので、そのまま2階の田畑と牧場を眺めに行く。
わしはこののどかな風景が大好きで、1日中マリオネットがせっせと畑仕事をしている姿を眺めたりして居る。
まぁ他の住民はあまり2階には来ないので、ゆっったりとした時間が流れる。

「さりとてわしの最後の1日はなんと幸せな日々じゃの~ほっほっほっ」

ほのぼのとした田舎のような風景を眺めながら飲むお茶がいつもに増して美味しかった。

夕食の時間になり、いつものように皆で食堂に集う。ヤストを除いて。
少しばかり肉が多いが、これもサルサの気合の入り様といったところじゃろう。

夕食を食べ終わり、みなに今夜の作戦がマイコから伝達される。
わしは作戦にはそもそも組み込まれておらんが、
やはりブライアントの傍に居るのが一番じゃとおもうて物資保管庫に向かう。

『おりょ?おぬし儀式室に行かんのか?』
ブライアントがわしが物資保管庫に来たことに驚き声をかけてきた。

「ほっほっ。あんな狭い部屋にそうそう人数は入れんよ。
 それにここが一番激戦になるんじゃから、回復役の一人もおった方が良かろうて。」
前もって準備しておいた言い訳をさも今思いついたように伝える。

『ほっほっほっ。』
ほんにブライアントの声は聞いてて心地よい。

それからしばらくはみな準備を整えて、雑談をしていた。

深夜・・・

『お客様が来なすった!』

なにやらカザンが侵入者に気が付いたようだ。
いつもなら鈍いほうなのに「こういうところは気づくのが早いのか?」と思うておったら。
横でブライアントが、

『今日の昼に侵入者感知の結界を少々張っておった。そこに引っかかったんじゃ。』

と解説を入れてくれた。まぁなんとも悪だくみが好きな二人じゃて。

ここへの侵入者は8人。さりとてこちらは20人以上で待ち構えておった訳じゃから、
相手もたまったもんじゃない。次々と戦闘が始まる。

『うぉりゃ!』
カザンが大剣を振り回す。

『しゃ!』
ユキマサが双剣で切りかかる。

『せい!』
片足が義足のブライアントもさすが元王国騎士団長。
剣と盾で応戦している。

『おいぼれめ!まだ亡霊のごとく我らに敵対するか!』
敵もなかなかのもの1対3という不利な状況ではあるがなかなかどうして
手練れが揃っているようだ。

わしは、ヒールリジェネと身体能力向上系のバフを味方にかけて回る。
傷を負ったものが以上ればすぐに回復する。

『そこのババアはさてはタカギのシズネだな!リカントは亡ぶべし!クレインの手先め!』

刺客の一人がわしに気づいたようで組かかってくる。

『おいおい!俺を無視すんなよ!』
すかさずカザンが間に割って入る。

背後からブライアントがカザンの助太刀をする。
敵はたまらず距離を取る。
距離を取らせまいとブライアントが詰め寄る。

この光景こそ、わしが予知で見た光景じゃ!

『ブライアントーーーーーー!』
わしの体は勝手にブライアントの元に駆けだす。

『うっ!』
ブライアントが敵を前にして動きが止まる。

『暗器じゃ!どこかに暗器使いが紛れておる!』
そうブライアントが叫んだ瞬間。

---バシュ!---

敵が持つ黒色の剣がブライアントを切る!

「暗器?」
一瞬、ブライアントの言葉と目の前で起きた光景が組み合わず思考が停止する。

『リカントの首、もらったーーーー!』
敵の刺客が右側からわしに襲い掛かる。

わしは自分が切られようとする刹那もみじんも防御せずにブライアントに回復魔法をかけた。
治らない。既に呪いに侵されている!

『あぶない!』
右側からの刺客の間に一人の女が割り込む。
いや!これはマリオネット!ヒマリというマリオネットだ!

---バン!---
刺客が放った一撃を、ヒマリは身を挺して止める。
その一撃が胸の魔石に達してしまったのか、目から徐々に光が消える。

『てぇぇぇぇい!』
狩猟部隊のヒバリが武器を抑えられた刺客の首を撥ねる。

ブライアント!
わしはそのままの勢いでブライアントに駆け寄る。

『来るなーーーー!』
ブライアントが叫ぶ。
その瞬間、少し先の方の左前方に、何やら筒を構えた刺客が潜んでいることに気づいた。
呪いは剣ではなく、あの筒から放たれる暗器によるものだったのだろう。
わしが見た予知では剣に切られる瞬間の映像が強すぎて、暗器の存在までには気が付かなかった。

---ズゥン!---
左胸に針のような何かが刺さる。
痛みはさほどないが、禍々しい気を放っている。呪いだ。

わしは最後の力で、左前方にいる暗器使いに雷魔法を食らわせる。

『うゎぁあ!』
暗器使いは痺れて崩れ落ちる。
目の前にはブライアントを切りつけた刺客。
振るわれた剣が肩に食い込むがそのまま相手にしがみつく。

わしが死んでも他の者たちは絶対に死なせん!

わしの体内に残る全魔力で刺客もろとも雷魔法に包まれた。
物資保管庫が一面光り、放電の凄まじい音が鳴り響く!

ブライアントを切りつけた奴は丸コゲじゃ!ざまぁみろ!
しかしわしの傷も致命傷じゃ。
もう少し、戦いの訓練でもしておけばよかったの~。

体中の力が抜ける。もう相手にしがみついてもおられん。
不思議と痛みはない。まぁこの程度なら普段の膝の痛みの方が何倍もいたい。

『シズネーーーーー!』『先生ーーーーー!』

目の前には、わしに向かって手を伸ばす血だらけのブライアントが見える。
徐々に視界が狭くなっていく。もう目を開けていられない。

わしゃ、ほんに、あんたを好きになれてよかった・・・よ
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