最推しの悪役令嬢に転生した私は悪事だってやってみせます!

僧侶A

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29話

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 「というわけで、今回の勝利は引き分け!!」

 空気の塊が溶け、視界が完全に晴れたタイミングでクリストフがそう宣言した。

「流石に無理だったか、まだまだ敵わねえわ」

「私の防御魔法がもう少し強ければ……」

「あんなん一瞬で防御しろってのは無理だろ。俺も防御を手伝うべきだったわ」

 ジュリアとモルガンはあと少しで勝てたかもしれないと悔しがっていた。

「やったな二人とも!!」

「流石ですわ!」

「次は勝ってくれ!!」

 一方で二人が負けると思っていたらしいクラスの皆は引き分けたことでかなり盛り上がっていた。

 2人の特訓の結果なのは分かるし、喜ばしいことだとは思うのだけれどかなりショックだ。

 まさかこの最高の肉体で引き分けてしまうなんて……

 2対1だったけれど、私の敬愛するオリヴィア像の維持のためには絶対に勝たなければならなかった。

「強くなったわね」

 そんな悔しい気持ちを必死に抑えて私は二人を称えた。

「ありがとうございます」

「ありがとよ、あの作戦なら勝てると思ったんだがなあ」

「まあ、引き分けに持ち込めただけ良しとしましょう。それにこんな形で勝利しても仕方ないですし」

「そうだな、俺たちの考えた作戦で勝たねえと意見ねえな」

 俺たちの考えた作戦……?

「もしかして今回の作戦って……」

「はい、マルゲリータさんが考えたものです」

 そう言われてクラスの皆が居る方を向いたら目の前にマルゲリータが居た。

 いつの間にやってきたのこの人。気配とか全くなかったけど。

「残念ながら勝つことは出来ませんでしたが、どうでしたか?」

 確かにこの人なら納得だわ。エドワードには勝てないとは思うけど、私よりも遥かに頭良いし。

「凄く面白かったわ」

「そうですか、ありがとうございます」

 マルゲリータの質問に無難に返答したら、マルゲリータは何やら面白そうに笑っていた。

 ——まさかマルゲリータ、私が油断することまで織り込み済みで作戦組んでいたりしないよね?

 いやいや、そんなはずはない。だって私は完全無欠のオリヴィア様としてやってきたのだもの。

 私は頭の中によぎった嫌な想像を振り払い、オリヴィア様として振る舞うことに意識を戻した。

「とりあえずパーティ会場に戻ろっか。次生徒会長が使うみたいだし」

 盛り上がっているクラスメイトや私達を取りまとめるようにクリストフが大きな声で言った。

 また生徒会長が使うんですか。あの人訓練しすぎじゃない?

「そうなのね、なら戻りましょうか。ジュリア、着替えに行きましょう」

「分かりました」

 そして私達が女子更衣室に向かおうとしたら、

『結構初歩的な作戦だったんですけどね、オリヴィア様?』

 と私だけに聞こえる声でマルゲリータが囁いてきた。

「どういうことかしら?」

 私はマルゲリータの方を向き、聞いてみた。

「そのままの意味ですよ。オリヴィア様?」

 そう答えるマルゲリータは丁度いいいたずらの対象を見つけた時のような、非常に悪い顔をしていた。

「そう」

 これ絶対中身がオリヴィア様じゃなくてただの凡人だってバレてるよ。絶対分かっていたから引き分けにするための作戦選んできた奴だよ。

『別に何かをするわけではありませんから、安心してください』

 全然安心できないよそのセリフ。絶対後で何か要求してくる奴じゃん。

「それでは」

 オリヴィアはそれだけ言い残して訓練場から出て行った。

「何だったんですか?」

 何も知らないジュリアは不思議そうに尋ねてくる。

「大したことじゃないわ。気にしないで」

「分かりました」

 私がそう答えるとジュリアは納得していない表情ながらも問い詰めるのを止めてくれた。

 やっぱりすごくいい子。


 その後更衣室で元の服に着替え直してパーティ会場に戻った。


「これは……?」

 パーティ会場に着くと、そこには超巨大なケーキが鎮座していた。

 それはまるで結婚した男女にのみ入刀が許されるアレのような……

「別れのケーキですよ。親しい友人との別れには必須ではないですか」

 なんて考えているとジュリアが説明してくれた。

 この見た目でウエディングケーキじゃないんかい。

 1mぐらいの高さで生クリームに包まれていて赤い果実が所狭しと散りばめられているケーキはウエディングケーキ以外の何者でもないでしょ。

 そもそも別れのケーキってなんですか。ゲームやってた時は聞いたことないんだけど。

「ああ、そうね。別に会おうと思えば会えるから別れという感覚が無かったのよ」

 だけどそんな事を気取られるわけにはいかないのでそれっぽい言い訳をする。

「そう言っていただけると嬉しいですね」

 ジュリアは少し嬉しそうに笑った。よし、勝った。

「マルゲリータさん!こっちだよ!」

 戻ってきたことに気付いたクリストフが私を呼んでいた。

「ええ」

「はいこれ」

 そしてクリストフの元に着くと、何故か刃渡りが2mを超える超巨大な剣を渡された。

「ありがとう」

「はい、切って!」

 ああ、デカい刃物で切るのはウエディングケーキと同じなのね。

 初めての共同作業をしてくれる相手は居ないらしいけど。

 私は剣で机ごと切ってしまわないように気を付けつつ、ゆっくりとケーキ入刀を済ませた。

「ふう」

 無事にケーキを一刀両断し、剣を引き抜くとクラスメイトが拍手していた。

「じゃあ取り分けましょう」

 と近くで見ていた女性陣がてきぱきとケーキを取り分け始めた。

 全員にケーキが行き渡った後、皆と談笑しながら仲良くケーキを食べた。




「これで楽しかったパーティは終わり。というわけで最後にオリヴィアさん、何か一言どうぞ」

 どうやらケーキを食べきったことで予定されていた内容は全て終了したらしく、締めの一言を任された。

「そうね。最初に言いたいことは言いつくしたのだけれど…… とりあえず皆、今日は私の為に集まってくれて本当にありがとう。とても楽しい時間だったわ。私は学校を離れてしまうけど、あなたたちは後1年と少しの間学校生活が残っているわね。だから私の分も楽しんで頂戴。そしてその先、卒業したら学校を離れて自分の領地に戻るか、どこかで働くかを選ぶことになるでしょう。その際にもし、何か困ったことがあればいつでも私に相談して。あなた達の友人として、この国の王妃として絶対に助けてあげるから。覚えておいて」

 もしかしたらエドワードにやめなさいと言われるかもしれないけど、その時は土下座しよう。

 エドワードに嫌われるのは嫌だけど、大切な友人達を見捨てるのも同じくらい嫌だからね。

「ありがとう!!」

「大好きです!!」

 私の一言が終わると、皆嬉しそうに拍手をしてくれた。私は本当に恵まれているよね。

「じゃあ最後に、フランチェスカさん」

「はい。これは私達からの気持ちです。今までありがとうございました。これからも頑張ってください」

 クリストフに言われて出てきたフランチェスカは、そう言って花束と宝石が散りばめられたドレスを渡してきた。

 国が変わっていく最中でこんな高級なものを買うのは大変だったでしょうに。

「ありがとう、大切にするわ」

「は、はい」

「最後まで一緒に居ることが出来なくてごめんなさいね」

 私はフランチェスカの頭を優しく撫でた。

「オリヴィア様……」

 涙目で見てくるフランチェスカを抱きしめた。

「良いのよ」

「オリヴィア様!!!」

 それで我慢の限界が来たようで、わんわんと泣き出した。



 それからしばらく経ち、フランチェスカが泣き止んだのを見計らって手を離した。

「じゃあ、行くわね」

「はい」

「また会いましょう」

 私はそう言い残し、その場を去った。



「待ってもらわなくても一人で帰れたのに」

 私は学園の外で待ってくれていたエドワードに声を掛けた。

「大して待っていないから問題ないわ」

「大してって……軽く3時間は超えていたと思うんですが」

「私はあの場に居なかったけどパーティ自体は最後まで見ていたから。そこまで退屈はしなかったわ」

 ああ、そういうことですか。

「それより楽しかった?」

「はい、最高に素晴らしい時間だった」

「なら良かった。じゃあ帰りましょう」

 そして私は学園に来た時と同様にお姫様抱っこをされて王宮にあるエドワードの部屋まで連れていかれた。




「これからなんだけれど、私達はしばらくの間国外に行かなければならないわ」

「国外、ですか?」

「ええ。正式にこの国が変わったことを周知させて、新たに国交を結び直す為にね」

「でも、私は国外の事は分かりませんよ?」

 国内ならばゲームで多少は描写されていたから知っている部分もあるけれど、国外に関しては名前すら出てこなかったから。

「そうね。役目が終わったら地球に帰ってしまうだろうと思って入れなかったし」

「入れる?」

「ええ。あなたが地球でやっていたゲームは私が作ったものだから」

「ええ……」

「宝くじを当選させることが出来るのだから地球でゲームを作って販売することも出来るに決まっているじゃない」

「確かにそうだけれど……」

 絵を描いて音楽を作ってプログラムを書いているエドワードはちょっと想像したくない。色々と夢が壊れるので。

「とにかく、国外に私と共に来てもらうから」

「何も知らないけど大丈夫かな?」

 今まではある程度前提知識があったからどうにかなってきたけれど、これからは全くの未知の世界に飛び込むことになる。

 ある意味ここからが真の異世界転移と言っても過言ではない。

 ぬるま湯に浸っていた私にどうにか出来るかな……

「大丈夫よ。これまでとは違ってあなたの隣にずっと居られるから」

「ずっと?」

「ええ。だから困った時は常に助けて上げられるし、いざという時は」

 そういってエドワードは指を鳴らすと景色が変わり、

「こうやって入れ替わる事も出来るから」

 目の前にオリヴィアが現れた。

「だから、着いてきてくれるかしら?」

「はい!もちろんです!」

 そもそも出来るかどうかなんて考える必要なんて最初からなかったわ。

 だって最推しが私に頼ってきたんだから。





 最後まで読んでいただいてありがとうございました。

 せっかくネットに小説を投稿しているわけだし、悪役令嬢を書いてみよう!みたいなノリで書き始めたこの話ですが、想像以上の方に読んでいただける結果となり非常に嬉しかったです。

 これからの展望も存在はするのですが、書き始めの段階で予定していたここまでで一旦区切りとさせていただきます。

 それではまたどこかでお会いできるのを楽しみにしております。
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