とても優しい魔王様も流石に堪忍袋の緒が切れました。だから世界征服をして自分の身をしっかり守りましょう。

僧侶A

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第3話

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「魔王よ!私と戦え!」

 何やら名指しでこちらに向かってくる人間達がいた。

 かなり煌びやかな装備を身に着けており、いかにも国から支援を受けているといった感じだ。

 勇者御一行だな。

 人間視点からすると、敵から国を守ってくれるヒーローだ。

 しかしこちらからすると別に戦う意思が無かったとしても勝手に生まれてきて、使命だからと魔王の討伐に向かってくる厄介な人間だ。

 今魔族が人間に攫われたり酷い仕打ちを受けたりしている元凶でもある。

 勇者なだけあって無駄に強いんだよな。人間最強の男が魔王を倒そうと頑張るから人間は魔族に何やっても良いと調子に乗る。

 そのくせして殺してもすぐに新しい勇者が生まれるので意味がない。

 寧ろ勇者が死んだら敵対意識が強まるから面倒なんだよなあ。

「新しい勇者か」

「そうだ。私は水の勇者。ハイドラだ」

 今回は水属性か。

「我の味方になる気は無いか?それなりの待遇を保証しようではないか」

「そんな言葉に勇者が乗るわけがないだろう。舐めているのか」

 ですよねー

「それならば仕方がない。纏めてかかってこい」

「一人で相手取ろうってか。舐めてるのか?」

 巨大な盾を持った騎士が襲い掛かってきた。

「ふむ」

 その後ろから勇者と魔法使いが魔法を放ってくる。

 振り払うために軽く魔法を放ち、その場から離脱する。

 しかし、その背後に迫っていた者に攻撃を仕掛けられる。暗殺者か。

 だが、気づいてしまえば対処は容易い。

「よい連携だ。だが、私とは相性が悪かったな」

 空中に飛び、騎士と暗殺者の攻撃範囲から逃れる。

 勇者と魔法使いは魔法を使い、空中に飛び攻撃を仕掛けてくるが、浮遊ではないため、安定しない。

「食らうがよい。ミクスウィンド!」

 上から範囲魔法を放つ。

 このパーティは騎士の防御力の影響で、単体の敵には滅法強い。

 しかし、騎士が庇えない範囲となるとそれが完全に瓦解する。

 つまり、この魔法で勝利だ。

「この程度で我に挑んできたのか」

 魔法により大きく土埃が舞い、それが晴れた時には、騎士以外残っていない。


「残念だったな。その程度で私たちは負けない!」

 現れたのは、水を纏った龍と、それに乗った勇者一行だった。

 これまで戦力を隠していたのか。

 しかも、

「龍にエンチャントを施せるのか。今回の勇者はなかなかに強力だ」

「お褒めに預かり光栄だね」

 恐らく龍の本来の属性は風。それに水属性が重なることによって、

「オラ!」

 氷が生まれる。それは土属性では不可能な、空中での安定した足場となる。

 これは、空中でのアドバンテージを完全に失ったことと同義。

 ただ、地面と違って3次元的な移動が可能になるため勇者と魔法使いの攻撃は避けやすい。

 しかしそれはこちらも同じ。魔法主体の私にとってそれは致命傷だ。

 ならばこちらが地面に降り立つか?

 それこそNoだ。こちらが格好の的になるだけだ。

 サラを連れてくれば少しはマシになったか。

 いや、水属性の勇者相手には致命的に相性が悪い。

 部下を死ぬと分かっているような戦場に送るわけにはいかない。

「久々に面白い戦いになりそうだな」

 帯刀していた刀を手に取る。

「魔法使いが刀だと?本職には敵うわけないだろうが」

 騎士が振り下ろした剣を刀でガードする。

 鍔迫り合いとなるが、力は当然あちらの方が上だ。

「これだけでは勝てないだろう。しかし、フレイム」

 俺は小さな魔法を放つ。

 そして生まれた隙に騎士を切る。

 しかし、空中で斬った所で落下速度が上がるだけで、思ったように刃は入らない。

 このままだと魔力が尽きて負けてしまうな。いくら魔力が高い魔族の王とはいえ、最強の人間4人+龍に勝てるとは言い難い。

「いくぞ!連携魔法!」

 そして飛んできたのは、龍、勇者、魔法使いの3人で組まれた強力な魔法だ。

 風、水、雷の三種の属性が複合しており、咄嗟に魔法で掻き消すのは困難だ。

 これは万事休すか……?

 避けられないと判断し、全力で防御を展開する。一か八かだ。

 やるしかない——!

「魔王様。威厳を見せてください。これで負けたら部下に示しがつかないので」

 突然シキが目の前に現れ、手に持っていた箒で魔法を叩き落とした。

「「「「「「え?」」」」」」

 俺を含むシキ以外の全員の口から、同じ言葉が発せられた。

「この程度の魔法に苦戦してどうするのですか。これくらい無傷で守れるようにならなければこの大陸を征服するなんて夢のまた夢ですよ?」

「嘘、だろ」

「私たちが必死に特訓した最強の魔法なのよ?」

「これさえあれば魔王に勝てるはずじゃなかったのか?」

「無念」

 それぞれ絶望を口にする勇者一行。

「うるさいですね。少し黙っていてください」

 そう言うと、シキは箒でそれぞれの頭を叩き、気絶させた。

「はい、これで終わりですね」

 シキはメイドとしての仕事を終わらせた時と全く変わらない口調で、あっさりと片付けた。 
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