欲望が満たされなくなった天使は化け物へと変貌する

僧侶A

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4話

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「俺はルーシーだ。こっちに居るのはペトロ。あんたの名前はカナンで合ってるか?」

「はい、そうですけど」

「最近何か困っていることとかねえか?」

「突然なんですか?天使教の勧誘なら間に合っています」

 天使教。その名の通り天使を崇拝する宗教。とは言っても本物の天使を発見できておらずただ信じているだけなのだけれども。

 昔から天使教があることを知っている僕ですら天使が実在するとは思っていなかったし。

 割と信者が多い宗教なのだが、一定数熱烈なアンチが居る。ここに居るカナンさんみたいな天使の方々。

 勝手に進行されて祭り上げられて働かせられるのだ。

 かなり昔に天使教の教祖にもし天使と出会えたらどうしますか?という質問を投げかけた記者が居た。

 教祖曰く、『天使様は神が我々人間の為に直々に遣わした存在です。だからこそすることはただ一つ。人々を救うための日々を問題なく過ごしていただくための環境を用意いたします』

 とのこと。言葉自体は聞こえがいいが、教会に用意されている天使の為の部屋がどう考えても幽閉施設なのだ。

 今考えたら自由をすべて奪いただブラックな労働を強要するんだよね。

 人間と大差ない天使が嫌がるのも当然だ。

「天使教のようなクソみたいなものと一緒にしないでくれ。俺は探偵みたいなもんだ」

「探偵ですか。近くで殺人事件でもあったんですか?」

 天使教を完全に否定したお陰か若干警戒心が薄れていた。

「いや、そんな大層な話じゃねえ。ちょっとした噂話の調査だ」

「噂、ですか」

「あんたがとある理由で金に困っているんじゃないかってな」

「なんでそれを……」

「やっぱり金に困ってたんだな」

 予想通りと言わんばかりにニヤッと笑う。

「どういうことですか?」

「最近、ぬいぐるみを大量に購入する平民の女性がいるって情報が入ってきてな」

「確かにぬいぐるみをたくさん買ったのは私です。でも私のお金です。どう使おうが勝手でしょ」

「まあそれだけならな。見たところ仕事も出来そうだし金は沢山ある」

「分かっているなら気にしないで下さい。では」

 カナンさんは話を強引に切り上げ扉を閉めようとする。しかしルーシーさんがそれを拒んだ。

「ここ最近、蠅のような虫の大群に群がられなかったか?」

 蠅?唐突に不思議なワードが出てきた。それと何の関係があるんだろう。

「蠅?そういえば少し前にそんなことがありましたね」

 ルーシーさんはそれを聞いて指を強くパチンと鳴らし、

「ビンゴだ」

「何のことですか?」

「詳しい経緯は省くが、あんた天使だろ?」

「天使?そんなものを信じているんですか?」

「天使教は信じていないが天使は実在することを知っている」

「そうですか……」

 訝し気にルーシーさんを見るカナンさん。

「天使ってのは運動能力がちょっと高くて見た目がいい奴の事だ」

「どこで知ったのかは分からないけど、ちゃんと知っているのね。二人とも人間なのに。誰かの回し者かしら?」

「そうだったら天使をさっさと連れてくる」

「それもそうね」

 天使と人間に差が無いはずなのに何で?そもそも天使を連れてくることに何の意味が?

「ああ、言い忘れてたな。天使は天使か人間かを見分けることが出来るんだよ。純血限定だがな」

「そうだったんですね」

 困惑していると、ルーシーさんが補足してくれた。

「話を戻そう。天使であるあんたが、蠅の群れに襲われたのは事実だな?」

「そうね」

「ぬいぐるみを買い始めたのはそれよりも後からじゃないか?」

「確かにその通りよ。——もしかして」

 カナンさんは何かに気付いたようで、はっとした顔をする

「あんたの考えている通りだ。その蠅がぬいぐるみを買うようになった原因だ」

 その後、カナンさんに堕天についての説明をした。ここからは僕も知っている内容だった。

「そう。大体わかったわ」

「ここからが重要な話だ。それをどうにかしたいとは思わないか?」

「どうにかしたい……?ぬいぐるみが大好きなのはそもそも昔からで、今まではそれを隠してきたの。だからこうして表に出せるようになってよかったのだと断言できるわ」

「でも、このままだと生きていくことが出来ないのも事実。心の奥にある理性がこのままだと破滅してしまうと告げているわ」

「だからどうにかできるならどうにかしたい」

 そのカナンさんの言葉に頷き、

「よく分かった。ついてこい」

 そう言って僕とカナンさんを連れて辿り着いたのは、家だった。

「あらお帰り、二人とも。それにお客さんも」

「お邪魔します」

「ちょっと使うぞ」

「分かったわ」

 そしてそのままルーシーさんの自室、ではなく倉庫だと思っていた部屋に入った。

 その床には何やら白い何かで描かれた模様で埋め尽くされていた。

「ペトロ、お前はその線の外で待ってろ」

「分かりました」

 僕は言われた通りに線の外に立ち、様子を見守ることに。

「じゃあ行くぞ。これから何があっても動くなよ」

「はい」

 ルーシーさんはカナンさんの頭に手を翳し、何かを呟き始めた。

 それに呼応して地面の文字が光り、次第に光がカナンさんを包み始めた。

 その光はあまりにも強烈で、思わず目を瞑った。

「よし、終わったぞ」

 ルーシーさんがそう言ったのに合わせて目を開く。

「どうして私はこの服を着ているんでしょうか」

 目の前に居たのは、何故か秋に着るような洋服を着たカナンだった。反応的に自分の服なのだろうが、明らかにおかしい。

「それはあんたの時を戻したからだな。大体半年くらいか」

 それは噂になりだした時期よりも前だった。

「どうやって……?」

「これに関しては企業秘密だ。それより、ぬいぐるみについてどう思う?」

「大好きなものですね。ただ、これまでみたいに過剰に欲しいとは思わなくなりました」

「ならばっちりだ。これで以前の通りに戻った。帰っても大丈夫だぞ」

「ありがとうございました。今後はほどほどにぬいぐるみを愛そうと思います」

 カナンさんはお礼を言い、アパートから去っていった。

「ってわけだ。どうだった?」

 全てを終わらせたルーシーさんは、僕に質問してきた。

「と言われても、分からないことだらけで何とも……」

「まあそれもそうか。ゆっくり分かっていけばいい」

 ルーシーさんは愉快そうに笑った。

「ただこれだけは分かったろ?堕天使は元に戻すことが可能だってこと」

「じゃあ、あの人はどうにか出来なかったんですか」

 あの人が元に戻って良かったと思うと共に、昨日僕の目の前で倒されたアンフィアさんの事を思い出した。

「残念ながらどうにもならねえ。これはこの儀式の特性上仕方ないんだ」

「儀式?」

「ああ、この時を戻す儀式の話だ。これを行うには条件があってな。本人が自ら元に戻ることを願うことだ」

 だから強引に引っ張って来ないで、あそこまで相手の意思を聞いていたのか。

「ただ暴走してしまったら意思なんて無くなる。ただの猛獣と変わらない」

 もし僕が上手くフォロー出来たら、僕が家まで送ると言っていればルーシーさんが間に合あったかもしれないし、爪を怪我することは無かったのだろうか。

「あの天使の件については知らなかったんだから仕方がねえよ。その分他の天使を救ってやれ」

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