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15話
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その途中、ダンデさんに出会った。
「こんばんは、ダンデさん。何をしているんですか?」
今頃酒場は大盛況な筈なのに、どうしたのだろうか。
「ちょっとアイツに頼まれてな」
僕の隣にジョニー君がいることもあり、少しぼやかしていたけれど、堕天使関連の調査をしているのだろう。
「この人は誰だ?」
何も知らないジョニー君が僕に聞く。
「この方はダンデさん。家の近くで酒場のマスターをやっている人だよ」
「そうなのか。よろしく」
「こちらこそ。良かったらウチの酒場に来てくれ。ご馳走してやる」
「あー。すまない。俺酒飲めねえんだ」
ジョニー君は申し訳なさそうに断る。
「大丈夫。ダンデさんの酒場に来る人達、大抵酒頼まないから」
「どういうことだ?」
「ルーシーさんとかが言うには、飯はめちゃくちゃ美味いが酒は不味いんだって。確かにご飯は絶品だよ」
実際に酒を飲んだことは無いけれど、ルーシーさん以外の方も酒を頼んでいない時点でそういうことなのだろう。
「おい、酒が不味いとはなんだ」
いつも通り怒るダンデさん。
「僕は言っていませんよ。他の人がそうってだけです」
「はは、なら行っても問題なさそうだな。今度一緒に行こうぜ」
「あいつの悪い所を学びやがって…… まあいっか、いつでも待っているぜ」
ダンデさんはまだやることがあるらしく、酒場とは逆の方へ去っていった。
その後誰かに会うことも無く、途中で別れて普通に家に辿り着いた。
そして予定された日になり、ルーシーさんと共にエリーゼと会うことに。
「あなたがルーシーさんね。よろしく」
「よろしく、エリーゼ。いや、アリエルか?」
「どちらでも構わないわ」
「そうか。じゃあアリエルって呼ぶことにする」
一見平和そうに見えるが、お互いに警戒しているような、そんな雰囲気を感じる。
本来であれば二人っきりで平和にお茶を飲む予定だったけれど、どうやらそうはいかないらしい。
「にしても図書館が近くにあるのに凄い量の本だな。1000冊は軽く超えてんじゃねえか?」
「大体1300冊くらいかしら」
「そんなに多いものなのですか?」
「小説家とか学者ですらこんなに本は持たねえよ」
アストレア家にはこれの数倍は本があったのでどうも思わなかったけれど、相当多いらしい。
確かに、こちらに来てからこの位の本棚を持っている家は無かった。
「知識を蓄えることが私の一番の欲ですから」
「欲、か」
ルーシーさんは何か引っかかったらしい。
「ええ。こうして十分なお金を稼げるようにもなりますし、素晴らしいものですよ?」
「確かにそれはよく分かっているが」
「小説家、ですものね」
「知っているの?」
ルーシーさんは自身が小説家であることを身近な人以外には話していないはず。どうして知っているんだ。
「まあ、商売をするうえで情報は必要だから」
そんなものなのかな?国一の商会の参謀である以上、何をしていてもおかしくはないけれど。
「そうかい。知っていただけて光栄なことで」
「もしかしてルーシーさんの小説が好きだったり?」
ここまで力があるなら好きな小説家の正体位暴いてもおかしくなさそうだ。
「うん。どんな人がこれを書いたんだろうって思って少し前に調べていてね。まさかペトロと一緒に住んでいるとは思わなかったけれど」
「そんなことはどうでも良い。正直に聞く。お前、堕天使だろ?」
ルーシーさんは突然そんなことを言いだした。
「突然何を言い出すんですか。別に普通じゃないですか」
今目の前に居るのは昔遊んでいた頃と同じエリーゼそのものだ。何もおかしなところなんて。
「そうよ。それに堕天使とは失礼ね」
「ほら、否定しているじゃないですか」
確かに、昔家から出て行ったことは不自然だったけれど、まさかエリーゼがそんなわけはない。
そもそも天使は身体能力が普通の人より高めと言っていた。だけどエリーゼは身体能力が殆どない。
「堕天使の存在自体は否定しないんだな。普通は何を言っているんだみたいな反応をするもんだが」
確かに。エリーゼが堕天使を知っているはずがない。
「あら。バレちゃったのね」
ちょっと待て。堕天使を知っているのはおかしくないか?
「ルーシーさん、もしかして」
「多分お前の思った通りだ」
まさか、目の前にいるエリーゼは——
「私はエリーゼであり、アリエル。強欲を司る大天使よ」
ずっと前から探していたエリーゼは、僕達の前に立ちふさがる敵だった。
「どうして……」
「この世に生きる全ての者達が我慢することなく、思い思いに生きることが出来る世界って素晴らしいじゃない」
この間の大天使と同じような意見だった。
「その理念は分かるよ。実際に素晴らしいことだとは思う。だけれど、大天使達がやっていることにはリスクが常に付きまとうのは分かっているよね?」
いくら素晴らしいことでも、上手くいかなければ怪物化というリスクを強制的に背負わせるのは悪だ。
「分かっているわ。だからこうして頑張っているのよ」
「そういうことか」
エリーゼの言葉に、何か納得したような素振りを見せるルーシーさん。
「どういうことですか」
「この商会は数多くの慈善事業を行っているが、その殆どが天使の比率が高い所宛てだ。恐らく、堕天使になって何かに対する欲望が強くなった奴らの金銭的な補助が目的だ」
「正解。お金さえあれば大体の天使の欲望は満たせるから。そのために私はこの商会を大きくしたの」
エリーゼは立ち上がり、この部屋を見渡ながらそう話した。
確かに、今までの堕天使たちは金銭面に大きく影響されることが多かった。
けれど、天使を無理に堕天させるような集団が何故そんなことを?
「こんな方法じゃあ無意味だって分からないのか」
「無意味では無いわ。実際、これで救われた天使はちゃんと存在するもの」
「じゃあ話題を変える。いつ頃からそうなったんだ?」
「大体10年前かしら。私があの家を出て行く数日前ね」
これに関しては予想通りだった。
「そうか、一応聞くが元に戻る気はあるか?」
「いいえ。そもそも大天使になった時点で暴走のリスクは無くなるのよね」
「そりゃあそうか。じゃあ力づくで排除するしかねえか」
ルーシーさんは持ってきていたカバンから武器を取り出す。
「生身の人間が、大天使を相手取れると?」
「ああ。見た所お前は体を動かすのは苦手のようだからな」
「そう見られているとは心外ね。まあいいわ。折角開放した天使達を元に戻しているあなたを、このまま返すわけにはいかないわ」
そう言ってエリーゼは何の武器も持たずに立ち上がった。
「こんな場所で戦うわけにもいかねえし、場所を移すか」
「そうね。折角だから大天使の力を見せてあげる。着いてきなさい、ペトロ」
エリーゼは僕を抱きかかえて、肩から生えてきた翼で空へ飛び立った。
「え、ちょっと。待って」
「殺したりしないから安心して。ペトロ」
エリーゼは、僕の事を傷つけようとするでもなく、ただ目的地へと連れ去った。
目的地は、街の近くにある山の中。この一帯のみ木が生えておらず、戦うには丁度良い広さだ。
「遅かったな」
空を飛んでいたのでこっちが早いと思いきや、既にルーシーさんは到着していた。
「早くないですか?」
「俺にかかればこんなもんよ」
暴走した堕天使と生身で戦える人間だからこれくらいやってもおかしくは無い、のか?
「それではさっさと決着を付けましょう。かかってきなさい」
エリーゼはそう言ってはいるが、完全に棒立ちで戦う意思を持っているようには見えなかった。
「じゃあいくぜ」
「こんばんは、ダンデさん。何をしているんですか?」
今頃酒場は大盛況な筈なのに、どうしたのだろうか。
「ちょっとアイツに頼まれてな」
僕の隣にジョニー君がいることもあり、少しぼやかしていたけれど、堕天使関連の調査をしているのだろう。
「この人は誰だ?」
何も知らないジョニー君が僕に聞く。
「この方はダンデさん。家の近くで酒場のマスターをやっている人だよ」
「そうなのか。よろしく」
「こちらこそ。良かったらウチの酒場に来てくれ。ご馳走してやる」
「あー。すまない。俺酒飲めねえんだ」
ジョニー君は申し訳なさそうに断る。
「大丈夫。ダンデさんの酒場に来る人達、大抵酒頼まないから」
「どういうことだ?」
「ルーシーさんとかが言うには、飯はめちゃくちゃ美味いが酒は不味いんだって。確かにご飯は絶品だよ」
実際に酒を飲んだことは無いけれど、ルーシーさん以外の方も酒を頼んでいない時点でそういうことなのだろう。
「おい、酒が不味いとはなんだ」
いつも通り怒るダンデさん。
「僕は言っていませんよ。他の人がそうってだけです」
「はは、なら行っても問題なさそうだな。今度一緒に行こうぜ」
「あいつの悪い所を学びやがって…… まあいっか、いつでも待っているぜ」
ダンデさんはまだやることがあるらしく、酒場とは逆の方へ去っていった。
その後誰かに会うことも無く、途中で別れて普通に家に辿り着いた。
そして予定された日になり、ルーシーさんと共にエリーゼと会うことに。
「あなたがルーシーさんね。よろしく」
「よろしく、エリーゼ。いや、アリエルか?」
「どちらでも構わないわ」
「そうか。じゃあアリエルって呼ぶことにする」
一見平和そうに見えるが、お互いに警戒しているような、そんな雰囲気を感じる。
本来であれば二人っきりで平和にお茶を飲む予定だったけれど、どうやらそうはいかないらしい。
「にしても図書館が近くにあるのに凄い量の本だな。1000冊は軽く超えてんじゃねえか?」
「大体1300冊くらいかしら」
「そんなに多いものなのですか?」
「小説家とか学者ですらこんなに本は持たねえよ」
アストレア家にはこれの数倍は本があったのでどうも思わなかったけれど、相当多いらしい。
確かに、こちらに来てからこの位の本棚を持っている家は無かった。
「知識を蓄えることが私の一番の欲ですから」
「欲、か」
ルーシーさんは何か引っかかったらしい。
「ええ。こうして十分なお金を稼げるようにもなりますし、素晴らしいものですよ?」
「確かにそれはよく分かっているが」
「小説家、ですものね」
「知っているの?」
ルーシーさんは自身が小説家であることを身近な人以外には話していないはず。どうして知っているんだ。
「まあ、商売をするうえで情報は必要だから」
そんなものなのかな?国一の商会の参謀である以上、何をしていてもおかしくはないけれど。
「そうかい。知っていただけて光栄なことで」
「もしかしてルーシーさんの小説が好きだったり?」
ここまで力があるなら好きな小説家の正体位暴いてもおかしくなさそうだ。
「うん。どんな人がこれを書いたんだろうって思って少し前に調べていてね。まさかペトロと一緒に住んでいるとは思わなかったけれど」
「そんなことはどうでも良い。正直に聞く。お前、堕天使だろ?」
ルーシーさんは突然そんなことを言いだした。
「突然何を言い出すんですか。別に普通じゃないですか」
今目の前に居るのは昔遊んでいた頃と同じエリーゼそのものだ。何もおかしなところなんて。
「そうよ。それに堕天使とは失礼ね」
「ほら、否定しているじゃないですか」
確かに、昔家から出て行ったことは不自然だったけれど、まさかエリーゼがそんなわけはない。
そもそも天使は身体能力が普通の人より高めと言っていた。だけどエリーゼは身体能力が殆どない。
「堕天使の存在自体は否定しないんだな。普通は何を言っているんだみたいな反応をするもんだが」
確かに。エリーゼが堕天使を知っているはずがない。
「あら。バレちゃったのね」
ちょっと待て。堕天使を知っているのはおかしくないか?
「ルーシーさん、もしかして」
「多分お前の思った通りだ」
まさか、目の前にいるエリーゼは——
「私はエリーゼであり、アリエル。強欲を司る大天使よ」
ずっと前から探していたエリーゼは、僕達の前に立ちふさがる敵だった。
「どうして……」
「この世に生きる全ての者達が我慢することなく、思い思いに生きることが出来る世界って素晴らしいじゃない」
この間の大天使と同じような意見だった。
「その理念は分かるよ。実際に素晴らしいことだとは思う。だけれど、大天使達がやっていることにはリスクが常に付きまとうのは分かっているよね?」
いくら素晴らしいことでも、上手くいかなければ怪物化というリスクを強制的に背負わせるのは悪だ。
「分かっているわ。だからこうして頑張っているのよ」
「そういうことか」
エリーゼの言葉に、何か納得したような素振りを見せるルーシーさん。
「どういうことですか」
「この商会は数多くの慈善事業を行っているが、その殆どが天使の比率が高い所宛てだ。恐らく、堕天使になって何かに対する欲望が強くなった奴らの金銭的な補助が目的だ」
「正解。お金さえあれば大体の天使の欲望は満たせるから。そのために私はこの商会を大きくしたの」
エリーゼは立ち上がり、この部屋を見渡ながらそう話した。
確かに、今までの堕天使たちは金銭面に大きく影響されることが多かった。
けれど、天使を無理に堕天させるような集団が何故そんなことを?
「こんな方法じゃあ無意味だって分からないのか」
「無意味では無いわ。実際、これで救われた天使はちゃんと存在するもの」
「じゃあ話題を変える。いつ頃からそうなったんだ?」
「大体10年前かしら。私があの家を出て行く数日前ね」
これに関しては予想通りだった。
「そうか、一応聞くが元に戻る気はあるか?」
「いいえ。そもそも大天使になった時点で暴走のリスクは無くなるのよね」
「そりゃあそうか。じゃあ力づくで排除するしかねえか」
ルーシーさんは持ってきていたカバンから武器を取り出す。
「生身の人間が、大天使を相手取れると?」
「ああ。見た所お前は体を動かすのは苦手のようだからな」
「そう見られているとは心外ね。まあいいわ。折角開放した天使達を元に戻しているあなたを、このまま返すわけにはいかないわ」
そう言ってエリーゼは何の武器も持たずに立ち上がった。
「こんな場所で戦うわけにもいかねえし、場所を移すか」
「そうね。折角だから大天使の力を見せてあげる。着いてきなさい、ペトロ」
エリーゼは僕を抱きかかえて、肩から生えてきた翼で空へ飛び立った。
「え、ちょっと。待って」
「殺したりしないから安心して。ペトロ」
エリーゼは、僕の事を傷つけようとするでもなく、ただ目的地へと連れ去った。
目的地は、街の近くにある山の中。この一帯のみ木が生えておらず、戦うには丁度良い広さだ。
「遅かったな」
空を飛んでいたのでこっちが早いと思いきや、既にルーシーさんは到着していた。
「早くないですか?」
「俺にかかればこんなもんよ」
暴走した堕天使と生身で戦える人間だからこれくらいやってもおかしくは無い、のか?
「それではさっさと決着を付けましょう。かかってきなさい」
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「じゃあいくぜ」
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