欲望が満たされなくなった天使は化け物へと変貌する

僧侶A

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42話

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「おい、ペトロ!」

「うわっ!ジョニー君?」

「お前、最近疲れてねえか?結構な頻度でうとうとしてるぞ」

「あ、ごめん。気を付けるよ」

 流石にあんなトレーニングをしていて毎日を元気に過ごせるかと言えばかなり怪しい。

 正直授業中も気合で起きているだけで、頭がちゃんと働いているわけでは無かった。

 学生は勉強をするのが最優先なんだからしっかりしなければ。

「ま、時期の関係もあるのかもな。割と皆もそんな感じだったし」

「皆も?」

 全く周りの事を見ていなかったけれど、皆もそうだったのか。

「ああ、結構授業中に寝ている奴が多いぞ。最近暖かいからだろうな」

「そう、かな?」

 ジョニー君はそう結論付けるけれど正直眠たくなるほどかといえば疑問が残る。


「~であるからして~」

 翌日の授業はしっかりと目を開いて授業を受けていた。

 というのも皆本当に寝ているのかが気になったからだ。

 確かにかなりの割合が寝ていた。大体生徒の4分の1位だろうか。


「な、言った通りだろ?」

 とジョニー君は言うが、

「やっぱり変じゃない?」

 ただ暖かいからという理由だけでそんな割合の生徒が眠るなんてありえるだろうか。

「まあ、ウチで働いている熱心な奴らも最近眠いって言いながら仕事しているぐらいだからな。俺も気持ちよく寝れそうな気候だなって思うし」

「うーん……」


「ほらな?」

 今日はエリーゼと話す日だったので仕事場に向かうと、気持ちよさそうにうたた寝していた。

「エリーゼの場合、美食ブームで仕事増えたのもありそうだけど。最近眠れてないんじゃない?」

 先日堕天使を一斉に元に戻し、レイモンドさんは堕天使を二度と作らないように約束した。しかし、美食ブーム自体は堕天使だけが金を使っていたわけではなく、関係ない人にまで波及して生まれたもののため、今もなお続いているのだ。

 そしてこの商会が先日交わした有利すぎる契約は今でも続いているし、何なら新たに開業した飲食店もアグネス商会を利用するので、仕事量は増えていく一方なのだった。

「確かにそうかもな。他の奴らに仕事を回すように親父に言っておくわ」

「ありがとう」

「んで、どうする?起こすか?」

「いや、やめとく。こんなに気持ち良さそうだしね」

 エリーゼにはちゃんと休んでもらいたいから。

 まあ寝顔を見たいっていう理由を隠す為の建前だけど。

「そうか。じゃあ帰るか」

「僕はここに残るよ」

「分かった。じゃあな」

「また明日」

 ジョニー君はそのまま家に帰っていった。

 ジョニー君が部屋を出て行ったことを確認してから、僕は近くの棚にあったタオルケットをエリーゼの背中にかけた。

 仕事が出来て、強く賢いエリーゼだけれど、こうやって気持ち良さそうに寝ている姿はただの女の子だ。

「今日はライナーさんに言って特訓も無しにしているし、夕食までここに居ようかな」

 エリーゼが寝ている机の正面に椅子を置き、起きるまで待っていることにした。

「んっ……」

「起きたんだ」

 あれから二時間程時が経ってからエリーゼは目を覚ました。

「もしかして、寝過ごした……?」

「そうだね。2時間くらいかな」

「ごめんなさい。わざわざ来てもらっているのに……」

 エリーゼは心底申し訳なさそうに謝ってきた。

「別に良いよ。疲れていたんでしょ?」

「うん。それに気持ち良い暖かさだったからつい……」

「そうなんだ。それなら仕方ないよ。いつも頑張っているんだから」

「ペトロ……」

「それじゃあ僕は帰るね。今日はゆっくり休むんだよ」

 僕はエリーゼにそう言いつけて、家へと帰った。

「かえりまし」

「静かにしろ!」

 家に帰ると、ルーシーさんがすぐに駆けつけてそう言った。

「どうしたんですか?」

「ランセットが寝てるんだよ……」

 と話すので見てみると、食事をとるテーブルで爆睡しているランセットさんと、飲んだであろう大量の酒があった。

 どうやら酔い潰れて寝たらしい。

「とりあえずさっさと部屋のベッドに連れていきましょう」

 酒を飲んで寝ているので、多分朝まで起きることは無い。だから風邪を引かないように連れて行ってあげた方が良いだろう。

「駄目だ。それで起きたら大変なことになる……」

 しかしルーシーさんの表情は重く、その提案には乗り気ではなかった。

「何故ですか?」

「こいつ、寝起きが死ぬほど悪いんだよ。中途半端に起こしたら確実に一発は食らう」

 寝起きの機嫌が悪い方の話は結構聞いてきたけれど、手が出るパターンまでは聞いたことが無かった。

「じゃあどうするんですか?」

「起きるまで静かにここで待っているしかねえ……」

 そう話すルーシーさんの体は震えていた。堕天使を倒すくらいに強いルーシーさんではあるが、それとこれでは話が違うのだろう。

「まず質問なんですが、どうしてここまでランセットさんが酒を飲んでしまったんですか」

「それはだな……」

 それからルーシーさんはバツが悪そうに話し始めた。

 どうやらルーシーさんはいつも通り酒を飲みながら本を読んでいたらしい。

 そしてランセットさんは、料理が煮込みの工程に入っておりしばらく放置しても良かったため、ルーシーさんの隣に座りコーヒーを飲んでいたらしい。

 で、最終場面に入って熱中して読んでいる時に飲み物を取り違え、ランセットさんコーヒーを手に取った。それに気付かずランセットさんは近くにあったワインを飲んでしまったらしい。

 それで酔って気をよくしたランセットさんはルーシーさんから酒を強奪し、一人飲み始めたとのこと。

「そうも上手くいくものですかね?」

 確かにルーシーさんが飲んでいたお酒はコーヒーのように真っ黒だし、コップは全く同じものを使っている。

 しかし、温度も香りが明確に違うのだから取り違えてもすぐに気付く気がする。

「さあ。ランセットは気付かなかったらしい。流石に俺は気付いたけれどな。あったけえし」

 まあしっかりしていそうなランセットさんでもミス位はするものなのかな。

「とりあえずご飯を用意しますよ」

 とりあえず寝ているランセットさんは放置し、既に完成している煮物を鍋から取り出して食べた。

「じゃあ僕が片付けるので毛布を部屋から取ってきてかけてあげてください」

「分かった」

 後片付けが終了し、ルーシーさんも部屋から毛布を取ってランセットさんにかけていた。

 そのタイミングで僕は暖炉に火をつけた。
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