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「俺は橋田剛。身長が高く、体が大きいだけの普通の男子高校生。しかし、俺の周りは特別ではない」
「ここに居るのは親友である上杉幸村。二人の戦国武将を融合させた、真の男にふさわしい名前を持つこの男は、男ではなく女だ。胸は無く、股間に何か付いている気はするが声は可愛らしく、身長も156cmと小柄である。そして何よりも、この可愛らしい顔——」
「剛くん、教室に入ってきて早々何やってんの。そして僕は男だよ」
「人が気持ちよくお前の紹介をしてやっているのを邪魔するなよ」
「見てて恥ずかしいし、思いっきり性別間違えているし。そもそも何のためにしてるのさ」
性別は間違っていないと思うんだがな。
「いや、俺の漫画が小説になるらしくてな。その予行練習だ」
「だから地の文みたいな事を話してたわけね」
「そういうことだ。この可愛らしい顔はどう見ても女の子と考える以外ないだろう。そんな彼は俺がなみこという名義で『月刊トースト』で連載している『ヒメざかり!』という超絶面白い神の作品の背景を担当してくれている」
「ねえ、だから僕は男だって」
とジト目でこっちを見てくる幸村。非常に似合っているということは、
「やっぱり女だな」
「はあ、まあ良いよ。それよりも剛くん、自分が描いている漫画を持ち上げまくっているけど、どんな感情で言ってる?」
「別に妥当だと思うのだが」
「せめて看板作品になってから良いなよ。いいとこ中堅でしょあの漫画」
「そんなことは無い。そろそろ巻頭カラーを貰えるんだからな」
「別に順繰りで回ってきただけでしょ」
「それは……」
俺に悲しい現実を突きつけないでくれ、わが友よ……
「おはよう、皆」
俺が膝をつく中、凛とした女性の声が聞こえてきた。
「はっ!」
「何?まさか……」
幸村が再びジト目でこちらを見てくるがその場合ではない。
「満を持してやってきたのは俺の幼馴染である椎名美琴。彼女は女性であることは名前から見ても間違いない。しかし、男が霞むレベルのイケメンだ」
「おはよう!美琴さん!」
「今日もカッコいいね!」
「こんな感じで投稿したら女性が楽しそうに話しかけてくるくらいに女性にモテモテだ。そんな彼女を俺は王子だと思っている。その理由は、」
「ありがとう。二人とも、君達は今日も可愛いね。宝石以上に輝いているよ」
「「キャー!」」
「といった感じのセリフをさらっと吐いてしまうからである。語彙力は少々足りない気がするが、あの顔があれば十分である」
「はいはい、そこら辺で辞めて。恥ずかしいから。じゃなきゃ今月の背景描かないよ?」
「それは困る」
幸村が居なければ連載が出来ない。
別に背景を書くことが出来ないわけではないが、俺がやると異常なまでに時間がかかってしまう。
小説の練習をしたい気持ちは強いが、流石に小説よりも連載の方が大事だ。
「にしても椎名さん、今回はあんなキャラなんだね」
「ああ。師匠もいい仕事をしているな」
幼馴染である椎名美琴は、本来あそこまで王子様ではない。実際の所は少しカッコつけたがりな所があるただの女の子だ。
では何故あんなことになっているのか。
それは、美琴が役に憑依しすぎるタイプの役者だから。
いくら憑依するといっても日常生活では素に戻るはずなのだが、困ったことに四六時中キャラを維持してしまうのだ。
また、美琴は劇団ロマンスという恋愛ものに特化した劇団に所属している。
そのため、基本的に一年中何かしらのキャラになっている。
ただし9割がイケメン属性のキャラだが。
「あ、そうだ。放課後お茶しないかい?君達のような可愛い子に似合う喫茶店があるんだ」
「は、はい!行きます!」
「私も!!」
そんな事情を知っているのは俺たち含めて数人程度で、他の人は美琴をイケメンの象徴として何の違和感もなく受け入れている。
「なるほどな。かなりシンプルすぎて敬遠していた所もあるが、実際に目の当たりにすると中々素晴らしいな。今度出してみるか」
そして俺は定期的に入れ替わる美琴のキャラを漫画の参考にさせてもらっている。
「ねえ剛くん。あの二人バスケ部とバレー部でしょ?流石に喫茶店に連れていったら迷惑かかるから止めてきてよ」
「今は取材の方が最優先だ。俺はメモをしたい。止めたいなら幸村が行ってくれ」
恐らく今は台本の序盤だけで構成されているキャラだ。だからこの美琴を見れるのは今だけしかないのだ。
「はあ……大丈夫かなあ……」
ため息をつきながら幸村が美琴の元へ近づいていく。
「ねえ二人とも、放課後は部活でしょ。サボって大丈夫なの?」
最初は女子に声を掛けた。制服が男物なことを除けば見た目はガールズトークだな。
「はっ!?」
「忘れてたよ!?!?」
「ああ、そうだったんだ。それは残念。流石に迷惑をかけるわけにはいかないね。また今度の機会にしよう」
「うん」
「ありがとう。絶対だからね」
「そうだね。また今度時間がある時にでも」
どうやら穏便に話が済んだようだ。キャラによっては面倒な事態になりかねなかったが、今回は問題ない方だったらしい。
「で、幸村君、やっぱり君は可愛いね。食べちゃいたいくらいだ」
「ここに居るのは親友である上杉幸村。二人の戦国武将を融合させた、真の男にふさわしい名前を持つこの男は、男ではなく女だ。胸は無く、股間に何か付いている気はするが声は可愛らしく、身長も156cmと小柄である。そして何よりも、この可愛らしい顔——」
「剛くん、教室に入ってきて早々何やってんの。そして僕は男だよ」
「人が気持ちよくお前の紹介をしてやっているのを邪魔するなよ」
「見てて恥ずかしいし、思いっきり性別間違えているし。そもそも何のためにしてるのさ」
性別は間違っていないと思うんだがな。
「いや、俺の漫画が小説になるらしくてな。その予行練習だ」
「だから地の文みたいな事を話してたわけね」
「そういうことだ。この可愛らしい顔はどう見ても女の子と考える以外ないだろう。そんな彼は俺がなみこという名義で『月刊トースト』で連載している『ヒメざかり!』という超絶面白い神の作品の背景を担当してくれている」
「ねえ、だから僕は男だって」
とジト目でこっちを見てくる幸村。非常に似合っているということは、
「やっぱり女だな」
「はあ、まあ良いよ。それよりも剛くん、自分が描いている漫画を持ち上げまくっているけど、どんな感情で言ってる?」
「別に妥当だと思うのだが」
「せめて看板作品になってから良いなよ。いいとこ中堅でしょあの漫画」
「そんなことは無い。そろそろ巻頭カラーを貰えるんだからな」
「別に順繰りで回ってきただけでしょ」
「それは……」
俺に悲しい現実を突きつけないでくれ、わが友よ……
「おはよう、皆」
俺が膝をつく中、凛とした女性の声が聞こえてきた。
「はっ!」
「何?まさか……」
幸村が再びジト目でこちらを見てくるがその場合ではない。
「満を持してやってきたのは俺の幼馴染である椎名美琴。彼女は女性であることは名前から見ても間違いない。しかし、男が霞むレベルのイケメンだ」
「おはよう!美琴さん!」
「今日もカッコいいね!」
「こんな感じで投稿したら女性が楽しそうに話しかけてくるくらいに女性にモテモテだ。そんな彼女を俺は王子だと思っている。その理由は、」
「ありがとう。二人とも、君達は今日も可愛いね。宝石以上に輝いているよ」
「「キャー!」」
「といった感じのセリフをさらっと吐いてしまうからである。語彙力は少々足りない気がするが、あの顔があれば十分である」
「はいはい、そこら辺で辞めて。恥ずかしいから。じゃなきゃ今月の背景描かないよ?」
「それは困る」
幸村が居なければ連載が出来ない。
別に背景を書くことが出来ないわけではないが、俺がやると異常なまでに時間がかかってしまう。
小説の練習をしたい気持ちは強いが、流石に小説よりも連載の方が大事だ。
「にしても椎名さん、今回はあんなキャラなんだね」
「ああ。師匠もいい仕事をしているな」
幼馴染である椎名美琴は、本来あそこまで王子様ではない。実際の所は少しカッコつけたがりな所があるただの女の子だ。
では何故あんなことになっているのか。
それは、美琴が役に憑依しすぎるタイプの役者だから。
いくら憑依するといっても日常生活では素に戻るはずなのだが、困ったことに四六時中キャラを維持してしまうのだ。
また、美琴は劇団ロマンスという恋愛ものに特化した劇団に所属している。
そのため、基本的に一年中何かしらのキャラになっている。
ただし9割がイケメン属性のキャラだが。
「あ、そうだ。放課後お茶しないかい?君達のような可愛い子に似合う喫茶店があるんだ」
「は、はい!行きます!」
「私も!!」
そんな事情を知っているのは俺たち含めて数人程度で、他の人は美琴をイケメンの象徴として何の違和感もなく受け入れている。
「なるほどな。かなりシンプルすぎて敬遠していた所もあるが、実際に目の当たりにすると中々素晴らしいな。今度出してみるか」
そして俺は定期的に入れ替わる美琴のキャラを漫画の参考にさせてもらっている。
「ねえ剛くん。あの二人バスケ部とバレー部でしょ?流石に喫茶店に連れていったら迷惑かかるから止めてきてよ」
「今は取材の方が最優先だ。俺はメモをしたい。止めたいなら幸村が行ってくれ」
恐らく今は台本の序盤だけで構成されているキャラだ。だからこの美琴を見れるのは今だけしかないのだ。
「はあ……大丈夫かなあ……」
ため息をつきながら幸村が美琴の元へ近づいていく。
「ねえ二人とも、放課後は部活でしょ。サボって大丈夫なの?」
最初は女子に声を掛けた。制服が男物なことを除けば見た目はガールズトークだな。
「はっ!?」
「忘れてたよ!?!?」
「ああ、そうだったんだ。それは残念。流石に迷惑をかけるわけにはいかないね。また今度の機会にしよう」
「うん」
「ありがとう。絶対だからね」
「そうだね。また今度時間がある時にでも」
どうやら穏便に話が済んだようだ。キャラによっては面倒な事態になりかねなかったが、今回は問題ない方だったらしい。
「で、幸村君、やっぱり君は可愛いね。食べちゃいたいくらいだ」
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