可愛かった幼馴染の女の子がイケメン堕ちした本当の理由に一同驚愕。演劇を始めてしまった事が理由との噂も。

僧侶A

文字の大きさ
1 / 35

1話

しおりを挟む
「俺は橋田剛。身長が高く、体が大きいだけの普通の男子高校生。しかし、俺の周りは特別ではない」

「ここに居るのは親友である上杉幸村。二人の戦国武将を融合させた、真の男にふさわしい名前を持つこの男は、男ではなく女だ。胸は無く、股間に何か付いている気はするが声は可愛らしく、身長も156cmと小柄である。そして何よりも、この可愛らしい顔——」

「剛くん、教室に入ってきて早々何やってんの。そして僕は男だよ」

「人が気持ちよくお前の紹介をしてやっているのを邪魔するなよ」

「見てて恥ずかしいし、思いっきり性別間違えているし。そもそも何のためにしてるのさ」

 性別は間違っていないと思うんだがな。

「いや、俺の漫画が小説になるらしくてな。その予行練習だ」

「だから地の文みたいな事を話してたわけね」

「そういうことだ。この可愛らしい顔はどう見ても女の子と考える以外ないだろう。そんな彼は俺がなみこという名義で『月刊トースト』で連載している『ヒメざかり!』という超絶面白い神の作品の背景を担当してくれている」

「ねえ、だから僕は男だって」

 とジト目でこっちを見てくる幸村。非常に似合っているということは、

「やっぱり女だな」

「はあ、まあ良いよ。それよりも剛くん、自分が描いている漫画を持ち上げまくっているけど、どんな感情で言ってる?」

「別に妥当だと思うのだが」

「せめて看板作品になってから良いなよ。いいとこ中堅でしょあの漫画」

「そんなことは無い。そろそろ巻頭カラーを貰えるんだからな」

「別に順繰りで回ってきただけでしょ」

「それは……」

 俺に悲しい現実を突きつけないでくれ、わが友よ……

「おはよう、皆」

 俺が膝をつく中、凛とした女性の声が聞こえてきた。

「はっ!」

「何?まさか……」

 幸村が再びジト目でこちらを見てくるがその場合ではない。

「満を持してやってきたのは俺の幼馴染である椎名美琴。彼女は女性であることは名前から見ても間違いない。しかし、男が霞むレベルのイケメンだ」

「おはよう!美琴さん!」

「今日もカッコいいね!」

「こんな感じで投稿したら女性が楽しそうに話しかけてくるくらいに女性にモテモテだ。そんな彼女を俺は王子だと思っている。その理由は、」

「ありがとう。二人とも、君達は今日も可愛いね。宝石以上に輝いているよ」

「「キャー!」」

「といった感じのセリフをさらっと吐いてしまうからである。語彙力は少々足りない気がするが、あの顔があれば十分である」

「はいはい、そこら辺で辞めて。恥ずかしいから。じゃなきゃ今月の背景描かないよ?」

「それは困る」

 幸村が居なければ連載が出来ない。

 別に背景を書くことが出来ないわけではないが、俺がやると異常なまでに時間がかかってしまう。

 小説の練習をしたい気持ちは強いが、流石に小説よりも連載の方が大事だ。

「にしても椎名さん、今回はあんなキャラなんだね」

「ああ。師匠もいい仕事をしているな」

 幼馴染である椎名美琴は、本来あそこまで王子様ではない。実際の所は少しカッコつけたがりな所があるただの女の子だ。

 では何故あんなことになっているのか。

 それは、美琴が役に憑依しすぎるタイプの役者だから。

 いくら憑依するといっても日常生活では素に戻るはずなのだが、困ったことに四六時中キャラを維持してしまうのだ。

 また、美琴は劇団ロマンスという恋愛ものに特化した劇団に所属している。

 そのため、基本的に一年中何かしらのキャラになっている。

 ただし9割がイケメン属性のキャラだが。

「あ、そうだ。放課後お茶しないかい?君達のような可愛い子に似合う喫茶店があるんだ」

「は、はい!行きます!」

「私も!!」

 そんな事情を知っているのは俺たち含めて数人程度で、他の人は美琴をイケメンの象徴として何の違和感もなく受け入れている。

「なるほどな。かなりシンプルすぎて敬遠していた所もあるが、実際に目の当たりにすると中々素晴らしいな。今度出してみるか」

 そして俺は定期的に入れ替わる美琴のキャラを漫画の参考にさせてもらっている。

「ねえ剛くん。あの二人バスケ部とバレー部でしょ?流石に喫茶店に連れていったら迷惑かかるから止めてきてよ」

「今は取材の方が最優先だ。俺はメモをしたい。止めたいなら幸村が行ってくれ」

 恐らく今は台本の序盤だけで構成されているキャラだ。だからこの美琴を見れるのは今だけしかないのだ。

「はあ……大丈夫かなあ……」

 ため息をつきながら幸村が美琴の元へ近づいていく。

「ねえ二人とも、放課後は部活でしょ。サボって大丈夫なの?」

 最初は女子に声を掛けた。制服が男物なことを除けば見た目はガールズトークだな。

「はっ!?」

「忘れてたよ!?!?」

「ああ、そうだったんだ。それは残念。流石に迷惑をかけるわけにはいかないね。また今度の機会にしよう」

「うん」

「ありがとう。絶対だからね」

「そうだね。また今度時間がある時にでも」

 どうやら穏便に話が済んだようだ。キャラによっては面倒な事態になりかねなかったが、今回は問題ない方だったらしい。

「で、幸村君、やっぱり君は可愛いね。食べちゃいたいくらいだ」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について

沢田美
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。 かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。 しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。 現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。 その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。 「今日から私、あなたのメイドになります!」 なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!? 謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける! カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

友達の妹が、入浴してる。

つきのはい
恋愛
 「交換してみない?」  冴えない高校生の藤堂夏弥は、親友のオシャレでモテまくり同級生、鈴川洋平にバカげた話を持ちかけられる。  それは、お互い現在同居中の妹達、藤堂秋乃と鈴川美咲を交換して生活しようというものだった。  鈴川美咲は、美男子の洋平に勝るとも劣らない美少女なのだけれど、男子に嫌悪感を示し、夏弥とも形式的な会話しかしなかった。  冴えない男子と冷めがちな女子の距離感が、二人暮らしのなかで徐々に変わっていく。  そんなラブコメディです。

罰ゲームから始まった、五人のヒロインと僕の隣の物語

ノン・タロー
恋愛
高校2年の夏……友達同士で行った小テストの点を競う勝負に負けた僕、御堂 彼方(みどう かなた)は、罰ゲームとしてクラスで人気のある女子・風原 亜希(かざはら あき)に告白する。 だが亜希は、彼方が特に好みでもなく、それをあっさりと振る。 それで終わるはずだった――なのに。 ひょんな事情で、彼方は亜希と共に"同居”することに。 さらに新しく出来た、甘えん坊な義妹・由奈(ゆな)。 そして教室では静かに恋を仕掛けてくる寡黙なクラス委員長の柊 澪(ひいらぎ みお)、特に接点の無かった早乙女 瀬玲奈(さおとめ せれな)、おまけに生徒会長の如月(きさらぎ)先輩まで現れて、彼方の周囲は急速に騒がしくなっていく。 由奈は「お兄ちゃん!」と懐き、澪は「一緒に帰らない……?」と静かに距離を詰める。 一方の瀬玲奈は友達感覚で、如月先輩は不器用ながらも接してくる。 そんな中、亜希は「別に好きじゃないし」と言いながら、彼方が誰かと仲良くするたびに心がざわついていく。 罰ゲームから始まった関係は、日常の中で少しずつ形を変えていく。 ツンデレな同居人、甘えたがりな義妹、寡黙な同クラ女子、恋愛に不器用な生徒会長、ギャル気質な同クラ女子……。 そして、無自覚に優しい彼方が、彼女たちの心を少しずつほどいていく。 これは、恋と居場所と感情の距離をめぐる、ちょっと不器用で、でも確かな青春の物語。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

処理中です...