可愛かった幼馴染の女の子がイケメン堕ちした本当の理由に一同驚愕。演劇を始めてしまった事が理由との噂も。

僧侶A

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3話

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「で、何か要件でもあるのかい?」

 屋上へ着き、手頃なベンチに腰掛けて弁当を開いた美琴は、真っ先にそんな質問をしてきた。

「別に特別な用事は無いぞ。そんな物があるのなら学校外で呼び出すか電話でもする」

「それもそうか。君の仕事場にでも呼び出せばいい話なわけだし。二人っきりで」

 美琴は揶揄うような表情で俺を見る。ここからが腕の見せどころか。

「美琴の言う通り二人っきりで話すだろうな。あの寝室で、布団の中で」

「そんなふしだらな事を常日頃考えているのかい?君の頭はかなりピンク色に染まっているようだね」

「そうだ。まあ、幸村も一緒になるだろうがな」

「ぼ、僕!?どうして?」

「そりゃあ二人だと物足りないだろうからな。やっぱり人は多い方が良いだろ」

「なんで!?」

「男二人に女一人でかい?もしかしてどっちもいける口だったのかい?幸村君は確かに可愛いけど……」

「え?剛くん?本気で言ってる?」

「どうだろうな」

「本気かどうかも分からないのに幸村君を差し出すわけにはいかないかな」

 そう言って美琴は弁当を置き、横に座っていた幸村を胸へ抱き寄せる。

「え!?ちょっと!?うむっ!!」

 イケメンではあるが胸は小さいわけではないので、顔面が横の胸に埋もれていた。

「ほら、可愛いでしょ?」

 反応を面白がった美琴は、幸村がかろうじて保持していた弁当を取り上げ、安全な場所に置いた後、より一層強く抱きしめる。

「————!!!!」

 完全に鼻と口を胸に塞がれた幸村は、息苦しさと驚きで必死に顔を真っ赤にしながら声を上げているが、上手く声を出せていないので美琴に届くことは無かった。

「きゅう」

 更に頭を撫で始めたことにより、幸村の脳は完全に動くことを辞めた。

 12時56分。ご臨終です。

「そろそろやめとけ。昼休み終わっても起きなくなるぞ」

 幸村は余りにも耐性が無いからな。ちょっと攻められるとすぐ気絶してしまう。

「おっと、そうだね」

 美琴は気絶した幸村を開放し、膝枕に移行させた。

「脱線したが、話の続きだな。俺は二人の事を真剣に考えているぞ」

「そ、そうなのかい?」

「そうだ。四六時中お前らの事を考えている」

「ふ、ふーん。どんなところを?」

「幸村は細く頼りなさそうで、しっかりと筋肉があるこの腕を。そして、」

 俺は美琴の前に立ち、顎をクイと上げて、

「美琴はこの整った顔と、そこから発せられる心地よい声。そしてお前の考えている全てを」

 俺は咄嗟に準備出来た中で最高の決め台詞を言った。もう少し面白い言い方はあっただろうか。

「そ、そこまで思ってるのかい!?!?」

 どんなイケメンな返しが飛んでくるのかと思っていたら、めちゃくちゃ動揺していた。

 しかしキャラが抜けかけているわけでは無いな。

 これは圧倒的攻撃力を持っていながら、攻められると弱いというキャラか?

 なるほど。そういうギミックだったのか。そりゃあ外から観察しているだけでは分かるわけがないな。

 誰も美琴を攻めようと考える奴は居ないからな。

 これは良いな。ちゃんと女であると公表しているキャラだから違和感もない。

 おねショタなら怒られるかもしれないが、普通の恋愛漫画ならギャップ萌えとして人気になること間違いなしだな。

 次回登場時に反映させよう。

 脳内でメモを済ませた所で、目の前の収集をするか。

「恐らく途中から大きな誤解をしていたようだが、単に俺の仕事場で遊ぼうって話だぞ」

 まあしっかりと誤解をさせるように話していたわけだが。

「んなっ!?私もそう考えていたさ!」

 分かりやすい反応だな。

 可愛い一面も見られるから良いなこのキャラ。イケメンでなのに女という点を上手く使っている。

「そうか、なら良かった」

「でも、四六時中私たちの事を考えているってのは……」

「ああ、それか。幸村はテニスで腕を負傷して背景を書けなくならないか日々心配をしているな」

「そして美琴は整った顔と良い声で人々を魅了しているが、馬鹿ってことがバレたらどうなるんだろなって考えている」

 幸村の方は正直に話したが、美琴をキャラのモデルにしているからだって正直に話してしまうと今後のキャラに響くので適当に誤魔化した。

「私は馬鹿じゃない!」

「毎度俺に勉強を教えてもらわなきゃ赤点を回避できない奴が何を言う」

 美琴は役者に全てを捧げているので現代文以外の成績が壊滅的だ。

「そ、それは……」

 流石のイケメンキャラも、弱点を突かれたら言い返せないようだ。

「とりあえず幸村を教室まで運ぶぞ。今回の衝撃だと授業が始まる頃まで意識を取り戻さないだろうからな」

「そ、そうだね」

 俺たちは意識を失った幸村を教室の席まで運んだ。

 クラスメイトには何事だという目で見られたが、このくらい必要経費だ。


「お二人とも、ちょっと良いですか?」

 その放課後、漫画を描くために仕事場に向かおうとしたら、げた箱で背後から女子に話しかけられた。

「俺たちか?」

「はい!!」

 振り返ってみると、見覚えのない生徒だった。シューズの色が緑か。

 俺たちが青で、一個上が赤だから1年生だな。

 幸村ならともかく、俺に用があるってなんだ?

「何か悪い事でもしたか?」

 心当たりは無いが、それ以外可能性は思い当たらない。

「いえ。そんなことはありません。私、雨宮沙希がファンなので声を掛けてしまいました!」

 ああ、なるほど。全てを理解した。

「美琴と仲良くなりたいんだな」

 この黒髪ロングで清楚感溢れる後輩は日頃から演劇を嗜んでいるんだな。で美琴が同じ高校に居ることを偶然発見したと。気絶している幸村を運んでいる時だろうか。大分目立っていたしな。そうに違いない。

「いえ、違います。お二人のファンなんです!」

「ん?」

「どういうこと?」

 さっぱり意味が分からない。幸村単体とかならともかく俺たち二人?
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