死せる勇者、魔界で生きる 〜蘇った俺はただ静かに暮らしたい〜

夢乃アイム

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第一章:再び目覚めた勇者

第二十三話:目覚めしもの

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 ギギギ……ゴゴゴゴ……ッ!

 扉が開かれると同時に、地下室に渦巻いていた魔力が一気に溢れ出した。まるで解き放たれた猛獣の咆哮のように、荒々しい気流がセリオとリゼリアの身体を包み込む。

「……これは、想像以上ね」

 リゼリアが目を細めながら、袖を翻して魔力の奔流を防ぐ防壁を展開する。彼女の白髪が風に煽られ、ふわりと宙に舞った。

 セリオも剣を構え、奥の暗闇を睨む。

 扉の向こうには、広大な空間が広がっていた。地下室とは思えないほどの高さのある天井、四方の壁には古代の魔法陣が刻まれ、中央には石造りの祭壇が鎮座している。その祭壇の上には、黒い繭のようなものが浮かび、脈動していた。

「……あれが封印されていたものか?」

 セリオが低く呟く。

「そうみたいね。魔力の源は完全にあそこから……ただ、まだ完全に目覚めてはいないみたい」

 リゼリアが慎重に歩み寄ろうとした、その時——

 ——ズズ……ズズズ……ッ!!

 黒い繭が震え始め、ひび割れが走る。  

「ッ……動いた!?」

 セリオが瞬時に前に出て、剣を構えた。しかし、次の瞬間——

 ビキィッ!!

 繭が割れ、中から黒い霧が噴き出す。その霧の中から、ゆっくりと何かが現れた。

「……こ、れは……」

 セリオは思わず言葉を失う。

 現れたのは、一体の人型の影——だが、その姿はどこか異様だった。

 黒く染まった鎧を身に纏い、頭部には獣の角のようなものが生えている。肌は青白く、目は光のない漆黒。そして、その体からは強大な魔力の波動が放たれていた。

「……古代の魔族?」

 リゼリアが静かに呟く。

 その影はゆっくりと顔を上げ、無感情な目でセリオとリゼリアを見つめた。そして——

「……勇者か?」

 低く、かすれた声が響く。その瞬間、セリオの背筋に冷たいものが走った。

 ——この存在は、自分を「勇者」として認識している。

「……お前は、何者だ?」

 セリオが問いかけると、影はゆっくりと口元を歪めた。  

「名など、とうに忘れた……だが、貴様が勇者ならば——」

 影が腕を持ち上げると、その手に漆黒の剣が出現する。そして、一歩、また一歩とこちらに近づいてくる。

「……殺すしかない」

 次の瞬間——影が疾風のごとく跳んだ。

「来るぞ!」

 セリオは即座に剣を構え、迎え撃つ。  

 こうして、館の地下で封印されていた謎の魔族との戦いが幕を開けた。
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