10 / 86
第九話:甥との邂逅
しおりを挟む
エリートモンスター《墓守の亡霊》を倒し、新スキル《死者の加護》を獲得したレイヴンは、墓地の奥で座り込みながら息を整えていた。
「ふう……さすがに、今のはキツかったな」
HPはほぼゼロに近く、スケルトンも全滅。ここで無理をすれば、死亡してデスペナルティを受けることになる。
(無理は禁物だ……一度、街に戻るか)
レイヴンはメニューを開き、帰還アイテム《帰還の燭台》を使用した。
※
——《王都ヴェルニア》
画面が切り替わり、レイヴンは広大なファンタジー都市の一角に降り立った。
石畳の道を行き交うプレイヤーやNPCたち。市場では露天商が賑やかに声を上げ、武具屋の前では新規プレイヤーらしき者が装備を物色している。
(これが……MMORPGの大都市か)
VRゲーム初心者の誠司にとって、この光景は新鮮だった。
「……さて、まずは回復を——」
——と、そこで突然、背後から声をかけられた。
「おーい! もしかしてレイヴン?」
(ん?)
振り返ると、そこに立っていたのは蒼髪の青年騎士だった。
《キャバル》
レベル:12
職業:ホーリーナイト(聖騎士)
装備:《蒼鋼の鎧》《祝福の大剣》
見たところ、初心者ではなく中堅プレイヤーといった風格だ。
「……お前は?」
「ははっ、やっぱり誠司おじさんか! 俺だよ、俊也!」
「……俊也?」
驚きとともに、レイヴン——いや、誠司は青年を見つめ直した。
「お前、このゲームをやってたのか」
「そりゃそうだよ! 何しろ、このゲームをプレゼントしたのは俺なんだからな!」
俊也は得意げに胸を張る。
(そうか……あいつも、この世界にいたのか)
誠司の甥である俊也は、現在25歳。社会人として働きながら、趣味でMMORPGを楽しんでいると聞いていた。
(あの生意気なガキが、こんな立派な騎士になってるとはな)
感慨深いものを覚えつつも、誠司は静かに問いかけた。
「……で、何の用だ?」
「いや、伯父さんがちゃんとゲームやってるか気になってさ」
「俺がゲームをやるのがそんなに珍しいか?」
「うん、めっちゃ珍しい」
俊也は即答した。
「でも、やっぱり伯父さんだな。始めたばかりなのに、もうスキル欄に《死者の加護》があるじゃん」
「……どうしてそれを」
「ここのシステム、他プレイヤーのステータスをある程度見れる仕様なんだよ。特にパーティーを組めば、もっと詳しく見られる」
「なるほどな」
レイヴンは納得した。
(ならば、俺がネクロマンサーを選んだことも分かってるというわけか)
「で、伯父さんさ……これからどうするの?」
「どうする、とは?」
「このゲーム、めちゃくちゃ奥が深いんだよ。ストーリークエストだけでも膨大だし、プレイヤー同士の戦いもある。ネクロマンサーなら、レイドボス戦で召喚部隊を指揮する戦法ができるし、アンデッドを集めてダンジョン探索特化もアリだし……やれることは山ほどある」
「ふむ……」
俊也の話を聞きながら、レイヴンは考えた。
(俺はこのゲームで何をするつもりなのか……)
最初は単なる気晴らしだった。
還暦を迎え、仕事を辞め、ふと手持ち無沙汰になったからゲームを始めてみただけ。
だが——
初めての狩り、初めてのエリート戦、初めてのスキル獲得……そのすべてが新鮮だった。
(もう少し、やってみるか)
「……よし。まずは装備を整えるか」
「おっ、やる気になった?」
「ああ」
俊也はニヤリと笑い、レイヴンの肩を叩いた。
「じゃあ、いい店紹介してやるよ。ここからちょっと歩いたところに、アンデッド使い向けの武器屋があるんだ」
「ほう……それはありがたい」
「ついでに、パーティー組まない? 俺、結構強いから色々教えてやれるよ?」
「……それは遠慮しておこう」
「えー、なんで?」
「お前に頼るのは癪だからな」
「うわ、頑固……」
そんな軽口を叩き合いながら、二人は街の奥へと歩いていく。
※
(ゲームを始める理由は、ただの暇つぶしだった)
(だが、実際にやってみれば、こんなふうに新しい出会いがある)
(たとえそれが、現実では知っている甥っ子だったとしても——)
(……悪くない、か)
レイヴンは微かに笑いながら、俊也の後についていった。
「ふう……さすがに、今のはキツかったな」
HPはほぼゼロに近く、スケルトンも全滅。ここで無理をすれば、死亡してデスペナルティを受けることになる。
(無理は禁物だ……一度、街に戻るか)
レイヴンはメニューを開き、帰還アイテム《帰還の燭台》を使用した。
※
——《王都ヴェルニア》
画面が切り替わり、レイヴンは広大なファンタジー都市の一角に降り立った。
石畳の道を行き交うプレイヤーやNPCたち。市場では露天商が賑やかに声を上げ、武具屋の前では新規プレイヤーらしき者が装備を物色している。
(これが……MMORPGの大都市か)
VRゲーム初心者の誠司にとって、この光景は新鮮だった。
「……さて、まずは回復を——」
——と、そこで突然、背後から声をかけられた。
「おーい! もしかしてレイヴン?」
(ん?)
振り返ると、そこに立っていたのは蒼髪の青年騎士だった。
《キャバル》
レベル:12
職業:ホーリーナイト(聖騎士)
装備:《蒼鋼の鎧》《祝福の大剣》
見たところ、初心者ではなく中堅プレイヤーといった風格だ。
「……お前は?」
「ははっ、やっぱり誠司おじさんか! 俺だよ、俊也!」
「……俊也?」
驚きとともに、レイヴン——いや、誠司は青年を見つめ直した。
「お前、このゲームをやってたのか」
「そりゃそうだよ! 何しろ、このゲームをプレゼントしたのは俺なんだからな!」
俊也は得意げに胸を張る。
(そうか……あいつも、この世界にいたのか)
誠司の甥である俊也は、現在25歳。社会人として働きながら、趣味でMMORPGを楽しんでいると聞いていた。
(あの生意気なガキが、こんな立派な騎士になってるとはな)
感慨深いものを覚えつつも、誠司は静かに問いかけた。
「……で、何の用だ?」
「いや、伯父さんがちゃんとゲームやってるか気になってさ」
「俺がゲームをやるのがそんなに珍しいか?」
「うん、めっちゃ珍しい」
俊也は即答した。
「でも、やっぱり伯父さんだな。始めたばかりなのに、もうスキル欄に《死者の加護》があるじゃん」
「……どうしてそれを」
「ここのシステム、他プレイヤーのステータスをある程度見れる仕様なんだよ。特にパーティーを組めば、もっと詳しく見られる」
「なるほどな」
レイヴンは納得した。
(ならば、俺がネクロマンサーを選んだことも分かってるというわけか)
「で、伯父さんさ……これからどうするの?」
「どうする、とは?」
「このゲーム、めちゃくちゃ奥が深いんだよ。ストーリークエストだけでも膨大だし、プレイヤー同士の戦いもある。ネクロマンサーなら、レイドボス戦で召喚部隊を指揮する戦法ができるし、アンデッドを集めてダンジョン探索特化もアリだし……やれることは山ほどある」
「ふむ……」
俊也の話を聞きながら、レイヴンは考えた。
(俺はこのゲームで何をするつもりなのか……)
最初は単なる気晴らしだった。
還暦を迎え、仕事を辞め、ふと手持ち無沙汰になったからゲームを始めてみただけ。
だが——
初めての狩り、初めてのエリート戦、初めてのスキル獲得……そのすべてが新鮮だった。
(もう少し、やってみるか)
「……よし。まずは装備を整えるか」
「おっ、やる気になった?」
「ああ」
俊也はニヤリと笑い、レイヴンの肩を叩いた。
「じゃあ、いい店紹介してやるよ。ここからちょっと歩いたところに、アンデッド使い向けの武器屋があるんだ」
「ほう……それはありがたい」
「ついでに、パーティー組まない? 俺、結構強いから色々教えてやれるよ?」
「……それは遠慮しておこう」
「えー、なんで?」
「お前に頼るのは癪だからな」
「うわ、頑固……」
そんな軽口を叩き合いながら、二人は街の奥へと歩いていく。
※
(ゲームを始める理由は、ただの暇つぶしだった)
(だが、実際にやってみれば、こんなふうに新しい出会いがある)
(たとえそれが、現実では知っている甥っ子だったとしても——)
(……悪くない、か)
レイヴンは微かに笑いながら、俊也の後についていった。
19
あなたにおすすめの小説
インフィニティ・オンライン~ネタ職「商人」を選んだもふもふワンコは金の力(銭投げ)で無双する~
黄舞
SF
無数にあるゲームの中でもβ版の完成度、自由度の高さから瞬く間に話題を総ナメにした「インフィニティ・オンライン」。
貧乏学生だった商山人志はゲームの中だけでも大金持ちになることを夢みてネタ職「商人」を選んでしまう。
攻撃スキルはゲーム内通貨を投げつける「銭投げ」だけ。
他の戦闘職のように強力なスキルや生産職のように戦闘に役立つアイテムや武具を作るスキルも無い。
見た目はせっかくゲームだからと選んだもふもふワンコの獣人姿。
これもモンスターと間違えられやすいため、PK回避で選ぶやつは少ない!
そんな中、人志は半ばやけくそ気味にこう言い放った。
「くそっ! 完全に騙された!! もういっその事お前らがバカにした『商人』で天下取ってやんよ!! 金の力を思い知れ!!」
一度完結させて頂きましたが、勝手ながら2章を始めさせていただきました
毎日更新は難しく、最長一週間に一回の更新頻度になると思います
また、1章でも試みた、読者参加型の物語としたいと思っています
具体的にはあとがき等で都度告知を行いますので奮ってご参加いただけたらと思います
イベントの有無によらず、ゲーム内(物語内)のシステムなどにご指摘を頂けましたら、運営チームの判断により緊急メンテナンスを実施させていただくことも考えています
皆様が楽しんで頂けるゲーム作りに邁進していきますので、変わらぬご愛顧をよろしくお願いしますm(*_ _)m
吉日
運営チーム
大変申し訳ありませんが、諸事情により、キリが一応いいということでここで再度完結にさせていただきます。
【完結】VRMMOでチュートリアルを2回やった生産職のボクは最強になりました
鳥山正人
ファンタジー
フルダイブ型VRMMOゲームの『スペードのクイーン』のオープンベータ版が終わり、正式リリースされる事になったので早速やってみたら、いきなりのサーバーダウン。
だけどボクだけ知らずにそのままチュートリアルをやっていた。
チュートリアルが終わってさぁ冒険の始まり。と思ったらもう一度チュートリアルから開始。
2度目のチュートリアルでも同じようにクリアしたら隠し要素を発見。
そこから怒涛の快進撃で最強になりました。
鍛冶、錬金で主人公がまったり最強になるお話です。
※この作品は「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過した【第1章完結】デスペナのないVRMMOで〜をブラッシュアップして、続きの物語を描いた作品です。
その事を理解していただきお読みいただければ幸いです。
───────
自筆です。
アルファポリス、第18回ファンタジー小説大賞、奨励賞受賞
【完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。
鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。
鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。
まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。
「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。
────────
自筆です。
日本新世紀ー日本の変革から星間連合の中の地球へー
黄昏人
SF
現在の日本、ある地方大学の大学院生のPCが化けた!
あらゆる質問に出してくるとんでもなくスマートで完璧な答え。この化けたPC“マドンナ”を使って、彼、誠司は核融合発電、超バッテリーとモーターによるあらゆるエンジンの電動化への変換、重力エンジン・レールガンの開発・実用化などを通じて日本の経済・政治状況及び国際的な立場を変革していく。
さらに、こうしたさまざまな変革を通じて、日本が主導する地球防衛軍は、巨大な星間帝国の侵略を跳ね返すことに成功する。その結果、地球人類はその星間帝国の圧政にあえいでいた多数の歴史ある星間国家の指導的立場になっていくことになる。
この中で、自らの進化の必要性を悟った人類は、地球連邦を成立させ、知能の向上、他星系への植民を含む地球人類全体の経済の底上げと格差の是正を進める。
さらには、マドンナと誠司を擁する地球連邦は、銀河全体の生物に迫る危機の解明、撃退法の構築、撃退を主導し、銀河のなかに確固たる地位を築いていくことになる。
ゲーム内転移ー俺だけログアウト可能!?ゲームと現実がごちゃ混ぜになった世界で成り上がる!ー
びーぜろ
ファンタジー
ブラック企業『アメイジング・コーポレーション㈱』で働く経理部員、高橋翔23歳。
理不尽に会社をクビになってしまった翔だが、慎ましい生活を送れば一年位なら何とかなるかと、以前よりハマっていたフルダイブ型VRMMO『Different World』にダイブした。
今日は待ちに待った大規模イベント情報解禁日。その日から高橋翔の世界が一変する。
ゲーム世界と現実を好きに行き来出来る主人公が織り成す『ハイパーざまぁ!ストーリー。』
計画的に?無自覚に?怒涛の『ざまぁw!』がここに有る!
この物語はフィクションです。
※ノベルピア様にて3話先行配信しておりましたが、昨日、突然ログインできなくなってしまったため、ノベルピア様での配信を中止しております。
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
最前線攻略に疲れた俺は、新作VRMMOを最弱職業で楽しむことにした
水の入ったペットボトル
SF
これまであらゆるMMOを最前線攻略してきたが、もう俺(大川優磨)はこの遊び方に満足してしまった。いや、もう楽しいとすら思えない。
ゲームは楽しむためにするものだと思い出した俺は、新作VRMMOを最弱職業『テイマー』で始めることに。
βテストでは最弱職業だと言われていたテイマーだが、主人公の活躍によって評価が上がっていく?
そんな周りの評価など関係なしに、今日も主人公は楽しむことに全力を出す。
この作品は「カクヨム」様、「小説家になろう」様にも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる