13 / 30
第1話 しがみつ鬼
(12)幸せの刻
しおりを挟む
ニャア、ニャア、ミャア。
そう鳴けば、おつやは必ず気づいてくれる。
気づいたら、優しい言葉をかけてくれる。
「あら、チビ。そんなとこにいたのかい?
もうちょっとだけ待っとくれよ? すぐにご飯をあげるからね」
おつやは、優しくて、いい匂いがして。
それから、とっても綺麗なおなご。
チビのことを大事にしてくれる、きょうだい。
おつやに出会ってチビは、寂しくなくなった。
だから、チビもおつやをひとりにはしない。
……何があっても。
***
ヒソヒソ、ヒソヒソ。
おつやを見て、ほかの人たちが何か言っている。
茶店で働くおつやは、たくさんの人から好かれている。
「おつやちゃん、今日もかわいいねぇ」
「俺ンとこに、嫁に来ねぇか?」
「何言ってんだ、おめぇなんかのとこに来るもんかよ!
おつやちゃん、俺のほうが甲斐性があるぜぇ?」
「騙されちゃあ、いけないぜ。おつやちゃん。
こいつときたら、飲む打つ買うの三拍子揃った放蕩もんだ。
一緒になった暁にゃあ、あっという間に首括る羽目になるぜ」
常連客の決まりきったやり取りにも、おつやは笑顔で返す。
「ふふふ。アタシみたいな身寄りのない娘ひとり。
もらってくれる人がいたら、ありがたいねぇ。
あ、だけど、猫好きじゃなきゃいけないよ?
チビは、一生、アタシと一緒なんだからさ」
そう言って、おつやが笑って奥に引っ込む。
すると、客たちのヒソヒソは、大きくなっていく。
おつやには、聞こえないように。
けれど、周りの皆には聞こえるように。
ヒソヒソと噂話は、そこここで花を咲かせる。
「おつやちゃん、ちょいとおかしくなっちまったって本当かい?」
「あぁ。さっきの聞いただろ? 猫がいるって言うんだよ」
「猫がいちゃ、まずいってのかい?」
「いやいや、そうじゃあなくってさ。
おつやちゃんの猫はさ、とうに死んじまったらしいんだよ」
「そうなのかい? さっきの話っぷりじゃあ……」
「そこだよ! どうも、おつやちゃんには死んだ猫が見えてるようでさ」
「はぁ? 見えてるって?」
「猫のために水をやったり、飯を置いといてやったりするらしいんだ」
「そいつは、陰膳ってやつじゃあないのかい?」
「そうなら心配は無ぇんだがよ? なんにもいないところにさ。
何度も話しかけてるらしいんだよ。チビ、チビってな」
「そいつは……ちょいと、おっかねぇなぁ」
「だからよ? あんな小町娘だってのに、もらうやつがいねぇのよ」
「さっきの連中は、どうなんだい?」
「あぁ、あいつらは分かった上で、やり取りを楽しんでるってぇだけさ。
本気でもらうつもりなら、あんな風には言わねぇもんさ」
おつやには聞こえていなくとも、チビには届いている。
ヒソヒソ話の中身も、人が出す、ちょっとした悪意も。
かわいい、好きだと言いながらも本気でおつやに近づく者はいない。
チビは、それでいいと思う。
おつやとチビだけがいれば、幸せなんだと知っていたから。
けれど、ある時から、おつやの前にひとりの男が現れた。
栄次郎という、その男は、ほかの連中とは少し違うようだった。
色白の顔に、細身の体つき。
切れ長の目は、不思議な色気を感じさせる。
優しげな口調は品よく聞こえて、おつやの心をあっさり掴んだ。
「ねぇ、チビ。栄次郎さんと一緒になってもいいかねぇ?
初めてなんだよ。一緒にいたいって思ったお人はさ。
もちろん、チビ。あんたも連れてくよ。ずうっと一緒だからね」
ニャア、ニャア!
嬉しそうなおつやの顔が見られるなら、チビはいいと思えた。
それに……。
栄次郎は、皆が無視するチビにも話しかけてくれる。
「チビや。そこにいるんだろ? ぼんやりだけど、見えてるよ。
アタシは、蒲柳の質でねぇ。ずっと寝たり起きたりのくり返しさ。
ようやく、少しマシになってきてねぇ。
おつやちゃんに出会えたのは、僥倖だったよ。
皆が見えないチビが見えるのも、この質のおかげかねぇ?
それなら、この弱い体も捨てたもんじゃ無いのかも知れないねぇ」
ミャア!
チビがひと鳴きすると、栄次郎はふふふと笑って撫でてくれる。
「なるべく長くおつやちゃんといられるように。
アタシも励むからさ。チビも助けておくれよ?」
チビは、満ち足りていた。
おつやと栄次郎は、幸せそうに笑っている。
久助という弟分も出来た。
小さな久助は、チビの姿が見えてはいないようだ。
それでも、チビは構わない。
久助は、おつやと栄次郎の宝ものだから、チビにも宝だ。
ずっとずっと、皆がいればいい。
あぁ。
この幸せが続くためならば、チビはなんだってするつもりだ。
*****
グスッ、グスグス。
繭玉が見せる染みを見ていた巳之吉が、さっきからうるさい。
両のまなこからは涙をあふれさせ、鼻水は止めどなく流れる。
桔梗は、そんな巳之吉に呆れる素振りも見せず、スッと手拭いを差し出す。
「おぅ……。すまねぇな、桔梗よぅ。
俺ァ、こういうのに弱くっていけねぇ。
事の顛末を知ってると、ますますいけねぇ。
どうして、このまま幸せじゃあいけねぇんだって思っちまう」
「はい……」
「おっと。でも手拭いは、平気だぜ。俺ァ、俺の手拭いが……」
そう言いながら、巳之吉が帯に手をかけると、そこで気がつく。
「あぁ、そうだ。俺のは、さっき……」
「ええ。いいんですよ。私のをお使いください」
「けどよ。おまえさんのは、なんだか汚しちゃならねぇ気がしてよ?」
「手拭いは、汚れるもの。どうかお気になさらず」
「そ、そうかい? それじゃあ……」
桔梗の手拭いを受け取ると、巳之吉は、ぐしゃぐしゃの顔を拭う。
その手拭いからは、どこかで嗅いだことのあるような香りがする。
けれど、どこで嗅いだものなのか巳之吉は思い出せない。
スッキリした顔の巳之吉に、桔梗が言う。
「あぁ、ほら。もう少し、見せたいものがあるようです」
ぐにゃり。
幸せそうな景色が歪む。
川べりに咲く露草が、その可憐な姿を揺らしている。
どこかの水辺に灯る光のチカチカは、身を焦がす蛍か。
ピタリ。
動きを止めた繭玉の染みが、次に見せたものは死にかけの男の姿。
ゴホッ、ゴホッ。ゲフッ、ゲフゲフ。
ヒューーー、ヒュー。
咳き込んでいるのは、栄次郎。
喉からは、隙間風のような音が止まない。
ずいぶんと頬がこけている。
目は虚ろで、宙をぼんやりと見ている。
「栄さん! 今、帰ったよ。今日はねぇ、滋養のつくもんをさ……」
長屋の戸が開くと共に、おつやの声が聞こえてくる。
その声は、栄次郎の虚ろな目の光をこの世に呼び戻す。
そう鳴けば、おつやは必ず気づいてくれる。
気づいたら、優しい言葉をかけてくれる。
「あら、チビ。そんなとこにいたのかい?
もうちょっとだけ待っとくれよ? すぐにご飯をあげるからね」
おつやは、優しくて、いい匂いがして。
それから、とっても綺麗なおなご。
チビのことを大事にしてくれる、きょうだい。
おつやに出会ってチビは、寂しくなくなった。
だから、チビもおつやをひとりにはしない。
……何があっても。
***
ヒソヒソ、ヒソヒソ。
おつやを見て、ほかの人たちが何か言っている。
茶店で働くおつやは、たくさんの人から好かれている。
「おつやちゃん、今日もかわいいねぇ」
「俺ンとこに、嫁に来ねぇか?」
「何言ってんだ、おめぇなんかのとこに来るもんかよ!
おつやちゃん、俺のほうが甲斐性があるぜぇ?」
「騙されちゃあ、いけないぜ。おつやちゃん。
こいつときたら、飲む打つ買うの三拍子揃った放蕩もんだ。
一緒になった暁にゃあ、あっという間に首括る羽目になるぜ」
常連客の決まりきったやり取りにも、おつやは笑顔で返す。
「ふふふ。アタシみたいな身寄りのない娘ひとり。
もらってくれる人がいたら、ありがたいねぇ。
あ、だけど、猫好きじゃなきゃいけないよ?
チビは、一生、アタシと一緒なんだからさ」
そう言って、おつやが笑って奥に引っ込む。
すると、客たちのヒソヒソは、大きくなっていく。
おつやには、聞こえないように。
けれど、周りの皆には聞こえるように。
ヒソヒソと噂話は、そこここで花を咲かせる。
「おつやちゃん、ちょいとおかしくなっちまったって本当かい?」
「あぁ。さっきの聞いただろ? 猫がいるって言うんだよ」
「猫がいちゃ、まずいってのかい?」
「いやいや、そうじゃあなくってさ。
おつやちゃんの猫はさ、とうに死んじまったらしいんだよ」
「そうなのかい? さっきの話っぷりじゃあ……」
「そこだよ! どうも、おつやちゃんには死んだ猫が見えてるようでさ」
「はぁ? 見えてるって?」
「猫のために水をやったり、飯を置いといてやったりするらしいんだ」
「そいつは、陰膳ってやつじゃあないのかい?」
「そうなら心配は無ぇんだがよ? なんにもいないところにさ。
何度も話しかけてるらしいんだよ。チビ、チビってな」
「そいつは……ちょいと、おっかねぇなぁ」
「だからよ? あんな小町娘だってのに、もらうやつがいねぇのよ」
「さっきの連中は、どうなんだい?」
「あぁ、あいつらは分かった上で、やり取りを楽しんでるってぇだけさ。
本気でもらうつもりなら、あんな風には言わねぇもんさ」
おつやには聞こえていなくとも、チビには届いている。
ヒソヒソ話の中身も、人が出す、ちょっとした悪意も。
かわいい、好きだと言いながらも本気でおつやに近づく者はいない。
チビは、それでいいと思う。
おつやとチビだけがいれば、幸せなんだと知っていたから。
けれど、ある時から、おつやの前にひとりの男が現れた。
栄次郎という、その男は、ほかの連中とは少し違うようだった。
色白の顔に、細身の体つき。
切れ長の目は、不思議な色気を感じさせる。
優しげな口調は品よく聞こえて、おつやの心をあっさり掴んだ。
「ねぇ、チビ。栄次郎さんと一緒になってもいいかねぇ?
初めてなんだよ。一緒にいたいって思ったお人はさ。
もちろん、チビ。あんたも連れてくよ。ずうっと一緒だからね」
ニャア、ニャア!
嬉しそうなおつやの顔が見られるなら、チビはいいと思えた。
それに……。
栄次郎は、皆が無視するチビにも話しかけてくれる。
「チビや。そこにいるんだろ? ぼんやりだけど、見えてるよ。
アタシは、蒲柳の質でねぇ。ずっと寝たり起きたりのくり返しさ。
ようやく、少しマシになってきてねぇ。
おつやちゃんに出会えたのは、僥倖だったよ。
皆が見えないチビが見えるのも、この質のおかげかねぇ?
それなら、この弱い体も捨てたもんじゃ無いのかも知れないねぇ」
ミャア!
チビがひと鳴きすると、栄次郎はふふふと笑って撫でてくれる。
「なるべく長くおつやちゃんといられるように。
アタシも励むからさ。チビも助けておくれよ?」
チビは、満ち足りていた。
おつやと栄次郎は、幸せそうに笑っている。
久助という弟分も出来た。
小さな久助は、チビの姿が見えてはいないようだ。
それでも、チビは構わない。
久助は、おつやと栄次郎の宝ものだから、チビにも宝だ。
ずっとずっと、皆がいればいい。
あぁ。
この幸せが続くためならば、チビはなんだってするつもりだ。
*****
グスッ、グスグス。
繭玉が見せる染みを見ていた巳之吉が、さっきからうるさい。
両のまなこからは涙をあふれさせ、鼻水は止めどなく流れる。
桔梗は、そんな巳之吉に呆れる素振りも見せず、スッと手拭いを差し出す。
「おぅ……。すまねぇな、桔梗よぅ。
俺ァ、こういうのに弱くっていけねぇ。
事の顛末を知ってると、ますますいけねぇ。
どうして、このまま幸せじゃあいけねぇんだって思っちまう」
「はい……」
「おっと。でも手拭いは、平気だぜ。俺ァ、俺の手拭いが……」
そう言いながら、巳之吉が帯に手をかけると、そこで気がつく。
「あぁ、そうだ。俺のは、さっき……」
「ええ。いいんですよ。私のをお使いください」
「けどよ。おまえさんのは、なんだか汚しちゃならねぇ気がしてよ?」
「手拭いは、汚れるもの。どうかお気になさらず」
「そ、そうかい? それじゃあ……」
桔梗の手拭いを受け取ると、巳之吉は、ぐしゃぐしゃの顔を拭う。
その手拭いからは、どこかで嗅いだことのあるような香りがする。
けれど、どこで嗅いだものなのか巳之吉は思い出せない。
スッキリした顔の巳之吉に、桔梗が言う。
「あぁ、ほら。もう少し、見せたいものがあるようです」
ぐにゃり。
幸せそうな景色が歪む。
川べりに咲く露草が、その可憐な姿を揺らしている。
どこかの水辺に灯る光のチカチカは、身を焦がす蛍か。
ピタリ。
動きを止めた繭玉の染みが、次に見せたものは死にかけの男の姿。
ゴホッ、ゴホッ。ゲフッ、ゲフゲフ。
ヒューーー、ヒュー。
咳き込んでいるのは、栄次郎。
喉からは、隙間風のような音が止まない。
ずいぶんと頬がこけている。
目は虚ろで、宙をぼんやりと見ている。
「栄さん! 今、帰ったよ。今日はねぇ、滋養のつくもんをさ……」
長屋の戸が開くと共に、おつやの声が聞こえてくる。
その声は、栄次郎の虚ろな目の光をこの世に呼び戻す。
0
あなたにおすすめの小説
剣客居酒屋草間 江戸本所料理人始末
松風勇水(松 勇)
歴史・時代
旧題:剣客居酒屋 草間の陰
第9回歴史・時代小説大賞「読めばお腹がすく江戸グルメ賞」受賞作。
本作は『剣客居酒屋 草間の陰』から『剣客居酒屋草間 江戸本所料理人始末』と改題いたしました。
2025年11月28書籍刊行。
なお、レンタル部分は修正した書籍と同様のものとなっておりますが、一部の描写が割愛されたため、後続の話とは繋がりが悪くなっております。ご了承ください。
酒と肴と剣と闇
江戸情緒を添えて
江戸は本所にある居酒屋『草間』。
美味い肴が食えるということで有名なこの店の主人は、絶世の色男にして、無双の剣客でもある。
自分のことをほとんど話さないこの男、冬吉には実は隠された壮絶な過去があった。
多くの江戸の人々と関わり、その舌を満足させながら、剣の腕でも人々を救う。
その慌し日々の中で、己の過去と江戸の闇に巣食う者たちとの浅からぬ因縁に気付いていく。
店の奉公人や常連客と共に江戸を救う、包丁人にして剣客、冬吉の物語。
与兵衛長屋つれあい帖 お江戸ふたり暮らし
かずえ
歴史・時代
旧題:ふたり暮らし
長屋シリーズ一作目。
第八回歴史・時代小説大賞で優秀短編賞を頂きました。応援してくださった皆様、ありがとうございます。
十歳のみつは、十日前に一人親の母を亡くしたばかり。幸い、母の蓄えがあり、自分の裁縫の腕の良さもあって、何とか今まで通り長屋で暮らしていけそうだ。
頼まれた繕い物を届けた帰り、くすんだ着物で座り込んでいる男の子を拾う。
一人で寂しかったみつは、拾った男の子と二人で暮らし始めた。
夜鳴き蕎麦徒然草子
いわん
歴史・時代
日本橋の袂、湯気の向こうに映る江戸の人間模様。
文化四年、江戸。夜の静寂に包まれた日本橋で、一台の夜鳴き蕎麦屋「清吉」に灯がともる。 店主は、寡黙な職人。茹で上げる蕎麦の音と出汁の香りに誘われ、今夜も暖簾をくぐる者たちがいた。
愚痴をこぼす同心、ささやかな祝いを分かち合う老夫婦、故郷を懐かしむ上方者、そして袖口に不穏な汚れをつけた訳ありの男……。 店主は何も聞かず、ただ淡々と蕎麦を差し出す。
冬の夜から春一番が吹く頃まで。 風鈴の音とともに流れる、切なくも温かい十の物語。 一日の終わりに、江戸の粋を味わう「蕎麦」の人情連作短編。
2026/01/23、全10話。完結しました。
【完結】ふたつ星、輝いて 〜あやし兄弟と町娘の江戸捕物抄〜
上杉
歴史・時代
■歴史小説大賞奨励賞受賞しました!■
おりんは江戸のとある武家屋敷で下女として働く14歳の少女。ある日、突然屋敷で母の急死を告げられ、自分が花街へ売られることを知った彼女はその場から逃げだした。
母は殺されたのかもしれない――そんな絶望のどん底にいたおりんに声をかけたのは、奉行所で同心として働く有島惣次郎だった。
今も刺客の手が迫る彼女を守るため、彼の屋敷で住み込みで働くことが決まる。そこで彼の兄――有島清之進とともに生活を始めるのだが、病弱という噂とはかけ離れた腕っぷしのよさに、おりんは驚きを隠せない。
そうしてともに生活しながら少しづつ心を開いていった――その矢先のことだった。
母の命を奪った犯人が発覚すると同時に、何故か兄清之進に凶刃が迫り――。
とある秘密を抱えた兄弟と町娘おりんの紡ぐ江戸捕物抄です!お楽しみください!
※フィクションです。
※周辺の歴史事件などは、史実を踏んでいます。
皆さまご評価頂きありがとうございました。大変嬉しいです!
今後も精進してまいります!
裏長屋の若殿、限られた自由を満喫する
克全
歴史・時代
貧乏人が肩を寄せ合って暮らす聖天長屋に徳田新之丞と名乗る人品卑しからぬ若侍がいた。月のうち数日しか長屋にいないのだが、いる時には自ら竈で米を炊き七輪で魚を焼く小まめな男だった。
無用庵隠居清左衛門
蔵屋
歴史・時代
前老中田沼意次から引き継いで老中となった松平定信は、厳しい倹約令として|寛政の改革《かんせいのかいかく》を実施した。
第8代将軍徳川吉宗によって実施された|享保の改革《きょうほうのかいかく》、|天保の改革《てんぽうのかいかく》と合わせて幕政改革の三大改革という。
松平定信は厳しい倹約令を実施したのだった。江戸幕府は町人たちを中心とした貨幣経済の発達に伴い|逼迫《ひっぱく》した幕府の財政で苦しんでいた。
幕府の財政再建を目的とした改革を実施する事は江戸幕府にとって緊急の課題であった。
この時期、各地方の諸藩に於いても藩政改革が行われていたのであった。
そんな中、徳川家直参旗本であった緒方清左衛門は、己の出世の事しか考えない同僚に嫌気がさしていた。
清左衛門は無欲の徳川家直参旗本であった。
俸禄も入らず、出世欲もなく、ただひたすら、女房の千歳と娘の弥生と、三人仲睦まじく暮らす平穏な日々であればよかったのである。
清左衛門は『あらゆる欲を捨て去り、何もこだわらぬ無の境地になって千歳と弥生の幸せだけを願い、最後は無欲で死にたい』と思っていたのだ。
ある日、清左衛門に理不尽な言いがかりが同僚立花右近からあったのだ。
清左衛門は右近の言いがかりを相手にせず、
無視したのであった。
そして、松平定信に対して、隠居願いを提出したのであった。
「おぬし、本当にそれで良いのだな」
「拙者、一向に構いません」
「分かった。好きにするがよい」
こうして、清左衛門は隠居生活に入ったのである。
花嫁御寮 ―江戸の妻たちの陰影― :【第11回歴史・時代小説大賞 奨励賞】
naomikoryo
歴史・時代
名家に嫁いだ若き妻が、夫の失踪をきっかけに、江戸の奥向きに潜む権力、謀略、女たちの思惑に巻き込まれてゆく――。
舞台は江戸中期。表には見えぬ女の戦(いくさ)が、美しく、そして静かに燃え広がる。
結城澪は、武家の「御寮人様」として嫁いだ先で、愛と誇りのはざまで揺れることになる。
失踪した夫・宗真が追っていたのは、幕府中枢を揺るがす不正金の記録。
やがて、志を同じくする同心・坂東伊織、かつて宗真の婚約者だった篠原志乃らとの交錯の中で、澪は“妻”から“女”へと目覚めてゆく。
男たちの義、女たちの誇り、名家のしがらみの中で、澪が最後に選んだのは――“名を捨てて生きること”。
これは、名もなき光の中で、真実を守り抜いたひと組の夫婦の物語。
静謐な筆致で描く、江戸奥向きの愛と覚悟の長編時代小説。
全20話、読み終えた先に見えるのは、声高でない確かな「生」の姿。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる