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第1話 王宮へ
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天蓋付きの寝台に王子は、テオをそっと横たえる。
気遣うように背中にまわされる腕。
肌に触れる絹の敷布が、すべすべと心地いい。
今さらながら緊張しているのか、王子の顔が紅潮している。
その色を見ると、反対にテオの緊張は、ほぐれていく。
(あぁ、このかたは、本当に純粋なかただ……)
「いいのか?」
「ええ、もちろんです。王子」
「ヴィルと呼んではくれないか?」
「はい、ヴィル。これからも、ずっとおそばに」
右腕を伸ばして、手のひらで王子の頬を包み込むように触る。
王子の瞳がパァッと輝いて、それから、テオの手のひらに口づけをする。
おずおずと、仰向けのテオの上に四つん這いで進む。
見慣れた王子の顔を改めて見つめる。
艶のある肌に、ナイフで削り出したかのようなシャープなアゴのライン。
潤んだ緑色の瞳は、エメラルドのように輝く。
(美しい……。こんなにも美しいかたが、私のことを)
今まで見るのを避けてきた王子の造作の美しさは、テオを感嘆させる。
王子の顔が、テオに近づき、ザクロのように赤く艶めく唇が開かれる。
応えるように、テオがアゴを少し上げると、しっとりとした王子の唇が重なる。
今までとは違って、控えめな動きで、優しく舌をからめられる。
テオのほうが、物足りなさを感じてしまい、強めに動き出してしまう。
ビクッと王子の体が震える。
テオの動きに合わせるように、王子の舌も動きを強める。
しばらくすると、王子は唇を離した。
はぁはぁと、大きく息をして、肩を上下させる。
「こんな……、こんなにも違うものなのか……」
「ええ、私も初めてです……」
「知らなかった。今、ようやく分かった」
テオはうなずくと、王子の頭を両腕で抱えるようにして引き寄せる。
アゴを少しだけ上げる。
王子が、テオの首筋に舌を這わせ始める。
「ん……、んぁ……、んっ。……んふぅ、あぁ」
もれ出るテオの喘ぎに、王子はまたしても驚きの表情を見せる。
「なんて甘美な声だ……」
「……あなたにだけ、です」
「……もっと聞きたい」
そう言うと、王子はテオの胸の突起に唇を合わせる。
今まで何度もなぶられたそれは、否応なく、張り詰めて応える。
舌と指で転がされるとふっくらと膨らんで、熟れた果実のように色づく。
「んん! ……ンァ……、はぁ、……んっ!」
「変わらず美しいな、ここは」
「んっ、はず、恥ずかしい……です」
「何を言う。許されるならば、ずっとこれだけを食べていたいくらいだ」
「……そんな、ンアァ!
そんなことを……仰らず、……ンクゥ、ほかもぜひご賞味を」
「あ、あぁ。おまえに、そんなことを言ってもらえる日がくるとは」
「わ、私は初めから、あなたの虜だったのです……」
テオの言葉に、頬を染めた王子はテオの肌に唇を落とし始める。
それは、大切な壊れものを扱うかのように丁寧で。
しっとりと湿ったプルプルの唇の感触に、テオは自身が反応するのを感じる。
「触れてもいないのに、こんなにも……」
「……仰らないでください……」
嬉しそうな王子の表情に、テオは初めての日を思い出す。
王宮家庭教師として、王子のもとに呼ばれた日のことを。
*****
『貴殿をヴィルヘルム王子の家庭教師として招聘したい』
王立大学の大学院で、魔道学研究科に所属する大学院生のテオ。
そんな内容の招聘状が、ある日、テオのもとに届いた。
テオは、ひどく困惑して、指導教授であるヨスト先生に助言を求めた。
「先生、このようなものが届いたのですが……」
「なんだい? こ、これは。王宮からの直々の招聘状じゃないか」
「はい。しかし、私は王子様とは面識がありませんし」
「何かに応募したというわけでもない?」
「ええ。春には魔導士試験もありますし、奨学金も取れたので」
「う~ん、なぜかは分からないが、招聘されたからには行かざるを得まい」
「お断りすることも可能でしょうか?」
「それは、話を聞いてみなければ分からないだろう。ただ……」
「ただ?」
「君が魔導士を目指すのならば、その所属は魔道省になるだろう?」
「はい。魔導士は、基本的に国家公務員ですから」
「そうだな。それならば、受けておいたほうが後々のためには……」
「しかし、論文も書かなければ」
「修士論文については、私のほうで融通を利かせられるだろう」
「魔導士試験の勉強は……」
「それは、向こうのご意向次第。相談してみるほかないと思うが」
本来、大学院は研究者養成のための機関である。
けれど、テオは実務家である魔導士を目指していた。
大学卒業後に受けた魔導士試験に通らず、諦めることを考えた。
ちょうど、その時に、大学院に『魔導士コース』が作られる。
大学院レベルで魔道学を学びつつ、魔導士試験にも対応できる。
そう聞いて、テオは進学を決めたのだった。
*****
招聘状に書かれていた日時に、王宮の門の前にテオは立っていた。
自分の人生には、まったく関係がないと思っていた王宮。
衛兵に身分証を見せると、通用門から中に通される。
門を通っても、宮殿自体は、はるか遠くに見えるだけ。
広すぎるほどの道と手入れの行き届いた庭が、テオを迎える。
その先に、テオの人生を変える出会いがある。
道を一歩踏み出したテオは、そのことを、つゆ知らずにいた。
気遣うように背中にまわされる腕。
肌に触れる絹の敷布が、すべすべと心地いい。
今さらながら緊張しているのか、王子の顔が紅潮している。
その色を見ると、反対にテオの緊張は、ほぐれていく。
(あぁ、このかたは、本当に純粋なかただ……)
「いいのか?」
「ええ、もちろんです。王子」
「ヴィルと呼んではくれないか?」
「はい、ヴィル。これからも、ずっとおそばに」
右腕を伸ばして、手のひらで王子の頬を包み込むように触る。
王子の瞳がパァッと輝いて、それから、テオの手のひらに口づけをする。
おずおずと、仰向けのテオの上に四つん這いで進む。
見慣れた王子の顔を改めて見つめる。
艶のある肌に、ナイフで削り出したかのようなシャープなアゴのライン。
潤んだ緑色の瞳は、エメラルドのように輝く。
(美しい……。こんなにも美しいかたが、私のことを)
今まで見るのを避けてきた王子の造作の美しさは、テオを感嘆させる。
王子の顔が、テオに近づき、ザクロのように赤く艶めく唇が開かれる。
応えるように、テオがアゴを少し上げると、しっとりとした王子の唇が重なる。
今までとは違って、控えめな動きで、優しく舌をからめられる。
テオのほうが、物足りなさを感じてしまい、強めに動き出してしまう。
ビクッと王子の体が震える。
テオの動きに合わせるように、王子の舌も動きを強める。
しばらくすると、王子は唇を離した。
はぁはぁと、大きく息をして、肩を上下させる。
「こんな……、こんなにも違うものなのか……」
「ええ、私も初めてです……」
「知らなかった。今、ようやく分かった」
テオはうなずくと、王子の頭を両腕で抱えるようにして引き寄せる。
アゴを少しだけ上げる。
王子が、テオの首筋に舌を這わせ始める。
「ん……、んぁ……、んっ。……んふぅ、あぁ」
もれ出るテオの喘ぎに、王子はまたしても驚きの表情を見せる。
「なんて甘美な声だ……」
「……あなたにだけ、です」
「……もっと聞きたい」
そう言うと、王子はテオの胸の突起に唇を合わせる。
今まで何度もなぶられたそれは、否応なく、張り詰めて応える。
舌と指で転がされるとふっくらと膨らんで、熟れた果実のように色づく。
「んん! ……ンァ……、はぁ、……んっ!」
「変わらず美しいな、ここは」
「んっ、はず、恥ずかしい……です」
「何を言う。許されるならば、ずっとこれだけを食べていたいくらいだ」
「……そんな、ンアァ!
そんなことを……仰らず、……ンクゥ、ほかもぜひご賞味を」
「あ、あぁ。おまえに、そんなことを言ってもらえる日がくるとは」
「わ、私は初めから、あなたの虜だったのです……」
テオの言葉に、頬を染めた王子はテオの肌に唇を落とし始める。
それは、大切な壊れものを扱うかのように丁寧で。
しっとりと湿ったプルプルの唇の感触に、テオは自身が反応するのを感じる。
「触れてもいないのに、こんなにも……」
「……仰らないでください……」
嬉しそうな王子の表情に、テオは初めての日を思い出す。
王宮家庭教師として、王子のもとに呼ばれた日のことを。
*****
『貴殿をヴィルヘルム王子の家庭教師として招聘したい』
王立大学の大学院で、魔道学研究科に所属する大学院生のテオ。
そんな内容の招聘状が、ある日、テオのもとに届いた。
テオは、ひどく困惑して、指導教授であるヨスト先生に助言を求めた。
「先生、このようなものが届いたのですが……」
「なんだい? こ、これは。王宮からの直々の招聘状じゃないか」
「はい。しかし、私は王子様とは面識がありませんし」
「何かに応募したというわけでもない?」
「ええ。春には魔導士試験もありますし、奨学金も取れたので」
「う~ん、なぜかは分からないが、招聘されたからには行かざるを得まい」
「お断りすることも可能でしょうか?」
「それは、話を聞いてみなければ分からないだろう。ただ……」
「ただ?」
「君が魔導士を目指すのならば、その所属は魔道省になるだろう?」
「はい。魔導士は、基本的に国家公務員ですから」
「そうだな。それならば、受けておいたほうが後々のためには……」
「しかし、論文も書かなければ」
「修士論文については、私のほうで融通を利かせられるだろう」
「魔導士試験の勉強は……」
「それは、向こうのご意向次第。相談してみるほかないと思うが」
本来、大学院は研究者養成のための機関である。
けれど、テオは実務家である魔導士を目指していた。
大学卒業後に受けた魔導士試験に通らず、諦めることを考えた。
ちょうど、その時に、大学院に『魔導士コース』が作られる。
大学院レベルで魔道学を学びつつ、魔導士試験にも対応できる。
そう聞いて、テオは進学を決めたのだった。
*****
招聘状に書かれていた日時に、王宮の門の前にテオは立っていた。
自分の人生には、まったく関係がないと思っていた王宮。
衛兵に身分証を見せると、通用門から中に通される。
門を通っても、宮殿自体は、はるか遠くに見えるだけ。
広すぎるほどの道と手入れの行き届いた庭が、テオを迎える。
その先に、テオの人生を変える出会いがある。
道を一歩踏み出したテオは、そのことを、つゆ知らずにいた。
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