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第7話 王宮を出る決意
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少しの衣類に、生活雑貨。
今、読んでいる本を何冊か。
テオは、自分のそれっぽっちの全財産を鞄に詰め込む。
それから、王子宛ての手紙をデスクの上に置く。
(王子様、申し訳ありません……)
心の中で謝罪をして、テオは王宮内の自室をこっそりと出る。
テオは、住み込み家庭教師を辞めて、王宮から出ようとしていた。
実は、テオが王宮を出ていこうとするのは2度目だった。
前回は、昼に出ようとして使用人たちや衛兵に見つかり、止められてしまった。
知らせを聞いた王子が、すぐに駆けつけて来て、引き留められた。
王子は、悲しそうな顔でテオに問いかけた。
「先生? 何か不満があるなら言ってくれ。すぐに改善するよ」
テオには、不満などなかった。
むしろ満足すぎて、今の環境に慣れてしまうのが怖かっただけ。
それは、地方から出てきた貧乏学生のテオには贅沢な悩みだと分かっている。
だからこそ、抜け出せなくなるのは恐ろしい。
そして……。
誰にも言えない王子との深夜の授業。
王子は、決して急がない。
無理強いもしない。
テオを大切な人のように扱ってくれる。
(それは当たり前だ。恋する人のためのレッスンなんだから)
それを分かっていながら、テオは王子に触れられるたびに思ってしまう。
(王子様が想っているのが、自分だったらいいのに……)
(王子様が望むなら、すべてを差し上げたいのに……)
(おそばにいられるためなら、すべてを投げうってもいいのに……)
いつの間にか、テオはただひたすらに王子を想うようになっていた。
体だけを求められる自分の立場が、ひどく惨めに思えた。
それでも、王子の切なげで寂しげな表情を見せられると。
テオは、黙って戻るという選択をするしか無かった。
テオが戻ると言うと、王子がパァーッと華やいだ表情を見せる。
その顔の眩しさに、『これでいいんだ』とテオは自分に言い聞かせた。
(だけど、もう……。ここから先は……)
***
昨夜のこと。
いつものように、軽快に叩かれる深夜の部屋の扉。
数時間をかけて、念入りに自分を磨いたテオが王子を迎え入れる。
「先生! 今日も綺麗だ。いい香りがするよ」
「王子様が用意してくださった香油のおかげです」
「そうかな? きっと私が嗅いでいるのは、香油じゃないと思うよ」
「それ以外の香りは、つけていませんが……?」
「ふふふ。先生には分からない香りだからね」
(私では嗅ぎとれない香りということか……)
(やはり幼き頃から、良いものに囲まれてきたかたは違うなぁ)
自分に香りの知識がないことは、十分に分かっている。
だから、それ以上、王子に尋ねることは控えた。
「今日は少しだけ、趣向を変えようかと思ってね」
そう言って、王子は小さな瓶を取り出した。
中には、琥珀色の液体が入っている。
王子は、テオが用意したお茶に、その小瓶の液体を数滴垂らした。
「お酒……ですか?」
「ふふ。いい香りだろう?」
「はい。どこか懐かしいような、芳醇な香りがします」
お茶で温められたそれは、芳しい香りを放つ。
ひとくち含むと喉が、カーッと熱くなる。
飲み込むと、今度は腹の底にストンと落ちて、その奥が熱い。
「王子様……」
テオは、手にしていたカップをソーサーにカチャンと置く。
王子の頬を両の手のひらで包み込む。
それから、ふわりと笑って、王子の唇に自分の唇を重ねる。
王子から漂う薔薇の香りが強くなる。
その香りの元を追うように、王子の唇を割り探る。
口内が王子の香りでいっぱいになると、体の力が抜けてしまう。
「おっと! 先生、危ないよ」
「ふふふ。大丈夫ですよ、王子様……」
ふらふらと倒れそうになるテオを、王子が横抱きにしてベッドへと運ぶ。
そのまま、ベッドに上がった王子はテオの首筋に唇を這わせる。
テオは、全身がどうしようもなく熱く感じる。
「熱い……。脱がないと……」
自ら、身につけていた衣服をはぎ取る。
元々、薄手の寝巻きしか身につけてはいないテオ。
あっさりとその裸身があらわになる。
「綺麗だ……。先生、かわいいよ」
王子の声が遠くに聞こえる。
その声を聞くと、テオはますます体が熱くなる。
王子に向かって腕を伸ばす。
潤んだような、けれど、なまめかしい光を孕んだ王子の瞳。
その瞳が、キラリと光ったように見える。
テオの肌という肌すべてに、王子の唇が落とされる。
甘い痺れは、テオの全身を駆け巡り。
やがて、一点に集まってくる。
自分自身が、抱き合う王子の腹に当たるのを感じる。
「おや、先生のここもキスをお望みかな?」
「……王子様? それは、どういう……?」
ぼんやりとした頭で、テオが問いかける。
その答えは返されずに、王子はテオ自身に唇を落とす。
「王子……様?」
自分自身が、王子の桃色の唇に飲み込まれていくのが見える。
これまで感じたことのないゾクゾクとした快感に包まれる。
王子の桃色の唇が、ひどく淫らに動く。
「い、いけません……。王子様……」
「なぜ? とてもかわいいのに」
テオの頼りない制止は、王子には届かない。
腰を掴まれているテオは、ほとんど抵抗もできない。
吸われるような感触、滑らかに動かされる舌。
一点に集中したテオの熱が、限界を迎えようとしていた。
「も、もう……。無理です……」
「先生のここは、先生よりも正直なようだね」
「どういう……、あぁ!」
王子の止まらない愛撫にさらされて、テオ自身があえなく果てる。
「申し訳……あり」
「シーッ! どうして謝る? かわいいところを見せてくれたのに」
「し、しかし……」
「今夜は、ここまでにするとしよう。
これ以上は、私も止められないからね」
「……王子様?」
「ふふふ。この続きは、気持ちを確認してからにしたい」
「それは、どういう……?」
「それは……、次の夜にね」
意味深な言葉を残して、王子が去っていく。
体中に刻まれた王子の痕跡に、テオはブルリと震える。
王子を受け入れたい気持ちは、ますます高まる。
(もう、すべてを捨てて王子様と最後まで……)
(でも……。王子様の想い人がやって来たら、私は用済みに……)
(流されてはダメだ。やはり、王宮を出よう。今、すぐにでも)
立ち上がるつもりのテオだったが、力が入らない。
(ほんの少しだけ休んでから……)
眠りに落ちたテオの部屋の扉が、そっと開かれる。
鮮やかな緑色の光が、テオの周辺に注がれる。
すやすやと眠るテオは、自分に起こっていることを知る由も無い。
今、読んでいる本を何冊か。
テオは、自分のそれっぽっちの全財産を鞄に詰め込む。
それから、王子宛ての手紙をデスクの上に置く。
(王子様、申し訳ありません……)
心の中で謝罪をして、テオは王宮内の自室をこっそりと出る。
テオは、住み込み家庭教師を辞めて、王宮から出ようとしていた。
実は、テオが王宮を出ていこうとするのは2度目だった。
前回は、昼に出ようとして使用人たちや衛兵に見つかり、止められてしまった。
知らせを聞いた王子が、すぐに駆けつけて来て、引き留められた。
王子は、悲しそうな顔でテオに問いかけた。
「先生? 何か不満があるなら言ってくれ。すぐに改善するよ」
テオには、不満などなかった。
むしろ満足すぎて、今の環境に慣れてしまうのが怖かっただけ。
それは、地方から出てきた貧乏学生のテオには贅沢な悩みだと分かっている。
だからこそ、抜け出せなくなるのは恐ろしい。
そして……。
誰にも言えない王子との深夜の授業。
王子は、決して急がない。
無理強いもしない。
テオを大切な人のように扱ってくれる。
(それは当たり前だ。恋する人のためのレッスンなんだから)
それを分かっていながら、テオは王子に触れられるたびに思ってしまう。
(王子様が想っているのが、自分だったらいいのに……)
(王子様が望むなら、すべてを差し上げたいのに……)
(おそばにいられるためなら、すべてを投げうってもいいのに……)
いつの間にか、テオはただひたすらに王子を想うようになっていた。
体だけを求められる自分の立場が、ひどく惨めに思えた。
それでも、王子の切なげで寂しげな表情を見せられると。
テオは、黙って戻るという選択をするしか無かった。
テオが戻ると言うと、王子がパァーッと華やいだ表情を見せる。
その顔の眩しさに、『これでいいんだ』とテオは自分に言い聞かせた。
(だけど、もう……。ここから先は……)
***
昨夜のこと。
いつものように、軽快に叩かれる深夜の部屋の扉。
数時間をかけて、念入りに自分を磨いたテオが王子を迎え入れる。
「先生! 今日も綺麗だ。いい香りがするよ」
「王子様が用意してくださった香油のおかげです」
「そうかな? きっと私が嗅いでいるのは、香油じゃないと思うよ」
「それ以外の香りは、つけていませんが……?」
「ふふふ。先生には分からない香りだからね」
(私では嗅ぎとれない香りということか……)
(やはり幼き頃から、良いものに囲まれてきたかたは違うなぁ)
自分に香りの知識がないことは、十分に分かっている。
だから、それ以上、王子に尋ねることは控えた。
「今日は少しだけ、趣向を変えようかと思ってね」
そう言って、王子は小さな瓶を取り出した。
中には、琥珀色の液体が入っている。
王子は、テオが用意したお茶に、その小瓶の液体を数滴垂らした。
「お酒……ですか?」
「ふふ。いい香りだろう?」
「はい。どこか懐かしいような、芳醇な香りがします」
お茶で温められたそれは、芳しい香りを放つ。
ひとくち含むと喉が、カーッと熱くなる。
飲み込むと、今度は腹の底にストンと落ちて、その奥が熱い。
「王子様……」
テオは、手にしていたカップをソーサーにカチャンと置く。
王子の頬を両の手のひらで包み込む。
それから、ふわりと笑って、王子の唇に自分の唇を重ねる。
王子から漂う薔薇の香りが強くなる。
その香りの元を追うように、王子の唇を割り探る。
口内が王子の香りでいっぱいになると、体の力が抜けてしまう。
「おっと! 先生、危ないよ」
「ふふふ。大丈夫ですよ、王子様……」
ふらふらと倒れそうになるテオを、王子が横抱きにしてベッドへと運ぶ。
そのまま、ベッドに上がった王子はテオの首筋に唇を這わせる。
テオは、全身がどうしようもなく熱く感じる。
「熱い……。脱がないと……」
自ら、身につけていた衣服をはぎ取る。
元々、薄手の寝巻きしか身につけてはいないテオ。
あっさりとその裸身があらわになる。
「綺麗だ……。先生、かわいいよ」
王子の声が遠くに聞こえる。
その声を聞くと、テオはますます体が熱くなる。
王子に向かって腕を伸ばす。
潤んだような、けれど、なまめかしい光を孕んだ王子の瞳。
その瞳が、キラリと光ったように見える。
テオの肌という肌すべてに、王子の唇が落とされる。
甘い痺れは、テオの全身を駆け巡り。
やがて、一点に集まってくる。
自分自身が、抱き合う王子の腹に当たるのを感じる。
「おや、先生のここもキスをお望みかな?」
「……王子様? それは、どういう……?」
ぼんやりとした頭で、テオが問いかける。
その答えは返されずに、王子はテオ自身に唇を落とす。
「王子……様?」
自分自身が、王子の桃色の唇に飲み込まれていくのが見える。
これまで感じたことのないゾクゾクとした快感に包まれる。
王子の桃色の唇が、ひどく淫らに動く。
「い、いけません……。王子様……」
「なぜ? とてもかわいいのに」
テオの頼りない制止は、王子には届かない。
腰を掴まれているテオは、ほとんど抵抗もできない。
吸われるような感触、滑らかに動かされる舌。
一点に集中したテオの熱が、限界を迎えようとしていた。
「も、もう……。無理です……」
「先生のここは、先生よりも正直なようだね」
「どういう……、あぁ!」
王子の止まらない愛撫にさらされて、テオ自身があえなく果てる。
「申し訳……あり」
「シーッ! どうして謝る? かわいいところを見せてくれたのに」
「し、しかし……」
「今夜は、ここまでにするとしよう。
これ以上は、私も止められないからね」
「……王子様?」
「ふふふ。この続きは、気持ちを確認してからにしたい」
「それは、どういう……?」
「それは……、次の夜にね」
意味深な言葉を残して、王子が去っていく。
体中に刻まれた王子の痕跡に、テオはブルリと震える。
王子を受け入れたい気持ちは、ますます高まる。
(もう、すべてを捨てて王子様と最後まで……)
(でも……。王子様の想い人がやって来たら、私は用済みに……)
(流されてはダメだ。やはり、王宮を出よう。今、すぐにでも)
立ち上がるつもりのテオだったが、力が入らない。
(ほんの少しだけ休んでから……)
眠りに落ちたテオの部屋の扉が、そっと開かれる。
鮮やかな緑色の光が、テオの周辺に注がれる。
すやすやと眠るテオは、自分に起こっていることを知る由も無い。
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