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第12話 進路変更
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「あの時に、勇気を出せていたら……。
今、こんな風に、君を囚われにしなくても済んだのだろうか?」
今夜も深夜のレッスンは、行われた。
テオは、すっかり信じて込んでいるようだ。
王子が、想い人を悦ばせるためにテオを使っているのだと。
「テオこそが、私の想い人だっていうのにね……」
テオの姿態を思い出すだけで、王子の腹は今もギュンと疼く。
深夜にテオの部屋を訪ねるようになってからというもの。
テオのかわいらしさは、やむことがない。
肌も髪も磨かれて、ツヤツヤピカピカと王子を惑わせる。
今夜は、テオがとうとう自ら王子の肌に唇を落としてくれた。
テオの胸の突起を王子が、いつものように舌で転がす。
摘み、こねられると胸の突起は紅く色づく。
熟した果実のようにも見えるそれは、王子の欲を刺激する。
恍惚のようでもあり、苦悶のようでもあるテオの表情。
その顔は、王子自身をそそり立たせるには十分だった。
向かい合ったテオの腹に、自然に王子自身がトントンと触れてしまう。
「王子……様。私も……あなた自身にキスをさせて欲しいのです……」
「先生? いいのかい? 無理には……」
「いえ、私がどうしても、あなたを悦ばせたくて仕方がないのです……」
初めはおずおずと、次第に大胆な動きで、テオは王子を翻弄する。
テオの舌が、王子自身の全てにまとわりつく。
キュッと吸われたまま、上下するテオの頭。
テオの濃い灰色の髪が、内股に当たる感覚さえ、ゾクゾクとしてしまう。
愛しい人の中に出入りする自分自身を感じる。
その光景に、王子の目はチカチカと揺らめく。
危うく、そのまま達してしまいそうになるのをこらえる。
(それは、本当の交わりのためにとっておきたいからね)
「ありがとう。先生。そこまでで十分だ」
そう言った王子に、テオが名残惜しそうな顔を見せた。
と、思ったのは、王子の願望なのかも知れない。
「私のためだと思っていいんだろうか?
それとも、これも勤めのうちだと考えているのかな?」
テオに用意される菓子には、少しの魔法がかかっている。
お茶に垂らした酒の中にも。
その魔法は、体に害のない媚薬効果がある。
この世界では、普通に用いられる精力剤のようなものだ。
この魔法に触れると、人の本当の気持ちがあふれてしまうという。
テオに対してだけは、やたらと弱腰になってしまう王子。
そんな王子のために、レイがかけてくれた魔法だった。
「あの魔法にかかると、テオ様は王子を求めるのでしょう?
それならば、心の底では、あなたを望んでいるということです」
レイは、そう言ってくれるが、王子には、まだ確証が持てない。
それならば、魔法など使わなければいい。
そうとも思えるのに。
(私はまだ、あの時の子どものままなのかも知れない……)
*****
テオと出会った次の夏の終わり。
レイに導かれて、テオの祖父母の家の近くまでやって来た王子。
その家を取り囲む生垣に隠れるようにして、庭をのぞき込む。
庭に面したテラスに置かれたテーブルと椅子。
そこに、テオはいた。
一年の間に、身長は伸びて、ずいぶんと大人っぽく見える。
少し憂いを含んだような瞳で、本に向かう真剣な横顔。
それでも、キラキラと輝く濃い灰色の髪は以前と変わらない。
王子は、すぐにでも駆け出して、声を掛けるつもりだった。
が、そこにテオの祖母らしき女性が盆を手に現れた。
王子とレイは、生垣に身を隠す。
「テオ、少し休みなさいな。ほら、クッキーを焼いたのよ?」
「ありがとう。おばあちゃん」
「今年は、ずっと家にいるわね。あの子には、会いに行かないの?」
「あの子って?」
「どこかのお庭で会ったとかいう……」
「薔薇園の子のこと?」
「そうそう! 去年は、毎日、話してくれたじゃない」
「うん。だけど、もういいんだ」
「なぜ? すっごく綺麗な子に会ったって嬉しそうだったのに」
「たぶん……、あの子は、貴族の子だよ。僕とは、身分が違うもの」
「お友だちになれたって言ってたのに?」
「去年までは、身分のことなんか知らなかったからね。
学校じゃ、身分が違う人とは友だちになれないってみんなが言ってる」
「そうなの? それじゃあ、仕方ないわねぇ」
テオが祖母とかわす会話は、王子の耳にも届く。
それを聞くと、王子は顔を真っ赤にして逃げ出した。
レイが慌てて、その後ろ姿を追いかける。
「だけどね。魔導士になれたら、身分なんて関係ないって!
だから、僕は魔導士になって、あの子に会いに行くよ」
「そう。それで、そんなにお勉強を頑張っているのね」
「うん! 今は会えなくてもね、ヴィーに会うためなら頑張れる!」
「あらあら、テオは本当にその子が大好きなのねぇ」
その後にかわされた会話の内容を知らないまま、王子は逃げ出してしまった。
夏の宮殿に戻った王子は、しばらく誰とも会わないほどに落ち込んだ。
王子という身分に関係なく仲良くなれた、唯一の人を失ってしまった。
もう二度と会えないのだと思ったから。
王子の思った通り、それ以来、テオと薔薇園で会うことはなかった。
のちに、レイがあらゆる手を使って調べてくれた。
テオが、進路を変更したこと。
この国の子どもは、10才になるとひとつの選択を迫られる。
職人や店員などになるための『職業技能コース』。
大学教育を受けるための『進学コース』。
どちらかを必ず選ぶ必要がある。
元々、テオは大半の子と同じように『職業技能コース』を選ぶ予定だった。
けれど、薔薇園の夏以降、『進学コース』に進路変えしていた。
「魔導士になるため、らしいですよ?
やっぱり、テオ様は王子のことを想ってるんじゃないですか?」
レイは、そう言ってくれた。
それでも、王子には、テオに会いに行く勇気も。
自分の素性を明かす決断も。
出来ないままだった。
王子が次に直接、テオの姿を見るのは、それから5年後のことである。
今、こんな風に、君を囚われにしなくても済んだのだろうか?」
今夜も深夜のレッスンは、行われた。
テオは、すっかり信じて込んでいるようだ。
王子が、想い人を悦ばせるためにテオを使っているのだと。
「テオこそが、私の想い人だっていうのにね……」
テオの姿態を思い出すだけで、王子の腹は今もギュンと疼く。
深夜にテオの部屋を訪ねるようになってからというもの。
テオのかわいらしさは、やむことがない。
肌も髪も磨かれて、ツヤツヤピカピカと王子を惑わせる。
今夜は、テオがとうとう自ら王子の肌に唇を落としてくれた。
テオの胸の突起を王子が、いつものように舌で転がす。
摘み、こねられると胸の突起は紅く色づく。
熟した果実のようにも見えるそれは、王子の欲を刺激する。
恍惚のようでもあり、苦悶のようでもあるテオの表情。
その顔は、王子自身をそそり立たせるには十分だった。
向かい合ったテオの腹に、自然に王子自身がトントンと触れてしまう。
「王子……様。私も……あなた自身にキスをさせて欲しいのです……」
「先生? いいのかい? 無理には……」
「いえ、私がどうしても、あなたを悦ばせたくて仕方がないのです……」
初めはおずおずと、次第に大胆な動きで、テオは王子を翻弄する。
テオの舌が、王子自身の全てにまとわりつく。
キュッと吸われたまま、上下するテオの頭。
テオの濃い灰色の髪が、内股に当たる感覚さえ、ゾクゾクとしてしまう。
愛しい人の中に出入りする自分自身を感じる。
その光景に、王子の目はチカチカと揺らめく。
危うく、そのまま達してしまいそうになるのをこらえる。
(それは、本当の交わりのためにとっておきたいからね)
「ありがとう。先生。そこまでで十分だ」
そう言った王子に、テオが名残惜しそうな顔を見せた。
と、思ったのは、王子の願望なのかも知れない。
「私のためだと思っていいんだろうか?
それとも、これも勤めのうちだと考えているのかな?」
テオに用意される菓子には、少しの魔法がかかっている。
お茶に垂らした酒の中にも。
その魔法は、体に害のない媚薬効果がある。
この世界では、普通に用いられる精力剤のようなものだ。
この魔法に触れると、人の本当の気持ちがあふれてしまうという。
テオに対してだけは、やたらと弱腰になってしまう王子。
そんな王子のために、レイがかけてくれた魔法だった。
「あの魔法にかかると、テオ様は王子を求めるのでしょう?
それならば、心の底では、あなたを望んでいるということです」
レイは、そう言ってくれるが、王子には、まだ確証が持てない。
それならば、魔法など使わなければいい。
そうとも思えるのに。
(私はまだ、あの時の子どものままなのかも知れない……)
*****
テオと出会った次の夏の終わり。
レイに導かれて、テオの祖父母の家の近くまでやって来た王子。
その家を取り囲む生垣に隠れるようにして、庭をのぞき込む。
庭に面したテラスに置かれたテーブルと椅子。
そこに、テオはいた。
一年の間に、身長は伸びて、ずいぶんと大人っぽく見える。
少し憂いを含んだような瞳で、本に向かう真剣な横顔。
それでも、キラキラと輝く濃い灰色の髪は以前と変わらない。
王子は、すぐにでも駆け出して、声を掛けるつもりだった。
が、そこにテオの祖母らしき女性が盆を手に現れた。
王子とレイは、生垣に身を隠す。
「テオ、少し休みなさいな。ほら、クッキーを焼いたのよ?」
「ありがとう。おばあちゃん」
「今年は、ずっと家にいるわね。あの子には、会いに行かないの?」
「あの子って?」
「どこかのお庭で会ったとかいう……」
「薔薇園の子のこと?」
「そうそう! 去年は、毎日、話してくれたじゃない」
「うん。だけど、もういいんだ」
「なぜ? すっごく綺麗な子に会ったって嬉しそうだったのに」
「たぶん……、あの子は、貴族の子だよ。僕とは、身分が違うもの」
「お友だちになれたって言ってたのに?」
「去年までは、身分のことなんか知らなかったからね。
学校じゃ、身分が違う人とは友だちになれないってみんなが言ってる」
「そうなの? それじゃあ、仕方ないわねぇ」
テオが祖母とかわす会話は、王子の耳にも届く。
それを聞くと、王子は顔を真っ赤にして逃げ出した。
レイが慌てて、その後ろ姿を追いかける。
「だけどね。魔導士になれたら、身分なんて関係ないって!
だから、僕は魔導士になって、あの子に会いに行くよ」
「そう。それで、そんなにお勉強を頑張っているのね」
「うん! 今は会えなくてもね、ヴィーに会うためなら頑張れる!」
「あらあら、テオは本当にその子が大好きなのねぇ」
その後にかわされた会話の内容を知らないまま、王子は逃げ出してしまった。
夏の宮殿に戻った王子は、しばらく誰とも会わないほどに落ち込んだ。
王子という身分に関係なく仲良くなれた、唯一の人を失ってしまった。
もう二度と会えないのだと思ったから。
王子の思った通り、それ以来、テオと薔薇園で会うことはなかった。
のちに、レイがあらゆる手を使って調べてくれた。
テオが、進路を変更したこと。
この国の子どもは、10才になるとひとつの選択を迫られる。
職人や店員などになるための『職業技能コース』。
大学教育を受けるための『進学コース』。
どちらかを必ず選ぶ必要がある。
元々、テオは大半の子と同じように『職業技能コース』を選ぶ予定だった。
けれど、薔薇園の夏以降、『進学コース』に進路変えしていた。
「魔導士になるため、らしいですよ?
やっぱり、テオ様は王子のことを想ってるんじゃないですか?」
レイは、そう言ってくれた。
それでも、王子には、テオに会いに行く勇気も。
自分の素性を明かす決断も。
出来ないままだった。
王子が次に直接、テオの姿を見るのは、それから5年後のことである。
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