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第24話 始まらない話
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「何から、いや、どこから話せばいいかな……」
広い広い庭を通って、部屋へと辿り着いたテオと王子。
庭を通る敷石の上を、テオを抱えたまま、慎重に歩いていた王子。
そこに言葉は無く、ただしっかりとテオだけを抱えていた。
一方のテオは、王子の首筋にひたすら唇を落としていた。
『王子=ヴィー』だという実感は、未だ無い。
けれど、自分を抱きかかえている、この人。
この人を愛しているのは間違いない。
そう、分かっていた。
「ヴィー……、それともヴィル……?」
「好きなほうで呼んでくれていいよ」
「うん……。僕は、どっちも好きだから……」
寝台の上に優しく座らされたテオが、困ったような笑みを浮かべる。
その顔を見た王子が、ぎゅうっとテオを抱き締める。
「ど、どうしたの?」
「テオがかわいくて……。それから、愛しすぎて」
「う、嬉しい。とりあえず、今まで通り、ヴィルって呼ぶよ」
「うん。ねぇ、テオ。これからも、僕と一緒にいてくれる?」
「もちろんだよ、ヴィルがいいなら」
「好きでいてくれる?」
「……うん」
「なんか、引っかかる? それは、そうだよね……。ごめん」
「ち、違う! 僕は、ヴィルもヴィーも大好きで……。
なんだか不実な気がしちゃって……」
「だけど、どっちも僕だよ。テオは、不実なんかじゃない」
「頭では分かってるんだけど、さっきまで別の人だと思っていたから」
「そう、だよね。ちょっと意地悪なこと、聞いてもいい?」
「うん……。なんだか怖いな」
「もし、僕とヴィーが違う人だったら、テオはどうするつもりだったの?」
王子にそう聞かれて、テオは自らの戸惑いの訳に気づく。
それは、何度も王宮を出ようとした理由の根幹にあるものでもあった。
「僕は……。正直に話すよ。ヴィルに嫌われないか心配だけど」
「ははっ、大丈夫。テオを嫌いになんか、なれやしない」
「ありがと。僕はね、初めて会った夏からヴィーを忘れられなくて。
もう一度、会いたくて。
だけど、ヴィーは身分の高い人だって分かっていたから。
魔導士にさえなれれば、もう一度ヴィーに会えると思ったんだ」
「うん……」
「だけど、魔導士試験には落ちちゃうし。
あまりアルバイトも出来なくなってね。
家賃も払えない時があって、そうなると僕は何のために魔導士試験を?
そう思っちゃうことも、たくさんあって」
「そっか……」
「うん。そんな時にね、王宮からの招聘状が届いたんだ。
最初は、断ろうと思ったんだけど。
王子様が、あんまり素敵すぎてさ……」
テオは、そこまで言うと、王子のほうを照れた表情で見る。
それから、もう一度、口を開いた。
「ほら、こんなに美しくて、格好いい。
その上、聡明で、すごく話が合うんだ。
気づいた時には、好きになってた。しかも、ものすごく」
「テオ……」
「だけど、ヴィーとした約束だって忘れたわけじゃなかったし。
それなのに、王子様ったら、深夜の授業とか言って!
僕は、初めから、ずっと気持ちよくて。どんどん溺れて……」
「ごめん。ごめんよ、テオ。あの時は、そうするのがいいと思って。
テオの心が欲しかったのに。
先に、体を縛りつけるみたいなことしてしまって……」
「ううん。僕は、あれを望んでた。ヴィーへの罪悪感が無ければ。
きっと、すぐにでもヴィルに抱いて欲しかった」
「テオ……」
テオが、潤んだ瞳を王子に向ける。
王子が、その瞳に応えるように、テオのまぶたに唇を触れさせる。
「あぁ、ヴィル。君は知ってる?
君の行為のひとつひとつが、僕を昂ぶらせるってこと。
君と会うまで、まぶたへのキスが、こんなに気持ちいいなんて。
僕は、知らなかったよ」
テオの言葉に、王子が咄嗟にテオを押し倒してしまう。
そんな時でも、腕はテオの背中に優しく回され、衝撃はない。
「ヴィル?」
「ごめん、話の途中なのに。だけど……」
言葉を続けようとした王子の唇は、テオの人差し指に止められる。
「言わなくてもいい。僕も、同じ気持ちだよ」
テオの言葉に頷いた王子は、その首筋に鼻を近づけて匂いを吸い込む。
「あぁ。テオの匂いだ。テオからは、いつも夏の匂いがする」
「夏の匂い……?」
「うん。僕だけが知ってるテオの匂いだよ」
しばらく匂いを吸い込んでいた王子は、やがて舌を這わせ始める。
「……ンァ、……んんっ! ヴィル……、好き……。んくぅぅぅ!」
柔らかく舐め取られる刺激に、テオが声を上げる。
これまでのような、少し抑えたような声ではなく。
体に伝わる、その快感に素直に反応する声。
「テオは、知ってる?
その声に、僕がたまらない気持ちになるってこと」
「っ……、し、知らない……。あっ、うっ、……んんぁ」
テオの寝巻きは、サッとはぎ取られ、胸の突起があらわになる。
次の刺激を期待するように、その突起は紅く膨らみ始める。
「テオ、見て。かわいいでしょ? まだ触ってもいないのに……」
「はず、かしい……」
王子は、嬉々として突起にしゃぶりつく。
もはや、これまでのような遠慮はない。
王子の熱い愛撫に応えるように、テオの腰が揺れ出す。
テオ自身が、ねだるように王子の内股を叩く。
ほほ笑んだ王子は、テオ自身をその手のひらで包み込むように握る。
「あぁ! ヴィル……」
愛しげに上下される王子の手の動きに、テオの腰は浮かんでくる。
触れられていない窪みが、勝手に熱を持ち始める。
「テオ、ここに来て……」
王子のひざの上に導かれるように座る。
すぐに、王子の指が、それを待ち侘びている窪みへと伸びる。
声があふれそうになった唇は、王子のそれでふさがれる。
テオの欲しい場所に、王子の指が舌が、そして肌が刺激を送り続ける。
全ての隙間が、王子にふさがれて、テオの中は満たされていく。
「んっ! ……んんぁ、んっ! ンムゥ……」
それでも、快楽の喘ぎは、じわじわと漏れ出す。
高まり続けたテオ自身が、やがて達してしまう。
期待に震え、収縮をくり返す窪みに、王子自身がようやく沈んでいく。
「ヴィル……。あぁ! 離れない! もう二度と! ……あぁぁぁ」
少し控えめに、王子らしい上品さで翻弄されるいつもの交わり。
今夜は、全く違っていた。
激しく、何度も何度も打つような交わり。
腰を掴む指は、テオの肌に食い込んで、爪の跡を残す。
肩に、背中に、腰に。
王子の歯が差し込まれるのを、感じる。
その全てが、心地いい。
今夜のふたりは、まるで初めて交わったように激しく燃えた。
はぁはぁと荒い息を吐きながら、寝台に倒れ込む王子。
その姿を薄っすらと横目で見ると、テオは夢の中へ向かう。
広い広い庭を通って、部屋へと辿り着いたテオと王子。
庭を通る敷石の上を、テオを抱えたまま、慎重に歩いていた王子。
そこに言葉は無く、ただしっかりとテオだけを抱えていた。
一方のテオは、王子の首筋にひたすら唇を落としていた。
『王子=ヴィー』だという実感は、未だ無い。
けれど、自分を抱きかかえている、この人。
この人を愛しているのは間違いない。
そう、分かっていた。
「ヴィー……、それともヴィル……?」
「好きなほうで呼んでくれていいよ」
「うん……。僕は、どっちも好きだから……」
寝台の上に優しく座らされたテオが、困ったような笑みを浮かべる。
その顔を見た王子が、ぎゅうっとテオを抱き締める。
「ど、どうしたの?」
「テオがかわいくて……。それから、愛しすぎて」
「う、嬉しい。とりあえず、今まで通り、ヴィルって呼ぶよ」
「うん。ねぇ、テオ。これからも、僕と一緒にいてくれる?」
「もちろんだよ、ヴィルがいいなら」
「好きでいてくれる?」
「……うん」
「なんか、引っかかる? それは、そうだよね……。ごめん」
「ち、違う! 僕は、ヴィルもヴィーも大好きで……。
なんだか不実な気がしちゃって……」
「だけど、どっちも僕だよ。テオは、不実なんかじゃない」
「頭では分かってるんだけど、さっきまで別の人だと思っていたから」
「そう、だよね。ちょっと意地悪なこと、聞いてもいい?」
「うん……。なんだか怖いな」
「もし、僕とヴィーが違う人だったら、テオはどうするつもりだったの?」
王子にそう聞かれて、テオは自らの戸惑いの訳に気づく。
それは、何度も王宮を出ようとした理由の根幹にあるものでもあった。
「僕は……。正直に話すよ。ヴィルに嫌われないか心配だけど」
「ははっ、大丈夫。テオを嫌いになんか、なれやしない」
「ありがと。僕はね、初めて会った夏からヴィーを忘れられなくて。
もう一度、会いたくて。
だけど、ヴィーは身分の高い人だって分かっていたから。
魔導士にさえなれれば、もう一度ヴィーに会えると思ったんだ」
「うん……」
「だけど、魔導士試験には落ちちゃうし。
あまりアルバイトも出来なくなってね。
家賃も払えない時があって、そうなると僕は何のために魔導士試験を?
そう思っちゃうことも、たくさんあって」
「そっか……」
「うん。そんな時にね、王宮からの招聘状が届いたんだ。
最初は、断ろうと思ったんだけど。
王子様が、あんまり素敵すぎてさ……」
テオは、そこまで言うと、王子のほうを照れた表情で見る。
それから、もう一度、口を開いた。
「ほら、こんなに美しくて、格好いい。
その上、聡明で、すごく話が合うんだ。
気づいた時には、好きになってた。しかも、ものすごく」
「テオ……」
「だけど、ヴィーとした約束だって忘れたわけじゃなかったし。
それなのに、王子様ったら、深夜の授業とか言って!
僕は、初めから、ずっと気持ちよくて。どんどん溺れて……」
「ごめん。ごめんよ、テオ。あの時は、そうするのがいいと思って。
テオの心が欲しかったのに。
先に、体を縛りつけるみたいなことしてしまって……」
「ううん。僕は、あれを望んでた。ヴィーへの罪悪感が無ければ。
きっと、すぐにでもヴィルに抱いて欲しかった」
「テオ……」
テオが、潤んだ瞳を王子に向ける。
王子が、その瞳に応えるように、テオのまぶたに唇を触れさせる。
「あぁ、ヴィル。君は知ってる?
君の行為のひとつひとつが、僕を昂ぶらせるってこと。
君と会うまで、まぶたへのキスが、こんなに気持ちいいなんて。
僕は、知らなかったよ」
テオの言葉に、王子が咄嗟にテオを押し倒してしまう。
そんな時でも、腕はテオの背中に優しく回され、衝撃はない。
「ヴィル?」
「ごめん、話の途中なのに。だけど……」
言葉を続けようとした王子の唇は、テオの人差し指に止められる。
「言わなくてもいい。僕も、同じ気持ちだよ」
テオの言葉に頷いた王子は、その首筋に鼻を近づけて匂いを吸い込む。
「あぁ。テオの匂いだ。テオからは、いつも夏の匂いがする」
「夏の匂い……?」
「うん。僕だけが知ってるテオの匂いだよ」
しばらく匂いを吸い込んでいた王子は、やがて舌を這わせ始める。
「……ンァ、……んんっ! ヴィル……、好き……。んくぅぅぅ!」
柔らかく舐め取られる刺激に、テオが声を上げる。
これまでのような、少し抑えたような声ではなく。
体に伝わる、その快感に素直に反応する声。
「テオは、知ってる?
その声に、僕がたまらない気持ちになるってこと」
「っ……、し、知らない……。あっ、うっ、……んんぁ」
テオの寝巻きは、サッとはぎ取られ、胸の突起があらわになる。
次の刺激を期待するように、その突起は紅く膨らみ始める。
「テオ、見て。かわいいでしょ? まだ触ってもいないのに……」
「はず、かしい……」
王子は、嬉々として突起にしゃぶりつく。
もはや、これまでのような遠慮はない。
王子の熱い愛撫に応えるように、テオの腰が揺れ出す。
テオ自身が、ねだるように王子の内股を叩く。
ほほ笑んだ王子は、テオ自身をその手のひらで包み込むように握る。
「あぁ! ヴィル……」
愛しげに上下される王子の手の動きに、テオの腰は浮かんでくる。
触れられていない窪みが、勝手に熱を持ち始める。
「テオ、ここに来て……」
王子のひざの上に導かれるように座る。
すぐに、王子の指が、それを待ち侘びている窪みへと伸びる。
声があふれそうになった唇は、王子のそれでふさがれる。
テオの欲しい場所に、王子の指が舌が、そして肌が刺激を送り続ける。
全ての隙間が、王子にふさがれて、テオの中は満たされていく。
「んっ! ……んんぁ、んっ! ンムゥ……」
それでも、快楽の喘ぎは、じわじわと漏れ出す。
高まり続けたテオ自身が、やがて達してしまう。
期待に震え、収縮をくり返す窪みに、王子自身がようやく沈んでいく。
「ヴィル……。あぁ! 離れない! もう二度と! ……あぁぁぁ」
少し控えめに、王子らしい上品さで翻弄されるいつもの交わり。
今夜は、全く違っていた。
激しく、何度も何度も打つような交わり。
腰を掴む指は、テオの肌に食い込んで、爪の跡を残す。
肩に、背中に、腰に。
王子の歯が差し込まれるのを、感じる。
その全てが、心地いい。
今夜のふたりは、まるで初めて交わったように激しく燃えた。
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