ボクとじーちゃんの古道具屋

クリヤ

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第2話 ガラスペン

(2)まちぶせ

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 次の日、ボクはいつものようにダッシュで家に……。
 は、帰らずに中学校の校門が見えるところにいた。

 ボクの小学校とルリちゃんの中学校は、お隣りどおし。
 小学校と中学校との間には、小学校のうさぎ小屋がある。
 ボクは、そこでうさぎにキャベツの切れはしをあげていた。

 『タカオ、ちゃんと見てるんだろうな?』
 「うん、大丈夫だよ」
 『さっきから、うさぎばっか見てるくせに!』
 「だって、かわいいんだよ、うさぎさん」

 給食室で出た野菜の切れはしは、うさぎ小屋のエサ箱に入ってて。
 だれがあげてもいいことになってる。
 もぐもぐもぐもぐ。
 ずっと口を動かし続けるうさぎたち。
 ふわふわの毛がたっぷりの体をなでると気持ちいい。
 ずっと見ていられる気がするよ。

 『おい! タカオ! あれ、あの子じゃねぇか?』
 「え? あ、ホントだ。行かなきゃ!」
 『だから、ちゃんと見てろって言ったのに』

 うさぎに夢中のボクの代わりに、中学校の校門を見ててくれたのは。
 ボクの相棒の懐中時計。
 今日だけは、こっそり学校に連れてきたんだ。

 「あ、行っちゃう! ヤバいヤバい!」
 『ったく、タカオはよ~』

 懐中時計に文句を言われながら、手についた野菜くずを払う。
 それからボクは、ルリちゃんに向かってダッシュした。
 ランドセルが、左右に動いてちょっと苦しい。

 『おい、なんで話しかけねぇんだよ?』
 「だって、周りにたくさん中学生がいるでしょ」
 『だから、なんだよ?』
 「ちょっと怖い。それに、ルリちゃんだってさ」
 『あ?』
 「ほかの人の前で、小学生としゃべってくれるか分かんないから」

 ボクは、ずっと不思議なんだけどさ。
 登校班が一緒だったお兄さんやお姉さんたちがね。
 中学生になったら、ちっともお話ししてくれなくなるんだ。
 小学生の頃は、一緒に遊んだりもしたのに。

 ママに聞いたらね。
 『中学生になると、小学生と話すのが恥ずかしいんじゃない?』
 って言うんだけど。
 中学生になったって、ボクとの年の差はおんなじじゃない?
 中学生になると、秘密のルールでもあるのかなぁ?
 『小学生とは話しちゃいけません』みたいな?

 しばらくルリちゃんのあとをついて行く。
 あ、商店街に入った。
 周りには、中学生がいない。
 チャーンス!

 「あのっ! すみません!」
 「はい? あ! 古道具屋さんの……」
 「あの、少しだけお話してもいいですか?」
 「え? あ、ちょっとそれは……」
 「お願いします! ハンカチも返さないと」
 「でも……」
 「お店で! お店で話せば、だれにも会いませんから!」
 「えっと、じゃあ、先にお店に行っててくれる?」
 「はい。でも、絶対来てくださいね!」
 「うん。あ、ねぇ! あんドーナツは好き?」
 「はい! 大好きです!」

 ボクは、急いで店に向かった。
 鍵を開けて、ルリちゃんが来るのを待たなくちゃ!

 「ただいま~!」

 『おかえり、タカオ』
 『おっ! 今日はランドセルじゃねぇか。どした?』
 『あら、おやつを持ってないなんて珍しいわね』

 柱時計に、ガラスのチロリ、絵皿が迎えてくれる。

 「ルリちゃんに会うためだよ!」

 『あの子が来るのか?』
 『ガラスペンは、まだ怒ってるのかしら?』
 『え? ルリが来るの? 迎えに?』

 木製デスク、陶器のティカップ、ガラスペンが話してる。

 ボクは、急いで手を洗ってうがいをする。
 それから、マグカップをふたつ取り出して牛乳を注ぐ。
 電子レンジにマグカップを入れて、スタート!

 カラン、カラーン!

 『お~い、あの子が来たぞ~』

 ドアベルが鳴るのと同時に、ドアベルの声も聞こえる。

 「は~い。いらっしゃいませ」

 ボクが店に出ていくと、ルリちゃんが立っていた。
 手にはボクの好きなあんドーナツのお店の紙袋。
 その紙袋を持ち上げて、ルリちゃんは顔の横で少しだけ振った。
 そして、ボクに向かってこう言った。

 「おやつ、一緒に食べない?」
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