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クリヤ

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第1章 始まり

(3)バスルームの愉悦

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 ショウゴはあわてて、近くにあったウエットティッシュを取る。
 数枚重ねたウエットティッシュで、ナオキの手のひらをぬぐう。
 ナオキの手を取ると、バスルームに連れて行く。
 トロンとした目で、おとなしくついてくるナオキ。

 (やっぱり、酔ってるんだ。ボクは、そんなナオキに……)

 「風呂に入れてくれんの?」
 「うん。キレイにしないと」
 「ありがと」

 微妙に舌足らずに話すナオキが、かわいく見える。
 ナオキの服を手早く脱がすと、風呂椅子に座らせる。
 ボディソープを泡立てて、スポンジで体を洗おうとすると止められる。

 「やだ。手で洗って」
 「えぇ? 手で? さわっていいの?」

 コクンと、うなずくナオキが、ますますかわいい。
 泡立てたボディソープを手のひらですくって、ナオキの体にのせる。
 首を洗うと、くすぐったいのか、ふふふとナオキから笑い声がもれる。
 胸のほうに泡を持っていく。
 ナオキの突起がピンと張り詰めている。
 さっきのナオキの指を思い出して、ついさわってしまう。

 「んっ……」
 「ごめん! さわっちゃって」
 「……いいよ。さわって」

 張り詰めた突起を指で転がす。
 ぷっくりと膨らんだそれは、ショウゴを待っている気がした。
 考える前に、ショウゴの唇が突起を覆っていた。

 「んんっ、あっ……」

 小さく漏らされるナオキの声。
 その声は、ショウゴを止めるどころか、よりあおる。
 その突起から唇を離せなくなる。
 しばらくすると、ナオキが口を開いた。

 「ショウゴ……、ショウゴのことも洗うよ」
 「ボク? ボクは、いいよ。さっき、シャワー浴びたし」
 「いいから。洗いたい」
 「う、うん」

 ボディソープを器用に泡立てると、ナオキはショウゴの体に泡をのせる。
 泡を転がすように、ショウゴの肌を滑るナオキの手のひら。
 その動きは繊細で、気持ちいい。
 なのに、なんだかもどかしい。

 「背中洗うから、ここに座って」
 「そこ? 無理でしょ」
 「無理じゃない。早く。向かい合うようにね」

 ナオキが座れと言っているのは、ひざの上。
 しかも、向かい合わせに。

 (これって、抱き合ってるのと同じじゃ……)

 ショウゴが考えようとするのを阻止するように、ナオキの手が引っ張る。
 泡だらけのショウゴの体は、あっさりとナオキのひざの上に収まってしまう。
 ヌルヌル滑るひざの上で、バランスを取ろうとする。
 どうやっても、ナオキと密着するしか方法はない。

 「そうそう。そうしてて」

 ナオキは、楽しそうにショウゴの背中を泡で包み込む。
 背中を手のひらが滑るたびに、ショウゴの胸の突起はナオキの肌にこすれる。

 (……気持ちいい……。あ、マズい。また……)

 ショウゴ自身が、再び、持ち上がるのを感じる。

 (どうしよう。ナオキのお腹に当たる)

 どうにか鎮めようと、素数でも数えようかと考えた矢先。
 ツプリ。
 感じたことのない刺激が、ショウゴを襲う。

 「え? ナオキ……?」
 「ショウゴは、オレの背中洗ってくんないの?」
 「あっ、うん。洗うよ」

 偶然当たっただけかな、そう思ってナオキの背中に集中しようとする。
 ツプリ、ツプリ、ツプリ。
 今度は、何度も刺激される。

 「そっ、そこは、洗わなくても……」
 「ダメだよ。全部、キレイにしなくちゃ」

 見えないけれど、ナオキのあのスラリと美しい指が。
 自分の後ろの窪みに、何度も入っていく。
 その光景を想像してしまう。
 もう耐えられるものではなかった。
 ショウゴ自身が、再び、力を取り戻して、ナオキの腹を押す。

 「こっちも洗って欲しそうにしてる」
 「あの、ごめん。落ち着かせるから……」
 「ふふ。いいよ。オレのと一緒に洗おう」

 そう言われて、下を見る。
 いつの間にか、ナオキ自身もショウゴと同じように立ち上がっている。
 ナオキが両手で、ふたりをまとめて包み込む。
 優しく上下に動かされる手のひら。
 さっき達したばかりで敏感になっているショウゴ自身。
 あっという間に、絶頂の予感がやってくる。

 「ナ、オキ。……ごめん、もう」
 「一緒に、いこう」

 学校に行こう、みたいに軽く言うナオキの顔が紅潮している。
 その顔が、少しだけ苦しそうで、なのに、やっぱり美しくて。
 ショウゴは、あっさりと達してしまった。

 「ごめん……、洗いにきたのに、また汚して」
 「汚れてなんかいないよ、ほら」

 手のひらを見せようとしてくるナオキの手を押さえる。
 そんなものを見せられたら、恥ずかしくて死んでしまう。
 ナオキのひざに乗っていることを、急に不自然に感じる。
 あわてて、ナオキのひざからおりると、シャワーですべてを洗い流す。

 ナオキの手を引いて、バスルームから出るとバスタオルでナオキを包む。
 ふわふわのバスタオルに包まれて、ふわりと笑うナオキの顔。
 それを見たら、またショウゴは、お腹がきゅっとするのを感じる。

 (マズい、マズい。別のことを考えろ)

 自分の体は、ザッとふいて、Tシャツを着る。
 ナオキは、とりあえずバスタオルに包んだまま、部屋に連れて行く。

 「ナオキ、Tシャツ、どこ?」
 「ん……? そこ」

 クローゼットを開くと、すぐに見つかる。
 隣りにあったボクサーパンツも取り出して、ナオキに履かせる。
 素直にされるがままになっているナオキの姿は、子どものように見える。
 それを、かわいいと思いつつも、罪悪感も感じる。
 ドライヤーでナオキの髪を乾かしながら、ショウゴは念じる。

 (明日になったら、ナオキが全部、忘れていますように!)


 *****

 次の朝。
 恐る恐る、自室を出たショウゴが見たのは、いつも通りのナオキの姿。

 「おはよう。お腹空いた」
 「……おはよう、ナオキ。すぐ、ご飯にするよ」

 トーストにサラダ、コーヒーのいつもの朝食。
 向かい合って食べるいつもの光景。
 ショウゴの内心だけが、昨日とは違っていた。
 それとなく、ナオキに問いかける。

 「あの、さ。昨日のことって、覚えてる?」
 「あ、オレも聞こうと思ってた」

 その言葉に、ショウゴの全身にピリッと緊張が走る。

 「な、何を?」
 「なんか、コーヒー飲んだあたりから記憶が曖昧でさぁ」
 「う、うん」
 「でも、風呂は入ってるみたいだし。着替えてるし?」
 「あ、そ、そう。あの、ナオキって、酒、めっちゃ弱い?」
 「うん。そうかも」
 「昨日、洋酒入りのチョコを食べたらさ……」
 「あ、そういうこと。じゃあ、オレ、自分で風呂入ってた?」
 「う、うん。そうかな……」
 「ごめん。迷惑かけてない?」
 「も、もちろん。全然! ちなみに迷惑って、どういうの……?」
 「ん~、高校の時は、キスしたがったらしい」
 「へ、へぇ。き、昨日は、大丈夫だったよ?」
 「そっか。良かった。ショウゴに嫌われるようなことしてなくて」
 「ボクは、ナオキを嫌ったりなんかしないよっ!」
 「まぢで? サンキュ。もし、酒入りを食べちゃったら、放置して」
 「で、でも。危なくない?」
 「うん。だけど、迷惑かけたくないから」

 とりあえず、昨夜のことは、ナオキにはバレていないようだった。
 胸を撫でおろしながらも、罪悪感は募る。

 (気分的には、襲っちゃったみたいな感じ……)
 (記憶がないほうがいいと思ったけど、それはそれでマズいのか)

 ショウゴには、急いで考えなければならないことがふたつできていた。
 ひとつは、ナオキの酒対策。
 あんなに弱いなら、酒の席さえ危うい。
 酔ったナオキなら、簡単に誰かにさらわれてしまいそうだ。
 もうひとつは、自分の気持ち。
 昨日は、ナオキの色香にあっさりと陥落してしまった。
 けれど。
 それは、ただの性欲なのか。それとも。

 「ショウゴ? ショウゴ! 1限、遅れるぞ」
 「え? あ、うん。急ぐ。ごめん」

 ぼんやり考えていたせいで、いつもの時間を過ぎてしまう。

 「オレ、先に下に行ってるわ」
 「うん、すぐ行くよ」

 アパートを出ると、いつもとは違うナオキの姿がそこにはあった。
 真っ青なフレームの自転車にまたがるナオキ。
 その自転車には、見覚えがあった。

 (あれって、確か……)

 考えようとしたショウゴの思考を遮って、ナオキの声が聞こえる。

 「今日は、チャリで行こう。遅れちゃうからさ」
 「うん。チャリ、持ってたんだね」
 「まぁ」
 「でも、ふたり乗り、大丈夫?」
 「大丈夫だって。裏から行くから」

 いつも通る大きな道路を避けて、川沿いの道を行く。
 ショウゴは、初めて通る道だったが、ナオキは、スイスイと進んで行く。
 前から吹いてくる風に、ナオキの匂いが混じる。
 初夏の気温は、朝だというのに、それなりに上がっていて。
 接しているわけでもないのに、じわりとナオキの熱が伝わってくる。
 その熱と匂いが、昨夜を思い出させる。
 ぎゅっと、ボクサーパンツにショウゴ自身が締めつけられる。

 (マズい。昨日から、何度目だよ。落ち着け、ボク!)

 歩いて行くよりも楽だったはずなのに、普段よりも疲れた気がした。
 学校の駐輪場からは、少し歩いて校舎に向かう。

 「おはようっ! ふたりとも!」
 「あ、おはようございます。1限からって珍しいですね」
 「どうせ再履だよ~。必修だから、取れるまで再履地獄……」
 「いや、取りましょ!」
 「今年は取る! ってか、ショウゴ、昨日、なんで来なかったんだよ?」
 「すいません、色々あって」
 「ナオキも帰っちゃうしよ~」
 「ははっ。オレも用事思い出して」
 「今日は、来いよ!」
 「はい」

 後ろから声をかけてきたのは、サークルの先輩のひとり。
 ナオキよりもさらに背が高く、ナオキの肩に腕をまわす癖がある人だった。
 いつも見ている光景なのに、ショウゴは無性にイラッとする。

 「ボクたち、急ぐので、お先に失礼します!」

 そう言って、ショウゴは、ナオキの服を引っ張って連れ出す。

 「なんか急ぎだったっけ?」
 「えっと、あ、そう! コンビニ寄りたい。喉渇いて」
 「ああ、チャリのせいかな?」
 「ん? あ、そうかも? とりあえず、早く」

 喉なんか、1ミリも渇いてはいなかった。
 けれど、ナオキに絡まる先輩を見ていたくはなかった。
 なんで、急にそんなことを思うのか、ショウゴは自分でも分からなかった。
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