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第3章 感じる運命
(2)オススメはアップルティー
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ナオキが、自分の造作が人に好かれると気づいたのはいつだったか。
今では、もう分からない。
けれど、進級するたびに、進学するたびに。
それ以外でも、新しい場所に行けば必ず。
目を輝かせて、近づいてくる人に出会う。
ひと目見ただけで、近づいてくる人たちは、誰もが少し怖かった。
何かをナオキから奪いに来ている、そんな気がしていた。
ナオキの造作を好きではない人とは、関わることができた。
その人たちは、皆、『なんだ、案外、普通じゃん』とナオキを評した。
それを聞くたびに、『普通じゃないと言ったことはない』と思った。
だが、それを口に出せば、雰囲気が悪くなることは想像できた。
だからいつも、『普通だよ』と言ってやり過ごした。
高校で出会ったひとつ年下のユウスケ。
体育祭の準備で知り合ったユウスケは、小さくてかわいい子だった。
スッといつの間にか、ナオキの近くにいて、目もギラついていない。
好感を持った。
けれど、ナオキからどうこうする気はなかった。
体育祭が終わると告白された。
断る理由は、ないと思えた。
初めての特定の人。
嬉しいと思っていた。
このまま、付き合っていくんだと思っていた。
ところが、すぐに、ユウスケは、ナオキと別れたいと言ってきた。
「どうして?」
「ナオキくん、見た目と違って、めんどくさい」
「どういうこと?」
「全然、さわってくれないし。好きって言ってもくれない」
「……好きだよ」
「今、言っても遅い。それなのに、ほかの人と話すと不機嫌になる」
「だって、それは……」
「ボクは、縛られたくないし。ほかの人とも遊びたい」
「オレは、ずっと一緒に、ゆっくりと……」
「何それ。重っ! そんなのウザいよ」
あっさりとユウスケは、ナオキから離れていった。
次の週には、別のやつと楽しげにイチャついているのを見た。
ナオキは、自分がウザくて重いということを知った。
相手を大事にしたい、自分だけのものでいて欲しい。
自分は、そういう欲が強いのだと初めて理解した。
ユウスケ以外にも、告白してくる人はいた。
というより、一度、ユウスケと付き合ったせいだろう。
ダメ元で告白されることが増えた。
それなのに、どの人も、ナオキを好きだとは思えなかった。
告白されて、しばらくすると、その人たちは別の人と付き合っていたからだ。
受け身でいたら、このまま、ずっとひとりなんじゃないかと怖くなる。
けれど、自分から好きになる人とは出会えない。
街ですれ違う普通の恋人たちが、眩しく見えた。
そして、自分には、縁遠いことなんだと諦めようとした。
ナオキに恋人がいないことを知った人は言う。
『なんでだろうね、モテるのに』
その言葉を聞くたびに、苛ついた。
整った造作がナオキの邪魔をしている。
もっと普通だったなら、自分だけを特別にしてくれる人がいるだろうか。
そんなことを考えたりもした。
気を紛らわそうと、懸命に勉強をした。
そうしたら、それなりの大学に現役で合格できた。
周りからは、こう言われた。
『顔も良くて、頭もいいなんてうらやましい』
ナオキのした努力は、なかったかのように扱われる。
何かが変わるかも。
そう小さな期待を抱いて大学に臨んだ。
けれど、入ってしまえば、大学もただの学校。
今までと変わり映えのしない日常が待っているだけだった。
一年は、瞬く間に過ぎ去る。
ため息とあくびだけの二年目に突入するだけだと思っていた。
試験会場で、ショウゴに出会うまでは。
*****
試験監督の昼休みは、マズい弁当を知らない人たちと空き教室で食べる。
居心地の悪さを感じて、ささっと昼を済ますと、ナオキは、教室を出た。
自販機で温かい飲みものでも買おう。
そう思って、ホールに向かう。
(あの子……、ショウゴは、ご飯食べたかな?)
(話してみたい。だけど、どうやって?)
(あの子、制服じゃなかったけど、浪人生?)
(いや、別に私服の現役生もいるか……)
気づけば、ショウゴのことばかり考えていた。
想うことが楽しいと初めて知った。
(さてと、何を飲むかな……)
いつもは、ほとんど決まったものを選ぶ。
けれど、なぜだか、違うものを飲んでみたくなった。
甘いもの。
そんなものを選びたくなった自分に驚く。
ショウゴに恋したせいかも知れない。
そう思って、少しくすぐったいような気持ちになる。
だが、どれを選べばいいのか分からない。
少し離れた自販機を見つめて、ひとり悩む。
「あっ」
近くで声がして、そちらを向く。
ナオキは、自分の目を疑った。
そこには、ショウゴが立っていた。
「あの、試験監督さんですよね? さっきは、ありがとうございました」
「……あ、いえ」
「先生……ですか?」
「いえいえ、ここの学生です」
「そうなんですね、若いと思いました」
「ははっ。若いって、同じくらいですよね?」
「ボク、浪人してるんで、もう年です」
「いやいや」
「現役の子の制服見ると、年を感じてしまって」
「ははは。分かります。ちょっと前まで高校生だったのに」
「そう! そうなんですよね」
「あの、変なこと聞いてもいいですか?」
「はい? 変なことって?」
「甘いものが飲みたくなって。どれがオススメですか?」
「えっ? あ、これ持ってるからですか?」
「あ、そうです。詳しいかなって」
「それなら、このホットのアップルティーがオススメです。
スッキリ甘くて、りんごの味がちゃんとします!」
「ありがとうございます。それにします」
ショウゴの手には、アップルティーが握られていた。
オススメの飲みものなんかじゃなくて、もっと気の利いた話を。
そうも思ったのに、ナオキの口から出たのは飲みものの話。
だが、ショウゴは嬉しそうに教えてくれた。
(話してみても、やっぱりいい子だ。連絡先を……)
(ダメだ。受験生に聞けるわけない……)
悩むナオキに、ショウゴはニッコリとほほ笑む。
「それじゃあ、ボクは、これで」
「あ、ありがとうございます。これ」
「いえ、オススメしただけなので。気に入ってもらえるといいんですけど」
「あ、午後も頑張ってください」
「はいっ! 合格できたら、会えるといいですね!」
またも、ナオキをよろめかせるような笑顔を残し、ショウゴは去った。
オススメのアップルティーは甘くて、舌がとろけそうだと思った。
本日最後の試験が、すぐに始まる。
ナオキは、問題用紙を配りながら、ショウゴを見る。
目が合うと、ショウゴは軽く頭を下げて、笑ってくれる。
(今すぐにでも、その手を掴んで、どこかにさらいたい)
言葉には出せない、そんな気持ちがナオキの内側からあふれてくる。
最後の試験時間を、ナオキは、ショウゴだけを見つめて過ごした。
ふわふわと揺れる髪を、さわれないのが悔しかった。
いつまでも試験時間が終わらなければいい。
そう思うナオキの思いは、流れる時間には逆らえない。
終わりのベルが鳴ると、受験生たちは大きなため息をつく。
バタバタと帰り支度が始まる。
さっきまでの緊張感は瞬く間に消えて、教室内はガヤガヤと騒がしい。
ナオキが解答用紙を集め終えて、振り返るとショウゴはすでに席にはいない。
(最後に、ひと目だけでも見たかったな……)
解答用紙の束を抱えて、ナオキは教室を出る。
廊下には、校舎の出口に向かう人の波ができていた。
その波の中に、ふわふわと動く、見覚えのある髪が見えた。
(あっ! ショウゴ……)
その髪を見ていると、ショウゴが横を向いて笑った。
色白の肌が、うっすら色づいている。
安心したような、ほどけた笑顔のショウゴが見える。
その笑顔は、横にいるショウゴより背の高いやつに向けられていた。
(えっ? 誰? もしかして、恋人……?)
同じ大学を受験しているふたり。
嬉しそうに笑い合い、肩がふれあう距離で歩くふたり。
ショウゴの隣りにいるやつの顔が見えた。
黒髪で短髪のそいつは、ショウゴの肩に腕をのせていた。
『ショウゴは、オレのもの』
ナオキには、そいつが、そう言っているように思えた。
*****
ナオキが先に目を覚ましていることには気づかないショウゴ。
ベッドを、ひとり抜け出そうとする。
ショウゴが離れると、ナオキの全身は急激に寒さを覚える。
そんなはずはない。
もう季節は、夏を迎えていた。
それでも、寒さをぬぐい去りたくて、ナオキはショウゴを引き戻す。
「ナオキ?」
「今日はいいの? お守り」
「……うん。あの、まだ、ナオキが中にいるみたいで……」
「ふふ。でも、オレは、お守りつけたい。いい?」
「うん。いいの?」
「当然」
マコトが会いに来てから、ショウゴは、毎朝、ナオキを求める。
かわいくねだられると、断れるはずがない。
いや、断るつもりなんてない。
ナオキがキスマークをつける口実に使った『お守り』という言葉。
それを、ショウゴは、毎日のように使う。
ナオキの言葉を使ってくれるのが愛おしくて、抱きしめてしまう。
ナオキを待ちわびるように開かれる桃色の唇。
毎日、欠かさず味わっても飽きることがない。
ショウゴには、腕以外にもホクロが多い。
色白の人の特徴だろうか。
ナオキは、そのホクロを数えるように唇を全身に落とす。
今では、どこにいくつのホクロがあるのか、すっかり覚えてしまった。
「……あっ、ん、ん、……んくぅ、ふぅ。……あぁん、ナオキぃ……」
ナオキが、ショウゴの窪みに自身を沈み込ませる。
ショウゴが気持ちいいように、決して傷つけないように。
ゆっくり、確かめるようにショウゴの中を出入りする。
もらされる声は、ナオキの官能を刺激する。
ともすれば、我を忘れて動きたくなることもある。
けれど、そこをこらえて、じっくりと刻みつけるように動く。
ショウゴは、自分がねだっているから、ナオキがすると思っている。
本当は、まったくの逆だ。
毎日、毎朝、ガマンできないのはナオキのほうだ。
素肌がふれあえば、ショウゴが欲しくてたまらない。
(あぁ、あの時、バカなことして良かった……)
(あの衝動は、この幸せのため……。絶対、そうだ……)
人生で初めてのバカなこと。
すべては、この腕の中にある愛しいものを手に入れるためだった。
今、ナオキは、確信を持って、そう言える。
今では、もう分からない。
けれど、進級するたびに、進学するたびに。
それ以外でも、新しい場所に行けば必ず。
目を輝かせて、近づいてくる人に出会う。
ひと目見ただけで、近づいてくる人たちは、誰もが少し怖かった。
何かをナオキから奪いに来ている、そんな気がしていた。
ナオキの造作を好きではない人とは、関わることができた。
その人たちは、皆、『なんだ、案外、普通じゃん』とナオキを評した。
それを聞くたびに、『普通じゃないと言ったことはない』と思った。
だが、それを口に出せば、雰囲気が悪くなることは想像できた。
だからいつも、『普通だよ』と言ってやり過ごした。
高校で出会ったひとつ年下のユウスケ。
体育祭の準備で知り合ったユウスケは、小さくてかわいい子だった。
スッといつの間にか、ナオキの近くにいて、目もギラついていない。
好感を持った。
けれど、ナオキからどうこうする気はなかった。
体育祭が終わると告白された。
断る理由は、ないと思えた。
初めての特定の人。
嬉しいと思っていた。
このまま、付き合っていくんだと思っていた。
ところが、すぐに、ユウスケは、ナオキと別れたいと言ってきた。
「どうして?」
「ナオキくん、見た目と違って、めんどくさい」
「どういうこと?」
「全然、さわってくれないし。好きって言ってもくれない」
「……好きだよ」
「今、言っても遅い。それなのに、ほかの人と話すと不機嫌になる」
「だって、それは……」
「ボクは、縛られたくないし。ほかの人とも遊びたい」
「オレは、ずっと一緒に、ゆっくりと……」
「何それ。重っ! そんなのウザいよ」
あっさりとユウスケは、ナオキから離れていった。
次の週には、別のやつと楽しげにイチャついているのを見た。
ナオキは、自分がウザくて重いということを知った。
相手を大事にしたい、自分だけのものでいて欲しい。
自分は、そういう欲が強いのだと初めて理解した。
ユウスケ以外にも、告白してくる人はいた。
というより、一度、ユウスケと付き合ったせいだろう。
ダメ元で告白されることが増えた。
それなのに、どの人も、ナオキを好きだとは思えなかった。
告白されて、しばらくすると、その人たちは別の人と付き合っていたからだ。
受け身でいたら、このまま、ずっとひとりなんじゃないかと怖くなる。
けれど、自分から好きになる人とは出会えない。
街ですれ違う普通の恋人たちが、眩しく見えた。
そして、自分には、縁遠いことなんだと諦めようとした。
ナオキに恋人がいないことを知った人は言う。
『なんでだろうね、モテるのに』
その言葉を聞くたびに、苛ついた。
整った造作がナオキの邪魔をしている。
もっと普通だったなら、自分だけを特別にしてくれる人がいるだろうか。
そんなことを考えたりもした。
気を紛らわそうと、懸命に勉強をした。
そうしたら、それなりの大学に現役で合格できた。
周りからは、こう言われた。
『顔も良くて、頭もいいなんてうらやましい』
ナオキのした努力は、なかったかのように扱われる。
何かが変わるかも。
そう小さな期待を抱いて大学に臨んだ。
けれど、入ってしまえば、大学もただの学校。
今までと変わり映えのしない日常が待っているだけだった。
一年は、瞬く間に過ぎ去る。
ため息とあくびだけの二年目に突入するだけだと思っていた。
試験会場で、ショウゴに出会うまでは。
*****
試験監督の昼休みは、マズい弁当を知らない人たちと空き教室で食べる。
居心地の悪さを感じて、ささっと昼を済ますと、ナオキは、教室を出た。
自販機で温かい飲みものでも買おう。
そう思って、ホールに向かう。
(あの子……、ショウゴは、ご飯食べたかな?)
(話してみたい。だけど、どうやって?)
(あの子、制服じゃなかったけど、浪人生?)
(いや、別に私服の現役生もいるか……)
気づけば、ショウゴのことばかり考えていた。
想うことが楽しいと初めて知った。
(さてと、何を飲むかな……)
いつもは、ほとんど決まったものを選ぶ。
けれど、なぜだか、違うものを飲んでみたくなった。
甘いもの。
そんなものを選びたくなった自分に驚く。
ショウゴに恋したせいかも知れない。
そう思って、少しくすぐったいような気持ちになる。
だが、どれを選べばいいのか分からない。
少し離れた自販機を見つめて、ひとり悩む。
「あっ」
近くで声がして、そちらを向く。
ナオキは、自分の目を疑った。
そこには、ショウゴが立っていた。
「あの、試験監督さんですよね? さっきは、ありがとうございました」
「……あ、いえ」
「先生……ですか?」
「いえいえ、ここの学生です」
「そうなんですね、若いと思いました」
「ははっ。若いって、同じくらいですよね?」
「ボク、浪人してるんで、もう年です」
「いやいや」
「現役の子の制服見ると、年を感じてしまって」
「ははは。分かります。ちょっと前まで高校生だったのに」
「そう! そうなんですよね」
「あの、変なこと聞いてもいいですか?」
「はい? 変なことって?」
「甘いものが飲みたくなって。どれがオススメですか?」
「えっ? あ、これ持ってるからですか?」
「あ、そうです。詳しいかなって」
「それなら、このホットのアップルティーがオススメです。
スッキリ甘くて、りんごの味がちゃんとします!」
「ありがとうございます。それにします」
ショウゴの手には、アップルティーが握られていた。
オススメの飲みものなんかじゃなくて、もっと気の利いた話を。
そうも思ったのに、ナオキの口から出たのは飲みものの話。
だが、ショウゴは嬉しそうに教えてくれた。
(話してみても、やっぱりいい子だ。連絡先を……)
(ダメだ。受験生に聞けるわけない……)
悩むナオキに、ショウゴはニッコリとほほ笑む。
「それじゃあ、ボクは、これで」
「あ、ありがとうございます。これ」
「いえ、オススメしただけなので。気に入ってもらえるといいんですけど」
「あ、午後も頑張ってください」
「はいっ! 合格できたら、会えるといいですね!」
またも、ナオキをよろめかせるような笑顔を残し、ショウゴは去った。
オススメのアップルティーは甘くて、舌がとろけそうだと思った。
本日最後の試験が、すぐに始まる。
ナオキは、問題用紙を配りながら、ショウゴを見る。
目が合うと、ショウゴは軽く頭を下げて、笑ってくれる。
(今すぐにでも、その手を掴んで、どこかにさらいたい)
言葉には出せない、そんな気持ちがナオキの内側からあふれてくる。
最後の試験時間を、ナオキは、ショウゴだけを見つめて過ごした。
ふわふわと揺れる髪を、さわれないのが悔しかった。
いつまでも試験時間が終わらなければいい。
そう思うナオキの思いは、流れる時間には逆らえない。
終わりのベルが鳴ると、受験生たちは大きなため息をつく。
バタバタと帰り支度が始まる。
さっきまでの緊張感は瞬く間に消えて、教室内はガヤガヤと騒がしい。
ナオキが解答用紙を集め終えて、振り返るとショウゴはすでに席にはいない。
(最後に、ひと目だけでも見たかったな……)
解答用紙の束を抱えて、ナオキは教室を出る。
廊下には、校舎の出口に向かう人の波ができていた。
その波の中に、ふわふわと動く、見覚えのある髪が見えた。
(あっ! ショウゴ……)
その髪を見ていると、ショウゴが横を向いて笑った。
色白の肌が、うっすら色づいている。
安心したような、ほどけた笑顔のショウゴが見える。
その笑顔は、横にいるショウゴより背の高いやつに向けられていた。
(えっ? 誰? もしかして、恋人……?)
同じ大学を受験しているふたり。
嬉しそうに笑い合い、肩がふれあう距離で歩くふたり。
ショウゴの隣りにいるやつの顔が見えた。
黒髪で短髪のそいつは、ショウゴの肩に腕をのせていた。
『ショウゴは、オレのもの』
ナオキには、そいつが、そう言っているように思えた。
*****
ナオキが先に目を覚ましていることには気づかないショウゴ。
ベッドを、ひとり抜け出そうとする。
ショウゴが離れると、ナオキの全身は急激に寒さを覚える。
そんなはずはない。
もう季節は、夏を迎えていた。
それでも、寒さをぬぐい去りたくて、ナオキはショウゴを引き戻す。
「ナオキ?」
「今日はいいの? お守り」
「……うん。あの、まだ、ナオキが中にいるみたいで……」
「ふふ。でも、オレは、お守りつけたい。いい?」
「うん。いいの?」
「当然」
マコトが会いに来てから、ショウゴは、毎朝、ナオキを求める。
かわいくねだられると、断れるはずがない。
いや、断るつもりなんてない。
ナオキがキスマークをつける口実に使った『お守り』という言葉。
それを、ショウゴは、毎日のように使う。
ナオキの言葉を使ってくれるのが愛おしくて、抱きしめてしまう。
ナオキを待ちわびるように開かれる桃色の唇。
毎日、欠かさず味わっても飽きることがない。
ショウゴには、腕以外にもホクロが多い。
色白の人の特徴だろうか。
ナオキは、そのホクロを数えるように唇を全身に落とす。
今では、どこにいくつのホクロがあるのか、すっかり覚えてしまった。
「……あっ、ん、ん、……んくぅ、ふぅ。……あぁん、ナオキぃ……」
ナオキが、ショウゴの窪みに自身を沈み込ませる。
ショウゴが気持ちいいように、決して傷つけないように。
ゆっくり、確かめるようにショウゴの中を出入りする。
もらされる声は、ナオキの官能を刺激する。
ともすれば、我を忘れて動きたくなることもある。
けれど、そこをこらえて、じっくりと刻みつけるように動く。
ショウゴは、自分がねだっているから、ナオキがすると思っている。
本当は、まったくの逆だ。
毎日、毎朝、ガマンできないのはナオキのほうだ。
素肌がふれあえば、ショウゴが欲しくてたまらない。
(あぁ、あの時、バカなことして良かった……)
(あの衝動は、この幸せのため……。絶対、そうだ……)
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