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クリヤ

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第4章 独占欲

(2)過去からの解放

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 ショウゴよりも小柄で、キレイな顔立ち。
 そのことを自覚している自信にあふれた表情。
 重めの前髪からのぞく薄い色の瞳がキラキラ輝いて見える。
 天然石らしいピアスが個性を主張しつつ、おしゃれさを演出している。
 一緒にいるやつは、ユウスケと似た雰囲気。
 けれど、かなり身長が高く、ユウスケを守るように立っている。

 「久しぶり~! 会えるって思わなかったわ」
 「うん……。えっと、なんでうちの大学に?」
 「え? あぁ! 第一希望には落ちちゃって」
 「あ、そうなんだ」
 「ねぇ、ナオキくんの学部って、2年からキャンパス変わるんじゃないの?」
 「……そう、だけど」
 「じゃあ、なんで……」

 ガタンッ!
 ナオキが急に椅子から立ち上がると、ユウスケを引きずるように連れて行く。

 「え? なになに?」

 ユウスケは、引きずられながらも楽しそうに見える。
 ショウゴは、降って湧いたようなユウスケの登場にただ目を白黒させていた。
 同じく置き去りにされたユウスケの連れの存在に、ハッと気づく。

 「あ、あの。良かったら、座って……」
 「いえ、大丈夫です。さっきの人は、彼氏さんですか?」
 「え、あ、うん。どうして?」
 「いや、オレは、ユウスケを好きなんで」
 「あ、うん、そうなんだ」
 「はい。でも、付き合ってはなくて。
  突然、ユウスケが、あの人に向かって走り出したんで、気になって」
 「うん。ボクも気になるよ」
 「付き合ってんのに?」
 「付き合ってても、絶対、安心じゃないから」
 「そんなもんですか?」
 「うん」

 しばらくすると、菓子を手に持ったニコニコ顔のユウスケが戻ってくる。
 半歩後ろを歩くナオキは、ぐったりした表情を浮かべている。

 「リョウヘイ、行こっ! 見て、お菓子買ってもらっちゃった」
 「良かったじゃん」
 「うん! じゃあね、ショウゴくん」
 「え、あ、うん」
 「ふふ。めっちゃ、キョドってんじゃん。ナオキくん、説明しないとねぇ」
 「もういいから、行けよ、ユウスケ」
 「はいはい、お邪魔しました!」

 スキップするような勢いで、学食から出て行くユウスケ。
 リョウヘイと呼ばれた連れのほうが、ペコリと頭を下げる。
 ショウゴもつられて、頭を下げた。

 「あの、ショウゴ……」
 「ナオキ、もしかして、前に聞いた高校の時の?」
 「……うん。なんで、分かったの?」
 「ナオキがあわてたから」
 「ホントに、ユウスケとは何もないんだ。キスもしてない」
 「なんか、浮気を疑われた夫みたい」
 「いや、ホントなんだって! って言えば言うほど、嘘っぽいか?」
 「ふふ。信じてるよ、なんで、そんなにあせってるの?」
 「だから! オレは、ショウゴに1ミリでも誤解して欲しくないんだよ」
 「ありがと」
 「誤解してない?」
 「う~ん、0、5ミリくらいはした」
 「えっ? どの辺が?」
 「だって、何も言わないで、あの子を連れて行っちゃうし。
  お菓子も買ってあげてたし?」
 「ごめん、驚きすぎて、あせって」
 「いいよ、ボクにもお菓子買ってくれたら許す」
 「ははっ。もちろん買うよ」

 もちろん、ショウゴは、しっかり不満だった。
 それでも、ナオキに嫉妬する嫌な自分は見せたくない。
 だから、いつも通りの方法で不満を解消するしかない。

 「ねぇ、ナオキ。やっぱり、お菓子はボクが作るよ」
 「買わなくていいの?」
 「うん! 何が食べたい?」
 「えっと、じゃあ、プリンかな」
 「了解!」


 *****

 ユウスケが現れた時、一瞬、ナオキは過去に引き戻された。
 ゆっくり大事にしていこうと思えた初めての人。
 つまらないと言われた自分。
 別のやつと笑い合うユウスケ。

 自分が思っている以上に、過去に囚われていることを思い知る。
 ほかの人から見れば、大したことのないできごとだろう。
 『付き合った』と言っても、何をしたわけでもない。
 本当にキスさえしなかった関係だった。
 それでも、ナオキにとっては初めて『付き合おう』と思えた相手だった。
 ユウスケとのことがなければ、ショウゴにここまで執着したかも分からない。

 キャンパスのことを話し始めようとしたユウスケを、つい連れ出す。
 ナオキが本当は現役で合格していることも、休学していることも。
 絶対にショウゴには、知られたくなかった。
 少なくとも、今はまだ。

 「何? なんなの? ナオキくん」
 「余計なこと、言わないで欲しい」
 「え? 余計なことって? あ! 高校の時のこと?」
 「うん」
 「あははっ! ボクら、そんな言うほどの関係じゃないじゃん」
 「そうだけど、誤解されたくない」
 「え~、すごい。あのやる気なし男のナオキくんが?」
 「頼むから、近寄らないで」
 「何それ? なんかムカつく。ボクがなんかするっての?」
 「そうじゃないけど」
 「あのね、ボクはモテモテだし。ナオキくんのことなんか忘れてたし」
 「うん、それでいい」
 「あの子のこと、めっちゃ好きじゃん」
 「あぁ、まぁ」
 「うわ、ムカつく。ボクにも、そんくらいしてくれたら別れなかったのに」
 「そう……なの?」
 「嘘だよ! ナオキくんの顔が好きだったの!」
 「だよな」
 「あからさまにホッとした顔しないでよ。
  あの子にあることないこと、言っちゃおうかな~」
 「まぢで、それやったら、オレは自分を止める自信ない」
 「うわっ、こわ。ナオキくんってホントは、そんなんなんだね」
 「どんなんかは知らないけど、オレ、本気だから」
 「ウザ。分かったって。じゃあ、お菓子でも買ってよ。
  それで、黙っててあげる」
 「あ、あぁ。そんなもんなら、いくらでも」
 「いいよ、ひとつで。だけどさ、こっからはホントだけど。
  ナオキくん、今は中身もカッコいいじゃん」
 「そうか? 全然、変わんねぇよ」
 「へぇ。それじゃあ、ボクがナオキくんの本気を引き出せなかったんだ。
  ちょっと悔しいな。あんな普通の子に負けた気がする」
 「あいつは、普通に見えるところがすげぇんだよ」
 「何それ。腹立つ。もう行くよ。お菓子買って!」
 「ははっ。はいはい」

 過去に囚われていた自分が笑えてくる。
 知らぬ間に、ユウスケを悪人のように考えていた自分にも気づく。
 ユウスケはただ、正直すぎるだけだった。
 ナオキの顔が好きだから、付き合いたいと言い。
 付き合ってみたら、つまらないから別れたいと言う。
 そこに、悪意なんてなかったのだろう。

 (オレは考えすぎだったのかな。でも……)

 ユウスケに悪意があろうがなかろうが、ナオキは傷ついた。
 それは、たぶん、この先も変わらない。
 だから、ショウゴのことは、絶対に傷つけたくない。
 ほかの人から見たら、どうでもいいことだとしても。

 (それでも、オレは、ショウゴには幸せでいて欲しい)
 (だから、引っかかることは、耳に入れない)

 ユウスケと戻ったナオキに、ショウゴは不満を言わなかった。
 必死に弁解すればするほど、自分でもあやしく思える。

 (どうすれば……)

 一瞬、逡巡したナオキに、ショウゴは言った。

 「ねぇ、ナオキ。やっぱり、お菓子はボクが作るよ」

 これは、いつものやつだ。
 酒入りの菓子で、ナオキの本音を聞き出せると思っている。

 (かわいい。こんなところが、すげぇ好きだって知ってるのかな?)

 ナオキは、ひとり、心の中でほほ笑む。
 それから、今日も演技を成功させるために、自分に気合いを入れた。


 ***

 ショウゴ特製のラム酒入りのプリンは、おいしかった。
 けれど、やっぱり、アルコールが飛んでいない。
 ナオキは、まったく平気だが、すでにショウゴは酔っているようだ。

 「ナオキ……、ユウスケくん、かわいかったねぇ」
 「ショウゴのほうが、かわいいよ」
 「嘘だぁ。ボクは、普通だし、おしゃれでもないし……」
 「ねぇ、チューしたい。いいでしょ、ショウゴ?」
 「……うん。いいけど、ごまかしてる?」
 「ううん、オレが好きなのはショウゴだけ。かわいいと思うのも」
 「ふふっ、嬉しい」

 ふにゃっと笑うショウゴの桃色の唇が、ナオキを誘う。
 唇を合わせれば、ショウゴからは、いつもの声がもれる。

 「……んぁ、はっ、ナオキ……、好き……、はぁん、うぁ」
 「オレも好きだよ」
 「ホントなら、嬉しい。……もう、キスだけじゃ足りない……」
 「じゃあ、抱きしめてもいい?」
 「……いいに決まってる……。見えるとこにもお守りつけて……」

 酔った時のショウゴは、心の声が口から出ている。
 本人は、そのことに気づいていないようだ。
 ナオキにとっては、ありがたい。
 ショウゴの素直な気持ちを知ることができる。
 して欲しいことも、すぐに分かる。
 いつもは遠慮がちな接触も、酔っている時は大胆になる。

 要望に応えて、ショウゴ自身と後ろの窪みを同時に攻める。
 スルスルとした感触と、ねっとりした感触。
 どちらも楽しめて、ナオキの指が悦ぶ。
 すぐに達してしまうショウゴ。
 まだ足りないというように張りつめる胸の突起を舌で転がす。
 そのまま、ショウゴの柔らかな窪みにナオキは沈んでいく。
 ナオキの首に巻きつけられたショウゴの腕が、心地いい。

 「離さない。ずっと一緒にいて……」
 「いるよ。ショウゴこそ、逃げないでね」
 「逃げるわけないのに……」

 くいくいと締めつけながら、腰がゆるやかに動く。
 揺れる細い腰は、ナオキの肌を刺激する。
 首筋に吸いついて、柔らかい肌を舐め、むさぼる。
 一際、大きくあえぐとショウゴは、また気をやったようだ。
 ナオキは、ショウゴの髪を撫でながら、ゆっくりと達する。

 (ホントに好きなんだよ、ショウゴ……)

 ショウゴのふわふわの髪を自分の胸に引き寄せて、ナオキは眠りについた。
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